成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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お待たせしました。
白き罪人更新です。
なんかいつのまにか、閲覧数がえらいことになってて驚きました。ランキング入りありがとうございます。

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幕の裏側

「怪盗キッドだ―――――――――!!!」

「追え―――――――――っ!!!!」

 不意に邸の外から聞こえてきた声に、運ばれてきた夕食に舌鼓(したつづみ)を打っていたコナンたちが弾かれたように立ち上がった。

「キッドが?!」

「キッド様?!」

 まずは“鉄狸(てつたぬき)”を確認しなければ、と大金庫が鎮座(ちんざ)する部屋へと走る。

 そこにいたのは、ちょうど大金庫の部屋から出て来た相談役と、先程までは姿が見えなかった相談役の愛犬‐ルパン。

「い、犬?!どこから……!?」

 怪盗キッド発見の声に、“鉄狸(てつたぬき)”の様子を確認すべく扉を開け放ったまま、中森警部が思わず(つぶや)く。

「あれ?ルパン君って入院してたんじゃ……?」

「い、いや…。実はのォ………。」

 コナンに遅れて数秒後に登場した園子の一言に、相談役がバツの悪そうな顔で事の発端(ほったん)を説明した。

 

「ハァア?!閉じ込めちまった犬を助ける為にキッドを呼び出したァ?!!」

「実はそうなんじゃ……。」

 相談役の説明に、その場の一同は開いた口が塞がらない。

「あんた、そんな事の為にマスコミを動かしたってのか?!」

「じゃから散々偽者じゃと言ったろうが…。それに、(わし)の可愛いルパンを“そんな事”とは何事じゃ!!!」

「あ、いや……。」

(オイオイ…。ハートフルにも程があんだろ……。)

 中森警部と相談役のやり取りの半眼で聞きながら、奴は国際指名手配犯という意識が薄いんじゃなかろうか、という想いがコナンの頭を(よぎ)った。

 仮にもICPO(インターポール)にも目を付けられているのに、あまりにもお人好し過ぎる。

流石(さすが)キッド様…!罠かもしれない中に1人乗り込んで、尚且つルパン君を助けるなんて素敵……!!」

 園子の目はもはやうっとりと(とろ)けそうである。

「いやぁ―――――…。彼奴(きゃつ)には礼をせねばなるまい…。まぁ。彼奴(きゃつ)の両の手に()っぱをかけた後になるがのォ!!」

 アッアッアッ!!!

 と高笑いする相談役に、その場に居合わせた一同は何とコメントしたものか(しば)し悩んだ。

「そ、そう言えばキッドって結局どうやって金庫の部屋に入ったのかな?」

 その場の空気を変えるべく放たれた蘭の疑問に、中森警部が()()()気付く。

「そ、そう言えばあの“瀬戸(せと)”って男はどうしたんだ?!」

 相談役と一緒に部屋に入った(はず)執事(しつじ)見習いが見当たらない事を言及(げんきゅう)した中森警部に、相談役が説明する。

「うむ…。それも当然……。何故(なぜ)なら、あの瀬戸(せと)君こそ怪盗キッドの正体……!!!」

「何ィ?!」

「しょ、正体って……。」

「あの瀬戸(せと)さんが怪盗キッドだったって言うの?!おじ様!!!」

 中森警部、蘭、園子の驚愕の声に、声に出さないまでも小五郎やコナンたちも驚きを(あら)わにしていた。

「バカな…!アイツは一遍(いっぺん)中森警部がチェックした(はず)………!!いや、その後で入れ替わったのか…?」

(入れ替わったのだとしたら、おれたちの側から離れた10分前後の間……。いや、代わりのメイドさんが来た時間を計算すれば、実際には2~3分しか無かった(はず)……。如何(いか)に“月下(げっか)の奇術師”と名高いアイツでもたったそれだけの時間で、この機動隊がうろうろしている邸の中で誰にも悟られずに入れ替われるもんなのか?いや…、まさか………?!)

