名古屋鎮守府付属艦娘学校   作:gifu-no-hito

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10回記念! 今回は特別テーマでお送りします!!


子どもたちの永遠の疑問。「なぜ勉強するのか」

その答えを求め、今回はちっちゃい駆逐艦・ちび時雨が先生たちに突撃します!!

※幼児艦娘と母親艦娘の設定は◯のような赤子様の作品「無冠の英雄 隻腕の長門」(ID:144943)よりご本人の了承を得てお借りしています。


ー登場人物ー

ちび時雨(練度評価なし) 名古屋鎮守府に住んでいるいわゆるバグ艦。見た目は人間の7歳児。地方の鎮守府で建造されて以来あらゆる鎮守府をたらい回しにされて来たせいか、名古屋鎮守府に来た時はふさぎ込んでいた。しかし、叢雲の献身的な世話により元の元気な女の子に戻りつつある。艤装がないため海上を走ることができない。
最近、艦娘学校の駆逐級に入学した。自分より大きい艦娘をみるとすぐに「だっこ!」と言って甘える癖がある。

叢雲(Lv.99) 名古屋鎮守府の初期艦にして秘書艦。ちび時雨の母親役。秘書艦として多忙ながらもたった一人の娘を育てている。

提督 名古屋鎮守府司令官にして艦娘学校校長。ちび時雨は実の娘のように可愛がっているが、ちび時雨には「おじちゃん、クサい!!」と煙たがられている。まだ加齢臭する歳じゃないのに。

時雨(Lv.85) ちび時雨とは別に存在する名古屋鎮守府所属の艦娘。ちび時雨には「おねえちゃん」と呼ばれている。

艦娘学校教官s 艦娘学校の教官たち。特殊な生い立ちのちび時雨を見守っている。長門が抑えきれないようだが、陸奥がいつも縦四方固めで抑え込んでいる。

駆逐級のクラスメート 全国いろいろなところから駆逐艦が集まっている。全クラス中最もメンバーが多く、20人を超える時も。


010-1 なんで勉強するの? ー子どもたちの永遠の疑問ー (前編)

 

「おかしゃん、なんでしぐれはおべんきょうするの?」

 

 

 

「は?」

 

 

 

ここは名古屋鎮守府・食堂。名古屋鎮守府に在籍する艦娘・妖精・提督が利用する大規模食堂だ。今は朝7時30分。いつもの制服の叢雲とミニチュアの白露型制服を着ているちび時雨は二人並んで一番奥の長テーブルで朝食を摂っていた。

 

 

叢雲「しぐれは艦娘学校きらい?」

 

ちび時雨「ううん、だいすき」

 

叢雲「ならどうしたの? 勉強嫌になった?」

 

ちび時雨は唇を尖らせてうーんと悩む。

 

ちび時雨「おべんきょうはすきだけど、なんでこんなことしてるのかな? しぐれ、もっとみんなとあそびたい!!」

 

ちび時雨は最近、名古屋鎮守府の艦娘である電や暁たち第6駆逐隊と仲良しなのだ。最近の流行りはサッカーらしい。

 

 

叢雲は少し悩んだ。

 

叢雲「しぐれはもっと遊びたいのね。...でも、今のお勉強はしぐれが大きくなってから絶対に必要になるの。だから今はちゃんと鹿島先生の言うことをきいて、宿題もやって、それからみんなと仲良く遊びなさい」

 

ちび時雨「はあい....」

 

叢雲は曖昧な回答しかできなかった。そこへ朝食のトレーをもった時雨がやってきた。

 

時雨「おはよう、叢雲、ちびしぐちゃん」

 

ちび時雨は鎮守府のみんなに「ちび時雨」を略して「ちびしぐ」と呼ばれている。

 

叢雲「おはよう、時雨」

 

ちび時雨「おはよう、おねえちゃん!!」

 

時雨がちび時雨の隣に座ると、唐突にちび時雨が質問する。

 

ちび時雨「ねえ、おねえちゃん」

 

時雨「ん、なに?」

 

ちび時雨「なんでしぐれはおべんきょうするの?」

 

時雨は飲んでいたお茶を吹き出した。

 

時雨「ゲホッ、ゲホッ、ちびしぐちゃん、突然どうしたの?」

 

叢雲と時雨はテーブルに吹き出したお茶を拭く。叢雲は時雨に事情を説明すると、

 

時雨「なるほどね。ちびしぐちゃんはもっと遊びたいかあ....。なんで勉強するのか、かあ」

 

 

