城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない 作:ブロx
Gawain of the Round Table
クリーチャー―円卓の騎士・ゴリラ・レジェンド。
プロテクション(黒) (このクリーチャーは黒のものに対してブロックされず、対象にならず、ダメージを与えられず、エンチャントされない。)
瞬速(あなたはこの呪文を、あなたがインスタントを唱えられる時ならいつでも唱えてよい。)
(1):クリーチャー1体を対象とする。円卓のガウェインはそれに1点のダメージを与える。
(2):円卓のガウェインを再生する。
このクリーチャーは、あなたがコントロールしている土地の数だけ召喚コストが白①プラスされる。
――『騎士とは何か? いいでしょう、あなたはもうそれを知って良い歳です』
父ロットから長子ガウェインへ。兄から弟へ、そして妹へ。
「・・・」
俺達城兵が崩れた正門周りに辿り着いた時、しかしそこでは粛正騎士が大活躍をしていた。
山の民だろうそこかしこに倒れ伏せる人は、申し訳程度に武装して呆気なく血を吹いて倒れている。
憎悪に満ちた顔、殺意に滾った顔、不思議と穏やかな顔。
戦時というのはいつだって人にこんな顔をさせる。血の匂いにむせて、付着した血痕が一体自分のなのか他人のなのかも判らなくなる。・・・そうしている内に、ふと満足感に似たこんな感情が生まれ始めてくる。
ああ、私はこれで楽になれる。
「・・・」
そんなブラッドボーン(血液性啓蒙主義)を一息で吹き消し、耳をすませば現在お味方大活躍って所だ。
聖都内での処刑行為は禁じられているけど、戦端が開いた時からここは戦中。王の名のもとに例外が適用されている。 ・・・敵は中々多いが、あの叛乱者どもがいないと見るとまさか奴ら王の所に?
粉微塵にしなきゃ。俺は使命感に駆られて王城へ駆けようとした。
「・・・」
「おう、遅かったではないか」
「兵士くん。久しぶりね」
顔を向け、ぽっかり開いた正門跡地に、そのお二人は居た。
ゆっくりと馬から降り、こちらに歩くその姿は相変わらず絵画のように美しい。
・・・幾多の困難や苦悶、無理も無駄もこじ開けてきた。そうやって人生を全うしたと、その歩みと顔には映っている。
すなわちサーヴァント。すなわち、彼らは。
「トータと遊撃をしていたんだけど、もうお役御免みたいだしね」
「懐かしい顔に会いたくなってな。・・・いや、兜か?」
「兵士くんなら必ず正門(ここ)に来ると思ったけど、やっぱりねっ」
「・・・・・」
いやあ、これはこれは三蔵様に俵様。お久しゅうございますなあ。ところで、何故得物を構えないので?
「していなかった挨拶をお主にしようと思っておってな。なに、―――今からでも遅くなかろう?」
ええ勿論。 俺はゆっくりと首を縦に振って槍の穂先を敵に向けた。
「聖都の武者よ。我らは人間を、カルデアのマスターを主とした。ゆえ、我らとここに留まってもらえまいか」
「・・・・・」
出来ません。 王の許しなくこの地を踏んだ輩は滅ぼします。王城に向かった者達も悉く殺します。おどき下さい。
「・・・。まあ、無理よなあ」
「・・・・・」
はい。
「ふっは、――はははははは!」
「・・・・・」
ハハハハ。ハハハハハハー。
「ならば力尽くで」
「・・・・・」
押し通る。
俺が突進したと同時に、敵サーヴァント・俵藤太が腰の太刀を抜いた。
「トータ!援護は?」
「要らぬ。そこで待機しておれ」
何もない空間から急に現れた拵え太刀を、下から上に抜剣した敵は俺の槍撃をかち上げた。鞘の内・反りに逆らう事なく音も無く。なんという技の冴えか。
「ぜぇああああああッ!!!」
肩の上で両手に握りなおした太刀が俺の左頸部に叩き、こまれる前に槍を太刀の側面にぶつけていなす。同時に両者体当たり。
肩に運動エネルギーを集中させてブチかました為、密着する形になったが敵は俺の脚を蹴り払ってきた。 崩し、柔ら、組討ち、武家相撲。呼び方はよく知らないがこの態勢で?
