提督「...風邪引いて喉やられて散々だったです(泣)」
叢雲「...災難だったわね(汗)」
ー登場人物ー
長門(Lv.99) 艦娘学校教官。いつも駆逐艦たちが安全に仕事ができるように
陸奥(Lv.99) 艦娘学校教官。艦隊の良心。いつも変態行動をしている長門を抑えられる唯一の鑑。
瑞鶴(Lv.2) 艦娘学校生徒。僚艦として駆逐艦は好きだがロリコンではない。
瑞鳳(Lv.4) 艦娘学校生徒。瑞鶴どこ行っちゃったのー!!!
赤城(Lv.18) 艦娘学校生徒。かつての南雲機動部隊の旗艦経験からか非情な判断も躊躇がないが、戦場以外ではほんわかしている。
お昼を食べて少し眠くなった頃、瑞鶴は午後の空きコマを堪能していた。
瑞鶴「それにしても広いわね」
名古屋鎮守府と艦娘学校。2つの敷地はだいたい同じくらいの広さだからトータルで
鎮守府の埠頭へ行ってみると小さい子たちが大きな荷物を運んでいた。ちょうど遠征艦隊が帰還した頃なのだろう。
大変そうだなーと見ていると、瑞鶴は突然袖を引っ張られた。
瑞鶴「うわっ!!だ、誰!?」
茂みまで引っ張られていくと押し倒されて馬乗りにされ、問い詰めるように話しかけられた。
??「貴様、ずっと駆逐艦たちを見ていただろう!? さてはストーカーだな!?」
頭に二本のツノの生えたカチューシャに割れた腹筋が目につく。女性らしく程よく割れた腹筋は小さな6つの丘を作っていた。良いシックスパックだ。
ってそんな場合じゃない。
瑞鶴「私はただお散歩ついでに歩いていたら遠征艦隊が目に入っただけよ! あなたこそなんなの!?」
??「嘘を言え、貴様は可愛い駆逐艦たちを視姦していたのだぞ!!」
瑞鶴「だーかーら、そんなんじゃないって!何度言ったらわかるのよ!!」
??2「長門ー!? どこにいるの? あと少しで空母級の授業よー!!」
茂みから少し離れたところで人を呼ぶ声がした。
??「ああ、陸奥か。いや、実はこのストーカーを...」
陸奥「長門、やっと見つけた。....って、艦娘学校の生徒じゃない!? 何してるの!?」
長門「いや、だからストーカーを「そんなことしてるのは全艦娘中あなただけよ!」...む。そうか」
陸奥教官「いいから、離しなさい。...長門が迷惑かけたわね。私は陸奥。艦娘学校の教官よ。あなたは?」
陸奥教官は私を立たせながら聞いてきた。
瑞鶴「柱島鎮守府出身の空母・瑞鶴です。陸奥教官、ありがとうございました」
陸奥教官「あら、柱島の子だったのね。...向こうの私も元気にしてる?」
瑞鶴「ええ、あいかわらずお腹はゆるいみたいですけど」
陸奥教官はふふと笑い出した。
陸奥教官「そう、あの子も相変わらずね。....そういえば、次の時間あなたは私たちの授業でしょ?『指揮官学』」
瑞鶴「ええ、そうです」
陸奥教官「なら一緒に行きましょうか」
こうして瑞鶴は長門・陸奥両教官と共に教室に向かった。
ー空母級の教室ー
瑞鶴が教室へ入っていくと瑞鳳が駆け寄って来た。
瑞鳳「ああ、良かった。授業時間になっても来ないからどこかで迷ったんじゃないかってみんな心配してたんだよぉ」
半泣きの瑞鳳に瑞鶴は謝る。
瑞鶴「ごめんね、瑞鳳。ちょっと長門教官たちに捕まっちゃってて」
瑞鳳「え!?」
そんな時瑞鶴の後ろから長門教官の声が聞こえて来た。
長門教官「貴様ら、授業時間はもう始まっている。早く席につけ!」
全員いそいそと席に着いていく。全員が着席したことを確認すると
長門教官「私が『指揮官学』の担当教官の長門だ。そしてこちらにいるのが補佐の陸奥だ。私は名古屋鎮守府の総旗艦を務めているため、事情によっては授業ができない時もある。その時はこちらの陸奥が代わって授業する。皆、顔を覚えておいてほしい」
長門教官「さて、授業にはいろう。知っている者もいるだろうが、艦隊の指揮権は基本提督が持つ。しかし、提督の判断が難しい時、指揮権は艦隊の旗艦へと委譲される。それゆえ将来旗艦となりうる貴様らにも指揮官学を修める必要がある」
長門教官は続けた。
長門教官「まず指揮官に必要なものは仁・義・礼・智・信の5つだ。貴様らにはこの授業でこの5つを身につけてもらう」
そう言うと長門教官はチョークを取り出し、黒板へ書き出した。
「まず仁とは人を思いやる心。すなわち仁愛の精神だ。旗艦たるもの艦隊のみんなを思いやらずして艦隊は成り立たない」