時雨は少し考えた。時雨はこう見えても艦娘学校駆逐級卒業試験をトップの成績で卒業している。時雨本人も勉強は提督が着任してから始めたが、やっていくうちに勉強が好きになっていった。

 

時雨「うーん、私の場合は勉強が好きだから勉強してたからかな? あの提督と一緒に勉強したら楽しくなってね。気がついたら自分で勝手に勉強してたよ」

 

ちび時雨「ふーん、そうなの」

 

ちび時雨はあまり納得できなかった。

 

叢雲「そのことはお母さんたちじゃわからないから、先生たちに聞きなさい」

 

ちび時雨「うん!」

 

そう言うとちび時雨は朝食のパンに手を伸ばした。

 

 

 

 

ー午前8時15分ー

叢雲に送られて艦娘学校に着いたちび時雨は、早速授業が始まるまで外へ遊びに行く。今朝は艦娘学校の級友たちと外へドッジボールをやりに行くのだ。

 

 

ちび時雨「あられちゃん、ぱす、ぱーす!!」

 

 

ちび時雨はその小柄な体とバグ艦娘特有の俊足を活かして逃げまくる。ちび時雨側のコートは、ちび時雨だけが残っていた。

 

 

荒潮「もー、ちびしぐちゃん強すぎー!!」

 

ちび時雨「あらしおちゃん、よわすぎー!!!!」

 

 

荒潮がぼやくと、ちび時雨がツッコミを入れる。いつもの光景だ。

 

 

荒潮「いったなー! 生意気なおチビさんには、こうだー!!」

 

ちび時雨「キャッキャッキャ!」

 

 

荒潮がちび時雨をグラウンド中追い回す。荒潮が2m走ったら、ちび時雨はもう10m先にいる。

荒潮はちび時雨に一向に追いつけない。

 

 

 

 

 

 

鹿島「駆逐級のみなさーん!! もうすぐ授業が始まりますよー!!」

 

 

 

鹿島先生がいつものように生徒たちを呼びに来る。生徒たちもわらわらと集まってきた。

 

朝潮「先生、おはようございます!!」

 

荒潮「おはようございます!」

 

口々に朝の挨拶をする駆逐艦たち。そしてちび時雨も走っている足に急ブレーキをかけ、トコトコと鹿島先生に近づいてきた。

 

ちび時雨「せんせえ、だっこ!!」

 

鹿島先生「ちびしぐちゃん、先生はお母さんじゃないのよ」

 

ちび時雨「だっこ!! だっこ!!」

 

こう言い出すと、ちび時雨は頑として言うことを聞かないのだ。

 

鹿島先生は仕方なくちび時雨を抱き上げる。それに呼応して他の駆逐艦たちも一斉に鹿島先生に飛びつく。鹿島先生は既に大ト●ロ状態だ。

 

鹿島先生「もう、みんなしょうがないんだから」

 

そう言って鹿島先生はちび時雨を下ろし、ほかの駆逐艦たちも一人ずつ剥がしていく。

 

鹿島先生「みんな、教室に戻りましょうね」

 

駆逐艦s「はーい」

 

 

 

 

4月13日金曜日

 

駆逐級時間割

 

1限目( 9:00〜 9:45) 国語

2限目( 9:50〜10:35) 理科

長休憩(10:35〜11:00)

3限目(11:00〜11:45) 数学

4限目(13:00〜13:45) 射撃実習

5限目(13:55〜14:40) 射撃実習

6限目(14:50〜15:35) 射撃実習

 

ー1限目・国語ー

 

駆逐艦s「妙高先生、おねがいします!!」

 

駆逐級の1日が始まる。最初は国語だ。

 

妙高先生「はい、お願いします。今日はお手紙の書き方を練習しましょうか」

 

そう言うと妙高先生は罫線付きの色紙を渡し始めた。小さな女の子向けらしく、キャラやイラストがプリントされている。

 

荒潮「ちびしぐちゃん、キ●ィとポムポ●プ●ン、どっちがいい?」

 

ちび時雨「き●ぃーちゃん!!」

 

ちび時雨は嬉々として受け取る。

 

妙高先生「今日は皆さんの鎮守府の提督にお手紙を書いてもらいます。書く内容はなんでもいいです。ここに来てからあったこととか、今楽しみにしていることとか...」

 

如月「それとも、提督に聞いてみたいこととか?」

 

妙高先生は微笑んで「それでもいいですよ」という。ちび時雨は何か閃いたようだ。

 

妙高先生「書き方は前の授業でやりましたね? このお手紙は書き方に沿って、皆さんの気の向くままに書いてください。では、始めてください」

 

