城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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 以下、特に本編と何ら関係ない前書き。

巷では何十年ぶりかのブロリー復活で大興奮だそうで。かく言う作者もブロリストでして、嬉しい限りです。コンピューターが弾き出したデーターによりますと、宇宙全破壊レベルの方々がいっぱい居る超時空のブロリーならシャモ星どころか宇宙の2つか6つか全部軽くデデーンしてくれる筈です。楽しみですね。そうなったらラ=グースみたいだあ。
収拾つかなくなってきたのでここらで。

ドワォ!







第7話 桃源

 

 

 

 鉄色の敵が悉く消え、肩を落としながら俺は歩く。

太陽が産み落とす影を踏みしめ、真白な理性がこの現実を直視しろと伝えて来ては去る。

 

「・・・・」

 

 眼の前、僅かな一跨ぎ。それが出来ない戦場跡の中で俺は崩れ視る。過去には何の未練も無いという孤影を、白く塗り潰そうとして。

 

「…運命が味方したようですね。貴方が無事で良かった」

 

 逃避という名の独り言を終え、傍で倒れ伏せているガレス卿の胸からは止め処なく血潮が零れ落ちていた。

 

「・・・・」

 

もう止血をしても、恐らくは。

 

「………我が王を。どうか頼みま、」

 

「・・・」

 

俺はこの御方の白い手を掴む。しっかりと、両手で逃がす事無く。

 

「……、汚いですよ」

 

 首を振る。

あの時、俺はガレス卿の瞳を見た。決意の炎に燃え、炭と化した荒野の如き男の瞳を。必殺の意志を全身に込め、絶対の死に吶喊する騎士の姿を。

 

 口から出た言葉は、聞く人が聞けば己が道を貫けなかった者の弁であったが、しかし。

淡く消え往くこの御方が穢れているなんて事を、俺は信じていなかった。

 

「---それはまだ早いな。ガレス卿」

 

降ってきた。いや、降臨された神の言葉に、あらゆる俺が魅入られた。

 

「…!」

 

「・・・!?」

 

!? おお!おおおおお!!!

 

 

王!

 

 

「---私は獅子王。聖槍の担い手にしてヒトの守護者。私には、まだ卿が必要だ」

 

「……そんな、」

 

 我が王がガレス卿に手をかざすと、そこには出血なんて何それ痛いの?たちまち元気なサー・ガレスのお姿が!

 

 円卓の騎士様達は皆我が王が召喚したサーヴァントのようなもの。

つまり魔力的な何かを流し込むなぞ我が王には造作も無いこと!! だって何でも出来てこそ王様だよ治癒の術なんて朝パン焼く前の小麦前って事だよ!!!!

 

「…敵に勝つ為とはいえ、王と騎士達の前で軽挙妄動を犯した事は事実。 我が王よ、何ゆえですか」

 

 何故自分を助けたのかとガレス卿が問う。その瞳は恐怖に濡れ、口元は深く悔恨に湿っている。 

獅子たる王の臣下として、騎士として、先程の自分は誤っていたのではないか。

 

「---卿はかの魔人を打ち倒し、聖地はこの私の物となった。それはひとえに貴公ら騎士、兵達の働きによるものだ。礼を言うのならまだしも、卿らを責めるなど誰に出来ようか」

 

「………。勿体無き御言葉」

 

 いや羨ましいですな~我が王ベタ褒めじゃないですか~。流石はガレス卿。

今回は貴方のお陰で勝てたのですから、まあそれほどのものですよね。

 

「・・・」

 

「---アグラヴェイン」

 

「はッ」

 

「---私は聖槍起動の準備に入る。 兵達を休ませよ。無論、卿らもだ」

 

「有り難き御言葉。早々に」

 

 そう言って般若の如き面(おもて)を俺に振り向かせる鉄壁の益荒男。あれだけの戦闘の後だというのに、些かの疲労すら見せないとは。・・・・すごい漢だ。

 

「そこの貴様、そしてガレス卿」

 

「・・・」

 

「はい」

 

「我が王の命令だ、幕舎に入れ。・・・モードレッド卿はガレス卿の傷の具合を診よ。問題無いとは思うが、何事も念を入れるに越した事はない」

 

成る程、確かにそうですね。俺もそれに賛成で、

 

「あ?ヤなこった」

 

「・・・」

 

「・・・・」

 

 アグラヴェイン卿が、ゆっくりとした動きで片耳を揉んだ。――あ、それやると血行良くなって頭スッキリしますよね。俺も昔はよくやってました。

 

「何でオレがそんな事しなくちゃならねえんだ?そこの三下兵士にやらせりゃいいだろうが。 見た感じボーマンより元気そうだしよ?」

 

「・・・・」

 

 取り付く島が無いと判断したのか。アグラヴェイン卿が弱冠疲れた顔をガレス卿に向けた。

 

「?わたしは別に構いませんが」

 

「――成る程、分かった。 では貴様に頼もう」

 

「・・・」

 

 俺はしっかりと頷く。その間際、モードレッド卿が変な笑顔を見せたが、一体? 

