成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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本編でなくてすみません…。
ネタに詰まったのでちょっと息抜きにIFバージョンをアップします。
今回は、これまでに上げていたIFとはまた別の設定で、快斗が双子の兄として存在する世界。
“怪盗キッド”は快斗で、千暁は寺井と共にそのサポートに徹しています。基本的な性格やスペックは本編とさほど変わりありませんが、前世の記憶は無し。


“まじっく快斗”原作を知らない人にはやや不親切。
白馬に快斗の正体がバレたところから始まります。
突然始まって突然終わるので、何でも許せる人向け。
それでも良い方のみどうぞ…。


もし、千暁と快斗が双子の兄妹だったら

「転校生に正体がバレたかもしれない?」

 今夜の“仕事”への最終打ち合わせを行っていた最中(さなか)に放られた爆弾に、千暁(ちあき)が目を見開く。

「ああ…。まぁ、大丈夫だって!証拠なんざ残してねェし、疑いは1度晴らしてるしな!」

 心配する千暁(ちあき)をよそに、快斗は以前中森警部からの疑いを晴らした事を上げて楽観的に構え、「ケケケ…!」と笑っている。

(白馬(さぐる)…。厄介な相手ね………。)

 どんな方法で快斗=“怪盗キッド”と悟ったのかは定かでは無いが、“高校生探偵”という肩書は伊達では無いらしい。そして、その正体を明らかにする手段があるのだろう。

 でなければ、わざわざ“怪盗キッド”が予告を出した美術館に快斗を招待したりなどしないだろうから。

 しかし、厄介な事になった。

 例の“赤魔術”の“魔女”がわざわざ警告してくる位である。決して楽観視出来る状況では無いというのに、いまいち快斗には自覚が足りない。

 楽観的な片割れ(快斗)にヤキモキとしながら、この状況を打開するべく、思考を巡らせる。

(前の青子の遊園地デートの時とは、状況が違う……。青子は快斗を信じてくれているから、多少不自然な事があっても無意識に除外してくれてたけど、今回は完全に“怪盗キッド”が快斗だと確信されてる………。)

 やっぱり、“例の手”でいくべきか。

「快斗。」

「あ?」

 寺井(じい)が下調べで手に入れた美術館の見取り図を確認していた快斗が千暁(ちあき)の呼びかけで顔を上げる。

「美術館への招待、受けちゃったんでしょ?」

「おう。安心しろよ。オレ様にかかりゃー、あーんなヘボ探偵の1人や2人、誤魔化(ごまか)すのは訳無いぜ…!」

 ケケケ、と楽し気に笑う快斗に目を(すが)め、「そう…。」とだけ返した。

 これは何を言っても無駄だ、と早々に悟る。

 快斗はプライドが高い。

 IQ400とも言われる天才的頭脳に、超人的な身体能力。そしてアマチュアとは思えない程のマジシャンとしての才能…。

 これまで、いずれか1つの分野だけでも快斗に並び立てる者は同世代にはいなかった。

 片割れである千暁(ちあき)を除いては…。

 そして、この数ヶ月の間に(つちか)った、警察すら手玉に取ってきた怪盗としての実績。

 元々楽天家で調子に乗り易い気質は、それによって更に増長されてしまった。

 1度痛い目を見れば改めるだろうが、今回はそんな悠長な事は言っていられない。一歩間違えば即逮捕の危険性があるのだから。

(しょうがない“お兄ちゃん”なんだから……。)

 まぁ、それをサポートするのが(千暁)の役割なのだが…。

 内心で溜息を()きつつ、意識を切り替える。

 快斗の驚く顔を想像しつつ、今夜のシミュレーションを行う千暁(ちあき)の顔には、片割れである“怪盗キッド”そっくりの不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 ――――――――その夜、大島美術館。

 時刻は“怪盗キッド”が犯行を予告した時間、午後9時の1分前。

 その場にいたのは、中森警部率いる警官達と高校生探偵の白馬(さぐる)、そしてこの場に招待された青子と“怪盗キッド”である快斗。

「警部、予告1分前です!」

「ウム!」

 警官の1人が中森警部に予告時間まで後わずかに迫っている事を告げる。

(よーし、そろそろキッドに変身するか…。)

「あれ?快斗、どこ行くの?」

 快斗がひっそりと宝石の展示してあるフロアから姿を消そうとした途端、目ざとくそれを見付けた青子が快斗に行き先を尋ねる。

「トイレだよ、トイレ!!」

「いってらっしゃーい!!」

 快斗の切り返しに頬を赤らめた青子が見送った直後、ガシャッ!と音を響かせて快斗の右手を白馬が手錠で拘束した。

「へ?」

「そうはさせないよ黒羽くん……。」

「な、何の真似(まね)だ!?」

 突然利き手を拘束された快斗が、自身を拘束した張本人である白馬に詰め寄る。

「フフフ…。もうネタは上がっているんだよ…。キッドの残した毛髪から、彼が高校生だという事が判明したのだよ。そして現役高校生のデータとキッドのデータを照らし合わせていくうちに…、ある名前が弾き出されたのだよ…。黒羽快斗、君の名がね!!」

