コンコンコン……!
毛利探偵事務所の扉を何度もノックするが、全く応答が無い。
というよりも、
(人の気配が無い………?)
もしや、別の依頼か何かで留守だろうか。
だとすれば、日を改めるよりもやはり別の探偵を探した方が良いかもしれない。
(早いトコ引き上げないと、“名探偵”が帰ってくるだろうし……。)
チラリ、と腕時計に目をやった瞬間である。
トントントン、と軽い足音が聞こえ、危うくチベスナ顔になるところだった(もちろん、“怪盗キッド”のプライドにかけてポーカーフェイスを維持したが)。
「お姉さん、もしかして小五郎のおじさんに依頼に来た人?」
(出た――――――――――!!)
思わず引き
コナンside
「じゃーなーコナン!」
「また明日ね―――!」
「さようなら――。」
「おー。それじゃ、また明日。」
手を振りながらそれぞれの家に帰宅する少年探偵団の面々を見送り、コナンもまた
「あら、お帰りコナンくん。」
「ただいま、梓姉ちゃん。」
ポアロの前を掃除していた看板娘の梓が笑顔でコナンを出迎えた。
「そう言えば、蘭ちゃんももう帰ってるみたいよ。」
「え、蘭姉ちゃんが?」
掃き掃除をしながら告げられた言葉に、コナンが目を
「ええ。ついさっき掃除に出てきた時に、制服のスカートみたいなのがチラッと階段から見えたから。今日は早かったのね。」
「変だな…。蘭姉ちゃん、今日は部活の強化練習で遅くなるから晩御飯はポアロで食べてねって言ってたのに……。」
何でも引退した3年生が受験の息抜き兼後輩の戦力強化、と称して顔を出すらしく、夕食分の弁当まで持って登校した
「あら?じゃあ、もしかして依頼に来た人かしら?今、毛利さんいないのよね……。」
「小五郎のおじさん、どこに行ったの?」
「具体的にどこ、とは聞いてないけど浮気調査の依頼が入ったから行って来るって言ってたわ。遅くなりそうならポアロに連絡を入れるから、先にコナンくんにご飯食べさせておいてくれって…。」
「そうなんだ。」
わざわざ梓に
依頼人が来ているのならば、小五郎の留守について早く教えないといけないだろう、とコナンは階段を上がろうとしたが、思い直して梓に尋ねる。
「梓姉ちゃん、今日
「ええ、いるわよ。どうして?」
「もし急ぎの依頼だったら、
「ああ、そうかもしれないわね。」
表向きの職業である探偵業は真面目にこなしているようだし、本当に緊急性のある依頼ならその方が良いだろう。それに、
ともあれ、まずは依頼人かどうかを確かめなくては。
「じゃ、ボクちょっと見て来るね!」
トントントン、と軽やかに階段を昇れば、この辺りでは珍しいセーラー服を着た少女がいた。
身長は163~167cm、やや癖毛なのかウェーブががったボブの黒髪に、スラリとした体つきで、横顔でも顔立ちが整っているのが分かる。
少なくともこれまで蘭やコナン‐工藤新一の周囲では見た事の無い少女だった。3階の自宅では無く2階の探偵事務所の扉をノックしていたあたり、恐らく依頼人で間違い無い。
「お姉さん、もしかして小五郎のおじさんに依頼に来た人?」
その問いかけに、少し驚いたような顔をしてコナンに向き直った少女の顔を見て、コナンは、工藤新一は少し驚いた。
(オレに似てる………?!)
女子ならではの
「キミ、“キッドキラー”の……?」
どこか凛とした響きを宿した声に、コナンがはっと我に返る。
「お姉さん、ボクの事知ってるの?」
「私、キッドファンだから…。キミ、良く新聞に載ってるし。」
目線を合わせるように
(………父さん、まさか浮気してねーよな?)
思わず思考が
「毛利さんに依頼したかったんだけど、もしかして留守かな…?」
「!あ、うん。別の依頼が入っちゃったみたいで、今日は遅くなるかもって…。」
「そっか…。じゃあ、しょうがないね。ありがとう。それじゃあね。」
そう言って立ち上がり、するりと横をすり抜けようとした少女の手首を
「待って!お姉さん!!」
「待って、お姉さん!!」
パシッと右手首を
(バレた…?)
「えっと…?」
何とかポーカーフェイスを維持したまま、どうしたの?と
「お姉さん、困った事があったから小五郎のおじさんを訪ねてきたんでしょ?おじさんはいないけど、おじさんに弟子入りしている探偵さんが下の
(ちょっとちょっと…。弟子入りしてる探偵ってまさか………!)
やんわりとコナンの手を外しながら、体ごと向き直る。
――――――――そうしなければ、表面上はポーカーフェイスを保てていても心臓の鼓動で動揺がバレそうだったのだ。
「毛利さんって弟子がいたんだ?知らなかった。何ていう人?」
「
(はい、アウト―――――――!!!)
ヤバイ、詰んだ。
1日あればストーカーを突き止めてくれそうだが、同時に自分の正体がバレる危険がある。
どうやって断ろうかと、
「コナンくん?そこにいるのかい?」
「あ、
(ま、また出た…………!)
思わず信じてもいない神に何か悪い事しましたか、と聞きそうになったが直後にあ、めちゃめちゃしてたわ(怪盗的な意味で)と思い直した。
階段の下から顔を覗かせているのは、“黒の組織”のバーボン、私立探偵の
「ああ、彼女が梓さんの言っていた依頼人の方ですか?」
「うん。そうだよ!」
(止めて…!本人置いてけぼりにして話進めないで………!!)
「初めまして。毛利先生の弟子で、探偵の
「…黒羽
わー、笑顔が
思わず現実逃避しかけながら、取り
「せっかく来ていただいたんですが、
「………それじゃあ、よろしくお願いします…。」
ここまで親切な申し出を受けておきながら断ったら、まず怪しまれる。
今この場で出来るのは、素直にその申し出を受ける事だけだった。
流石に“名探偵”と公安のエース2人を相手取るのは分が悪い、という事で…。