Re:ゼロから始める主従関係   作:rainy@執筆開始

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第四話です。

キャラ崩壊や独自設定含みます。

また、口調に違和感がある部分がある可能性があります。

許せない方はブラウザバックをお願いいたします。


第四話 王選候補者集結

 

 

 竜車を走らせ続けて、半日ほどが経った頃、漸く王都ルグニカへ到着した。

既に殆どの人は寝静まっている時間のため、出歩いている人たちは見当たらない。

そんな時間に、若い男女の二人は歩いていた。

 

 “竜車で直接行った方が早いんじゃね”

ぶつぶつと呟きながら、女性の後ろを追いかけている男-スバル-。

プリシラの“ここから歩くぞ”と、鶴の一声で決まり、なし崩し的に後を追いかける形となった。

眠たげな眼を擦りながら、あっちこっちへ千鳥足を披露しているが、なんとか見失わないようについてゆく。

 

「プリシラ。一つ聞きたいんだけど。」

 

「なんじゃ、スバル。」

 

「何で歩いてんの?」

 

 プリシラは振り返りもせずに返事をした。

スバルも気にした様子はなく、彼もプリシラに視線を向けずに話を続ける。

 

「なに、大した理由はない。ただ、歩きたかったから歩く。

 人間は何故足がついてると思うておる?」

 

 プリシラの皮肉めいた言い方にも耐性がついているスバルは、気にする事もなく流す。

いちいち言い返していると、10倍以上になって返ってくることも理解していた。

 

「歩くため、だろ?いいや、何かを蹴るためにあるのかもしれない。

 歩くことだって、言ってしまえば大地を蹴るわけだろ?」

 

「しょうもないことをほざくでない、凡愚。

 それで、聞きたい事とはそれだけか?もっと他にもあろう?」

 

 ひたすら前を歩き続けるプリシラの表情はスバルには見えない。

聞くべきかどうか迷っているのか、暫し沈黙した後に答えた。

 

「いや・・・。ただ眠かったから聞いただけだよ。

 特に深い理由はねぇ。いっちょ気合いいれて歩きますか。」

 

「ふん。気合いを入れんでも歩けるのじゃ。

 小さな事まで何かしらの理由をつけなければ出来ないとは、凡愚ここに極まり、じゃ。」

 

「それちげぇよ!そんな使い方するもんじゃないの!

 ただの悪口だからそれ!」

 

 いつもの調子で、いつものような掛け合いに応じて、普段通りを装う。

歩きながら空を見上ると、いつも以上に綺麗な月が輝いていた。

 

 

――――――――――

 

 

 翌朝、二人は城へと向かう。歩いている間に会話は殆どなかった。

あまり歩きなれている道ではないスバルは、少しそわそわしながら、辺りを見渡している。

 

「あまり変な行動はするでない。珍しいものでもなかろう?

 田舎者らしくて良いかもしれぬが、妾の品格まで疑われるのじゃ。」

 

「慣れてるわけないですよね!?俺殆どこんな場所に来たことねぇよ!」

 

 息を荒げて反論するスバルだが、プリシラは相手にもせずにスタスタと歩いてゆく。

置いて行かれるわけにもいかないので、必死に追いかけるスバル。まるで、大人に連れられて初めての場所へ向かう子供のようだった。

暫く歩くと、一際大きな扉が見えてきた。

 

「着いたのじゃ。妾に任しておれば万事うまくゆく。騒ぐでないぞ?」

 

「わかってるよ。静かにしてますー。お口にチャックしてますー。」

 

 顔を顰めて苦言を告げるが、プリシラはスバルの方を見向きもしない。

二人が扉の前に到着すると同時に扉が開かれる。

 

「お待ちしておりました。プリシラ・バーリエル様と従者の方ですね。中へどうぞ。」

 

「うむ。苦しゅうない。良きに計らえ。」「あ、ありがとう。」

 

 プリシラは普段通りの受け答えで通っていくが、スバルは慣れていないため少しどもって答えた。

目線を彷徨わせ、俯きがちに扉を通る。

“庶民には居た堪れないぜ”と零しながらも、必死にプリシラへ着いて行く。

 

 扉を潜り抜けた部屋の中はただっ広い空間になっている。

騎士が一糸乱れず隊列を組んで整列している部分と、学者みたいな恰好をした人間が集まっているブースがある。

一斉に視線を向けられ、スバルは少し萎縮してしまうが、プリシラは当然の如く受け止め歩く。

 