「んな…、偶然だよ偶然……。」

 自信満々に言い切る白馬に、快斗が内心の動揺を押し殺したまま、ポーカーフェイスで否定する。

「フン、今に分かるさ…。怪盗キッドの予告時間になればね…。」

(くそぉ、何とかここから抜け出さなけりゃな…。)

 快斗が打開策を見出そうとした時だった。

「警部、時間です!!」

「え、もう…?」

 予告時間である午後9時になってしまった。

「よーし、者共抜かるなよ――――!!」

 中森の(げき)が飛び、快斗が思わず焦りを顔に出してしまった瞬間、

 プシュ――――――――――――――ッ!!!!

 突如(とつじょ)として宝石の展示ケースを中心に、煙幕が上がった。

「な、何だ…?!」

「何も見えない!!」

「ええい、慌てるな、奴だ!怪盗キッドだ!!」

 慌てる部下を中森が一喝(いっかつ)した直後だった。

「《フッ…!ハハハハハハ…!ご機嫌、中森警部…。そして白馬探偵…。》」

 煙幕が晴れ、展示ケースの上に“怪盗キッド”が現れた。

「何ぃ!?」

「そんな馬鹿な…!?」

 快斗と白馬が上げた驚愕の声が重なる。

「《予告通り、宝石は頂いて行きます。それでは、またいずれ、月下の淡い光の(もと)でお会いしましょう!!》」

 宝石を掲げ持った“怪盗キッド”がパチン!と指を鳴らすと同時に、館内の電気が一斉に消える。

「で、電気だ!早く電気を点けろ!!」

「く、暗くて何も…。」

「痛てて!!」

 急な暗闇に目が慣れていな中森始め、警官達の悲鳴が上がった。その直後、バタンッ!と何かが開くような音が響き、フロアに風が吹き込んだ。

「ま、窓だ…!奴を飛ばすな!!」

 中森の叫びから数秒後に電気が復旧したが、既に“怪盗キッド”は美術館から姿を消していた。

 開かれた2階の窓から、美術館から飛び去る“怪盗キッド”のハンググライダーが視認出来る。

「キッドを追え―――――!今日こそ絶対に逃がすな!!」

 中森の号令と共に、美術館内の警官が一斉にパトカーへと走り、追跡を開始する。

 その様子を、快斗と白馬が半ば呆然とした様子で見送っていた。

 

 ――――――1時間後、黒羽家。

「ただいま――――…。」

「おかえり、快斗。」

 まだ若干呆然とした様子で帰宅した快斗が見たのは、正体不明の“怪盗キッド”が盗んだ(はず)の宝石を(もてあそ)びながら快斗を出迎える片割れ(千暁)の姿だった。

千暁(ちあき)?!お、オメー、それ……!」

「フフフ…。《私のショーはいかがでしたか?》」

 クスクスと笑いながら、後半を快斗そっくりの声で尋ねる千暁(ちあき)に、快斗が叫ぶ。

「さっきのキッドはオメーだったのかよ?!」

「シ――――…。ご近所迷惑だよ…。青子に聞こえたらどうすんのさ?」

「ヤベッ…!」

 千暁(ちあき)の忠告に即座に口を押える快斗に溜息を()きながら、種明かしを行う。

「そ…。さっきの“怪盗キッド”は私。前に、青子に疑われた時に誤魔化(ごまか)すのに苦労したでしょ?あの時から考えてたの。“怪盗キッド”が2人いれば快斗のアリバイは成立するって。快斗に変装する事も考えたけど、青子の目を誤魔化(ごまか)すのはたぶん無理だし…。」

「だからって、そんな危ねェ真似(まね)をオメーにさせるなんて…!」

 心配そうに言い(つの)る快斗に苦笑しながら返す。

「それはこっちの台詞(せりふ)…。私だって心配なんだよ?大丈夫。私がやるのはあくまでもサポートだけ…。快斗を全力でサポートするのが私の仕事。でしょ?」

 にっこりと微笑む千暁(ちあき)に、こうなったら絶対に引かない、と悟った快斗が溜息を()いた。

「わあ―――――ったよ…。オメーに任せる…。そん代わり、絶対に無茶はするんじゃね――ぞ!」

「分かってるって。」

 その後、寺井(じい)の説得に2人で手を焼くのはまた別のお話……。

 

 

 




因みに、原作で快斗の代わりに“怪盗キッド”に扮した紅子は、千暁が身代わりになるつもりだという事を水晶玉で知ったので様子見のみに留まりました。
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