成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。
IFのの続きです。前回ちろっと匂わせた“お巡りさん”との関係が明らかになります。
たぶん、次回に続くとしたら“緋色の帰還”編ですね。



IF Story 2 

 勝手知ったる昔馴染みの家。千暁(ちあき)人気(ひとけ)の無い時間を見計らってそこに侵入していた。

 土日の昼過ぎ、住宅街のこの辺りは午後2時から4時頃までの間は極端に人通りが少なくなるのだ。

 本来の住人である昔馴染みも、その両親も、そしてその許可を得ている間借り人も現在は留守。

 両親は海外で、昔馴染みは小学校の同級生と隣人の博士と一緒にキャンプ。間借り人も隣人の少女の護衛でそれに同行している。

 そんな中、密かに工藤邸に侵入した千暁(ちあき)は極力物を動かさないように、そして寸分(たが)わずに元の位置に戻しながら家探しを行っていた。一切の痕跡(こんせき)を残さないよう、髪をキャップで完全に覆い、手袋を着け、靴をビニール袋で覆って足首で固定したその姿は、見ようによっては泥棒にも捜査官のようにも見える。

 千暁(ちあき)が探しているのは、“間借り人”の正体に繋がる物証。

 1番怪しんでいた洗面所には変装道具の(たぐい)は見当たらなかった。

 ならば、寝室もしくは書斎の2択。

 そう当たりを付けて忍び込んだ客用寝室の1室。ベッドの下には見当たらなかったが、枕を持ち上げれば拳銃が隠されていた。

(ビンゴ♡)

 “依頼人”から渡されたスマホで静かにその様子を撮影し、即座にメールで送る。シャッター音がしないのは助かるが、一応捜査用だというのにかなりの犯罪臭がするのは何故(なぜ)だろうか。

(いや、人の事は言えないんだけどさ……。)

 完全に非合法的な手段で忍び込んだ自分が言える事では無いが……。

 まぁ、それはそれ。これはこれ。

 依頼をこなしてとっとと撤収するべきである。

 いくらセキュリティーを無効化しても、人目についてしまったら何の意味も無い。

 本腰を入れて探せば、出るわ出るわ…。

 クローゼットの中に隠されたギターケースの中にはバラバラに分解されたライフル、そしてその(かたわ)らに置かれたポーチの中には予備のウィッグと変装用の化粧品。しかも、ウィッグには本人の物と思われる頭髪が残されていた。

(ラッキー…!)

 持参したビニール袋に入れて丁寧にしまい込む。

 本来なら指紋も採取したいところだが、流石(さすが)にこの場で行えば痕跡(こんせき)が残ってしまうし、物を持ち出しても気付かれる。

 残念だがそれは出来そうに無かった。

 写真に収めてメールで送った後、全てを元通りにしまい込む。

(次は、と………。)

 場所を書斎に移す。

 本来、この(やしき)の主人のものである机の上には、ノートパソコンが1台。

 手早く自身が持ち込んだモバイルパソコンと繋ぎ、ノートパソコンを起動させる。

 カシャカシャカシャ……!

 モバイルパソコンを操作し、自作のハッキングシステムを起動させれば、わずか2秒足らずでノートパソコンのパスワードが解除された。

(良し…!)

 そのままモバイルパソコンにUSBメモリを差し込み、ノートパソコンの全データのコピーを開始する。

 コピー終了までおよそ3分。

 その間に、書斎の中を探す。

 そして、机の引き出しから盗聴器の受信機を見付ける。

 電波の発信源を確かめれば隣家のリビングと寝室、地下の研究室に仕掛けられているようだ。

(はい、アウト――――――――♡)

 もちろんそれも写真に収め、メールで送信する。

(さて、と…。そろそろ撤収した方が良いかな……。)

 データのコピーも終わったようだ。

 そろそろ潮時だろう。

 ノートパソコンをシャットダウンし、モバイルパソコンとUSBメモリをしまい込む。

 最後に物の配置が元通りになっている事を確認して、そのまま工藤邸を後にした。

 

 カランカラン……♪

「いらっしゃいませ―――♪」

「いらっしゃいませ。」

 軽やかなドアベルの音と共に足を踏み入れたのはポアロ。

「お1人様ですか?」

「はい。」

 ただの店員として接してくる“依頼人”に、千暁(ちあき)も何食わぬ顔で返す。

「それでは、カウンターへどうぞ。」

 (うなが)されるままカウンター席へと座り、手渡されたメニューに目を通した。

 もう1人の店員である梓がカウンター越しに出してくれたお冷を1口飲み、注文する。

「日替わりケーキセットをアイスティーでお願いします。」

「はい、少々お待ちください。」

 笑顔で頷く梓や他の客に悟られぬように、指先でカウンターを軽く3回ノックした。

 ノック3回は渡す物がある、という合図。

 (ちな)みに4回は後で直接報告、5回はとりたてて収穫は無し、である。

 そしてその後は普通にケーキ(ベイクドチーズケーキだった)とアイスティーを堪能(たんのう)し、特に長居する事も無く伝票を手に席を立つ。

 それを見て、すかさず“依頼人”‐安室(あむろ)が自然な動きでレジに入る。

 財布から千円札を出す際に、他人には悟られないように例のUSBメモリをその下に忍ばせ、手渡した。

 USBメモリの感触を確かめて一瞬笑みを深めた安室(あむろ)だったが、そのままにっこりと営業スマイルを披露し、「1,000円お預かりします。」と精算を続ける。

「470円とレシートのお渡しです。ありがとうございました。」

「ありがとうございました―――――!」

 カランカラン…♪

 安室(あむろ)と梓の声を背中にポアロを出、そのまま足を止めないまま歩きながらお釣りとレシートを財布にしまう。

 そして、ポアロから充分離れた事を確信した後で、レシートに重ねられて渡されたメモに目を通した。

 “20時にいつもの場所で”

