足柄は最後の試練を乗り越えることはできるのか!?
Road to Legend -伝説への道- 最終話
叢雲「いったいアイツはいつになったら帰ってくるのやら」
大淀「叢雲さん、なんか提督の奥さんのようなこといってますね(笑)」
叢雲「はあ!? 誰がアイツの奥さんよ!!」
調子が出て来た足柄は次第に正答率を伸ばしていった。
2日目 4割5分
3日目 6割
4日目 6割5分
5日目 8割
6日目 9割
ついに7日目にして全問正解を叩き出した。引っかかりやすい漢字の読み書きもコンプリートし、もはや足柄に敵なしと思われた。
その時だった。
提督「よーし、じゃあ本番さながらの模試を受けてみようか」
足柄「ええ、勝利が私を呼んでいるわ!!」
足柄は完全に有頂天だった。しかし提督はこの事態を密かに危惧していた。
試験範囲は小学生漢字全範囲で読み10問、書き10問の合計20問。この前やった試験形式と全く同じだ。
提督「じゃあ試験時間は10分。よーい、はじめ!」
試験用紙を表に向けて解きだそうとしたときだった。足柄の脳裏にふと羽黒の顔が浮かんだ。
足柄(今は羽黒のことを思い出しちゃダメ。考えちゃダメ)
しかし一向に筆は進まない。どうしちゃったの、私。
足柄「....うう、グスン。うう...」
提督「どうした足柄?」
足柄「ダメ。どうしても羽黒の顔が浮かんじゃう。今は考えないようにしたくても、羽黒が自分をあざ笑っている顔が頭から離れないのよ」
トラウマとはふとしたことが引き金になって起こるものだ。しかし足柄にはこのトラウマは乗り越えてもらわなければならない。
最後の試練だ。
提督「辛いだろうが、ここが踏ん張りどころだ」
足柄「ええ、わかってる。わかってるわよ」
足柄は再び試験問題と格闘し始める。
少し解いては休み、また解いては休み。
結局足柄は最初の5問を解くことが精一杯だった。
ーその夜ー
提督「明日は少し気分を変えて、数学の方をやってみようか」
足柄「そうね、今日の模試だけでかなり消耗しちゃったわ」
提督「足柄は漢字と数学、どっちが得意?」
足柄「うーん、前は数学の方が得意だったけど、今は同じくらいかな。でも気分的には数学をやってみたい」
提督「そうか、じゃあ明日は小学生範囲全部をやってみようか」
こうして方針転換した二人だったが、この方針転換が思わぬ結果を招くとは、このとき二人は思いもしなかった。
ー翌日ー
提督「じゃあ、漢字の時と同じように数学もPDCAで回していこうか。解説読んでわからなくなったら質問してね」
足柄「ええ、わかったわ」
こうして足柄は数学に挑み掛かる。
4時間が経過した頃だろうか。足柄の隣で本を読んでいた僕はふと足柄のワークを覗き込んだ。
提督「あれ、今やってるの中学の範囲じゃね?」
足柄がやっていたのは連立方程式。学年でいえば中2の範囲だ。
足柄「ええ、思ったより早く理解できたから後ろに続いてた中学の問題もやっちゃった」
ワークを見るとところどころ間違っていはいるものの8割方できている。なんてこった。僕の予想を大きく上回るスピードだ。
提督「どうしたんだ。漢字の時はスピードはこれほど出ていなかっただろう」
足柄「なんていうか、今やっている問題が前の学年の応用に思えたから...少し解説を読んだら難なくできたわ」
なるほど、数学の勉強の進行法則を自身で発見したのか。
小・中学校の算数・数学は基本的に
数・文字式の計算(代数学)
方程式(代数学)
関数(プレ解析学)
図形+α(幾何学、統計学、確率論...etc)
という流れになっている。そして学年毎でみるとほぼ応用の関係にあると言っていい。
これに気づけると勉強に詰まってもすぐに前の学年のところに戻って確認することができる。だから、前の範囲さえしっかり理解していれば少し考えるだけで割と簡単に解けてしまうことがある。
提督「よーし、じゃあ数学も模試をしてみようか。足柄はもう大丈夫か」
足柄「また浮かんでこないかわからないけど...」
提督「それならまだ無理しなくても「いや、やらせて!」...わかった。無理はするなよ」
こうして足柄は小学生範囲全ての模試を解いた。
結果は...
提督「よくやった! 満点だ!!」
足柄「ホント!? やったわ!!」
もう落ちこぼれだなんて言わせない。数学は私の得意教科よ!!