 

「よお、頼んだぜ?」

 

ポンと肩を叩かれる。責任重大だぞって事かな。・・・あのモードレッド卿がこの俺に!

 

「シッカリな」

 

「・・・!」

 

 俺はコクコクと力強く頷いた。

――分かったぞ、これは試練だ!過去(生前)に打ち勝てという、試練と俺は受けとった。兵士の成長は・・・・未熟な過去に打ち勝つことだとな。

 

お任せあれ。

 

「……」  

 

「ガレス卿。今後の事があるので、後で私の所に来るように」

 

「はい」

 

 アグラヴェイン卿がいつもより三割増しでこちらを睨んで去っていく。心配しなくても万事不備無く行いますよ、任せて下さい。 俺はガレス卿と共に幕舎に入った。

 

「・・・」

 

 そこは敵の襲撃に備えている造りらしく、外からは覗かれる事も透けて見える事も無い重厚な幕舎だった。

 

・・・やっと人心地がついたって感じ。休息だ休息!これまでの戦い、ぶっちゃけすげえきつかったゾ。

 

 エール!エール! シードルも良いけどね。ホップだラガーだなんて蛮族の飲み物!悪い文明!

めっちゃ美味いらしいけど。

 

「……よいしょ」

 

 ガレス卿が椅子に座る。 さあ!鎧兜を取ってゆっくりとお話もとい傷の確認を致しましょう!!

今日一番の戦勲は間違いなくガレス卿に有り、そんな御方の介添えなんてこの兵C!感無量であります!

 

 ・・・いいかい?想像するまでも無いけど、長い死闘が終わった男同士ってのは友情が生まれるものなんだよ。

それは見えるんだけど見えないモノ。少なくとも俺は今それを感じてる。

 

 しかもあと一歩でガレス卿は王と皆の為に死ぬ所だった。だからそんな御方を労ってあげたいと思うのは兵士だろうが騎士様だろうが関係無しってもんだろうがよ。

 

さて。

 

「・・・・」

 

「? 貴方は取らないのですか?」

 

―――っえ、あれ。取れない。

 

「・・・・」

 

「………?」

 

 どうやっても兜が取れない。つーかさっきまで自分の声がくぐもって聞こえてたのに、それすら聞こえないんだけど。

 

首、ある。

 

喉は、ある。のに声が出ない。

 

「・・・・」

 

「…………」

 

 やばい。 この眼、こいつ私の想像以上に変な奴だと思われてる。

ガレス卿!違うんですよ!!円卓の騎士にしてかのサー・ガレスを無視するなんて、我が兵道に背くあるまじき事!

 

・・・どうやって意思疎通すりゃええねん。

 

あ。

 

「………、…」

 

 違うんですこれはただの愚痴でしてっ!て声出ないんだったならばテレパシー!! どうか届け!この想い! 

 

ゼアイズアリーズン!

 

「・・・」

 

「……っ」

 

 ・・・ガレス卿が、フイッとお顔を背けてしまわれた。

 

 おお兵Cよ、想いが届かないとは情けない。

――知ってるかな?奇跡って、起きないから奇跡っていうんですよ。 そして奇跡が起きなかった者は、ずっと呪われたまま。らしい。

 

俺の、罪は、重いッ!!!

 

「・・・・」

 

「ああ成る程。勝って兜の緒を締めよ、でしたか?流石は我が王の兵ですね」

 

見習わなければ、フンスっ!と両の拳を胸の前で握り締めるサー・ガレス。

 

「・・・・」

 

 ち―――違う。 違うのです!ガレス卿!!!俺はそんな出来た兵Cでは・・・・、―――あ?

 

「・・・・」

 

「?」

 

 あれれ?ついに頭だけじゃなく眼玉もおかしくなったのかな? ボーマン(戦場において一滴も血痕が付着しない白い手の意)な麗しの御方の胸に、見覚えの無いそれでいて緩やかな胸部装甲が見えるぞ?

 

先程この御方鎧脱いだ筈なんだけど。

 

おかしいな?おかしいぞ?

 

「・・・。・・・・」

 

「……」

 

 ・・・あ、よし解かった!俺はポンと掌に拳を叩き付けて納得させた。流石は円卓の騎士の御一角!常在戦場の心得ってやつで常に防具は身体に身に着けておられるのだ男らしい!正に男の中のおと、

 

「男だって言ったっけ、あたし」

 

「・・・・―――」

 

 どこかモードレッド卿に似た、くすっと笑うそのお顔があまりにも眩しくて。

 

 俺の意識はここで途絶えた。

 

―――ガレス卿、平にご容赦を。私は、知らなかったんです。

 

 

 

 

 

 




隔離の為の建設。保存の為の取捨。
歴史の最果てから、連綿と輝く誰かの正義。
ある者は悩み、ある者は気付き、ある者は自らに絶望する。
だが人間は絶える事なく続き、また、誰かが呟く。
「---汝は選ばれた。正しきヒトよ、入るが良い」
次回『ユートピア』
神も、ピリオドを打たせない。




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