艦隊これくしょん×Fate/staynight   作:くまー

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最終更新が4/16ですから、1カ月以内に更新できましたね。やったね(すっとぼけ)
……いや、本当に申し訳ございません。
他の作品でもそうですが、早期に更新ができるよう頑張ります……

※20/5/9 誤字脱字修正


2-5

『電』

 

 暁型姉妹の末妹にして、最後の特型駆逐艦。

 駆逐艦として特別な長所があるわけではなく、能力は標準的。

 性格は優しく穏やかであり、あまり戦闘を好まない。

 

 ――――艦娘記録、『電』の項目より、一部抜粋

 

 

 

 

 

 こういう時。一体何を言えば良かったのだろう。

 士郎は1人で、答えのない疑問を自分にぶつける。

 あの少女は既にこの場に居ない。

 黙ったままの士郎を見て、察したのだろう。

 ごめんなさい。その一言だけを残して、彼女は消え去った。

 悲痛に塗れた表情が、全てを物語っていた。

 

 

 

「アンタが気にする事じゃないわ」

 

 消灯前の病室。

 元気の無い士郎から無理矢理話を聞き出して。

 事の顛末を把握した叢雲は、そう言った。

 

「電が勝手に期待した。それだけよ。それに完璧に応える義務はないわ」

 

 叢雲は良くも悪くもシビアだ。

 だが彼女の言う通りなのだろう、と士郎は思った。

 最適な答えを出し続けることは出来ない。

 あの場で何を言うのが電にとって良かったのか。

 それは多分――永遠に分からない事だ。

 

「電には私が話をしとくわ。アンタは余計な事に気を回し過ぎよ」

「……すまない」

 

 謝るんじゃないっての。呆れた様子で、叢雲はそう言った。

 

「アンタはまず、自分が満足に動けるようになることを第一に考えなさい。アンタが応えなきゃいけない期待は、あの娘じゃなくて私たちが先でしょうが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 艦これ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空はからりと晴れども、気分はそれに追随しない。

 悩み事の多い今の士郎には、天気を楽しむ余裕すら無い。

 抜け落ちた記憶、否定された過去、リハビリ、監視、電……

 何の因果か、日を追うごとに悩みは増えていく一方だ。

 

 

 

 昼下がりの鎮守府。新設されたというバスケコート。コートには士郎と叢雲。

 だむだむだむ。

 士郎は久々に触るバスケットボールを弾ませ、感触を確かめていた。

 次いで、両手に持ち、構えて、投げる。

 フリースローラインから放たれたボールは、やや歪な放物線を描き、リングに当たって、あらぬ方向へ跳ね返った。

 

「へったくそ」

「病み上がりなんだ。勘弁してくれ」

 

 叢雲の容赦の無い一言に、ちょっとだけ心が傷つく。跳ねたボールを取りに行き、同じように繰り返す。今度は――多少危なっかし気だったが、入った。

 

「ないっしゅー」

 

 ぱちぱちぱち。叢雲の拍手。

 今士郎は、叢雲に連れられて、バスケのフリースローを行っている。屋内でリハビリしていても気が滅入るだけよ。そう言ってやや強引に叢雲のリハビリメニューに参加させられていた。

 指先の感覚、投げると言う動作、跳ぶという動作、踏み切る事への意識、明確なイメージトレーニング。

 一歩間違えれば怪我が再発しそうなものだが、艦娘はこれくらいでは再発しないらしい。……艦娘の常識を只の人間に適用するのはどうか、と士郎は思ったが、思うだけに留めた。口で言っても勝てない気がしたのと、士郎自身外に出たいとは思っていたからだ。

 

「どう?」

「意外とイイ感じだな。最初は不安だったけど、今は平気だ」

「そう。ま、無理はしちゃだめよ」

 

 士郎のリハビリと言えば、まずは筋量の回復が主だった。全身を使った運動は久々と言える。

 構えて、投げて、拾って、また構えて。

 そうやって10本も繰り返すと。意外なことに士郎は息も絶え絶えになっていた。

 

「ちょうど10本目ね。じゃ、交代よ」

「……ああ」

 

