成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。白き罪人更新です。
今回から新章突入です。

以前質問にもあった“あの人”が登場。

お気に入り登録、評価、誤字報告ありがとうございます。


三世との邂逅編
屈辱と怒り


 満月が都心の空を彩る夜、月島川近くの宝石店では数十人の警官と野次馬、4台の装甲車がその近くを固め、物々しくも興奮と熱気に包まれていた。

「「「「「「キッド!キッド!キッド!」」」」」

「警部!全車配置に着きました!」

「うむ!」

 野次馬‐(もとい)キッドファンの声援の中、部下からの報告を受けた中森が頷く。

「「「「「「キッド!キッド!キッド!」」」」」

 キッドファンの興奮が最高潮に達した時――――――――。

「キャ――――――――ッ!!!キッド~~~~!!!!」

 宝石店の入ったビルの前のファンが黄色い声を上げる。

 中森がビルを見上げると、“怪盗キッド”が屋上の(ふち)に足をかけているのが見えた。

「キッド―――!頑張って―――――――っ!!」

「逃げて―――――――!!」

「手ェ振って――――――!!」

「こっち見てキッド―――――――!!」

 それを目にしたキッドファンの女性たち‐通称:キッドガールが一斉に騒ぎ出し、キープアウトのロープから身を乗り出す彼女たちを側の警官たちが必死で抑える。

「出たなキッド!全員配置に着け!!」

「「「「「「ハッ!!!」」」」」」

 中森の指示に警官たちが一斉に配置に着く。

 その様子を屋上から眼下に眺めながら、“怪盗キッド”が手にしたダイヤを掲げ、不敵に微笑む。

「フフ…。確かにダイヤは頂きました。」

「「「「「「キャアァアアアアッ!キッド――――――!!!」」」」」」

 一斉に上がったキッドガールの歓声を、数十m離れた場所で愛用のバイクに(もた)れかかりながら聞いていた千暁(ちあき)は、()()の“怪盗キッド”を見上げた。

「一体、何者………?」

 これまでの、有象無象の偽者たちとは明らかに格の違いを感じさせる身のこなし…。

 最近千暁(ちあき)が良く扮する“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”ではなく、以前良く扮していた“黒羽快斗(かいと)”であるという違いはあれど、その姿と声はまさしく“怪盗キッド”そのもの。

 盗みの手口も、付け焼き刃などではあり得ない“本職”の手際。

 その2つを併せ持つ相手など、業界広しと言えどもそう多くはない。

(まさか……!?)

 その中でも、わざわざ“怪盗キッド”に化けるなんて愉快犯的な事をやりそうな“大泥棒”に、1人だけ心当たりがあった。

「キッド捕獲作戦開始―――――!!」

 中森の指示で、指令車のオペレーターが「全車、タービンスタート!!」と無線機に叫ぶと同時に、4台の装甲車の天井が一斉に開き、巨大なタービンが現れる。

 ジェット機のような凄まじい轟音と共に、空気が一斉に吸い込まれ始めた。

 ビルを取り囲む4台のタービンを見下ろした“怪盗キッド”が、その純白のマントを(ひるがえ)して後ろに走る。

「キッドは西へ!」

「2号車、4号車、パターンBへ移行!」

 指令車のモニターにビル周辺の地図が映し出され、風の流れが表示された。2号車のタービンによって、街路樹が大きく揺れ始める。

 ビルの屋上からハンググライダーで飛び立った“怪盗キッド”だったが、その直後にサーチライトで照らし出され、ほぼ同時にタービンからの強力な突風に襲われる。

 下からの突風に、ハンググライダーは崩れ、身動き出来ないまま“怪盗キッド”が回転しながら上空へと舞い上がっていく。

 月島川の方向へと飛ばされていく“怪盗キッド”に、千暁(ちあき)もまたヘルメットを被り、愛車を発進させた。

 グォオオ…オン…!!!