“わかっていた積もりだったが、こいつとは住む世界が違うんだな”

 

 再認識したスバルは、置いて行かれないよう必死に背筋を伸ばしてついていく。

その姿は、親の後ろをついて回る子鴨のようであった。

 

 プリシラ達が到着した時には、既に【アナスタシア・ホーシン】【クルシュ・カルステン】が到着しており、整列していた。

両名はプリシラを一瞥したが、すぐに意識を逸らして前方へ視線を戻す。

プリシラも特に気にもしていないようで、視線を向けることさえしなかった。

 

「エミリアたんはまだきてないのか・・・。ってかお前、いいのかよその態度。

 挨拶しろとは言わないが、目線くらい合わせてもいいんじゃねぇの?」

 

「何故、妾が目線を合わせる必要があるのじゃ。有象無象に興味などない。」

 

 心底興味がなさそうにプリシラは答えた。

プリシラ達が位置につき、スバルがそわそわしていた時に一際大きな音を立てて扉が開いた。

視線を向けると、派手なドレスを身に纏っている【フェルト】と剣聖【ラインハルト】が同時に入ってきた。

 

 パッと見ただけではフェルトがどこぞのお嬢様に見えるが、彼女の素性を知っているスバルはげんなりしていた。

“あれぜってぇストレス溜めてるよな”

目線が鋭くなって据わりはじめているフェルトを見て、スバルは一人呟いた。

 

「あまり視線を動かすでない。動じるなまでは言わぬが相応の振る舞いをするのじゃ。」

 

 叱責されたスバルは背筋を伸ばして、視線はプリシラで固定をする。

プリシラは堂々とした態度で普段と全く変わった様子はない。

その様子に中てられたスバルも、“せめて堂々と、ふてぶてしくしていよう”と考えを改めるのであった。

 

 

 

「こちらへどうぞ。貴女方が最後の組みです。」

 

 扉が開く音の後に、警備兵の言葉が聞こえる。

スバルは振り向きたい衝動に駆られるが、堪えて正面を向き続ける。

コツコツと足音が響く。“3人分”の足音を聞きながら、スバルは思考した。

 

【あれ?ロズっちとエミリアたんの二人できてるんじゃねぇの?】

 

【ラムかレムか・・・?いや、どちらかを置いてくる理由がない】

 

【そう言えば、以前はプリシラ組が最後で・・・フェルトは後から登場じゃなかったか・・・?】

 

 様々な事を考えていると足音が止まった。

そして、賢人会の老人たちが集まってくる。

これから長々と説明が始まるのだが・・・スバルはそれどころではなかった。

横目でちらりと盗み見した瞬間、見えてしまったのだ。

一度見たら忘れれないような、特徴的な恰好。

ボロボロのズボンに緑色のベスト。その上から黄色のマントのような外套をつけている。

そして、頭には一度見れば忘れることもできないような、フルフェイスヘルム。

この世界にはいないと思われていた“アル”がそこにはいたのだ。

 

 スバルは混乱していた。周囲の話も全く耳にも入っておらず、思考の海へとダイブしている。

“何故・・・何故・・・”と、時折ぶつぶつと呟きながら、状況の整理を行った。

 

【アル・・・だよな。何でエミリアたんといるんだよ。】

 

【何だよ、行方不明じゃなかったのかよ。会えてうれしい気持ちもあるが、いる場所が複雑すぎるだろ】

 

【何故・・・あそこにアルがいるんだよ。俺の居場所は・・・】

 

 がしっと肩を掴まれて、我に返ったスバルは顔を上げる。

そこには真剣な顔をしながら睨みつけるように視線を向けているプリシラがいた。

 

「スバルよ。貴様が今何を考えているのか、妾にはわからぬ。

 しかし、酷く狼狽えておることはわかる。」

 

「プリシラ・・・。」

 

「自我を保つのじゃ。感情に飲み込まれるな、貴様は妾の従者、ナツキ・スバルじゃろう。」

 

 一言一言を区切って、説明するような口調で諭すプリシラ。

彼女なりのエールとはわかっていたが、それでも感情が追いつかないスバルだった。

 

「でも・・・。」

 

「でももなしじゃ。後でどれだけ喚き散らしても構わん。今は大人しくするのじゃ。よいな?」 

 

「・・・。」

 

 スバルは答えはしなかったが、しっかりと頷いた。

頷きを確認したプリシラは、周囲にばれないよう小さなため息を吐いて正面へ向き直った。

“後で確認しなきゃな・・・”