「次に義とは義理人情のことをいう。義理や筋を通さねば旗艦として皆に信用されなくなってしまう」
「次の礼とは礼儀のことだ。礼儀なくして人にあらず。これは艦娘にも共通することは貴様らも重々承知しているだろう」
「次の智とは知性のことだ。相手の謀略を読み解き、自らの艦隊を勝利へ導くことは頭の悪い奴にはできない。仮に知性に自信がないなら、少なくとも艦隊の参謀程度は自分で用意できるようにならなければならない」
「最後に信とは人を信用することだ。貴様たちが旗艦なった暁には、艦隊の皆は貴様らに命を預けている。命を預かった身として皆を信ぜずしてどうやって艦隊運営ができようか」
長門教官「私はこの5つのことを前の体、今は米国の海中に没している『艦』として在りし日に山本五十六司令長官から教わった。皆も名前は知っているだろう」
長門教官「私はこれらのことを実践を通して考えてもらいたいと思っている。これから行う授業はすべてグループワークだ。毎回課題を与えて皆で議論してもらう。その後全員で意見をまとめてから授業を終えたいと思う」
その時、赤城が手を挙げた。長門教官が発言を許可する。
赤城「果たしてそれを、我々が議論する意味があるのでしょうか? 私たちは提督の指示の元にすべての行動を決定されています。我々が考える必要はないのでは?」
長門教官「ならば貴様は一刻の猶予もない時にまで提督の指示を受けるのか?」
長門教官は赤城をまっすぐ見てそう言った。
長門教官「確かに、すべての提督は艦隊が出撃している時もしっかり艦隊を見て指示しているということは貴様も知っていると思う。だが、あくまで提督に伝わるのは貴様らが無線で伝えた内容や、わずかな計器を頼りに検出された値だけだ。しかし、戦場とはそのようなものだけで決まるわけではない。時々刻々と変化する戦場では、やはり現場にいる者でしか判断できないものがある。たとえそれが自分たちがしたくないような判断であってもだ」
赤城は表情を曇らせた。おそらく自身の雷撃処分の時のことを思い出したのだろう。
長門教官「そのため、多くの提督はわずかなデータを元に判断するよりも現場の判断に任せることが多い。そのためにも
赤城「はい...」
赤城はそれ以上何も言わなかった。
長門教官「さて、話が少し逸れたが今回はこの作戦について考えてみようと思う」
そう言うと長門は一つのキーワードを書いた。「旅順港閉塞作戦・第二作戦」である。
この作戦は1904年3月23日に、ロシア海軍のバルチック艦隊と旅順艦隊が合流することを妨害するため、日本海軍が中国の旅順港を閉塞させようという作戦である。最終的に、この作戦は失敗に終わったが、その過程が物議を醸した。
この作戦を指揮した広瀬武夫少佐(当時)らは旅順港を閉塞させるため湾の入り口に爆弾を仕掛けた船を並べた。ところが作戦が8割方終わろうとした時、広瀬少佐たちはロシア海軍に見つかり、一刻も早く船を沈めてその場を離脱しなければならなくなった。
しかしこの時1人の海兵がまだ脱出用の船に戻って来ておらず、爆破がためらわれる事態となった。結局、広瀬少佐は自身で、その海兵を見殺しにする形で船を爆破し、その後広瀬少佐もロシア海軍の砲撃により戦死した。
結局3次まで実行した旅順港閉塞作戦は全作戦で失敗したが、旅順艦隊は日本陸軍が旅順を陥落させる前に自沈、バルチック艦隊はあの有名な「日本海海戦」において日本海軍に打ち破られている。
今回の論点は広瀬少佐の指揮官としての判断である。
これについて艦娘たちは賛成派・反対派に分かれて議論を始めた。
賛成派は赤城、加賀、葛城など。
反対派は瑞鶴、瑞鳳、雲龍、千歳など。
司会・進行は陸奥教官が務める。
陸奥教官「まず、賛成派の意見から聞かせてもらえるかしら」
赤城「では、賛成派を代表して呉鎮守府出身の赤城が発表します。まず、軍事活動に従事している者は皆すべて命を落とす危険性を承知で活動しており、海軍任務の遂行は命よりも優先されるべきものです。よく『命さえあればやり直せる』と聞きますがこの場合はそれに限らないでしょう。実際に、前後の歴史を見てもこの時にやっておかなければ、いずれバルチック艦隊と旅順艦隊は合流してしまい、歴史に名高い日本海海戦も日本の敗北となっていたかもしれません。ですので、広瀬少佐は間違った判断はしていないと考えられます」