 

 警官に発砲してその包囲網を抜け、月島川を屋形船で遡上(そじょう)していく“怪盗キッド”を苦い思いで橋の上から見下ろしつつ、逃走経路をシミュレートする。

 もし、あの“怪盗キッド”が千暁(ちあき)の想像通りであれば、恐らくは船を捨てて大通りに出るだろう。そして、先回りするべく裏通りに入ろうとハンドルを切り換えした時だった。

 ヴィイイイ……!!!

 ザアァアアア――――――!!!!

 唸るようなモーター音と共に、水面をかき分ける音が響く。

「?!」

 思わず千暁(ちあき)が振り返った時、

「待てぇ、キッド!!」

 月島川をスケートボードタイプの水上ジェットで遡上(そじょう)する“名探偵”が目の前を通過していくところだった。

「………とうとう水上まで制覇したんだ、“名探偵”…。」

 あの小さな体で、あの身体能力は一体何なんだ。

 (はた)から見れば“お前が言うな”というところだが、生憎(あいにく)ツッコんでくれる人間はいなかった。

 一刻も早く回り込まなくてはいけないのだが、一瞬放心してしまう。

 だが、いつまでも呆けている時間など無い。

 グオオオオ………ンン!!

 気を取り直して大通りへの最短ルートを爆走する。

 あのまま遡上(そじょう)していけば、川はT字に分かれている。その岸壁の先は大通りへと繋がる道路になっており、車に乗り換えるならそのタイミングだろうという確信があった。

 しかし、一瞬でも放心してしまった事が仇となり、千暁(ちあき)が大通りへと到着した時には、既に屋形船から白いアルファロメオに乗り換えた“怪盗キッド”と、水上ジェットをお馴染みのスケボーに変えた“名探偵”が派手なカーチェイスを繰り広げているところだった。

 これ以上近付いては気付かれる。

 仕方無くバイクを停止させ、裏道から大通りへと繋がる路地に身を潜ませ、150m程後方からオペラグラスで遠ざかるカーチェイスを眺める。

 スケボーで疾走しながらえげつない威力のサッカーボールを蹴り飛ばすコナンに、“公共の道路で迷惑な…”と内心冷や汗を流す。

 しかしその直後、アルファロメオから飛び出した人影に、千暁(ちあき)は自身の予想が正しかった事を悟った。

「でぃや―—――――っ!!!」

 という気合と共に、抜き放った日本刀で“名探偵”のスケボーを縦に真っ二つに斬り裂くなど、そんな芸当が出来る剣の達人など他にいない。

 辛くも地面に着地したもののバランスを崩し倒れ込み、また追跡手段を失った事で悔し気にアルファロメオを見送る“名探偵”の様子をオペラグラスで確認しつつ、千暁(ちあき)は確信する。

「13代目石川五右衛門(ごえもん)………。となると、あのキッドはやっぱり…。」

 この業界で知らぬ者無し。

 彼の“大怪盗”アルセーヌ・ルパンの孫にして、世紀の“大泥棒”。

 “ルパン三世”。

 彼の“大泥棒”が何故わざわざ“怪盗キッド”の名を(かた)り、姿を使ったのか。理由などもうどうでも良い。

「良くも“怪盗キッド”の名に傷を付けてくれたわね……!」

 千暁(ちあき)の、紫紺(しこん)がかった蒼い瞳が堪え難い怒りに燃える。

 これが“黒羽千暁(ちあき)”本人の名であれば、ここまでの怒りは覚えなかっただろう。だが、千暁(ちあき)にとって“怪盗キッド”は父の形見である。

 既に鬼籍に入ってしまった父の存在を感じる事が出来る、言わば父娘(おやこ)の絆そのもの。

 “怪盗キッド”は決して人を傷付けない。実弾入りの銃など(もっ)ての(ほか)

 それを勝手に名を(かた)った挙句に泥を塗り、華麗なる“ショー”を(けが)すような真似をしてくれるとは…。

 いくら相手が彼の“大泥棒”と言えども決して赦される事では無かった。

「見てなさい…。この屈辱、必ず返してあげる………!!!」

 激しい怒りをその瞳に宿し、いっそ恐ろしささえ感じさせる艶やかな微笑みを浮かべながら、千暁(ちあき)は“復讐”を誓った。

 

 

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