俺は腹を前に出してグッと足で踏ん張った。
「腰の据わりは中々だが。下がお留守だな」
「・・・・」
下?俺の下半身はその程度では、 !――ぬおおおおぉおお!!?
一体何が。一体何故俺は、地に崩れ倒れようとしているのかうおおおおおッ。
「――さらば。その首頂戴する」
「・・・・・!」
驚愕するだけで使えない脳みそとは別の方で、俺は理解した。
この敵は俺の爪先を踏みながら高速で俺の胸部、そして頭を押したのだ。下が留守と言ったのはわざとで、俺の意識をほんの少しでも上から逸らす為。俺の体を崩す為。
―――直立二足歩行生物ヒトは、二種類の方法で体の重心・バランスが崩れる。
両足を固定した状態で爪先から約30cmヘソを前に突き出す事。同じく、爪先から約60cm頭を前に突き出す事。これは後方に行っても同じ事である。(作者実験計測のため眉唾物)
「・・・」
・・・あ、だからお辞儀をする時は腰から曲げるんだ、じゃないと簡単に転ばせられるからってんな事知るか!!俺は今絶賛生命の危機だ!!!
手を添えられた白刃が倒れる俺の鎧の隙間、俺の首に迫る。このままでは背中が地面に落下着地と同時に首が胴体と泣き別れ。しかし姿勢が崩れている今どうすれば。
「・・・・・ッ!!!」
「―――むうッ!?」
刃が首に触れる、と思った瞬間。
俺は腰ごと身体をグルリと回転させた。 この場を凌ぎきるには力が必要な為、遠心力を発生させた俺は短く持った槍を敵の太刀と側頭部めがけてブン回す。
「・・・・」
うつ伏せに倒れ転ぶ俺。すぐさま膝で思いっきり地を蹴って身体を奮起、死に間から離れて間合を図る。・・・敵は、
「――中々。いやしかし回転するとは命知らずだな。西洋の武は回転を大いに良しとするという噂は本当だったか?」
「・・・」
さあどうでしょう。技術体系も何も有りませんでしたからな、あの時代は。俺は回転を重視しませんが、出来ると出来ないとじゃ大いに違うので。
・・・太刀を消した敵と我の間合は、やや遠間に近い中間。この状況でするべき行動は。
「ははッ。お主は依然無口なくせに分かりやすい。その闘気、その構え、その間合。 必殺を狙っているな?」
「・・・・・」
・・・・・。俺は槍を水平右肩に担いだ。
「良し。ならば吾(おれ)も取って置きを出さねばな」
そう言うと敵はやおら弓を取り出して、矢を番えた。
引き絞り、終いが無いほど無限に引く。引いたからには一か八かの一天地六。貫き落つるは俺の臓か貴方の腑か。
「………」
三蔵様はジッと俺達を見ていて、粛正騎士達は周囲の不埒な敵どもと当たっている。
つまり今、
「――俵下野守藤太。一矢馳走」
俺達の勝負を遮る者は誰もいない。
「 八幡祈願・大妖射、」
「・・・・ッ!!??」
その時の音は無く。感じたのは熱。
貫く刃の感覚と、激痛の感触。深く、深く、柄まで通れと剣が突き刺さる。
「―――てめえらは屑の集まりだ。俺の親父を殺しておいて、何でのうのうと生きてんだ?おい」
「! あなた……!!」
神速であった。
俺の聴覚でも判らない程に気配なく鋭い一撃。短剣の一刺しが、俺の背中を深々と貫いていた。一体何者が?後ろを向いて・・・・いや、判った。
「こっちはてめえらを皆殺しにする為に来てんのに、なあ。―――何で堂々と決闘なんざしてるんだ?」
「・・・・」
君か。聖罰の生き残りの青年。やっぱりどんな手を使ってでもここに来ると思ったよ。
「…兵士くんっ!!!」
「俺は諦めねえ。仇を全員殺すまでな」
怨念と共に。俺の意識は急速に消えていった。
◆
『---穏やかであれ』
『………!』
『・・・!』
――モニターから見える聞こえる神霊・ロンゴミニアドは声を出さずとも愛馬を自在に手繰る事が出来る。
それはこの神がランサーという霊基の枠から今まさに脱しようとしているからなのか、はたまたあの馬もまた聖槍にこびりついた英霊の残滓であるからか。
死闘という名に相応しい戦を繰り広げる神と人との闘いを、モニターから見ている事しか出来ないカルデアのスタッフ一同は固唾を飲んで見守っていた。
