成り代わったのは白き罪人   作:ミカヅキ

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“交換日記”

 sideコナン

 ―2時間後、阿笠邸―

「――――――――ったく、またあのジイさんこんなのぶちかましてやんの…。」

 鈴木大図書館の、鈴木相談役による“怪盗キッド”への挑戦ホームページを眺めながら、コナンは呆れた声を出す。

 そんな様子を、阿笠邸の庭から、1羽の白い(はと)(とら)えていた。(はと)の足には、足環(あしわ)型に改造された小型カメラと集音器。

 

 side千暁(ちあき)

 その映像は、“怪盗キッド”のアジトの1つでもあるビリヤード場“ブルーパロット”の地下に送信されていた。

『ホラ!行くなら早くして!あなたも呼ばれてるんでしょ?“キッドキラー”だし…。』

『ああ…。さっき蘭からメールが来てたよ……。―――――って、あなたもって事は…。』

 千暁(ちあき)は、(はと)に取り付けたカメラの映像をチェックしながら、イヤホンから集音器の音を拾って“江戸川コナン”と“灰原哀”のやり取りを聞いていた。その背後で、“怪盗キッド”のアシスタントである寺井(じい)千暁(ちあき)の頼んだ“小道具”の仕上げに入っている。

(来るのは“名探偵”と灰原哀、阿笠博士、後は“眠りの小五郎”とその娘、それと鈴木財閥のご令嬢ってとこかな…。後は……。)

 本来、“名探偵コナン”には関わっていない(はず)のスネークたちの姿を視認した事で、何か()()が起きてはいないかと気を()んでいた千暁(ちあき)だったが、どうやら大きな異常事態は起こらなそうと踏んで胸を()で下ろした。

『ホォ――――――。三水(さみず)吉右衛門(きちえもん)ですか…。面白そうですね…。』

 そして、聞こえてきた“沖矢昴”の声にイヤホンを耳から外した。

 それから、(かたわ)らに置いていた小さなスイッチを押す。

 

 sideコナン

 ピピ…

 千暁(ちあき)がスイッチを押したと同時に、(はと)足環(あしわ)から(かす)かな電子音が鳴った。

 バサバサバサッ…………!!

 それに反応し、(はと)がその場から飛び立つ。

「「!」」

 その羽音に反応したのが、コナンと沖矢の2人。

 急いで窓に駆け寄るが、白い影が消えていくのがわずかに確認出来る程度だった。

「ちょっと、どうしたのよ?」

 急に不審な動きを見せた2人に灰原が(いぶか)し気な声を出すが、「いや、気のせいだったみてぇだ。」とコナンが誤魔化(ごまか)す。

 目だけは鋭く窓の外を(にら)みながら………。

 

 side千暁(ちあき)

(“名探偵”なら羽音に気付いたかもね…。)

 寺井(じい)が用意してくれたコーラを飲みながら、千暁(ちあき)が思案するが、別に気付かれたところで目的は達成した以上問題は無い、と意識を切り替える。

「出来ました、お(じょう)様。」

 寺井(じい)の声に顔を上げ、()()()の出来栄えに口角を上げる。

「完璧。さっすが寺井(じい)ちゃん♡」

 カタン、と椅子から立ち上がり、()()()を手に取った千暁(ちあき)に、寺井(じい)が心配そうに声をかけた。

「お嬢様…。今回は()()()()に加え、組織の連中も動いております。くれぐれもお気を付けを……!お嬢様の身にもしもの事があれば、この寺井(じい)、今は亡き盗一様の御霊前になんと申し上げればよろしいのか………!!!」

「大丈夫。無茶はしないから…。」

「し、しかし…!」

「相変わらず心配性なんだから……。そんなに心配しなくても、正面からやり合おうなんて考えて無いってば…。」

 そんなに心配されると、こっちも不安になっちゃうじゃない。

 唇を(とが)らせるように言い返す千暁(ちあき)に、寺井(じい)はそれでも尚不安そうだった。

「ですが、お嬢様……。」

「大丈夫だって!何かあったらすぐに連絡入れるから、バックアップよろしくね。」

 不安そうな寺井(じい)を何とか(なだ)め、再び鈴木大図書館に乗り込むべく変装の為にその場を後にする。

「さて、今日は誰に変装しようかな……。」

 普段変装に使っている服や小物類をしまい込み、クローゼット代わりに使っている部屋に移動しながら(はと)たちを使って集め、スマホに転送した鈴木相談役の関係者の映像を(なが)める。