 

ちび時雨は迷わず書き、妙高先生の元へと向かっていった。

 

妙高先生「あら、ちびしぐちゃん。もうかけたの? 早いわね」

 

ちび時雨「おじちゃんにききたいことをかいてみた」

 

妙高先生「どれどれ...? 『おじちゃんへ なんでしぐれはおべんきょうするんですか? おしえてください。 しぐれ』」

 

妙高先生は少し頭を抱えた。

 

妙高先生「ちびしぐちゃん。お手紙だからもっと自分のことを文章にして伝えなきゃダメよ。例えば、『今学校ではサッカーが流行ってます』とか『昨日は駆逐級のみんなでお芋を焼きました』とか...」

 

ちび時雨「しぐれのことはおかしゃんがいつもおじちゃんにはなしてるってきいたよ? おじちゃん、しぐれのことみんなしってる!!」

 

妙高先生「そうね...。確かに叢雲さん(お母さん)が全部喋っちゃうわよね」

 

そういうとちび時雨はあることを思い出す。

 

ちび時雨「ねえ、せんせえ!」

 

妙高先生「ん、なに?」

 

ちび時雨「しぐれはなんでおべんきょうするの? おかしゃんじゃわからないからせんせえにきいてって、おかしゃんが」

 

妙高は苦笑いをした。

 

妙高先生「なんでお勉強するかですか。難しい疑問ね...」

 

そういうと妙高先生は語り出した。

 

妙高先生「ちびしぐちゃん。大人になったらいろいろなことを考えなくちゃいけないの。例えば『あのスーパーじゃ豚肉が安いけど、こっちのスーパーじゃ牛肉が安い』。ちびしぐちゃんはどっちのスーパーでお買い物する?」

 

ちび時雨「ぎゅうにくをかう!!」

 

妙高先生「...それはなんで?」

 

妙高先生は少し真面目な顔をした。

 

ちび時雨「だって、うしさんおいしいもん!!」

 

妙高先生「そっかあ...。でもね、ちびしぐちゃん。その時牛肉と豚肉を比べたら豚肉の方が安いかもしれない。今持っているお金じゃ牛肉は買えないかもしれない」

 

妙高先生「そうなったらちびしぐちゃんはどうする?」

 

ちび時雨「ぶたにくをかう...?」

 

妙高先生「そうね、ちびしぐちゃんは『豚肉を買う』という判断をしたけど、ほかにも『今はお肉を買わない』とか『お店の人に頼んで値切りしてもらう』なんて選択肢がある。ちびしぐちゃんはお肉を買うだけでいろいろなことを考えなくちゃならないの」

 

ちび時雨「へええ」

 

妙高先生「お勉強はそういう『考える力』を育てるところなの。いろいろな選択肢の中で今の自分にあった一番良い選択肢を選び取る力をお勉強を通して鍛えてるのよ」

 

ちび時雨「そーなんだあ」

 

ちび時雨は妙高の話に少し納得したようだった。

 

妙高先生「さ、ちびしぐちゃん。お手紙はもっと文章にしてから書いていらっしゃい。提督に聞きたいことをこのような一文じゃなくて、今自分がどのように思っているのかをつけて書くと提督もわかりやすいと思うわ」

 

ちび時雨「はーい」

 

こうしてちび時雨は授業時間中いっぱい頭を悩ませて、用紙全面を埋めることにした。

 

 

ー2限目・理科ー

 

1限目が終わってから束の間の休憩を挟み、駆逐級の面々は理科室へ移動した。

 

駆逐艦s「足柄先生、おねがいします!!」

 

足柄先生「はい、お願いします。今日は『テコの原理』をやるわよー!!」

 

元気にそういうと足柄先生は横になっている棒の中心の部分が動くT字状の器具と分銅を取り出した。駆逐級の面々は先生の机の周りに集まって話を聞いている。

 

足柄先生「まず右の腕に分銅をぶら下げると、右側に棒が傾く」

 

足柄先生「同じように、左側に同じだけ中心から距離が離れた位置におなじ重さの分銅をぶら下げると...」

 

足柄先生「棒が水平になりまーす!!」

 

駆逐艦s「おおー」

 

我々大人たちからみたらなんてことない実験。だが初めて見る子供たちは興味津々だ。

 

足柄先生「このように重りとぶら下げる腕の長さによって棒が水平になることを『力の釣り合い』と言うの。...さて、いつもは実験して終わりだけど、今日はここから一歩進んで数学的な話をしましょうか。みなさん席に戻ってください」

 

