城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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 【円卓のモードレッド】 白③赤② 5/5
Mordred of the Round Table
クリーチャー―円卓の騎士・レジェンド。速攻。
 プロテクション(黒) (このクリーチャーは黒のものに対してブロックされず、対象にならず、ダメージを与えられず、エンチャントされない。)
 このパーマネントが戦闘で破壊された時、あなたは手札の全てを追放し、その枚数分のライフを失う。円卓のモードレッドは召喚酔いに影響されない。 
 
 ――『父上はいるか? オレの父上は最強なんだ!』









第35話 この星空を覆い尽くす時まで

 

 

 

 故郷を出奔したばかりの頃。

俺は喧嘩をふっかけた剣士に何度も何度も切られ、寒さと悔しさで死にそうになった事があった。

 

 

 歯噛みし、嗚咽を殺し、世界と無力を呪いながら皮膚から流れる血を啜り飲み、元の自分の中に戻し続ける。 

 

・・・風の強い夜だった。痛みに耐えながら、あの日俺は血が止まるのを待っていた。

 

―――畜生。畜生。

 

 朦朧とする意識。流れる時間。ふと顔を上げると、少しずつ霞んでは見えなくなっていく星々が俺の眼に映った。

 

―――死ぬのか。

 

 俺を死に誘っているのだろう星空。今もはっきり憶えている、青ざめた血の空。・・・怖いものなんて無かった筈の俺は、その時初めて世界は怖いと思った。

 

―――畜生。畜生。

 

 俺は傍に落ちていた槍を抱き寄せて立ち上がり、それを思いっきり振った。 塞がって間もない傷口が開き、血が槍を伝って夥しく地に落ちようとも俺は振って振って振りまくった。

 

昔、祖父が教えてくれたように。

 

『・・・そうか。これだ。 ―――槍を剣のように、振ればいいんだ』

 

フスカル・ローナルドという人間は、この星空の下で生まれた。

 

 

 

 

 

 

 槍使いとして目覚めて何年かが経ち、ひょんな事で先王ウーサーと出会ってからの俺の人生は、楽しい事の連続だった。

 

『マーリンのバカはどこだッ!?!?』

 

『世界の果てに居る美女を口説くと言って海に向かいました。 ・・・あ!エクター殿ちょっと助けてくれ。ボードウィン殿がご乱心めされた』

 

『笑いながら言う事でもないでしょう? フスカル』

 

 今まで一人で仕事だ何だしていたからか、誰かと一緒に笑うとか行動するというのは意外と悪くなかった。 

 

そして誰かの為に振るう槍は、自分の為に振るってきたそれよりも心地が良かった。

 

『? マーリン、ウーサー様。如何なさいましたか?』

 

『・・・・、フスカル。最近異民の蛮族を引き連れてきた王、ヴォーティガーンは知っているな?』

 

『ヴォーティガーン?卑王と呼ばれてる人物ですな?』

 

『その通り。・・・奴はどうやら別格の強さだ。一体どうすれば殺せるものか。人間では、到底奴に太刀打ちが出来ぬのだ』

 

『え?マーリンでも宛てがえば良いのでは?』

 

『え?ボクかい?』

 

『――規格外(バケモン)には規格外(バケモン)をぶつけんだよ』

 

『もっと的確で頼りになる手を考えろ、フスカル』

 

『それもそうですな。マーリン殿、私は冗談は嫌いですが気にしないで下さい』

 

『ハハハ! マーリンVSヴォーティガーンか。興行収入が見込めるかもしれないね。ボクは絶対御免だが』

 

『・・・・・。全ては民の為だ。次代に殺してもらうか』

 

漆黒に笑うウーサー様を、この時の俺は頼もしく思っていた。

 

 

 

 

 

 

『ウーサー様。赤子がお産まれになりました』

 

『そうか。エクター、マーリン。もしも私に何かあれば・・・産まれた我が子を頼む』

 

『命に代えましても。ただ・・・・』

 

『どうした?何か問題か?エクター』

 

『いえ、母子共に問題はありません。 ただお世継ぎは女児なのです』

 

『? それがどうした?』

 

『・・・・』

 

 ウーサー様は子が無事に、そして卑王を討ち滅ぼせるほど強い因子を持って産まれればそれで良いと考えていた。万全を期したのだから、それだけで良かったのだと。

 

―――少なくともこの時は。

 

『うん?意外と可愛い顔だ。ほら、フスカル。お主も見てみよ。我が子だ』

 

『・・・お戯れを。私は一介の兵に過ぎません。それよりも奥方様に』

 

『それもそうだな』

 

 チラリと見えた赤子の顔は母親似に見えた。父親に似なくて良かったねと、俺は心の中でほっと笑った。

 

 

◇ 

 

 

『―――うーむ。赤ん坊は良いな。良い』

 

『・・・・はあ』

 

『こちらをジッと見てくる聖緑の瞳が何かこう、な。分かるだろう?モルガンも可愛いがやはり小さき子は格別可愛いものだ。そうは思わぬか?』

 

『まあ、・・・・はい』

 

 信じられない事だが父親の眼というのは今までのそれと全くの別物だ。 子が生まれると人間とはこんなに変わるものなのかと、この歳で俺は一つ学んでいた。

 

『そういえばお主は所帯を持たんのか』

 

『御大将を守る事が兵士の職務ですので』

 

『可愛くないなあ。いつもお主は』

 

貴方にだけは言われたくない。俺はこちらを静かに見つめる赤ん坊を横目に思った。

 

 

 

 

 ――赤子が生まれてからというもの、ウーサー様の顔色は日に日に悪くなっていった。・・・理由は分からない。

 