スバルは多少落ち着きを取り戻し、敢えてアルの方へは目も向けずに向き直った。

 

――――――――――

 

 

「ちょっと待ってくれ。」

 

 長く退屈な話も終わり、皆思い思いに退出していく最中、スバルはエミリア達に声をかけた。

振り向いたエミリアは少し驚いた顔を見せた後に、寂しそうに微笑みを浮かべる。

ロズワールは席を外しており、もう一人の付き人“アル”がゆっくりとした動作で振り返る。

 

「スバル・・・そんなに日は経っていないけど、なんだか久しぶりだね。元気にしていた?」

 

「エミリアたん・・・俺は元気だよ。でも、ごめん。今日はちょっと付き人の彼と話をしたい。」

 

「スバル・・・?どうしたの?なんだか、怖い顔してるよ?何かあったの?」

 

「いいや、大丈夫だよエミリア。そちらの彼と話をしたい。少しだけ時間をくれないか?」

 

 アルから視線を外さないスバルに、エミリアは少し違和感を感じていた。

もう少し詳しく聞き出そうとしていたところ、アルから声があがる。

 

「あ~。いいよ。俺は。でも、先に嬢ちゃんを部屋に送り届けてからだ。

 そんぐらいの時間はいいだろ?“兄弟”」

 

「・・・。わかった。全然それで問題ないぜ。“アル”」

 

 エミリアに宛がわれた部屋へ向けて歩きはじめる二人。

納得はできていなかったが、険悪な雰囲気でもなかったため、問いただせなかったエミリアも後ろから続いた。

 

 

 

「そんで?兄弟は何が聞きたいわけ?俺がここにいる理由?

 ・・・それとも他の何か?」

 

 エミリアを送り届けた後、二人は上層部から抜け、王都にある広場へやってきていた。

夕暮れで陽が沈みゆく中、ベンチに腰をかけている二人。

 

「全てだ。何故お前はエミリアと一緒にいたのか。今までどこで何をしていたのか。

 そして・・・今のこの状況はなんなんだ。何故お前はプリシラといなかった。

 何故おれは今プリシラと一緒になっていて、お前はエミリアと一緒になっているんだ。」

 

「ちょっとちょっと。一気に言われてもわかんねぇって。

 一つずつゆっくりいこうや兄弟。別に時間がないわけでもないんだろ?」

 

 宥めるように話すアルに、少し落ち着きを取り戻したスバル。

広場には、既に人もいなくなっており、二人の世界になっていた。

風の音もせず、痛いくらいの沈黙が続く中、沈黙を破ったのはアルだった。

 

「まずはじめに。俺が今何故お嬢ちゃんと行動してるかについて、だ。

 先日、二日三日ほど前だったか?俺はある森で生死を彷徨っていた。

 何をしていたかは、今は置いておく。そこであのピエロのような人間に助けられたのさ。」

 

「ピエロって・・・ロズワールのことか?」

 

「そうだ。そのあとに、嬢ちゃん達と会った。回復魔法をよくかけてくれたぜ。

 治療の最中だが、今回の集まりがあっただろ?嬢ちゃんは屋敷から出ないといけなくなった。

 そして俺も治療の為についてきたってわけさ。わかったか?兄弟。」

 

 “実はまだ本調子じゃないんだよな”

呟きながら手を開いたり握りしめたりしている。

アルの説明に納得したスバルは、視線で続きを促す。

 

「今まで何処に行ってたのかってのは・・・今は言えないね。時期がくれば話すぜ。

 それに今の状況ってのは、抽象的すぎて答えられねぇよ。」

 

「ちょっと待てよアル。言えないって何だよ?そんな答えで俺が納得できると思ってるのか?

 今の状況は、わかんだろ。何で俺がプリシラサイドでアルがエミリアサイドなんだよ。」

 

 スバルは苛立ちを隠そうともせずに、立ち上がりながら捲し立てた。

一方アルは、意に介さずに静かに聞いていた。

更に熱くなって畳みかけようとしたところ、アルに遮られる。

 

「そんなこと俺が知るかよ。姫様曰く、世界は姫様の都合の良いようにできてるんだろ?

