成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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取り敢えずベルツリー急行編終了


ベルツリー急行編
貸し1つ


 ―ベルツリー急行内―

 ブー、ブー…!

 ピッ

 コナンのポケットに入っていたスマホが振動し、真剣な、見ようにもよっては焦っているような顔でコナンがメールを開いた。

「ん?何か気になる事でもあるのか?」

 その様子を見た世良(せら)真純(ますみ)、否世良(せら)の姿を借りた千暁(ちあき)がコナンを覗き込む。

「あ、ううん…。ボクも火事の記事見てたんだけとまだ何もわかんなくて…。」

 さっと、スマホを隠しながらコナンが誤魔化(ごまか)す。

「なーんだ。ボクはてっきり…。《私をお探しなのかと思いましたよ。》」

 後半をキッドに扮する時に良く使う男のものへと変え、小声で(ささや)く。

「お、お前?!」

「《シー…。どうやら“名探偵”はお困りのご様子…。いかがです?()の仕事を邪魔しない、と確約してくださるのであれば手を貸す事も(やぶさ)かでありませんが…。》」

「っわーたよ…。その代わり、ちょっと体張ってもらうぜ…。」

 (いささ)か不本意そうな顔をしながらも、背に腹は代えられない、とばかりに了承するコナンの姿に主導権を握れた事への軽い優越感を味わいつつ、この後に(ひか)える本番一発勝負の脱出劇に気を引き締める。

「ちょっと耳貸せ……。」

 そこから説明されたのは、自身の()()と相違無かった。

「《承りました…。その代わり、条件をお忘れなく…。》」

「分かってるっての…。それより、本物の世良(せら)はどうしたんだよ……?」

「《ご心配無く…。本物の彼女には指1本触れておりませんよ…。私は出発の日時変更のメールをお送りしただけですから…。》」

「…なら良いけどよ………。」

「おい、何をこそこそしてんだよ?!さっさと行くぞ!」

「あ、うん!」

 小声でコソコソとやり取りする“世良(せら)”とコナンを見咎(みとが)めた小五郎に、瞬時に“世良(せら)”の()()を被り直し、立ち上がる。

「何でも無いよ。さ、容疑者を絞り込みに行こうか。」

 

 

 そして、容疑者の絞り込みが完了し、“眠りの小五郎”が全ての真相を暴いた後…。

 犯行現場でもある一等車である8号車のB室から廊下へと煙が流れ出る。

「ちょ、ちょっと何なの?この煙…。」

 すぐさま異変に気付いた乗客たちに、ダメ押しのように上がった一言。

「か、火事!?火事だ!!」

「「「「「え?」」」」」

「皆さん、前の車両に避難してください!!」

「「「うわああああああ!!!」」」

 パニックを起こして前の車両へと流れ込む乗客たちを見て、コナンが声を上げた。

「世良の姉ちゃんも早く!ボクはおじさんと一緒に行くから!!」

(目がさっさと行けって言ってるよ…。)

 内心顔を引き()らせつつ、“世良(せら)”として頷く。

「分かった。蘭くんたちも心配だから、ボクは先に行ってるよ!!」

 そして、そのまま乗客たちの流れに乗り、6号車まで走り、人目に付かないように乗客が避難した客室へと入り込んだ。

 ビリッ…!

 そのまま世良(せら)真純(ますみ)の仮面を()ぎ取り、備え付けの洗面台を使って手早く“宮野志保”のマスクを被り、ウィッグを合わせる。

 バサッ…!

 世良(せら)真純(ますみ)らしい服を脱ぎ捨てれば、その下に来ているのは女性らしいブラウスと白のパンツ。

 最後に鏡でチェックすれば…

(完璧…。)

 この間、約30秒。そして、元いた8号車へと走った。

「ゴホッ、ゴホッ…!」

 8号車のB室、指示されていた場所へと戻り、煙に咳き込むふりで声のトーンを調整する。

 そして後ろに気配を感じ取ったと同時に、その声はかけられた。

流石(さすが)ヘルエンジェルの娘さんだ…。良く似てらっしゃる…。初めまして…。バーボン…。これが僕のコードネームです…。」

(さて、いよいよ正念場…。)