 栄養を付けて下さいよと得意の肉料理を振舞ったのだが、何故か変な顔をされた。俺には理解できなかった。

 

『――兵士、そこを退きなさい』 

 

『これはモルガン様。如何なさいましたか?』

 

『わたくしは妹を見に来たのです。 退きなさい』

 

『申し訳ございません、モルガン様。ウーサー様は誰も赤子に近付けさせるなと仰せでして。・・・ご理解下さい』 

 

『?何か問題があるか、兵士。将来ブリテン王となるわたくしの配下となる者をこのわたくしが見に来て、一体、何が、悪い?』

 

『申し訳ありませんが、我らが大将の御命令です』

 

『……。兵士、貴方お名前は?』

 

『フスカルと申します。モルガン様』

 

『そう、…フスカル。憶えておくわ、ローナルド。未来永劫』

 

 何で俺の名前ってそんなに流通してんの?名乗ってねえよな?

めんどくせえから今度から自分の事ローナルドって言おう。そうしよう。

 

綺麗すぎる眼差しを最後に、モルガン様は二度とここには立ち入らなかった。

 

 

 

 

 

 

『――フスカル。もう時間のようだ』

 

『・・・・』 

 

 その日。 

呼び出された俺がウーサー様の元へ向かうと、そこにかつての王はいなかった。・・・まるで伏した死人がしゃべるかのように、頬の痩せこけた我が大将は口を開いた。

 

『お主と出会って、かれこれ十五年か。・・・今まで楽しいものだったが、我が子達の将来を見ずに死ぬのは無念だ。そうは思わないか、フスカル』

 

『・・・・・』

 

 ―――信じられなかった。

あの日俺をぶっとばし、我が子を自分なりに愛しておられる我が王がまさかこんな。こんな間単に命を諦めてしまうとは。  

 

『あの子はエクターの所に預けた。奴ならば、立派にあの子を育てられるだろう。心配なのはモルガンだが、このブリテンを悪いようにはすまい。・・・しかしヴォーティガーンは強大だ。フスカル、もしお主がこの先暇なら、』

 

『・・・・・』

 

『どうか。我が子を手助けしてやってほしい』

 

 卑王を殺す事が第一。 それが以前までのウーサー王だった。

自分(人間)じゃ勝てない。ならば人外を世に生み出して殺してもらえばいい。俺の大将はそんな人だった。

 

『――分かりました』

 

そんな人が父親の眼をして死ぬ。子を愛する親としてこれからという所で、殺される。

 

そんな運命を誰が与えた。

 

『――貴方の仇を取ってから。貴方の子に尽くします』

 

果たして俺の言葉は聞けたのか。王は最期まで父だった。

 

 

 

 

 

 

【何だ? お前は?】

 

『・・・・・』

 

【何をしにここへ来た。仕官が望みか?】

 

 見たまえ、青ざめた血の空だ。

卑王ヴォーティガーンはいつか見上げた星の空を外套のように纏って、こちらの心臓を止める恐怖の声を出した。

 

『・・・俺はフスカル・ローナルド』

 

そして、俺はウーサー様と初めて会った時のような声が出た。 

 

『てめえを殺しに来た』 

 

【ただの人間風情が。儂(ワシ)を誰だと思っている?】

 

『憎いあんちくしょう』

 

【ハハハハハハハハ! 成る程その威勢その名前、槍(ロン)の一族か。変わらぬな。だが儂は忙しい身なのだ】 

 

『そうか。実はそれを解決できる良い考えが俺には有る。聞くかね?』

 

【ほう。何だ?】

 

俺は槍を持って突っ込んだ。あの日と同じ、こちらを死に誘う星空へ。

 

『今すぐてめえが死ねばいい』

 

 大事なのは間合い、そして退かぬ心だ。

・・・この反抗はこの先何度か続いたが、悲しいかな弱い俺は毎回叩きのめされ、ある日長い昏睡状態に陥った。

 

 そして起きたらアーサー王と名乗る騎士が台頭していて、俺はその御方の陣営に加わり最期まで槍腕を振るう事となる。

 

【ハハハ。―――なんでお前は儂に挑むんだ】

 

『てめえは我が王を殺しただろう』

 

【恥知らずめ、それは一体誰の事を言っておる?沢山いるので分からぬのだが?】

 

『ならその薄汚い命をもって。あの世で我が大将に侘び続けろ』

 

 ・・・生前、俺は心に誓った。

たとえどんな事をしても最期までペンドラゴンの家を守り抜く。敵の剣も槍も斧も弓矢の一発も当てさせねえ。ペンドラゴンに襲いかかる敵は全て俺が滅殺する。

 

・・・人間じゃ敵わないなら、化け物になってでも殺す。

 

『―――この星空を覆い尽くす時まで』

 

 

 

 

 

 

「………彼はキャメロットが落城する最後の一兵になるまで戦い、その最後に死した兵士です」

 

「そして、先王ウーサーの代から仕える最後の一人だ」

 

「・・・・・」

 

「……ねえ。つまり獅子王さん」

 

「・・・つまり、セイバー」

 

「ああ」

 

「…はい」

 

兜にひび割れが入る。ぴしりと。ばきりと。

 

「―――あの人。何歳?」

 

パカリと、割れた。間抜けな音を立てながら。

 

 

―――そこに居たのは老人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




敵の血潮で濡れた肩。地獄の部隊と人の言う。
聖都の天守に、古城の亡霊が蘇る。
グレインの河口、ログレスの都に、化け物と謳われたキャメロット城正門担当守兵隊。
情け無用、命無用の一兵卒。この命、金-89ソリドゥス也。
最も低価なワンマンアーミー。
次回『Final Battle With』
決戦、これを繰り返すが本能か。




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