 じゃあ、兄弟が姫様につく方が都合に良かったんじゃねぇの?」

 

「は・・・?プリシラに都合が良い?意味がわかんねぇ。

 だが、アルがこの事に関して話したくないのなら、もう聞かない。でもこれは答えてもらう。」

 

「何故お前は俺と一緒の記憶を持ってるんだ。

 この世界は何なんだよ?以前に倒した敵が蘇ってたり、王選が再度始まったり。

 時間が巻き戻ってるのか・・・?」

 

 “ふむ”と、少し考えるように、顎へ手をやりながら押し黙るアル。言葉を選んでいるのか、なかなか口を開こうとしない。

煮え切らない態度のアルに、スバルの怒りは爆発した。

 

「何で答えないんだよ!何か知ってるんだろ!教えてくれよ!本当に意味がわかんねぇんだ!

 もう気が狂いそうなんだよ!俺が何をしたんだよ!教えてくれよおぉ!!!」

 

 肩を掴み、揺さぶりながら激高するスバル。対してアルは冷静に腕を掴んで離す。

 

「落ち着けよ、兄弟。別に何も話さないってわけじゃねぇって。

 話せる部分はちゃんと話す。大人しく聞けって。いいな?」

 

「・・・わかった。熱くなってしまってごめん。頼めるか、アル。」

 

「オーケイ。任せろ兄弟。そうだな、まずは記憶の話からするか。」

 

 スバルは深呼吸をしてから落ち着いたところ、再度座って話を聞く態勢に入った。

 

「先に言っておくが、原因については俺の口から言うことはできねぇんだわ。悪いな。

 んでもって、お前も違和感を感じたりしなかったか?今回の流れについて。」

 

「そうだな・・・。正直、時間逆行ではないとは思っている。以前と違い過ぎてるしな・・・。

 そもそも、レムと俺が仲良くなったのだって、魔獣騒ぎの後なのに、今回はその前から以前のような態度なんだ。

 正直、それもあって最初はわけわかんなかった部分もある。」

 

 今回のレムとの始まりはプリシラとの言い合いだった。

当時はこんなことになっていると考えてもいなかったため、全く気にも留めていなかったが、戻っていると仮定したとしても、レムの態度はおかしいのだ。

 

「そうだな、それはあってるぜ兄弟。実際に時間が戻っているわけではない。

 第三者の介入があり、俺らがこっちの世界へ来た時と似た状況ってわけだ。」

 

「第三者の介入・・・。アル。お前はそれが誰が何をしてこうなったのか、わかってるってことでいいのか?」

 

「ああ、そうだな。わかってるさ。でもそれは俺の口から伝える事は出来ねぇし、するつもりもない。

 ここまでヒントをやったんだ。これまで試練を乗り越えてきた兄弟なら、自分で探せるだろ?」

 

 スバルは腰をあげて、アルへ視線を向けて大きく頷いた。

その瞳は先ほどまでと打って変わって怒りや戸惑いの色は無くなっており、やる気に満ちていた。

ぐっと握りこぶしを作って告げる。

 

「そこまでで充分だよ。アル、本当にありがとな。本当は喋ってもいけないことまで喋ってるんじゃねぇのか?

 お前には前からずっと助けられっぱなしだよな。いつか、前の分もあわせて借りを返すから待っててくれ。」

 

「水くせぇよ兄弟、気にすんなって。俺がやりたくてしてることだ。

 本当はもっと教えてやりたがったが、これ以上はちょっとマジで危ないんだわ。悪いね。」

 

 アルも立ち上がり、フルフェイスヘルムの後頭部辺りを掻くような仕草をした。

照れたような仕草が珍しくて、また、自分の味方がいたことに感動を覚えたスバルはアルへ向かって掌を差し出す。

がっちりと握手をしたまま、笑顔を浮かべて告げる。

 

「オーケー。俺は俺なりに、だな。恰好悪くとも必死にもがいてやるさ。これまでそうしてきたように、壁を打ち破ってな。

 俺はそろそろ戻るよ。怪我している身体に鞭を打ってまで時間を割いてもらって悪かった。ありがとう。」

 

「気にすんなって。じゃあな。達者でやれよ、兄弟。」

 

 そう告げたアルは握っていた手を放して踵を返した。

後ろ向きで手を挙げて挨拶していくあたり“実にアルらしい”と小さく零した。

その後ろ姿が見えなくなるまで見送り、自分に宛がわれている部屋へ戻るためにプリシラの屋敷へ向かった。

 

 

――――――――――

 

 

 屋敷へたどり着いたスバルは、プリシラを探していた。

食堂や書斎を探しても見つからず、探し回った結果、最後に彼女の部屋の前へたどり着いた。

 

「これでいなけりゃ笑えるな・・・。おーい、プリシラ。いるか?」

 