 沖矢は入れ替わる隙が全く無いので無理。

 小五郎は現在風邪により絶不調。声色を変えたままわざと咳込むのは(のど)を痛める危険があるので、この場合は不適切。

 毛利蘭は“名探偵”の勘で見破られそう。そもそも彼女の背後に立つ勇気は無い。

 と、なれば………。

「………鈴木園子か、阿笠博士か………。」

 鈴木相談役により近付き易い事を考慮すれば、まぁ実質1択だろう。

 

 ―数時間後、鈴木大図書館―

 日が沈んだ後、千暁(ちあき)は再び()()にいた。

 昼間とは打って変わり、上品な老婦人に(ふん)した千暁(ちあき)は、タイミングを見計らって女子トイレへと移動していた。

 先程まで混んでいたが、(すで)に人影は(まば)ら。

 2つの個室が閉まっているが、後は洗面所に2人、それから隣接したパウダールームに1人。

 洗面所にいた2人組が出て行ったのを見届け、千暁(ちあき)が素早く動く。

「っ…?!」

 一瞬で距離を詰め、パウダールームで化粧していた1人‐鈴木園子の鼻と口をハンカチで(ふさ)ぐ。

 ハンカチに染み込ませていたクロロホルムにより、園子はものの数秒で眠りについた。

 ぐっすりと眠り込んだ園子を抱き上げ、空いている個室に運び込む。

(ちょっと顔貸してね…♡)

 クロロホルムを()がせる時間を調整した為、起きるのはおよそ2時間後といったところだろう。

 多少の誤差はあるかもしれないので、あまり時間をかけない方が良い。

 老婦人のマスクを()がし、“鈴木園子”のマスクに異常は無いかを手鏡でチェックする。更にその上から軽くメイクを施した。

 ウィッグを付け替えて軽く整え、靴も履き替える。

 最後に老婦人としてのブラウスとロングスカートを脱げば、その場を後に園子が着ているものと同じデザインのトップスとワンピース。

(良し…。)

 先程は人が入っていた個室も、既に出たようで周囲に人の気配は無い。

(今のうちに……。)

 個室の鍵をかけたまま、素早くドアと天井の間の隙間から外に出る。

 何食わぬ顔で洗面所の鏡で全身をチェックして、堂々と女子トイレを後にした。

「園子!随分(ずいぶん)遅かったじゃない。あれ?ちょっとメイクしてる?」

「さっきトイレでね♡だってキッド様が来るのよ!少しぐらいお洒落(しゃれ)しなきゃ!」

「だから遅かったのね……。」

 “園子”として答える千暁(ちあき)に、蘭とコナンが呆れた顔をしたのが分かる。

「例え来たとしても、あの防犯装置や絡繰(からくり)箱に(はば)まれて中の月長石(ムーンストーン)は盗れないんじゃないかしら?あの気障(きざ)な大泥棒さんでもね…。」

 灰原の言葉に、千暁(ちあき)は内心で笑みを(こぼ)す。

(それはどうかな………。)

 ちょっとした悪戯(いたずら)心で、一瞬だけ発した“怪盗キッド”としての気配に、“名探偵”が()()と反応した。

(さて、“名探偵”…。あなたはいつ気が付くかな……?)

 あくまでも“園子”としての表情を崩さないまま、絡繰(からくり)箱“木神(もくじん)”の開け方を記した紙を探すフリをして相談役の側を通り、防犯装置のスイッチをスリ盗り、寺井(じい)の作った偽物(にせもの)とすり替える。

(第一段階クリア。)

 怪しまれないように適当な本を手に取ってページを(めく)りながら、タイミングを計った。

「あの…、参考になるかどうか分かりませんが…。」

 10分程経った後、それまで鈴木相談役と警備について話をしていた、絡繰(からくり)箱の持ち主‐友寄(ともよせ)夫人が唐突(とうとつ)に切り出した。

「恥ずかしながら学生時代、私は主人と交換日記をしておりまして…、その日記がとても不思議だったんです。」

 そうして語られた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の話に、“名探偵”が不敵な笑みを浮かべる。

(気付いたみたいだね、“名探偵”……。箱の本当の中身と、その開け方を記した紙の在処(ありか)に………。)

それを見た千暁(ちあき)もまた、内心で笑みを浮かべる。そして、“名探偵”の推理に耳を傾けながら()を待った。

 

 

 

 

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