今回、ストーカー編解決です。
本来もっと引っ張る予定でしたが、途中からこれは誰得だろう、という疑問が沸いてきた為、サクッと終わらせました。
次回は後日談を挟みつつ、“怪盗キッド”編に戻る予定です。
評価、お気に入り登録ありがとうございます。
「ホー…。ストーカー、ですか。」
「はい。ちょうど1週間前から…。」
小五郎の留守中に勝手に事務所に入る訳にはいかないから、と案内されたポアロの奥まったテーブル席で、
目の前にはお代はいりませんから、と出された紅茶が置いてある。
まずは依頼内容をお聞かせください、という
(ああああああ…!心臓に悪い………!!)
せめて1人ずつでお願い出来ないだろうか。まぁ、無理な相談だろうが……。
というか、
「具体的な被害についてお教えいただいても良いですか?あまり気分の良いものでは無いでしょうが……。」
「ここ1週間、ずっと視線を感じていて…。初めてその視線を感じたのがちょうど1週間前だったんですけど、その次の日に郵便ポストに手紙が………。」
「手紙って?」
コナンの質問にちょっと
「………あんまり子どもに見せたいものでは無いんですけど……。」
より正確に言えば子どもに、というより自分と同じ年頃の男性に、といった方が正しいが。
そう言ってテーブルに広げられた手紙と写真に、コナンと
「これは……。」
どれ1つとして目線の合っていない、一目で隠し撮りと分かる写真の数々と、1通につき5~6枚に渡るポルノ小説
「最初に手紙が届いていた時点ですぐに警察には届け出て、登下校の時間なんかに見回りをしてもらってるんですけど…。」
「まだ手掛かりは掴めていない、と……?」
「はい。手紙も、都内のあちこちから出されているみたいで消印もバラバラで…。指紋なんかも残ってないみたいで……。」
「この手紙は1週間ずっと?」
手紙と写真を検分するように手に取りながら、
「はい、受け取った日の前日の手紙が…。最初の3日分は警察に提出したので、3日分しかありませんが、ここ1週間家に帰ったら必ずポストに入っているんです……。」
「手紙の他に、何か送られて来なかった?直接
手紙を見て顔を
「気持ち悪いから、家に帰ったらすぐにカーテンを閉めるようにしてるから、私は見て無いな…。」
「ご自宅のセキュリティーはどうなっていますか?」
「玄関と裏口に監視カメラがあって、動くものに反応して前後20秒が自動で録画されます。後は、玄関と裏口の両方に、門扉とドアで指紋と掌紋認証の2重ロックが付いてて、登録した人間以外が開けようとすると、すぐに警察と契約した警備会社に通報されるように設定されています。窓も無理に開けようとすると同様に通報されて、登録したスマホに警告メールが届くようになってますから、無断で侵入は出来ないと思いますけど……。」
「厳重ですね。」
思っていたよりもしっかりとしているセキュリティーに、
「最近物騒ですし、母が用心に越した事は無いから、と…。」
「そうですか…。では、外出した際に誰かに後を付けられている、という事はありませんか?」
「視線は感じますけど、誰かに付けられてる、という感じはしないです。登下校中の写真も混ざってますけど、見回ってくれているお巡りさんも怪しい人は見た事無いらしくて…。私も、それらしい人を見たのは初日だけなんです。」
「姿を見たんですか?!」
その言葉に
「1週間前にチラッと…。すぐに電柱の影に隠れてしまったので顔は見ていないんですが……。」
「他に何か覚えてる事ある?」
コナンの問いに記憶を
「たぶん、そんなに体格が良い人ではないと思います。電柱の影にほとんど隠れてしまって良く見えなかったので……。後は、たぶん身長が175cm前後だと…。」
「
「その時隠れていた電柱には番地の看板が付いているんですけど、それがちょうど私の目線の高さと同じくらいなんです。チラッと見えた時にそれより頭1つ分位高かったので……。」
「なるほど………。」
