成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。白き罪人更新です。

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今回はオリジナル編の導入になります。


好敵手との邂逅編
ストーカー


 キーンコーンカーンコーン…

「ふぁああ……。」

 鈴木大図書館の一件から一夜明け、5時限目の授業が終わった後、耐え切れずに欠伸(あくび)()らす。

 昨夜は寺井(じい)と合流した後、馴染(なじ)みの闇医者の元へと駆け込んだ為、手当を終えて帰宅したのは午前1時を回っていた。

 その後で食べ損ねた夕食の代わりに軽い夜食を摘み、シャワーを浴びた為、就寝したのは3時前。流石(さすが)に睡眠時間が3時間弱というのは眠くて仕方が無い。

 おまけに、処方された化膿(かのう)止めと鎮痛剤のせいで眠気は増している。

(まぁ、体育が無かったのは助かったけどさ……。)

 鎮痛剤が効いているのか多少はマシになったものの、ズクン、ズクンと鼓動に合わせて脈打つような痛みを発する左腕を目立たないように軽く(さす)り、次は自習なので睡眠時間に当てようと心に決める。

 (かす)っただけとは言え、銃創(じゅうそう)。多少なりとも肉を(えぐ)られてしまった為、痛い事は痛い。処置してもらったが、体育なんぞやった日には傷口が開くのは必至である。

 幸い、体育は月曜と金曜の週2回。今日は火曜日の為、後3日もすれば完治は無理でも多少は傷も()えるだろう。

 (ちな)みに、千暁(ちあき)懇意(こんい)にしている闇医者は、治療費はぼったくるものの腕は確かであり、患者の素性(すじょう)は詮索しないし口も堅い。念の為に、顔と名前は変えている為、万が一あの闇医者が摘発(てきはつ)されるような事になっても、そこから千暁(ちあき)素性(すじょう)がバレる事は無いだろう。

 

 閑話休題(かんわきゅうだい)

 

「ふぁ~あ…。」

「どうしたのよ千暁(ちあき)?今日は随分(ずいぶん)眠そうじゃない?」

 朝から(しき)りに欠伸(あくび)ばかりしている千暁(ちあき)に、幼馴染の青子(あおこ)(いぶか)し気に尋ねる。日頃規則正しい生活を心がけ、特に朝に強い千暁(ちあき)にしては珍しい姿だった為だ。

「ん~…。昨夜(ゆうべ)なかなか眠れなくて………。」

 欠伸(あくび)(にじ)んだ涙を(ぬぐ)いながら説明する千暁(ちあき)の目の下には、うっすらと(くま)が浮かんでいた。

「めっずらし~…。いつも早寝早起きの、小っちゃい子どもみたいな生活してる千暁(ちあき)が。」

 普段の千暁(ちあき)は、キッドの予告が無い限り夜の10時には寝ている。キッドの予告がある日でさえ、どんなに遅くとも日付を(また)ぐ前には寝れるように予告時間を調整しているのだから、今回の一件はかなり堪えていた。

「……良く見るとなんか顔色も悪いし、次は自習だから保健室で寝かせてもらえば?」

 揶揄(からか)うように笑っていた青子(あおこ)だったが、普段とは異なり反応の(にぶ)千暁(ちあき)に心配そうに保健室行きを勧めた。

「うん…。じゃ、そうする~…。」

 ふぁああ…。

 元よりそのつもりだった事もあり、青子(あおこ)の助言を断る事無く素直に受け入れた。

 欠伸(あくび)()らしながら、ガタリと立ち上がった千暁(ちあき)だったが、不意にばっ、と窓の外を振り返る。

(男……?)

 ねっとりと絡みつくような視線を感じ、振り返れば電柱の影に慌てて身を隠す男の姿を見付ける。

「ど、どうしたのよ?急に。」

「あ、ううん。なんでも無い……。」

 青子(あおこ)誤魔化(ごまか)しながら保健室に行く為に教室を出た。

(スネイクたち……?いや、それにしては……。)

 (みょう)素人(しろうと)臭い。それに、あの視線も殺気立っている、というよりはむしろ……。

 いや、と(かぶり)を振る。

(止めとこ……。下手に深く考えると精神衛生上良く無い…………。)

 何となく薄ら寒い思いがして、それ以上の思考をカットする。

 

 ―――――――――――それから1週間後。

 千暁(ちあき)は全身に立つ鳥肌を感じつつ、顔を引き()らせていた。

 自室の机に広げたのは、ポストから回収したばかりの手紙と同封されていた写真。

「……どうしようか…。」

 目の前に広がるのは、昨日1日の千暁(ちあき)の盗撮写真。

 この1週間の間、登下校の最中や外出時だけでなく、学校の教室でも感じていた視線は収まることを知らず、また、まさに視線を感じた瞬間を写した写真が1週間連続でポストに投函されていた。