(了解…。)

 となると、一先(ひとま)ず自宅に戻って着替えを取って来なくてはいけないだろう、とこれからの予定をシミュレートしていく。

 ここから江古田の自宅まではバスを利用して30分程。

 …が、ちょうど良いバスが無ければもう少しかかるだろう。

 現在は午後4時。すなわち16時を少し過ぎたところ。20時、午後8時までは多少時間があるが、移動時間と準備等を考慮した場合、そこまで余裕がある訳でも無い。

(……バイク使お…。)

 たぶん、それが1番手っ取り早い。

 

 ――――――――4時間後、千暁(ちあき)はメイクとウィッグで軽い変装を施し、米花駅近くのとあるホテル内のバーにいた。

 自宅から駅までバイクを飛ばし、その後駅のトイレで着替えたのである。

 セミロングの亜麻色の髪に、背中の大きく開いた黒いワンピースにシルバーのピンヒール。耳には小粒だが本物のパールとダイヤモンドをあしらったゴールドのイヤリング。そして、胸元には同じデザインのペンダント。

 顔もよくよく見れば面影があるが、一見して千暁(ちあき)とは分からない程大人びている。

 服装とメイク、何よりもそのこなれた雰囲気も相まって、今の彼女を高校生と気付く者はいないだろう。

「お待たせしました。」

『遅かったじゃない。』

 20時からやや遅れて登場した安室(あむろ)()ねたように返すが、声まで変えているあたり芸が細かい。

「すみません。埋め合わせはしますから……。」

『ホントに~?』

「もちろんですよ。…場所を変えましょうか。下のレストランを予約しているんです。」

 そう言って千暁(ちあき)(うなが)し、会計を済ませる安室(あむろ)は実にスマートだった(バーで何も頼まないのは不自然この上無い為、口は付けていないが一応カシスオレンジを頼んでいた)。

 ―――――そして場所を移した中華料理店の個室で、盗聴器のチェックを終えた後。

 それまでの“仮面”を取っ払い、本題に入っていた。

「君のお陰で、僕の予想を確信に変える事が出来たよ。」

「いえいえ…。こちらも色々便宜(べんぎ)を図ってもらっていますから…。」

 そう。公安に協力する事と引き換えに、これまで千暁(ちあき)が行ってきた怪盗行為と、これから行う“仕事”は罪に問われない。

 これまで行ってきたのも、ほとんどが犯罪者の告発である為、被害届もほとんど提出されていない事から不問にされたのだ。超法規的措置ではあるが、罪に問うよりも引き込んだ方が有益と判断された為である。

「そうそう…。“チェック”をかけるつもりなら、1つアドバイスを……。」

「アドバイス?」

 実に嬉しそうに話す安室(あむろ)に釘を刺す。

「“あの居候(いそうろう)”を(かくま)っているのは、“平成のホームズ”だけではありません…。それよりも上手の“マイクロフト”と、茶目っ気たっぷりの“アイリーン”が一緒です。…まぁ、厳密に言うと関係性は異なりますけどね。3対1は卑怯じゃないかな、と思いまして。」

「……それは、“平成の女二十面相”が協力してくれる、という事かな?」

 キラッと目を光らせた安室(あむろ)に力強く頷いて見せる。

「お望みならば。………そもそも、私“平成のホームズ”たちにはまだちょっと怒ってるんですよね。」

「…と言うと?」

「だってそうでしょう?自分の実力を過信し過ぎて死にかけた挙句にあんな()()な目に()った癖に、まっっったく()りてないんですもん。………それに、“あの居候(いそうろう)”嫌いなんですよね。」

「へぇ?」

 “あの居候(いそうろう)”が嫌い、という1言に食い付いた安室(あむろ)が若干身を乗り出した。

「君、()()()と面識があったのかい?」

「直接は無いんですけどね…。私の()()が“あの居候(いそうろう)”に散々利用されて捨てられたんですよね。それに護衛目的とは言え、盗聴は犯罪でしょう?それも()()の女の子相手に。」

 千暁(ちあき)の言葉に、安室(あむろ)の笑みがより深くなった。

「……やはり君とは上手くやっていけそうだよ。」

「私もそう思います。」

 千暁(ちあき)もまた心からの笑みで返す。

 ――――――――その後、“作戦会議”は日付が変わる間際まで続いた。

 

 

 




某“赤い人”嫌いの2人が手を組んでアップを始めました。

………続くと良いな…。
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