陸奥教官「なるほど、日本の状況を鑑みるとそれは十分に考えられるわね。では次に反対派の意見を聞かせてもらえるかしら」
瑞鶴「では、反対派を代表して柱島鎮守府出身の瑞鶴が発表します。そもそもこの旅順港閉鎖作戦は全作戦において失敗しています。つまり、命がけで旅順港を塞ぐよりも、成り行きとしてバルチック艦隊を迎え撃つほうがよかったのではないでしょうか? この時の広瀬武夫少佐は日本海軍では主要人物であり、ここで不名誉になっても挽回の機会は与えられていたはずです。確かにこの場合、旅順艦隊が日本海軍の背後を突かれる可能性があったため当時の人からすれば賭けだったでしょうが、赤城さんが言ったのとは違って『命さえあればやり直せる』は十分通用すると考えられます」
それから賛否両派は一時間以上も議論を重ねた。
議論を静かに傍観していた長門教官が口を開いたのは、授業があと10分で終わろうとした頃だった。
長門教官「皆、議論ご苦労だった。初めてにしてはいい議論ができていたと思う。さて今回の議論だが、これは指揮官の倫理性について貴様らに考えてもらうテーマだった」
長門教官「今回の場合、広瀬少佐の判断だけで善か悪かの答えは出ない。しかし、その後の影響を考えることはできる」
長門教官は続けた。
長門教官「仮に事実に反して、逃げ遅れた海兵を見殺しにせずに助けに行っていたとしよう。そうなれば一人の海兵を探している間にロシアの旅順艦隊の警備隊に広瀬少佐たちは発見され、脱出艇に乗っていた日本海軍の兵たちは悉く捕縛か射殺されていたかもしれない。少なくとも無事な者は一人としていないだろう」
長門教官「指揮官は往往にして、非情な判断を迫られる。たった一人のために全員を犠牲にするか。それとも全員の命を守るために一人の命を犠牲にするか。...とても辛い判断だが指揮官は全員の命を預かっている以上判断せざるを得ない。今回の作戦では広瀬少佐は脱出艇に乗った海兵たちの命を助けるため、指揮官として、残った一人の海兵の命を犠牲にする判断をしたのだろう」
長門教官「しかし、今回はこの判断が正しかったとしても、場合によっては艦隊全員で捜索しなければならない。見殺しにするかしないかはケースバイケースだということを皆覚えておいてほしい」
クラスはシーンと静まり返る。
長門教官「...さて、今日の授業の最後にこの言葉を覚えて欲しい」
そういうと長門教官は再び黒板に書き出した。
長門教官「これは1945年2月、日本陸軍の硫黄島守備隊の指揮官・栗林忠道中将が守備隊員を鼓舞する演説の中で言ったものだ。『余』とは栗林中将その人を指し、『諸子』とは硫黄島守備隊22000人のことを指す」
長門教官「先ほども言ったが、一刻の猶予もない時、旗艦は非情な選択でもそれを行わなければならない。そしてその判断を真っ先に実行するのは、旗艦である貴様たちでなければならない」
長門教官「つまり、艦隊行動において『先頭』にいるのは旗艦である貴様たちだということだ。貴様たちに艦隊の命がかかっている。そのことを忘れないでほしい」
そういうと長門・陸奥両教官は授業終了を宣言し、2人は教室を後にした。
瑞鶴「...重いわね。旗艦って仕事は」
瑞鳳「うん....だから私たちはしっかり学ばないと。みんなを沈めないために強くならなくちゃ」
瑞鶴「そうね」
そういうと瑞鶴は自身が強くならなければならないことを強く意識した。身体的にも、精神的にも。
少し重い話でしたね。普段生活していると海の向こうにいる脅威(特に北の将軍様)の存在を忘れてしまいがちですが、こういう脅威から守ってくれているのが陸海空の自衛隊の皆さんなんです。
自衛隊も他国の軍隊同様、防衛のために戦闘行動に出ることもありうるわけで、このような判断を迫られることがあるんですよね。本当に頭の下がる思いです(安全なところで何言ってんだと言われてしまいますが)。
次回は割と軽めのお話です。
【次回予告】
ちび時雨「勉強ってなんでするの?」
子供達の永遠の疑問。「なんで勉強するのか」
次回、この答えを求めてちっちゃい駆逐艦・ちび時雨が艦娘学校の教官たちに突撃します!!
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提督「僕の出番は?」
叢雲「ないわよ」
提督「orz」