“銀翼の奇術師編”完結です。
ちょっと自分の中での消化不良感が否めないので、後々手直しするかも。…。
誤字報告、お気に入り登録、評価どうもありがとうございます。
「きゃあああああ!」
「なっ?!」
「うるせェ!!!静かにしてろ!」
怒鳴り付ける男に、スーパーシートに座る者たちの緊張が一気に高まる。
蘭と世良、そしてコナンが男の隙を窺っているのが分かるが、その立ち振る舞いには一切の隙が無い。
その間、
これが犯罪組織による計画的なものであるならば、近くに仲間がいる
(たぶん、単独犯……。)
周囲にいるのは一般人ばかりで、乱入してきた男の他に殺気立った気配などは感じない。
男の身長はおよそ180cm前後。一見するとビジネスマンにも見えるかっちりとしたスーツ姿だが、ジャケットの上からでも鍛えられた体付きが分かる。
年齢は恐らく30代前半。
やや目付きが悪いものの、これと言って特徴の無い、集団に溶け込みやすい風貌をしている。
しかし、ハイジャック犯の男が纏っている空気は、間違い無く裏社会の人間の
(スネイクの手下……?!でも、それにしては…。)
一瞬、“怪盗キッド”を狙う“組織”の差し金かとも思ったが、ハイジャック犯の目を見て、嫌な予感が込み上げる。
どこか
(まさか………。)
厄介な事に、手にしている暗器の他に、手荷物検査をどう
また、堂々と顔を
「動くんじゃねェぞ?!この女を殺したくなかったら、黙って座ってやがれ!!」
蘭と世良、コナンが男の隙を窺っているのが分かるが、キャビンアテンダントの進藤の
「良――――し。そのまま大人しくしてろよ…?」
そのままコックピットの方へと進藤を拘束したまま歩いていく。
「開けろ。」
「で、出来ません!」
「開けろって言ってんだよ!」
「出来ません!っ痛……!!」
「ら、乱暴は
「うるせェって言ってんだよ!黙ってろ!!」
その様子に、
「開けろ…!殺されてェか………?!」
その、
(仕方無い……。)
このままでは死人が出る。
“怪盗キッド”のステージを血で汚すなど、この自分のプライドが許さない。
コックピットへ続くドアのしっかりと閉じられている事を確認し、
ポンッ……!
カッ!
男の顔スレスレにトランプが突き刺さった瞬間、
プシュウゥゥゥ――――――――ッ!!!
トランプに仕込まれた催眠ガスが噴き出す。
「な?!吸っちゃダメだ!鼻と口を押えて!!」
「!!?」
ガスは瞬く間に2階のスーパーシート周辺に広がった。
ズル…、ドサッ…!
ハイジャック犯の男は、進藤を拘束したまま意識を飛ばし、床に崩れ落ちた。
そして、それは他の乗客たちも同じ事。
いち早くガスの発生に気付いたコナンと、その忠告に即座に従う事が出来た世良を除き、スーパーシートに座っていた全ての乗客たちが眠りに付いた。
ほぼ同時に、スーパーシート周辺に充満していたガスが空調によって散っていく。
「《全く…。余計な邪魔が入ったものですね……。》」
“瀬戸瑞貴”の声で独り
「《やれやれ…。少々お転婆が過ぎるのでは?》」
「チッ……!」
世良が攻撃の体勢に入った一瞬を見抜き、即座に屈んで
「避けるな!」
「《無理を
間髪入れずに第2撃に移ろうとする世良に警告する。
「《それ以上、近付かれない方がよろしいかと…。》」
「?!世良の姉ちゃん、危ない!下がって!!」
「!?」
世良よりも低い目線であるが
「コナンくん…?どうして止めるんだい?!」
「良く見て!このまま突っ込んだら怪我するよ…!」
「?これは、ピアノ線……?!」
コナンの言葉に、自身が今まさに突っ切ろうとしていた箇所を見直した世良が目を見開く。
先程世良の蹴りを避け、後方に退避した際に、座席を利用する事で通路に張り巡らせたワイヤートラップである。丸いボタンが2つ重なったような形状のケースに収納させてあり、ボタン状の
それを通路を横断させるように左右の座席にそれぞれ貼り付けたのだ。
「《ご安心を……。ピアノ線よりも太くしてありますから、切れる事はありませんよ…。ただ、少々
このワイヤー、肌を傷付けるような事が無いように通常のピアノ線よりもやや太くしてある。そして、最大の仕掛けはワイヤーに触れる事で大人が動けなくなる程度の電流が流れる、スタンガン形式の一種のブービートラップだ。
「今の一瞬で良くこれだけの罠を張ったな……。」
驚愕を通り越して半ば呆れた顔の世良が溜息を
「
世良の目を気にしてか、わざわざ“姉ちゃん”呼びのコナンがギリギリと
「《もちろん、ご無事ですとも。ただ、悪天候の為に飛行機が2時間遅れる、と偽装メールを送らせていただいただけですから……。》」
「なら良いけどよ…。」
「それより、ここは高度1万フィートの密室…。どうやってここから逃げ出すつもりだい?」
世良の言葉に、
「《そろそろ“貸し”を返していただこうかと…。》」
「“貸し”?」
「げ…。」
心当たりは全くありません、といった様子の世良とは対照的に思い当たったコナンが
「《そこの小さな“名探偵”と、先日お約束したのですよ…。彼に協力する代わりに、1度は私の仕事を邪魔しない、とね…。》」
「そうなのかい?コナンくん。」
「うん…。この前のベルツリー急行でちょっと助けてもらって…。」
「あの時か!偽のメールでボクを騙した時!!……でも、助けてもらったって一体何をしたんだい?」
「ちょっとね……。」
言葉を濁すコナンにちょっと首を傾げた世良だったが、「でも、ボクには関係無いけど?」と続ける。
「むしろ、この前の“借り”を返すにはちょうど良い機会だね…!」
自身の顔と名前を勝手に使われた事に腹を立てていたらしい世良が好戦的に笑うが、
「《そうそう…。言い忘れていたのですが、このガスの効果は約5分程…。早くその男を拘束しないと、そろそろ目を覚ましてしまいますよ?》」
「「それを早く言え!!」」
慌てて2人がかりでハイジャック犯を拘束しにかかるコナンと世良を尻目に、
ボンッ!!
ゴオォォオ……!!!
激しい音を立てて非常ドアが吹っ飛び、機内に風が吹き荒れる。それと同時に、着ていたサマーセーターとジーンズを脱ぎ捨てた。
「キッド?!」
「何を?!」
吹き荒れる風に、ハイジャック犯を拘束していたコナンと世良がハッと顔を上げ、“怪盗キッド”の衣装を纏った事に驚愕する。
「《それではまたいずれ…。月下の淡い光の
言うや否や飛行機の外、高度1万フィートを超える上空へと身を躍らせる。
ゴ、オォォオオオォオオオ…………!!!!
そのまま自然落下に身を任せる事数十秒、眼下に北海道の街の灯りが見えたのを確認してハンググライダーを開く。
「取り
まぁ、“運命の宝石”自体は手に入れた後だったのが幸いだった。元より偽物とは分かっているが、“怪盗キッド”が1度盗むと宣言したものを盗めないのは
いつも通り中森警部に送り返す時に、ついでに“偽物”を“本物”と偽って公表した事についてマスコミにリークすれば良いだろう。酒井の告発の後押しくらいにはなるだろうから…。
北海道の上空を滑空しながら、