 ボールを叢雲に渡して士郎はベンチに腰を下ろした。存外キツイ運動である。

 一か月以上もロクに動いていないと、ここまで動けなくなるものか、と。自身の身でありながら、他人事のような感想を士郎は抱いた。

 視線の先では、叢雲がシュートを放った所だった。

 伸ばされた背、余すことなく乗せられた力、綺麗な放物線。

 ボールはリングに当たる事無く。パサッ、と。音だけを残して通過した。

 

「ふぅ、こんなモンよ」

 

 ぱちぱちぱち。どや顔で振り返る叢雲に拍手を送る。それに気分を良くしたのか、叢雲は続けざまにボールをリングに通した。

 パサッ、パサッ、パサッ。

 見事なものである。一度もリングに触れることなく、ボールはゴールを通り抜けて行った。

 

「アンタは腕の力だけで投げていたわ。もっと足に力を込めなさい」

「そうだったか?」

「ええ。こんな感じよ」

 

 ぴょーん。足を延ばし切ったままの状態で叢雲はジャンプし、ボールを放った。だがそれでも、前までと同じように綺麗な放物線を描いてボールは飛んだ。

 

「そこまでだったか?」

「ええ、間違いないわ。ずっと見ていたもの」

「そんな手投げだったか」

「くどいわね。そう言ってるでしょ」

 

 まぁ、叢雲がそう言っているなら……そうなのだろう。

 不承不承ではあるが、士郎は叢雲の言葉を信じる事にした。

 

「ま、あたしのフォーム通りにやれば問題無いわ。不安なら逐一修正してあげる」

「ああ、ありがとう」

「てことで、交代」

 

 叢雲は叢雲で、さっさと10本決めてボールを投げて寄越す。この程度の運動は彼女にとって朝飯前。士郎のリハビリの監視がメインなのだ。

 だむだむだむ。

 フリースローラインまで歩きながらドリブル。ボールの感触を今一度確かめ、構える。そして叢雲のアドバイスに従い、足に意識を割きながら跳び――――

 

「げっ」

 

 ゴィン。枠に当たって明後日の方向へボールが弾かれる。叢雲の溜息。慌てて士郎はボールを追いかけ、

 

 ガッ

 

「げっ」

「あっ!」

 

 あろうことか足を縺れさせ、そのまま士郎は地面に倒れ込んだ。運動機能は大分回復できたと思っていたが、瞬間的な動きにはまだ身体が付いてこないらしい。膝や腕をつく間も無かった。ずざっ、と。思いっきり打ちつける。

 溜息を吐きつつ、ゆっくりと士郎は身を起こした。日常生活を送れるくらいには回復できても、以前と同じ動きが出来る様になるまでには、まだ時間が必要だ。

 

「大丈夫!?」

「……ああ。平気」

「そう……ほら、手」

 

 差し出された手。好意を無下にするわけにもいかず、叢雲の手を握る。ゴツゴツとした自身の手とは違う、柔らかで、小さな手。

 とは言え、あくまでも握るだけで、立ち上がるのは自身の足。両足にだけ力を込め、なるべく心配をかけないように立ち上がる。初対面の時と同じような失態は繰り返さない。

 

「まだ回復には遠いわね」

「難しいもんだな」

「焦らずゆっくり、地道に頑張る事ね。急いでも仕方が無いわ」

「焦らず、か……」

 

 叢雲はそう言ってくれるが、士郎としてはすぐにでも回復したかった。山積みの問題を、一つでも早く減らしたかった。

 体調が良くなれば、監視付きとは言え外出できるようになるだろう。そしたら冬木市に出向いて、本当に記憶の光景が無いのか、その真偽を確かめることもできる。自分の足で、現実を見ることが出来る。

 つづらが言っている事を疑うつもりは無い。だが信じられないのも事実なのだ。

 

「……今日はここまでにしときましょうか。他の子も来た事だし」

 

 言われて見てみると、知らない女の子たちが来ていた。手には、先ほど士郎が明後日の方向へ飛ばしたボールを持っている。

 叢雲はテキパキと片づけを始めた。と言っても、水とタオルを持つだけ。それから士郎に手を貸して――――

 