 この1週間はある程度自衛していた事と、学校のトイレは道路に面しておらず、更衣室にもしっかりとブラインド式のカーテンが取り付けられている事で、盗撮されたのは教室や登下校の最中などの日常生活の場面のみだった事が幸いである。

 自宅に帰ればすぐにカーテンを閉めるようにしていたし、自宅の風呂もトイレも家の構造と庭の生垣のお陰で外から覗くのは不可能。プライベートな写真がほぼ撮られていないのは良いが、流石(さすが)に1週間も続くといい加減鬱陶(うっとう)しい上に気持ち悪い。

 おまけに毎回同封されている手紙が気持ち悪さに拍車をかけていた。

 どうやら送り主の中で、千暁(ちあき)は完全に恋人として妄想されているらしく、それに記されていた内容は完全にポルノ小説である。

「キッモ………。」

 (まぎ)れも無くストーカーの仕業(しわざ)だった。

 女子高生の1人暮らしは物騒だから、と母が渡米する際に自宅のセキュリティーを上げておいてくれて助かった。

 現在、千暁(ちあき)の自宅には、玄関の扉と門扉(もんぴ)に2重の電子ロックが付けてある。登録した指紋・掌紋(しょうもん)でないと開けられず、無理に開けようとした瞬間に契約しているセキュリティー会社と警察に連絡が行くようになっているのだ。

 また、セキュリティー会社に通報が行くと同時にスマホにメールで通知が届くように設定されている為、そのお陰で今のところは自宅に侵入されていないと確信出来ている。

 しかし、今のところは大丈夫でも気分は良くないし、このまま放置する訳にもいかない。

 1週間前に最初の手紙が投函された時点で警察には相談済みであり、自宅付近や学校周辺の見回りを強化してくれている。手紙も証拠品として提出して調べてくれてはいるが、指紋などは付いていない上に、手紙の消印は毎回異なり、都内のあちこちからポストに投函されているらしく、まだ容疑者を絞り込めていないらしいのが現状だ。

「こーゆーストーカー犯罪って後手に回りがちだしな~……。」

 だから世間からバッシングを受けるんだ、と言いたいのはやまやまだが、警察も暇では無い事は分かっている。

 いっそ自分で調べた方が速いか、とも思ったが自分でストーカーを突き止める女子高生、というのも一般人の(くく)りからは逸脱(いつだつ)していて警察から余計な目を付けられそうだし、何よりもこんな気持ち悪い思考の(やから)に自分から近付きたくは無い。

 と、なれば残りの選択肢は1つだが…。

「探偵に依頼しようにも、既に何件か門前払い喰らってるし………。」

 そう。まだ高校生の千暁(ちあき)では報酬がキチンと支払われるか、という点で(いちじる)しく不安を与えるらしく、ネットで調べて尋ねた探偵事務所では既に3件、門前払いを受けている。

 (いわ)く、保護者と一緒に来てくれ。

 まぁ、気持ちは理解出来る。それに、相手が未成年では契約を結ぶ際にも色々と面倒があるのだろう。

「ママはベガスだし、寺井(じい)ちゃんにまた心配かけるのもなぁ……。」

 それ以外となると、最も確実に依頼を受けてくれるのはクラスメイトの白馬(はくば)(さぐる)だろうか。

「でも、白馬(はくば)くんに頼むのも…。」

 解決してくれる事に不安も心配も無いが、まだ学生の白馬(はくば)では、解決しても彼が逆恨みされかねない。

 彼に万が一の事があっては本末転倒(ほんまつてんとう)である。

 学生相手でも依頼を受けてくれそうな探偵と言えば……。

「毛利探偵、かな………?」

 あそこには“名探偵”がいるので、出来れば頼りたくは無い。しかし、毛利小五郎ならば千暁(ちあき)と同じ年の娘‐蘭がいる。

 娘と同じ年頃、それも女子高生に付きまとうストーカー調査、となれば彼ならば受けてくれそうだった。

「背に腹は代えられない、か………。」

 チラリ、と時計を見ればまだ午後1時を少し過ぎたあたり。

 今日は教員たちの研究会があるらしく、午前中で授業が終わったのが幸いした。今から行けば、2時頃には毛利探偵事務所に着く。小学生の帰宅時間には少し早い為、上手くいけば“名探偵”と鉢合わせせずに済む。

 そうと決まれば、と千暁(ちあき)は着替える間も惜しんで鞄にこれまで届いた手紙と写真を突っ込むと、セーラー服のまま毛利探偵事務所へと向かった。

 

 

 




千暁(ちあき)は公式美形である新一及び快斗そっくりの容貌の為、美人さんです。
中身はわりとしょーもない事を考えていたり、ちょっと(こす)いというか悪知恵が働きますが……。
蘭と違って空手が得意、という女子力(物理)は持っていないので割と狙われがち。
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