 小五郎の推測にコナンが考え込む中、中森警部の声が響く。

「いや、あの男があんたたちを案内する為に姿を消してから再びワシたちの前に現れるまでの時間は5分も経っていない…。この厳重警戒の邸の中で誰にも気付かれる事無く入れ替わるのは難しいだろう…。まぁ、奴にとっては不可能では無いだろうが、奴が毛利探偵たちの前から姿を消し、相談役の前に現れるまでの時間は実質3分弱!しかし、自分の代わりにメイドさんに話を通していたとなると、誰とも顔を合わせていない時間は1分にも満たない(はず)だ……!!となると、奴は入れ替わったんじゃない…。恐らく、最初から執事見習いとしてこの邸に潜入していたんだ……!!!しかも、ワシが顔を思いっ切り引っ張っても変装が解けなかったという事は、恐らくはあの顔こそが奴の素顔……!!やけに若かったが、目元や口元だけをメイクして年齢を誤魔化(ごまか)す事なぞ、奴には造作も無いだろう………!!!!」

「ウッソ―――――――!!?」

 中森警部の推測に園子が黄色い声を上げた。

「でも、いくら何でも素顔でこんなところに来るかなぁ?」

「奴は変装の達人!奴程の変装技術があれば、例え素顔を知られたところで何の支障も無いという挑発だろう!!現に、奴はこれまでに何度もワシやワシの娘に変装して盗みを成功させている…!!!」

 無邪気なフリで上げた疑問の声も、中森警部によって一刀両断される。

 確かに筋は通るが、何か釈然(しゃくぜん)としない。

 そもそも、アイツ程のマジシャンが易々(やすやす)と手口の1つを(さら)すだろうか。如何(いか)に変装の名手(めいしゅ)と言えども、素顔が知られてはそこから素性(すじょう)が割り出される事にも繋がる。

 常に十手二十手先を読む“平成のアルセーヌ・ルパン”とも思えない。

 すっかり“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”=怪盗キッドの素顔説が定着しかかっているが、コナンにはそうは思えなかった。

 

 そう、全ては千暁(ちあき)の計算の内…。

 流石(さすが)にここまで上手くいくとは思わなかったが、普段千暁(ちあき)が“怪盗キッド”に(ふん)する際には“原作”の“黒羽快斗(かいと)”をイメージした男装をしている。しかし、マスクを使用しているとは言え元々自分の素顔をベースにした変装である為、何かがきっかけで関連付けられる可能性もある。

 ただでさえ、“パンドラ”を狙う組織は父‐黒羽盗一(とういち)が“怪盗キッド”である事を知っているのだ。いつ父が生きていたのではなく、娘である千暁(ちあき)が2代目を継いだ事に気付くとも限らない。

 おまけに、先日“名探偵”に貸しを作る為に、間接的とは言え()悪名(あくみょう)高き“黒の組織”を関わりを持つ事になってしまった。“黒羽快斗(かいと)”をイメージした=“工藤新一”と(うり)二つである事に、“黒の組織”が気付かないとも言い切れない以上、いつまでも固定したイメージを持ち続ける事は危険だった。

 仮に正体がバレ、狙われる事になったとしても自分(千暁)1人だけなら見付からないように隠れ、逃げ続ける自信はある。かつては()の女盗賊‐怪盗淑女(ファントム・レディ)として名を()せた母も恐らく大丈夫だろう。

 しかし、万が一幼馴染である青子やその家族である中森警部が狙われるような事態に発展した場合、守り切れる自信は無い。

 そこで新たな()として用意したのが“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”である。

 もちろん、それで完全に“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”の顔を“怪盗キッド”の素顔として誤認させられるとは思わない。この()自体もある程度使ったら変えるつもりだった。

 要は“怪盗キッド”=変装の名人=“常に変装”というイメージを固定化出来ればそれで良いのだ。今後しばらくの間は、別の変装をしてもその下に“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”の変装をするつもりでいる。

 仮に“瀬戸(せと)瑞貴(みずき)”=“素顔じゃない”とバレたとしても、接着剤の存在自体が分からなければ良いのだ。“破られない変装”は“怪盗キッド”の名を高めこそすれ、(おとし)める事はしない。

 ()えてすぐに()がれる変装と、接着剤使用の変装を(たく)みに使い分ければ、充分捜査陣を翻弄(ほんろう)する事は出来る。

 隣にいる人間が“怪盗キッド”かもしれない、という疑念は捜査陣のチームワークに小さな、しかし確かな(ひび)を入れる事になるだろう。自分の仲間を信じられない、という精神状態で捕まってやる程、自分(怪盗キッド)は甘くはないのだから…………。

 

 

 




“瀬戸瑞貴”が生まれた裏話でした。
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