 ノックと共に部屋に向かって声を上げるスバル。

暫く返答がなく、踵を返そうとした際に返答があった。

 

『あいておるぞ。入るがよい。』

 

 “いるなら何で返事してくれないんだよ”とは、口にせず、苦笑いを浮かべながら扉を開いた。

 

「邪魔するぜ。」

 

「邪魔しにきおったのか?不敬であろう。首を刎ねられたいようじゃな。」

 

「ちげぇよ!部屋に入るときの挨拶だろ!社交辞令的な!?」

 

「騒がずともよい。して何用じゃ?」

 

 立ち上がり、スバルの目前まで近寄ってくる。

扇子はいつもの口元にあてており、表情はあまりよく見えない。

 

「今日のことでな・・・。少し話したくて。

 広間では取り乱しちまって、本当にわりぃ。あの時は自分でもわけわかんなくなっちまってな・・・。」

 

「そのことか。もう良い。スバルなりに何かがあったのであろう。

 その事だけなら謝罪は必要ない。疾き出ていくがよい。」

 

 興味を失ったのか、スバルに背を向けて歩き出した。

ここで遮られてしまうと、次いつ話せるかわかったものではなく、スバルも食らいつく。

 

「それとな・・・。あともう一つだけあるんだ。なんつーのかな。俺の決意表明?みたいな?」

 

「決意表明・・・か。何じゃ。申してみよ。」

 

 振り返ったプリシラの瞳は少し揺れているようにも見えた。

普段見せないような弱弱しい瞳に、言葉を失いかけるが、腹の底から言葉を絞り出す。

 

「俺さ、正直わけがわからないことだらけで。結局は流されてばかりだった。

 俺自身のことを俺自身が信じられなくて。頭がおかしくなったのか、勘違いすることもあったし、戸惑いの連続だった。」

 

「スバル・・・。」

 

「今日さ、ある人と会ってきて少し話をしたんだ。それで俺は思い出した。俺なりのやり方・・・これまでもやってきてたことを。

 でも俺ってさ、出来る事って限られてるんだ。プリシラみたいな振る舞いもできない。ラインハルトのように強いわけでもない。

 それでも、出来ることを少しずつやっていくしかねぇんだ。

 プリシラ。俺は、この世界の謎を解く。」

 

 言い切った後に、瞳を閉じてプリシラの反応を待つ。

どのような反応が返ってくるかわからないこの時間は、恐怖に押しつぶされそうになる。

 

「スバルよ。貴様は妾の従者じゃ。弁えているなら何も言うまい。」

 

 プリシラの言葉に反応して、スバルは瞳を開けて見つめようとした。

しかし、話は終わりと言わんばかりに、既に背をむけておりベッドに入ろうとしていた。

 

「いやいやいや、ちょっと待ってくれ。何で寝ようとしてんの!?

 あれ、俺の一世一代の表明って無意味ですか!?何も感じなかったんですかねぇ!?」

 

「五月蠅い。時間を考えるのじゃ。用が終わったのなら、疾き去ね。」

 

「わかったよ。遅くに悪かったな。お休み、プリシラ。」

 

 告げた後にスバルが部屋から出て行った。

扉へ目を向けて確認したプリシラは、座りなおす。

 

「核心については聞いておらぬようじゃな・・・。問題の先送りではある、が。

 ・・・。安心、しておるのか・・・妾は。」

 

 一人になった部屋は、広くて、寂しく感じる。

 

 世界で一人になってしまった感覚。

 

 寒い。

 

 一人は嫌だ。

 

「・・・・・・。

 一人にしないで・・・。スバル・・・。」

 

 少女の呟きは

 

 スバルに

 

 届かない。 




以下おまけ

~今日のぷりしらさん~

「本日はこれじゃ!」

「これで一気に急接近!?なるほどっ。」

「妾もだいぶけいけんちが溜まってきたようじゃな。」

「実践あるのみじゃ。」


「のう、すばる。妾は寒いのじゃ。」てくてく

「何で散歩したいって言ったのかって?」

「急にほしが見たくなったのじゃ!」

「すばるに任務を与えるのじゃ。」

「妾の手を温めるがよい!」

「え?無理?」

「無理なことなどない!手を繋げばすぐであろう?」

「うんうん、それでいいのじゃっ」にこにこ

※本編とは全く関係ありません


今回は説明会・・・核心に触れてはおらず。

そのため、会話がメインになってしまったと思います。

読みにくい部分もあると思いますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

誤字脱字報告や感想などお待ちしております。

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