「ねぇ、電話がかかって来たりとかはしてないの?」
直前まで同様に考え込んでいたコナンが尋ねる。
「ウチは固定電話契約してないから…。やり取りはほとんどスマホかEメールなの。」
「今は固定電話を契約される方も少なくなってきているみたいですからね。」
納得したような
「あの…、依頼は引き受けてもらえるんでしょうか?」
「もちろん!お引き受けしますよ。」
「っ良かった…!」
思わず頬が緩むのが分かった。どうやら、自分で思っていた以上に精神的な負荷がかかっていたらしい。
「でも、良いの?」
「え?」
コナンの一言に思わず素の反応を返してしまう。
「だって、小五郎のおじさんに依頼しにわざわざ江古田から来たんでしょ?話だけでもって言って
「ああ…。毛利さんに依頼しようと思ったのは、毛利さんなら引き受けてくれそうだって思っただけだから…。」
特に偽る必要も無い為、素直に教える。
「引き受けてくれそう、とは…?」
「実は、この3日くらい探偵事務所を3件訪ねたんですが、どこも保護者同伴で来てほしいと門前払いされてしまって…。母は、今仕事の都合でラスベガスにいるので、急に帰国はやっぱり難しいらしくて……。毛利さんなら、私と同じ位の娘さんがいると聞いていたので引き受けてくれるんじゃないかと思って………。」
「なるほど…。」
「お母さんがラスベガスにいるって事は、お父さんは?」
「っ…!」
コナンの言葉に、咄嗟に言葉に詰まる。
「父は……、私がまだ小学生の時に亡くなったので、ウチは母子家庭なんです………。」
「あっ、ご、ごめんなさい…!」
何気無いように装ったつもりでも、多少声が震えてしまい、コナンも
「ううん、大丈夫。……なんか気を使わせてゴメンね。」
その言葉は本心だった。
しかし、少しずつ傷が
暗くなってしまった空気を壊すように、
「それでは、依頼内容の確認ですが…。」
「あ、はい。」
思わず姿勢を正して
「ストーカーの正体を突き止める事と、その間の身辺警護という事でよろしいでしょうか?」
「え?身辺警護もしてもらえるんですか?!」
うっかり素のリアクションで返してしまう。
(この人忙しいんじゃ……?)
「もちろんですよ。依頼人の身に何かあっては意味がありませんから。この写真を見る限り、恐らくは望遠レンズを使ったんだろうと思いますが、ストーカーは常にあなたを監視しているようです。身辺警護という形で
(さ、
思わず変なところに感心してしまった。
“怪盗キッド”としての仕事はしばらく
今の
「それで、調査料なんですけど……。」
引き受けてもらったならば、次に気になるのは料金である。後回しにしても仕方が無いので、率直に
探偵を雇うとなると、料金は決して安いものでは無い。拘束時間が長ければ長い程料金が上がるのが一般的だが、依頼先によっては追加料金がかかる事も多い。
「そうですね…。依頼によっては実際に調査にかかった時間で換算する場合もあるんですが、今回は完全成功報酬という形でいただきたいと思います。」
「完全成功報酬、ですか?」
「はい。ストーカーを突き止めて警察に突き出すなり、
警護込みで7万、というのは決して高くは無い。調査料の相場としては、1時間あたり4,000~5,000円程。長期間の調査では一気にそれが跳ね上がる。
状況によっては数十万単位でかかる事も想定しており、母‐
本業は公務員だから安いのか?と明後日の方向に意識を飛ばしつつも、力強く頷いた。
「それで大丈夫です。」
「高校生で7万円って大きいと思うけど、即答して大丈夫?」
コナンが心配そうな顔で問うが、頷く。
「大丈夫。探偵さんにお願いする事に関してはママも知ってるし、何かあってからじゃ遅いからお金で解決出来るならそれで良いって。それに、7万なら相場より安い位だから……。」
「そうなんだ…。」
7万って安いか?という顔をしているコナンだったが、
(というか“名探偵”、探偵を名乗ってる割に料金相場については知らないんだ…?)
