成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。白き罪人更新です。
そして、予想以上に長くなったので次回に続きます。
予定では前後編で終わらせるつもりだったのですが…(汗)。


予告状

「偽者かもしれない!?今回予告状を送ってきた怪盗キッドが!?」

「ええ。次郎吉おじ様はそう言ってたわ!ねぇ?」

 ここにきて知らされた事実に驚愕の声を上げた蘭に、園子が千暁(ちあき)―――否、執事(しつじ)見習いの“瀬戸(せと)”に同意を求めた。

「はい。今回送られてきた予告状に書かれていたイラストが、普段怪盗キッドの予告状に書かれているものと微妙に異なるという事で、恐らくキッドの名を(かた)る偽者の仕業(しわざ)だろう、と旦那(だんな)様は(おっしゃ)っておられました。」

 やや園子たちの方を振り返りながら、しれっと答える。

「送ったでしょ?その予告状の写メ!何か変じゃなかった?」

「え、ええ…。確かにいつものイラストとは違う感じがしたけど…。」

 園子と蘭のやり取りをよそに、コナンは難しい顔で考え込んでいた。

(まだ確証までには至っていないって事か……。)

 どうやら違和感を感じつつも、物事の核心には至っていないらしい。

(大丈夫?“名探偵”…。ボヤボヤしてたら、()()終わっちゃうよ……?)

 さて、自分(怪盗キッド)が目的を達するのが先か、“名探偵”が全てを見抜くのが先か。

 

旦那(だんな)様、園子お嬢様方をお連れ(いた)しました。」

「おお。ご苦労じゃったな。」

 鈴木相談役に一礼し、その(わき)に執事見習いの“瀬戸(せと)”としてそのまま控える。

 ()の大金庫“鉄狸(てつたぬき)”の鎮座(ちんざ)する部屋の前には、この邸の主である鈴木相談役と、部屋をぐるりと取り囲む機動隊。そして“怪盗キッド”の現場にはお馴染(なじ)みの中森警部。

「いいか!偽者かもしれないと思って気を抜くなよ!今夜は予告状にあった“月が闇に呑れる”新月の夜だ!金庫のある部屋の周りをしっかり固めるんだぞ!!」

「中森警部…。来てたのね…。」

 気合の入りまくった中森警部の号令に、小五郎が半ば呆れたような顔でそれを眺める。

「でも、何で部屋の周りなんだ?どーせなら部屋ん中の金庫の前で張り込んでりゃいいものを……。」

「無用だからじゃよ毛利探偵…。」

 中森警部の指示に疑問を(あら)わにする小五郎に、鈴木相談役がそれを否定する。

「え?」

「何なら見てみなさるか?(わし)の自慢の“鉄狸(てつたぬき)”を…。」

(まずは下見とシミュレーション…。)

 何食わぬ顔で相談役の後ろに控えながら、実際に金庫が鎮座(ちんざ)する部屋の防犯システムを把握すべく、自然な動作で部屋の中が良く見える位置へと移動した。

「ホォ~…。あれが難航不落(なんこうふらく)の大金庫ですか!見るからに開けるのは骨が折れそうですなァ…。」

(金庫以外に何も無いって事は、やっぱり部屋そのものが大きな(トラップ)…。)

 小五郎がコメントしている後ろで、部屋の中を確認した千暁(ちあき)が内心でシミュレーションを繰り返す。

「でも壁に()まってて、金庫っていうより金庫室みたい…。」

「そうじゃ…。中の広さは奥行き4m弱の約6(じょう)…。厚さ50cmの鉄板に囲まれた(はがね)の小部屋じゃよ!何しろ戦時中に子どもの頃の(わし)が、親と一緒に中に入って空襲を(しの)いだぐらいじゃからのォ!」

 蘭の呟きに、相談役が“鉄狸(てつたぬき)”の説明と共に思い出話を始めた。

「じゃあ、空気穴とかあるんだね…。」

「ああ…。中に設置された棚の上には小窓があり…、扉の下にはホレ!3cmぐらいの隙間もあるしのォ…。」

「でも、外に出る時誰に開けてもらったんですか?」

「中からは簡単に開けられるんじゃよ…。外からの開け方を知っているのはもう(わし)しかいなくなってしまったがな…。」

 コナンと蘭の疑問に答えながら、相談役が“鉄狸(てつたぬき)”の詳しい説明を続ける。

「んじゃあ、近くで見させてもらいましょうか!」

「待たれィ!」

 すぐにでも部屋に足を踏み入れようとした小五郎を相談役が制止する。

「確か、毛利探偵は煙草を吸われておりましたな?」

「え、ええ…。」

「1本拝借(はいしゃく)出来るかな?」

「じゃあ1本…。」

 相談役の求めに応じて自身の煙草(たばこ)を1本差し出した小五郎の手を、千暁(ちあき)の隣‐同じく相談役の後ろに控えていたボディーガード‐後藤善悟(ぜんご)が掴み、煙草(たばこ)を調べる。

