成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

11 / 28
お待たせしました。白き罪人更新です。
今回はちょっと短め…。

お気に入り登録ありがとうございます。


各々の領分

「っ……!!!!!」

 (うめ)き声と、自身の体に回された腕に力が(こも)ったのを感じ取り、コナンは自らを(かば)った怪盗が撃たれた事を悟った。

 直後、コナンを抱えたまま、“怪盗キッド”が転がりながら出入り口の影に隠れる。

「キッド?!おい、大丈夫か?!!」

「《………動いてはいけません…。ここからなら、出入り口が死角になって狙撃出来ない…。》」

 “怪盗キッド”の身を案じて腕の中で暴れようとするコナンを更に力強く抱え込み、千暁(ちあき)がその動きを制した。

 意外にもしっかりとした声音(こわね)に、コナンもまたその抵抗を緩める。

「おい、傷は…?!」

「《ご心配無く……。(かす)り傷ですよ……。》」

 ポーカーフェイスを保ちながら、コナンが冷静になったのを確認してそっと彼を離す。傷口に触れないように患部を確認しつつ、左手を動かす。

(神経、筋肉に異常無し…。)

 そのままハンカチで傷口を縛り、止血した。

「!?何が(かす)り傷だよ……!結構な出血だぞ!?」

 白いハンカチが瞬く間に赤く染め上げられ、“怪盗キッド”の白い装束にもその染みを広げているののを確認したコナンが千暁(ちあき)を怒鳴り付けた。

「《二の腕を(かす)めただけです…。多少肉が(えぐ)られたので出血は派手ですが、骨や筋肉に異常はありませんよ……。》」

 そう。痛い事は痛いが、問題無く動かせるし後でキチンと処置すれば跡も目立たないだろう。この程度の傷、“怪盗キッド”を継いで以降、幾度(いくど)となく経験している。

 それよりも(コナン)をこの場から逃がさなくては…。

「………ヤケに冷静だなオメー…。狙われる心当たりがあるってのか…?」

「《…………私を狙っている者など星の数程おりますとも…。命を狙う者、私自身を利用しようとする者、私の盗んだ宝石を横取りしようとする者……。》」

 コナンの追及をはぐらかしつつ、周囲の気配を探った。一瞬。一瞬の隙を作り出せば突破出来る。

(6時の方向に120m…。それと4時の方向に100m……。)

「…とにかく、警察に通報して……。」

「《お止めなさい。奴らも切羽(せっぱ)詰まっていますからね…。元々手段を選ばない奴らです。下手をすれば死人が出ますよ…。》」

 スマホを取り出そうとしたコナンの手を押えながら止める。

「じゃあ、どうしろってんだ!!」

「《とにかく、隙を作りますから“名探偵”はその間に中に……。》」

「オレはって、オメーはどうする気だよ?(おとり)になる気か…?!」

 憤慨(ふんがい)したらしいコナンが、ガッ、と千暁(ちあき)の胸倉を(つか)む。

「《おかしな事を(おっしゃ)る…。(おとり)も何も、元々奴らの狙いはこの私…。これ以上一緒にいれば、あなただけでなくあなたの周囲も危なくなりますよ。あの幼馴染殿もね……。》」

「何だと……?!」

「《“名探偵”、一時(いっとき)の感情で目的を見誤ってはいけない…。ここから先は私の“領分”。あなたはこれ以上足を踏み入れるべきでは無いのだから。》」

「っ…!」

 一瞬、言葉に詰まったコナンの手をやんわりと外し、その小さな体を抱え上げた。

「!おい……?!」

「《サングラスは流石(さすが)に持ってはいませんよね…?》」

「あ、ああ…。ってか、下ろせよ。何する気だオメー。」

 怪我を(おもんばか)ってか暴れないものの、居心地(いごこち)が悪そうに身動(みじろ)ぎするコナンの眼鏡を取って手に持たせ、(ふところ)から取り出したサングラスをかけてやる。

「《ああ…。やはり大きいですね…。ズリ落ちないように、しっかり持っていてください。もし落ちそうになったら目を(つむ)ってくださいね。……下手をすれば失明(しつめい)しかねませんので。》」

