Re:ゼロから始める主従関係   作:rainy@執筆開始

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第三話です。

少し短めです。

キャラ崩壊が目立ってきますので、NGな方はブラウザバックをお願いいたします。


第三話 王都へ

 

朝、子鳥のさえずりが聞こえている。

カーテンが開いていたため、眩しい日差しが男の顔を覆う。

太陽の高さから正午前といったところか、男は漸く目を覚まし、体を起こした。

 

「あれ・・・プリシラがいねぇ。つーか、もう昼か。

 昨日の晩も食った記憶もねぇし、腹減った。」

 

 きょろきょろと辺りを見渡して、独り言を呟く。

スバルは疲れた体に鞭を打ちながら、倦怠感が酷い体を動かし始める。

目指すは食堂。昼食の用意が出来ていることを祈りながら向かった。

 

「ここにもプリシラがいねぇ。ちょっとあいつ自由すぎるんじゃね?

 折角語り合いながら、楽しく昼食を出来ると期待してたのにな・・・。」

 

 プリシラの姿が無いことに、小さくため息を零しながら席につく。

昼食が運ばれてくるまで、スバルは上の空で考え事に没頭してゆく。

 

【結局、昨日のあいつらは何だったんだ。】

 

【何か目的があったのか。】

 

【以前、倒したやつとは別個体なのか】

 

 頭の中で、同じような内容がぐるぐると回っている。

運よく彼が死なずに済んでいるのは、レムとプリシラのお陰だ。

彼女たちのどちらかがいなければ、スバルは確実に死んでいただろう。

 

【あれ、そういえばレムって何であそこにいたんだろう】

 

【俺が屋敷を出る時はいなかったはず。姉様に止められているとかで】

 

【まさか、俺を追っかけてなんて・・・ないな】

 

 彼女が、自分の居場所を捨てるところが想像できなかった。

何よりも家族を大事にしているレム。姉様を放ってくるとは考えられない。

 

「はぁ・・・わかんね。全く何がなんだかわかんねーな。

 つーか、アル。本当にどこにいんだよ。」

 

 頭を抱えて、がしがしと掻いている。

一人でぶつぶつ呟いたり、周囲から見れば割と痛い人であるが

スバルはそのような事は気にしない人間だった。

 

「プリシラもいねえし、飯食ったら色々と動き探ってみるか。」

 

 ちょうど昼食が目の前に運ばれ、腹ごしらえを優先することにしたスバルはフォークを握りしめた。

 

 

―――――――――――

 

 昼食を食べ終え、ぶつぶつと呟きながら街を歩き回っていた。

 

 

【何度か思ったことはあったけど、プリシラの態度もおかしい】

 

「数度しか会ったことなかったけど、あそこまで態度が柔らかいやつじゃなかったよな・・・。

 何で俺は、殺されもせずに連れまわされてるのか。何でアルじゃなく、俺を選んだのか。

 ああ、だめだ。考えてもわかりゃしない。プリシラと話しをするしかないな。」

 

 考えても仕方ない事は、考えることをやめて本人に聞こうと思い立った彼は、

プリシラを探し求め、手始めに宿へ向けて歩き始めた。

 

 宿の部屋へ戻った彼が目にしたものは、窓際で椅子に座り、読書をしているプリシラの姿だった。

窓から差し込む日差しに照らされてながら本を読む姿は、まるで絵画のようで、スバルは息を飲みこんだ。

容姿端麗でスタイル抜群なプリシラは、黙っていれば男が放っておくわけがない。

一部は罵られた方が喜ぶような輩もいるが、今は割合する。

そんな彼女が真剣な表情で読書をしている。

E・M・Tを信条にしているスバルも、少し心が揺れてしまうほどだった。

 

「そんなとこで突っ立って何をしておる。妾は座っておるぞ?

 頭が高いであろう?控えるのじゃ。」

 

 読書の邪魔をされたためなのか少し毒舌で、しかし、本から視線を外さずにプリシラが告げる。

スバルはプリシラの言葉に従って、近くのベッドを腰を掛ける。

“眠そうな時以外は可愛げねぇな”と、間違っても声には出せない思いを抱いていた。

 

「あのさ、プリシラ。少し話がしたいんだ。」

 

「妾は読書をしておる。暫し待つのじゃ。」

 

 取り付く島もないとはまさにこの事である。

読書をやめるどころか、視線すら本から動いていない。

 

「唯我独尊、ここに極まり・・・だな。」

 

「・・・?何じゃそれは。」

 

「俺の故郷の言葉で、正にプリシラを指した言葉のことだよ。

 自分が優れていると自負することだ。」

 

 スバルは苦笑いしながら伝える。

本来では、あまりいい意味でつかわれることは少ない。

イメージだけだと、某信長など、自己中や自分勝手な人間が言ってそうだ。

 

「ほう・・・?まさに妾のためにある言葉じゃな。

 “ゆいがどくそん”結構じゃ。この世に妾以上に優れたものなど存在せん。」

 

 漸く顔を上げたプリシラがスバルへ視線を向けながら告げた。

足を組んでおり、太腿の上に本を置き、いつものように扇子で口元を隠している。

目は細められているが、雰囲気が柔らかい感じがするので、喜んでいるようだった。

 

「そうだな・・・。お前ならそう言うと思っていたよ。

 プリシラ、少し聞きたいことがある。」

 

「何じゃ?申してみよ。」

 

 聞きたい事や言いたいことが、頭の中でぐるぐると回っており、何から聞けばいいのか、よくわかっていない。

意を決して、しかし一息いれてから言葉を紡ぎ始めた。

 

「正直に答えて欲しい・・・。俺とプリシラってこれまでそこまで接点もなかったよな?