 “安室(あむろ)透”を名乗る、“組織としての顔”を見せた男に向き直り、暴れる鼓動を(なだ)めるべく、気付かれないようにゆっくりと深呼吸する。

「このコードネーム聞き覚えがありませんか?君の両親や姉とは会った事があるんですが…。」

「ええ…。知ってるわよ…。お姉ちゃんの恋人の諸星(もろぼし)大とライバル関係にあった組織の一員…。お姉ちゃんの話だと、お互い毛嫌いしていたらしいけど…。」

 ブラウスの下に隠したスマホから伝えられる通りに言葉を紡ぐ。イヤホンも服に隠してあるし、髪が邪魔で見え辛い。変装技術も自分で言うのも何だが、完璧と自負している。

(後は、私の演技力…。)

「ええ…。僕の(にら)んでいた通り、あの男はFBIの犬でね…。組織を裏切った後、殺されたっていうのがどうにも信じ難くて…。あの男に変装し。あの男の関係者の周りをしばらくうろついて反応を見ていたんです…。お陰であの男が本当に死んでいる事が分かりましたけどね…。まぁ、変装させてくれたのは今回、僕の代わりにあの男に化けてくれた仲間ですが…。君がここへ現れたという事は、君に恐怖を与える効果は十分にあったようだ…。死んだあの男に成り済ませるのは君も良く知ってる彼女だけですから…。さぁ…。手を上げたまま移動しましょうか…。8号車の後ろの貨物車に…。」

 懐から取り出した拳銃を構える男から目を逸らさず、ゆっくりと後ろに下がる。

(ホントに警察官…?殺気が凄いんだけど……。)

 ともすると撃たれるんじゃないかというプレッシャーが重い。

 じりじりと下がりながら、そのプレッシャーに耐えているうちに、ドンッと背中が貨物車の扉にぶつかった。

「さぁ、その扉を開けてください…。その扉の向こうが貨物車です…。」

 ガラ…!

 男から目を離さないように、後ろ手で扉を開けている間に、男が懐を探る。

「ご心配無く…。僕は君を生かしたまま組織に連れ戻すつもりですから…。」

 そして、懐から取り出した()()を列車の連結部分へと置いた。

「爆弾でこの連結部分を破壊して…。その貨物車だけを切り離し、止まり次第ヘリでこの列車を追跡している仲間が君を回収するという段取りです。その間、君には少々気絶をしてもらいますけどね…。まぁ、大丈夫。扉から離れた位置に寝てもらいますので、爆発に巻き込まれる恐れは………。」

 そこで初めて、男から視線を外す。

 貨物車中に積まれている()()と、それを隠す為の布。見せ付けるように(めく)れば、()()(あら)わになった。

「大丈夫じゃないみたいよ。この貨物車の中、爆弾だらけみたいだし…。」

「!?」

「どうやら段取りに手違いがあったようね…。」

 本当に知らなかったらしく、一瞬目を見開いた男に少し安堵(あんど)する。

「仕方無い…。僕と一緒に来てもらいますか…。」

「悪いけど…。断るわ!」

 言うが早いか、素早く貨物車の扉を閉め、爆弾に紛れ込ませるようにして隠しておいたハングライダーを素早く装着し、列車が橋に差し掛かっている事を確認して飛び降りた。

 その数秒後、

 ドンッ!!!

 貨物車が爆発する。

「ギリギリセーフっと……!」

 やり切った達成感を抱えながら、バッとハングライダー開き、滑空姿勢に入った。

「さて、寺井(じい)ちゃんに迎えに来てもらわないとね…。」

 ビリッとマスクを()がし、ウィッグをポケットに突っ込みながら自身のスマホを取り出す。“名探偵”への連絡は、名古屋で気を()んでいるだろう寺井(じい)を安心させてからでも良い。

「これで()の仕事は少し楽だと良いんだけど…。」

 溜息が1つ、風に流れて消えた。

 

 

 




世良さんに変装したのは、コナンの近くにいても怪しまれない、尚且つコナンがやや世良を警戒しているのでそれ程親しくも無く、細かな癖などを把握しておらず成り代わり易かった為です。
原作では1人で行動した隙にベルモットに気絶させられましたが、千暁はずっとコナンと一緒にいたので無事でした。
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