成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。白き罪人更新です。

8月13日付けランキングで14位ありがとうございます。
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幕が下りた後で

 865便のハイジャック未遂から4日、学校から帰宅したコナンは珍しく少年探偵団たちとの集まりも無く、毛利家のリビングに寝転がってテレビを眺めていた。

『女優の牧樹里さんがモラルハラスメントで訴えられてから今日で3日。それを受け、次々と被害を訴える若手女優やスタイリストが続出し、芸能界に波紋を広げています。牧さんの所属事務所前には連日報道陣が詰めかけますが、未だ正式なコメントは無く、……』

 ピッ…!

『“怪盗キッド”により偽物と発覚した、牧樹里さんが所有する“運命の宝石”を鑑定した鑑定士が無資格である事が明らかになりました。安価な偽物を本物と偽って鑑定書を偽装し、値段を吊り上げ、その見返りに多額の報酬を得ていたとみられ、昨夜その鑑定士の自宅兼事務所に家宅捜索の手が……、』

 ピッ…!

『先日、スカイ・ジャパン865便をハイジャックしようとした男の素性が明らかになりました。』

 暇を持て余し、適当にザッピングしていたコナンの手が止まる。

 寝転がっていた体を起こし、テレビのボリュームを上げた。

『男の名前は土門(どもん)陽一郎。関東に大きな勢力を持つ指定暴力団“守門(すもん)組”の元構成員です。土門(どもん)容疑者はハイジャックを決行する2日前の夜に、“守門(すもん)組”と敵対関係にある同じく指定暴力団“誠信(せいしん)会”の構成員と口論になり、誤ってその構成員を殺害してしまった事を自供。その事態が発覚するのを恐れて逃亡していましたが、双方の暴力団から追われ、思い余ってハイジャックを決行したとの事です。土門(どもん)容疑者は、“逃げ切れるとは思っていなかった。どうせ殺されるなら多くの人間を道連れにして死のうと思っていた”と供述しているとの事で、ハイジャック完了後にパイロットたちを殺して飛行機を墜落させるつもりだった事を(ほの)めかしています。』

「オイオイ…。」

『警察は“誠信(せいしん)会”の構成員殺害について慎重に捜査を進め、裏が取れ次第、土門(どもん)容疑者を殺人の容疑で再逮捕する方針です。』

「なるほど…。それで()はわざわざあんな真似を……。」

 あの時、幼馴染で親友である中森青子すら(あざむ)く変装で、自分や世良にさえ悟られずに宝石を手にしていた“怪盗キッド”が自らの正体を知らしめる危険を(おか)してまで手を下した理由がやっと掴めた。

「相変わらず“ハートフル”な奴…。」

 あの時、好敵手(怪盗キッド)が行動を起こすのが後数分遅ければ、キャビンアテンダントの進藤は死んでいてもおかしくは無かった。仮に、進藤が土門(どもん)に屈してコックピットへのドアの鍵を開けてしまっていたならば、パイロットたちはもちろん乗客の命も無かっただろう。

 コナンが好敵手(怪盗キッド)にまた借りを作ってしまった、と内心苦々しく思っていると、ニュースキャスターが続けた。

土門(どもん)容疑者の行いによって緊張感が高まり、抗争も懸念されていた“守門(すもん)組”と“誠信(せいしん)会”ですが、土門(どもん)容疑者の逮捕により、その緊迫した状況は緩和に向かいつつあるとの事です。――――以上、斎藤がお伝えしました。』

 そこで画面がワイドショーのスタジオへと切り替わる。

 コメンテーターやゲストの女優などがあーだこーだと議論を交わす様子を数秒眺め、コナンはテレビを消した。

「あのヤロー、今度会ったら覚悟しとけよ…!」

 無理矢理にでも借りを返してとっ捕まえてやる…!

 コナンが内心で誓った、その同時刻―――――…。

 

「へっくち…!」

「どしたの?」

 掃除中に突然くしゃみをした千暁(ちあき)に、青子が驚いたように顔を向けた。

「ん~?わかんない。(ほこり)のせいかも。」

 すん、と軽く鼻を啜りながら()ちる千暁(ちあき)だったが、内心では(おのの)いていた。

(今、“名探偵”の声が聞こえた気が…。)

 ゾワリ、と嫌な予感に背筋が震えるが、気付かないフリをして青子に尋ねる。

「そう言えば青子、私の荷物ってまだ返してもらえないのかな?おじさん、何か言ってなかった?」

「あ、ゴメンわかんない。今日帰ってきたら聞いてみよっか?」

「お願いして良い?」

「オッケー!」

 865便に置き去りにした、“千暁(ちあき)”の荷物の事である。

 あの段階でのエスケープははっきり言って不本意だった為、荷物は全部置いてこざるを得なかったのだが、あの後に用意していた荷物が自宅から無くなった、と被害者のフリをして中森に相談したのだ。

 用意しておいた“キッドカード”を見せれば、中森は読み通りに“怪盗キッド”が千暁(ちあき)に成り代わる為に彼女の荷物を持ち出した、と判断してくれ、“怪盗キッド”の手がかりが無いかどうかを調べた後で全て返却する、と約束してくれた。

 見られて困る物は全て身に付けていた為、鞄に入っていたのは着替えの他は財布や携帯、化粧ポーチ位である。調べられてマズイ訳でも無いが、数日経つのに未だに1度も話題に出ていない。

 まぁ、中森も色々忙しい身であるのでまだ調べ終えていないのだろう、というのは想像が付く。そういう証拠品は得てして調べるのに時間がかかるものだろうから。

 しかし、“普通の高校生”なら何日も自分の荷物が返ってこなかったらまず話題に出す。

 わざわざ青子に尋ねたのはその為でもあるのだ。

「財布はまだしも、携帯が無いと色々不便で…。青子んちの電話借りてママには電話出来たから、心配はしてないと思うけど…。」

 駄目押しのように口にすれば、青子は「任せて!」と力強く頷いた。

「あれから4日経つもんね。お父さんせっついてみるから待ってて!」

 携帯が無いのはさぞかし不便だろう、と青子が頼もしく請け負ってくれたのを「よろしくね。」と微笑む。

(まぁ、“仕事用”の携帯は持ってるから支障はそれ程無いんだけどね…。)

 内心で舌を出しつつ、呟く。

 しかし、今時の女子高生の手元に携帯が無いのに文句の1つも言わないのは逆に怪しいので、それはそれ。これはこれ。

 イレギュラーな事態のせいで肉体的にはそうでも無いにしろ、精神的な疲れが後でどっと襲ってきた前回の“仕事”を思い返し、次の“仕事”は少し控えよう、と内心で決めた―――――…。

 

 

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