 それなのに、今はこの状況だ。正直混乱してるし、わけがわからない。」

 

「ふむ。」

 

 プリシラの目が続けよ。と物語っていた。

スバルは、プリシラから瞳を逸らさずに、そのまま続ける。

 

「お前の都合の良いようにってのは、この間聞いた。

 でも、俺がお前の近くにいることが、お前の都合にいいのか?わからないんだ。」

 

「それにな・・・。こないだは夢だと伝えたけど・・・俺の中にはお前が別の従者を連れていた記憶がある。

 そして・・・この間の魔獣を倒した記憶もあるんだ。もう本当にわけがわかんねぇ。」

 

 一気に捲し立てるように告げた。一度口にしてしまうと、もう止めれなかった。

 

「スバルよ。」

 

「何だ。」

 

「それを聞いてどうする?世の中には、知らないほうが幸せなこともある。

 それでも聞きたいと思うのか、知りたいと思うのか・・・どうなのじゃ?」

 

 殺気・・・まではいかないが、緊張感が部屋を満たし、温度が一気に下がった。

プリシラから放たれる緊張感に、スバルは喉を鳴らして息を飲む。

 

「お前は・・・何を知ってるんだ。俺の事も最初から知っていたのか?

 俺は知りたいんだ。知りたいと思うことは間違ってるのか?」

 

「・・・いいや。間違ってはおらん。凡愚の考えなど想像もできぬが、知りたいと思う気持ちは理解できるのじゃ。」

 

 緊張感が和らぎ、スバルの顔にも少し安心の色が見える。

プリシラは仕方がないと言いたげに、首を振りながら扇子を構える。

 

「ならば勝手にするが良い。妾は何も言わん。」

 

「ん・・・?教えてくれるってわけじゃないのか?」

 

「何故妾から伝えぬといけないのじゃ?凡愚でも凡愚らしく足掻いてみたらよかろう?

 なんなら、ここで妾の足を舐めて懇願してみるか?出来れば考えてやってもよいぞ?」

 

 プリシラはそっと靴を脱いで素足を曝け出す。

そのままスバルの方へ向け、試すような目線で見つめた。

シミ一つなく、真っ白なおみ足が目の前にあらわれたスバルは、つい魅入ってしまう。

少しの葛藤の後、スバルは首を振りながら口を開いた。

 

「馬鹿かお前は!そ、そそそそんなことするわけねぇだろ!?」

 

「誰に馬鹿と申しておる、このどうて「それはらめぇぇぇ!」

 

「どどどどど、・・・ってちゃうわ!何を言わすんだよプリシラ!ってか、そんな言葉どこで覚えた。」

 

 スバルは顔を真っ赤にしながらも、プリシラの一言を遮りながら叫ぶ。

対してプリシラは涼しい顔のまま、足を差し出したままのポーズから身動き一つとっていない。

扇子で隠された口元が露わになったが、やはり歪んでいた。

 

「ふん、妾に向かってそのような暴言を吐くからじゃ。

 金輪際気をつけるがよい。次はないぞ。」

 

 腕を組み、少しソッポを向きながら目線はスバルへ。

全身で少し拗ねていますとオーラが出ているようだった。

 

「ああ・・・。すまない。勢いでつい言っちまって・・・。

 って、でも俺のほうがダメージでかくないですかねぇ!?否定できねぇけど!否定できねぇけど!!」

 

 両手を頬にあて、今にも世界の終わりのような表情。

所謂、ムンクの叫びをリアルに体現しているスバル。

 

「なんじゃその顔は。道化らしくて少し楽しめるが、悪い顔が一層悪くなっておる。

 女どころか子供も男も近寄らんぞ。妾は嫌いではないが。」

 

 扇子でスバルの顎を持ち上げて、至近距離で目線をあわせながら言った。

瞬間、スバルの顔は戻ったが、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 

「なんじゃ顔を赤くして。やっぱどうて「もういいって!ほんとやめて!」

 

 肩で息をしながらも、言葉を遮って制止した。

足を組んだ姿勢のまま、スバルの顔を覗き込んでいたプリシラ。

無理な姿勢のため、胸が強調されており、そこに目線がいってしまう男の子なスバル。

健康な男子からすれば、眼福であり凶器でもあった。

 

「淑女なんだろ?そんな恰好すると、その・・・どうしても目がいっちまうからさ。

 俺の理性もいつまでもつか・・・なんというか。もっと、ほら、貞淑に・・・。」

 

「む?妾の体を見られて嬉しいはずであろう?見られて恥ずかしい身体でもないのじゃ。」

 