「休むな!!! 私達の仕事を全うしなさい!ぐだーズへの魔力供給の現状は!?」
「!は、はいッ!! 供給量オールグリーン!実証も問題ありません!継続中!!」
「どうっっわ!!! シバが何枚かイかれましたあ!!」
「何枚かじゃ分からないわっ。迅速に確実に正確に報告してカバーしなさい!!!」
「了解ッ!!」
「まさかカルデア(ここ)まで魔力の波が届くなんて。敵は正真正銘の女神様ってわけか・・・」
カルデアのDr.ロマニ・アーキマンは冷静に敵を分析し、その結果を現場の人間達にコンソールにて伝える。時たま出る独り言はご愛敬だが敵の情報や敵の霊基、バフ、デバフ、岡目八目勝機を伝える事もまた彼の仕事の一つである。
「ドクター!!!!」
「は、はいいいッ!余計な事言ってごめん所長!!」
「良い事を言ったわ。事実をありのまま述べる事は有ってしかるべきよ」
「・・・・、ありがとう?」
「どういたしまして。…でも正直このままじゃジリ貧ね。騎士王達はまだ戦闘中?」
「はい、騎士王はモードレッドと未だ交戦中です。俵藤太と玄奘三蔵は………、?」
「どうしたの。 もう敵を片づけて王城に向かってくれているのかしら?それとも別件?一体全体何がどうしたっていうのかしら?」
圧がカルデア管制室全体にかかる。しかしそれは威圧というよりは根源的な圧力で、幼児が親に怒られて身が竦むような感覚に近かった。
「答えなさい。 ぐだーズ達の為にも、今すぐ正確に」
「い、いえ、その。 俵藤太が戦っている相手が、例の……」
「モニターを回して」
コンマ数秒の後に、管制官が見ていた画面がカルデア所長専用モニターにも映った。データ上、敵は槍の粛正騎士。状況は弓対槍といった所。
「…いつ見ても気持ち悪いわね。何このバフ」
「槍の粛正騎士は、『撃滅の誓い』というスキルを持っている事が藤丸君達の戦闘データから分かっています。 でもこの敵は、」
「宝具威力とクリティカル発生率及び攻撃力防御力上昇。必中付与に…、クリティカル威力の向上。バーゲンセール担当の粛正騎士なわけ?こいつ」
どう考えても妙だった。
これらは槍だけでなく剣と弓の粛正騎士のスキル効果。初めてマシュ達と戦った時も、このエネミーは同スキルを展開していた。発動の兆候も全く見せずに。
「スキルが常時開放系の敵なんじゃあないかな、マリー。粛正騎士はそこらのエネミーとは違うわけだし」
「…そうね。三蔵法師もいるし、この敵は二人に任せましょう。モニターありがとう、戻すわ」
「イエス!マリー!」
「……、ねえ。お願いだからそれ止めて」
「?何を言うんです。オルガマリー所長はレイシフトチームを指導した鬼教官じゃないですか!」
「それ少しの間だけだったでしょう。しかもあの時はその、ね、あれよ。……やけくそだったというか」
「・・・私が人理継続保障機関フィニス・カルデア所長のオルガマリー・アニムスフィアである。話し掛けられた時以外は口を開くな。 口でクソたれる前と後に〝マリー〟と言いなさい。分かったかウジ虫」
「マリー、イエス、マリー」
「ふざけるな!大声出せ!!タマ落としたの!?」
「マリー!!イエス!!マリー!!」
「――止めなさい!!!仕事しなさい仕事を!!!」
「?やってますよ?」
「当たり前じゃないですか。小粋なジョークですよ、コフィンバイタルオールグリーンです」
「人をダシにするジョークは嫌われるわよ、ムニエル。次のボーナスを楽しみにしてなさい」
「・・・・。来年度が有ればですが」
「有るに決まってるでしょ。ここを何処だと思ってるの」
コンソールを叩いて、レイシフトしている人間達の存在証明の率を上げる。ドクターと共に彼女が行う大事な仕事の一つは、ここで彼らを観測し続ける事。
――もう何処にも消させない、何処にも行かせない。私の職員はどこの誰にも。たとえ神にも。
「勝って帰ってきなさい。…信じてるわよ。ぐだーズ、マシュ」