「は?!」

 さらりと告げられた台詞(せりふ)に、コナンがぎょっとして千暁(ちあき)を振り(あお)ぐのが分かったが、そちらに構っている(ひま)は無かった。

 自身もサングラスをかけ、カウントを取る。

「《5、4、3…。》」

 3、のカウントで(ふところ)から取り出した閃光弾(せんこうだん)をヒュっと後方に向かって高く投げた。

「《2、1…!》」

 0、と(つぶや)くと同時に投げた閃光弾(せんこうだん)が、屋上の床に落ちる。そして、その衝撃でカッ!!!!と凄まじい光を放った。

 千暁(ちあき)が特別に調整した、直視すれば失明(しつめい)しかねない特別製である。

 幸い、ここは屋上であり地上の人々の視線からは外れる上に、この辺りのビルは紫外線対策の為に通常のガラスに比べて遮光(しゃこう)性のある窓ガラスを使用している。おまけに商業ビルでは無く、ほとんどが企業ビルであり勤務時間からは外れている為、実質的な被害は無い(はず)だ。

 しかし、スネイクたちが使っているライフルの暗視スコープは確実にお釈迦(しゃか)だろう。

 閃光弾(せんこうだん)の持続時間は約7秒。スネイクたちの視覚が回復するにはもう少しかかるだろうが、早くこの場から立ち去るべきである。

 千暁(ちあき)はコナンをしっかりと抱えたまま、身を隠していた屋上の出入り口の壁から身を(ひるがえ)した。

 そのまま、開け放ったままの出入り口に向かってコナンを放り投げる。

「イテッ!!……おいっ?!」

 バンッ!!!

 受け身を取り損ねたコナンが体勢を立て直す前に、扉を閉めて外側からストッパーを噛ませた。

(良し、後は………。)

 フェンスへと走り、その上へとよじ登る。

 そして、そのまま夜の空へと身を躍らせた。

 ヒュウウゥゥゥ……!!!

 ある程度勢いが付いたのを確認し、マントに仕込んだハンググライダーを開く。

 バッ…!!!!

 風に乗って滑空しながら、周囲の気配を探れば、案の定スネイクの部下らしき気配を(いく)つか感じ取った。

「《ちっ…!》」

 空中で銃撃されれば流石(さすが)()が悪い。

 カチッ!

 ウイィィ……ィン…!!

 念の為に仕込んでいたハンググライダーのプロペラを起動させ、高度を上げた。

「《ここまで上がれば大丈夫か……。》」

 高度を保ったまま滑空する事5分。現場からは大分離れる事が出来た。そろそろ高度を下げても大丈夫だろう。

 徐々に高度を下げれば、下は住宅街。

 人気(ひとけ)も無い。

(一旦降りても大丈夫かな……。)

 公園を見付け、その上を旋回しながらゆっくりと高度を下げる。

 バサッ……!

 ハンググライダーを(たた)み、トンッ…!と公園に降り立った。

 そのまま“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”のマスクを剥がし、キッドの衣装を脱いで私服に早変わりする。

(いっつ)っ……!!」

 気を緩めた途端、狙撃を受けて(えぐ)られた傷が痛んだ。

 改めて止血し直しながら、寺井(じい)に連絡する為にスマホを手に取った。

(怒るだろうな、寺井(じい)ちゃん…。)

 いや、それとも泣くかもしれない。

 あれだけ心配していたのを説き伏せた結果がコレだ。

 怒られるのは良いが、泣かれるのはちょっと困る。

 何しろ、千暁(ちあき)に何かあって寺井(じい)が泣く時には、ただひたすらに自分を責めるからである。「やはりお止めするべきだった」だの「盗一様に何と申し上げれば…。」だの「全てはこの寺井(じい)不手際(ふてぎわ)…」だのとさめざめと泣かれた挙句、千暁(ちあき)の事は一切責めずにしくしくと(なげ)かれては、いっそ感情的に怒ってくれた方が精神的に楽、というものだ。

 しばらくは自重した方が良いかもしれない、そんな事を考えながら寺井(じい)の番号をコールした。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。