 腕を組んで、胸を強調しながら話すプリシラと、食い入るように見つめるスバル。

彼は男であり、健全な青少年である。目がいくのも仕方がないのである。

仕方がないのである。

 

「ほれ、食い入るように見ておる。こういうのが好きなんじゃな・・・?」

 

「あー!本当にヤメテ!理性がもちません!俺が悪かった!ほら、他の話をしようぜ?な?」

 

 話題が変わったことにより、お互いがほっと息を吐いた。

スバルはプリシラが息を吐いたことに疑問を感じながらも、ぶり返したくもなく、気にしないことにした。

 

「そう言えばさ、いつ王都に向かうんだ?お前の屋敷もあるんだろ?」

 

「もうすぐ出るつもりじゃ。」

 

「おい!もっと早く言えよ!俺もすぐ準備するから!」

 

 準備の為に走る回るスバルを、見つめ続けているプリシラ。

何かを言いたげな目をしていたが、出ていくスバルに声をかけることもなく目を伏せて独り言を呟く。

 

 

「貴様は真実を知ったときに、なんと言うのじゃ・・・?その時の感情は?

 怒りか?悲しみか?・・・失望か?絶望か?」

 

 ぶるっとプリシラの身体が震える。

自身の身体を抱くように腕を回しながら俯く彼女の顔は見えない。

 

「怒りに身を任せるのなら、受け止めよう。悲しみに明け暮れてしまうのなら、慰めよう。

 失望される場合は・・・。」

 

 更にきつく腕を回して、身体を抱く。

顔を上げた彼女の顔は、迷子になった子供のような表情をしていた。

 

「絶望に打ちひしがれるのなら、妾の全てを賭して立ち直らせてみせよう。」

 

「恨むなとは言わない。だけど・・・嫌わないで・・・。」

 

 瞳に涙を浮かべながら、悲痛な声で呟くプリシラ。

スバルの前では決して見せない、19歳の、“ただの”少女の姿がそこにあった。

 

 

―――――――――――

 

 

竜車内

 

「王都に着くころには夜だな。今日はそのまま寝るのか?」

 

「そうじゃ。明日は“色々”な事がある。努々覚悟しておくことじゃな。」

 

 アーラム村を出発して暫く走った竜車内。

竜車での移動に少しは慣れたスバルも、長時間の移動は疲れるものがあった。

 

「そうだな・・・。わりぃ、プリシラ。少し横になるよ。」

 

「好きにすると良い。妾は読書の続きをするのじゃ。」

 

 横になり、目を瞑るスバル。横目で眺めながら、プリシラは本を取り出した。

気にする素振りは見せずに、続きのページを開き読み進める。

外では日が傾き始めており、王都までもう暫くかかりそうだった。

 

 

 

 本を読み終えたプリシラ。周囲を見渡すと既に暗くなっており、結構な時間が経過していた。

スバルのほうへ目を向けると、ただ寝にくいだけなのか、悪夢を見ているのか、顔を顰めながら寝ている。

何かを思いついた顔をしたプリシラは、口角を上げながら近づいてゆく。

 

「よく眠っておるが、なにゆえそのような顔をしておるのか・・・。

 悪人顔が尚更悪くなっておるぞ。」

 

 小さく笑い声を零しながら真横にくる。

頬を突いたり、そっと髪の毛に触れたりしている。

 

「ふむ・・・。」

 

 頭の真横に腰を下ろしたプリシラは少し考えた素振りをする。

頭を掴み、起きないことを確認して、そっと持ち上げた。

自身の身体を少し横へずらし、ゆっくりと頭を下す。

 

「どうじゃ?最高級の枕よりもふかふかで、暖かくて、気持ち良いはずじゃ。」

 

 ふふふ、と笑いながらスバルの髪の毛を優しく撫でる。

最初のうちは寝苦しそうにしていたスバルだが、次第に安らかな寝顔に変わっていった。

 

「安らかな顔をしおって、現金な奴め。妾の膝枕はどのような宝物よりも貴重。

 この世で何人が享受できると思うておる・・・?」

 

 返答がないことは知りながら、話しかけ続けるプリシラ。

その光景は、王都に到着するまで続けられていた。





以下おまけ

“今日のぷりしらさん”


「本日もばいぶるで勉強するのじゃ。」

「ふむふむ・・・。なるほど。これは・・・。むむむ・・・。」

「妾には難しい・・・?否、このような事が出来ないわけがないのじゃ。」

「早速実行するのじゃ。」

―――――

「すばるーすばるー。」

「此処に座るが良い。」

「そして・・・どーんっ」ゴンッ

「あれ・・・?何で急に寝ておるのじゃ?」

「むむむ・・・仕方がないの。少し寝かせてやるか・・・。」

「床が固くて、頭が痛かろう。特別に膝を貸してやるのじゃ。」

「光栄に思え。」どやっ

「・・・頭が重いのじゃ~。」

【その4.彼に膝枕をして、疲れを癒す】

※本編とは全く関係ありません


第三話でした。

核心には触れておらず・・・。

王都到着後も書いてしまうと長くなるので、ここまで。

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