いや、まだ高校生だから料金はとっていないのだろうが、将来的な事を考えれば把握しておいた方が良いのでは無いだろうか……。
その後、細かい契約内容について確認し、連絡先を交換した。
この時に誤算だったのは、
(なんでだ………!)
何が彼の興味を惹いたと言うのか。
「それでは、ご自宅までお送りしますから後30分程待っていただけますか?今日は15時までのシフトなので…。」
「えっ?!お仕事中だったんですか?!!」
それで良いのかトリプルフェイス…。
――――――そして30分後。
「本来ならば車で送りたいところですが、ストーカーの動きがあるかを確かめたいのでバスでも構いませんか?」
「大丈夫です。来る時もそうでしたから。」
江古田から米花まではバスで20分程である。
バス停に向かって歩きながら、
「1つ気になっていたんですが…。」
「何でしょう?」
「私の警護をしてくださる、というのはとても心強いんですが、それがきっかけでストーカーを刺激しないかどうかが心配で……。」
ただでさえ気持ちの悪い
「実はそれも目的の1つなんですよ。」
「え?!」
思わず立ち止まる。
「こういったストーカーの思考と行動は、だいたい予想が付きます。あの手紙のような
「危ないじゃないですか!」
いや、腕っ節が強いのは承知しているが、何もそこまで捨て身にならなくても良いのでは無いだろうか。
「僕なら大丈夫ですよ。それよりも、万が一あなたの方に行ってしまった場合が心配なので、当面は学校以外の外出はなるべく控えてください。買い物もしばらくは僕が付き添いますから。」
「は、はい…。」
取り
「?!」
「!」
ねっとりとした、しかしこれまでとは異なり確実に殺気立った視線に、思わず後ろをバッと振り返った
視線の10m程先にいたのは、明らかに挙動不審の男。
「……んで…、……ちゃ…は……ボクの………のハズ………!」
ブツブツと何やら呟いている男の目は、長い前髪を通しても焦点が合っていないのが分かる。
外見は一見して大学生風の若い男。服装もどこにでもいそうなTシャツとジーンズだが、その目と正気を失ったかのような言動が不気味だった。
そして何よりも、その手に握られた金属バットがその異様さを強調する。
ボコボコに
――――――――血の跡だった。
「ひっ………!」
「下がって…。」
スネイクたちと対峙した時とはまた違った恐怖と嫌悪感に、思わず息を呑んだ。
サッと血の気が引くのが自分でも分かる。
(“仕事”の時は平気なのに………!)
“怪盗キッド”としての“仮面”を被っている時は平気なのだ。自分の持つ能力を全て発揮出来るから。
しかし、“黒羽
「ちあきちゃんからはなれろ………。」
何か薬でも使用しているのか、
「ちあきちゃんから、はなれろよォオオオオオ!!!!」
動かない
「やっ…………!!!」
明らかに正気ではない、
――――――――結論から言えば、全く心配する必要は無かったが。
ドゴォッ……!
直後に響いた
「目を開けて大丈夫ですよ。」
そして、その足元にはあの男が
「どうやらこの男がストーカーだったようですね…。まさかこんなに早く行動を起こすとは思いませんでしたが…。」
男の腕を背中で纏め、脱いだ自身の上着で縛り上げながら呆れたように呟く
「け、怪我が無くて良かったです……。」
色々言いたい事はあったが、取り
・千暁が怖がっていた件について
本文中でもチラッと書きましたが、本来ならば千暁も素人の男を1人撃退するだけの術はあります。格闘技などをやっているわけではないので、マジックの応用やアイテムを利用しての技術ですが、それでスネイクたちと渡り合えているので決して弱い訳ではありません。
しかし、“怪盗キッド”とは異なり“黒羽千暁”はただの女子高生である為、そんな技術を持っている事を知られる訳にはいきません。千暁が1人であの場を何とかするのは技術的には可能でも、それをする訳にはいきませんでした。
出来るけどしてはいけない、というジレンマによって下手に対処出来ず、それが恐怖に繋がった訳です。
以上、蛇足の説明でした。