そういうと足柄先生は黒板で説明を始めた。

 

ちび時雨は数学がまだわからない。いつものように窓の外を見始めた。

 

足柄先生「コラ、ちびしぐちゃん!! 先生の話聞いてる!?」

 

ちび時雨「せんせえ。しぐれ、まだすうがくわかんないよお」

 

足柄先生「...うーん。まだわからないかあ。文字式やってないから難しいかしら」

 

足柄先生は悩み出した。

 

ちび時雨「ねえ、せんせえ!」

 

唐突に質問するちび時雨。足柄先生は少し驚いたようだった。

 

足柄先生「もーびっくりした。どうしたの? ちびしぐちゃん」

 

ちび時雨「なんでしぐれはおべんきょうするの?」

 

足柄先生「えっ!?」

 

足柄先生は突然のことに動揺が隠せない顔だ。

 

足柄先生「なんでって...。今やっているお勉強は戦場で使う知識だからよ」

 

そう言うと足柄先生は全員に向き直って話し始めた。

 

足柄先生「ちょうど良い機会だし、今やっているお勉強がどんなところに役に立っているか、皆さんで考えて見ましょうか」

 

足柄先生「今やっている理科の内容、これは難しい言葉で『古典力学』と呼ばれるものよ。古典力学では物体に力を加えた時の変化を見ることが多いの。例えば、物体を投げるとどういう風に飛んでいくのかとか、そもそもこの物体を決めた距離だけ飛ばすにはどれだけの力で投げれば良いのかとか」

 

足柄先生「そういうことが計算するだけでわかっちゃうの」

 

初春「それが、発射された砲弾の軌道だったり、必要な爆薬の量を算出したりできるのじゃろ?」

 

足柄先生「ええ、そうよ。よく勉強しているわね」

 

ちび時雨にはよくわからなかった。だけど戦いで役に立つということだけわかった。

 

足柄先生「ちびしぐちゃんも、そのうち艤装が持てるようになったらわかると思うわ。だから今のうちに理論だけでもお勉強しておきなさい」

 

そう言うと足柄先生はちび時雨に理解できない難解な話を始めた。

 

ー昼食時ー

 

艦娘学校の教官たちはみな名古屋鎮守府所属なので食堂は鎮守府の方を利用する。妙高型4姉妹は午前の出撃を終えた羽黒と合流して食堂で昼食を摂り始めた。

 

足柄「今日の授業でちびしぐちゃんに難しいことを聞かれたわ」

 

妙高「それって、『なんでお勉強するの』ってこと?」

 

足柄「そうよ...って妙高姉も聞かれたの?」

 

妙高「うん」

 

それから足柄はさっきの授業のことを話した。

 

那智「あのチビにも思うことはあるんだろうが、勉強はやってもらわなくてはな」

 

羽黒「そうですね...。でも姉さんたちも一度は思ったことがあるんじゃないですか? なんで勉強するのか」

 

妙高「私、提督に初めて会った時それを思ったわ」

 

那智「それな」

 

足柄「私は落ちこぼれの時はずっと考えていたわ」

 

羽黒「でも、こうして教官になる(時が経つ)と忘れてしまうものなんですね、『初心』」

 

足柄「ええ、忘れないようにしないとね」

 

妙高型の席は少ししんみりした雰囲気になってしまった。

 

那智「ええい、この話はまた後だ! とりあえず、次の時間は私の授業なんだ。プレッシャーかけるのやめてくれ!!」

 

妙高「あら、ごめんなさい。余計なお世話だったかしら?」

 

足柄「那智姉、次の時間ちびしぐちゃんの標的にされちゃいなさいよ〜」

 

那智「二人ともからかっているのか!?」

 

羽黒「那智姉さん顔赤いですよ〜? 動揺してるんですか〜?」

 

姉妹3人にからかわれる那智であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




TIPS:
・艦娘学校生徒は艦種ごとに定められた制服を着用しなければならない。
・艦娘学校では教官を、駆逐級・潜水級のみ「先生」呼称を容認しているが、それ以外は「教官」と呼ばなくてはならない。
・艤装を持たない艦娘は「遠征実習」「射撃実習」を免除される(ちび時雨だけの特例)。


長くなりそうなので後編を作りました。そのうち、ちび時雨が主人公のスピンオフを作ろうと思います。



ーそれぞれの主張ー


叢雲:将来必要になるから

時雨:やっていれば、楽しくなるから

妙高:判断力を育てるため

足柄:道具として必要だから(そのうちわかるから)

あなたの納得のいく説明はあったでしょうか? 後編へ続く。
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