「え?」

「ああ…。彼は先日雇ったボディーガードじゃ!無口じゃが頼りになるぞ!」

「そ、そうっスね…。」

 面食らう小五郎に、チェックの終わった煙草を受け取りながら相談役が紹介した。

「では失礼して…。」

 相談役が、受け取った煙草(たばこ)をピンッと部屋の中に弾く。

 ポトッと軽い音と共に煙草(たばこ)が床に落ちた瞬間、ゴゴゴ…と(にぶ)い音が響き始めた。

「な、何スか?この音…。」

「まぁ見ていなされ!」

 小五郎の疑問に鈴木相談役が返した時、ズオオオオッと床や天井、壁の全てが一瞬にして鉄格子(てつごうし)(おお)われる。

「い、一瞬にして鉄格子(てつごうし)が部屋を……。」

「重量センサーじゃよ!煙草(たばこ)1本の重さですら反応する!これでわかったじゃろ?彼奴(きゃつ)は金庫に近付く事さえ出来んという事が!!」

(また無駄に大掛かりな仕掛けを…。本当に助けて欲しいと思ってんのこの人………。)

 半ば呆然(ぼうぜん)と呟く小五郎に説明しながら、呵呵(かか)と笑う相談役に、あたかも仕掛(しか)けに驚いているように見せかけながら、内心で溜息を()いた。“名探偵”の様子を(うかが)えば、彼も若干呆れたような顔をしている。

秋津(あきつ)君!中に転がってる煙草を始末しておいてくれ!」

 防犯システムのスイッチを切りながら、相談役が(かたわ)らに控えていた相談役付きの使用人‐秋津(あきつ)益彦(ますひこ)に命じる。

「あ、でも…。中に入ったら今みたいに…、ガシャーンってなるんじゃ…?」

(たわ)け!スイッチは切っておる!今の内にさっさと片付けんか!!」

「あ、はい!」

 鈴木相談役の一喝(いっかつ)に、秋津(あきつ)が慌てて部屋に入り、煙草を拾った。

「―――――――ったく、彼も先日雇った新入りなんじゃが…。使えん奴じゃわい…。」

 キョドキョドと自信の無さ気な態度が余計にそう見せるのか、相談役が小五郎や中森警部たちにも聞こえるようにぼやく。

「あの―――…。この煙草は毛利さんにお返しした方が…?」

「馬鹿者!床に落ちた物を吸わせる気か!?さっさとゴミ箱にでも捨てて来んか!!」

「は、はいぃぃ!!」

 叱責(しっせき)を受けた秋津(あきつ)がダッシュでゴミ箱を探しに行くのを横目で見ながら、千暁(ちあき)が執事見習いの“瀬戸(せと)”として口を開く。

旦那(だんな)様。よろしければ毛利様に同じ銘柄(めいがら)のお煙草(たばこ)をご用意させていただきますが…?」

「おお!それが良い。頼んだぞ瀬戸(せと)君。」

「――――承りました。」

 気を()かせた執事見習いの一言に機嫌を直した相談役に、千暁(ちあき)が礼儀正しく一礼した直後、中森警部が口を開いた。

「用が済んだら扉の前から離れてくれませんかねぇ…。警備の邪魔なんで…。」

「フン!無駄じゃと言っておろうが!偽者なんじゃから!」

 相談役が中森警部と押し問答(もんどう)を繰り広げ、他の人間の注意が2人に向いている間に、相談役が閉じようとしている扉の隙間を()うようにして本物の予告状を投げ入れた。

 手首のスナップを()かせ、ちょうど部屋の中心に落ちるように計算して―――――――――。

「今夜は何もありゃせんよ!毛利探偵たちの出番も無いじゃろう。もちろん彼奴(きゃつ)の天敵と言われておる小童(こわっぱ)もな…。……まぁ、かと言ってすぐに帰れというのも何じゃし、せっかく我が邸に来たんじゃ。生憎(あいにく)(わし)は同席出来んが、夕食を馳走(ちそう)しよう。ゆっくりしていかれるが良い!」

「は、はぁ…。それじゃ、お言葉に甘えてご馳走(ちそう)になります…。」

 相談役の言葉に押されるようにして小五郎が招待を受ける。

「では、夕食までしばらくかかる。それまで(くつろ)がれるが良い。瀬戸(せと)君!毛利探偵たちを客間に案内(あない)してもてなしてくれ。」

(かしこ)まりました。――――――それでは皆様、こちらへどうぞ。」

 客間へと先導(せんどう)する“瀬戸(せと)”の後ろで、不意に中森警部が声を張り上げた。

「おいジイさん!!今すぐ防犯装置を切ってくれ!!」

「ん?」

「「「「え?」」」」

 何事かとたった今後にしたばかりの部屋を振り返る相談役と小五郎たちに、中森警部が続ける。

「部屋ん中に落ちてんだよ!!さっきは無かったカードが!!」

「何じゃとォ!?」

 その言葉に、相談役も急いで“鉄狸(てつたぬき)”が鎮座(ちんざ)する部屋を(のぞ)き込んだ。

 

 

『   月が闇に呑まれし今宵(こよい)

    希代(きたい)の天才が作り上げし芸術品たる

    難航不落(なんこうふらく)(たぬき)の腹を

    (あば)きに参上(いた)します。

                   怪盗(かいとう)キッド   』

 

 

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