足柄は胸を張った。
提督「よし、あとは漢字だけだ。いっぱい模試を解いて試験慣れしよう!得点力はそうやって鍛えられるものだ」
足柄「よーし、あと少しね!やっちゃうんだから!!」
それからというもの足柄は毎日模試を受け続けた。1日30回、いつもの20問テストに加えて小・中学生の全範囲をカバーした200問試験も行なった。
最初の方は泣きながら問題を解いていたが、やはり足柄。かなりの負けず嫌いが手伝って血の滲むような努力をしている。
僕は隣でずっと足柄を見守っていた。
そして山籠りを始めて苦心20日間。足柄はついに模試全てにおいて全問正解した。足柄は名実ともに落ちこぼれから脱却したのだった。
提督「足柄、よくやった。もうここで教えることは何もない。鎮守府に帰ってもみんなに追いつけるだろう」
足柄「ゼエゼエ....。ありがとう。本当に実力がついたわ。これで羽黒の姉としてやっていける!」
足柄は息も絶え絶えながら、満足そうな笑みを僕に向けた。
ー名古屋鎮守府艦娘寮・妙高型の部屋ー
下山した僕たちはそれぞれ帰るべきところへ向かった。
妙高「お帰りなさい、足柄。提督との山籠りはどうだった?」
足柄「ええ、バッチリよ!もうこれで落ちこぼれだなんて誰にも言わせないわ!!!」
那智「そういえば、山籠り中は提督と二人きりだったんだろう。その...ナニはあったのか?」
足柄「いーえ、全くございませんでした。あの提督はイ●ポなのかしら」
3人は笑う。そこへ羽黒が部屋に戻ってきた。
羽黒「お帰りなさい、足柄姉さん。山籠りはどうでした?」
足柄「ええ、上々よ。羽黒、今度のテストで勝負よ!絶対に負けないんだから!!」
羽黒(別に私は姉さんに負けてもいいんだけどなあ)
妹に宣戦布告する姉に、少し引いた妹。この二人の次のテストが楽しみだ。
叢雲「お疲れだったわね、アンタ」
提督「いーや、そんなことないよ。むしろ足柄が成長してくれたことの方が嬉しかった。多分大物になるぞ、足柄は」
執務机に項垂れながら言う提督に叢雲はそっとお茶を出す。
叢雲「そう...ところでアンタが20日間も山に篭っていた間の執務だけど」
突然ガバッと起きた提督は
「ギクッ、姐さん。まさか今から...!?」
叢雲「おバカさんね、やっておいたわよ。あとこれにハンコ押しといて」
そう言いつつも高さ30cmに積まれた書類の束を執務机にドンと置く。
提督「マジっすか...」
叢雲「私はこの10倍以上の書類を裁いてたんだけど」
提督「本当にありがとうございました。もう二度と文句言いません。ゆるしてつかあさい、叢雲姐さん、いや姐様」
やはり叢雲に頭は上がらないようだった。
ーそれから数年ー
正式に艦娘学校が発足してから初めての卒業試験で、ツートップの成績最優秀者が生まれた。
一人は学問の神に愛された『伝説の天才』、妙高型重巡洋艦4番艦 羽黒
そしてもう一人は...「努力の天才」
不屈の精神で学問を極めた『伝説の秀才』、妙高型重巡洋艦3番艦 足柄
彼女たちの姉も同様に成績優秀者として名を連ねた。
そして、卒業の時がやってきた。
「妙高型重巡洋艦4番艦 羽黒、同じく3番艦 足柄、1番艦 妙高、2番艦 那智。貴艦ら4隻は重巡級卒業試験において成績優秀なため、艦娘学校教官採用試験の受験資格が与えられる」
執務室に呼び出された4人は厳粛な雰囲気の中、提督から伝えられた。
提督「...ってことなんだけど、みんなどう?やってくんない?」
妙高「妙高型重巡洋艦1番艦 妙高。謹んでお受けいたします」
那智「同じく2番艦 那智。謹んでお受けする」
足柄「同じく3番艦 足柄。謹んでお受けします」
羽黒「...私はやりません」
足柄「えっ? 羽黒はやらないの?艦娘学校教官なんて名誉なことじゃない。もったいないわよ」
羽黒「いいえ、足柄姉さん。私は勉強することは得意でも教えるのは苦手だから...。私は前線向きなのかなって」
今まで羽黒の周りにいた仲間たちはあまりにも天才的すぎる羽黒の教え方についていけず、結局足柄のところに集まるようになったのだ。
提督「まあ、いいんじゃないかな。うちの鎮守府だってそれなりに作戦や遠征はこなさないといけないし。いいんだね、羽黒」
羽黒「はい。お願いします」
こうして妙高型の3人は艦娘学校の教官になった。
ー現在ー
艦娘学校には3人の重巡教官がいる。一人は優しく、一人は厳しく、一人は...「伝説」だ。
足柄「さあ、今日は『ガウスの発散定理』をやるわよー!」
今日も足柄の声が響く。あ、寝ていた一人の駆逐艦が足柄にチョークを投げつけられていた。
足柄「
今日も伝説の教師の声が響く。
足柄回これにて完結です!
落ちこぼれの挽回劇って書いていてスカッとしますね。
次からは平常運転に戻ります。
【次回予告】
瑞鶴「ボーキサイトを補給すると艦載機が出てくるんだよね。あれってどう言う仕組みなの?」
翔鶴「...あなたは聞いてはいけないことを聞いてしまったわね」
瑞鶴「ひいっ!!」
次は艦載機運用学です。