 

 

「叢雲と……あ! 噂の一般人!?」

 

 

 

 予想外の反応に、思わず2人は顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体どういうことなのか。

 そんなの、知らないわよ。

 士郎とは叢雲は、互いに視線を合わせて意思疎通を図る。アイコンタクト。だがその行為は、この状況を改善すには足りない。

 

「叢雲! 何してんのじゃ! 動かんかぁ!」

「うるさい! こっちは病み上がりよ!」

「し、不知火ちゃん、お願い!」

「良いパス。感謝します」

 

 士郎は目の前で行われている艦娘たちの試合のスコアラーをしていた。目まぐるしく変わる攻防。外見からは想像もつかない激しい運動。小柄な彼女たちが自身の身長以上に跳躍して、ダンクを連発しているのを見ると、改めて艦娘とは普通の人間と違う事を思い知らされる。

 叢雲は数の埋め合わせで一緒に試合をさせられていた。だがまだ本調子では無い為、基本はパス回し。余裕があればシュートを放っている。ちなみに普通にシュートを放っても、他の艦娘が空中でカットしてしまうため、叢雲は殆ど得点を挙げられていない。艦娘同士のバスケは、基本ダンクの撃ち合いらしい。空中でのカットはルール違反? そんな細かいことを気にする人はここにはいない。

 

「っしゃこらどうじゃ!」

「ナイス!」

「チィ! 一本! 大切に行くよ!」

 

 過熱する試合展開。取られたら取り返す。超攻撃型の3on3。その光景を、士郎は無心で眺めていた。心は鉄、心は鉄。そう言い聞かせながら、スコアを取り続ける。

 身も蓋も無い事を言うと、士郎には刺激の強い光景が先ほどから目の前で繰り広げられている。

 もっと詳細に言えば、試合をしている内の何人かは、非常に発育が良いのだ。……どこが、までは言うまい。

 

「不知火!」

「任されまし、たっ!」

「うげぇ、また不知火かぁ……」

「不知火、8本目。スコアは32-26っと」

 

 不知火。桃色のセミロング。髪形はポニーテール。冷静さを思わせる空色の瞳。しかして相反して、先ほどから実に激しい運動を繰り返している。ちなみに一人で8ゴール決めているので、得点は16点だ。

 

「皐月!」

 

 皐月。金色の長髪。髪形はツインテール。髪と同色の金色の瞳。快活そうな少女だ。だがプレイは冷静で、全体を俯瞰してパスを回したり、逆にパスを受けられるように位置取りを変えている。4ゴールで8点。

 

「潮!」

 

 潮。黒色のロング。髪形はそのまま下ろした状態。黄色のかかった鈍色の眼。あまり運動は得意でないのか、積極的には動こうとしない。けど基本的な能力は流石艦娘で、皐月と同じく4ゴール8点決めている。あとでかい。何がとは言わないが。

 

 この3人がAチーム。

 

「甘い!」

「叢雲、ナイスカット!」

「浦風! あ、チィッ、ダメかっ!」

 

 浦風。青色の……髪形、あれ何て言うんだろう。士郎は分からない。それと同じように青色の眼。Bチームの得点の大半は彼女が叩き出している。10ゴール20点。それと彼女もデカい。何がとは言わないが。

 

「川内さん!」

「え? おお、やばっ。へいっ、ぱーす」

「返すなぁ!」

 

 川内。この中では唯一の軽巡洋艦。ただ夜勤明けらしく、眠いのか殆ど動いていない。今だってパスが来たと言うのに、速攻で叢雲に返している。0ゴール0点。完全な置物だ。

 彼女たちと叢雲がBチームだ。

 

「っ、もぉぉおおおお!!!」

 

 叢雲が切れて、ノーステップでボールをぶん投げた。ハーフラインよりも後ろからの投擲。流石に虚を突かれたのか、Aチームの反応は遅れる。体勢は滅茶苦茶なオーバースロー。しかして完璧なコントロールで、ボールはゴールに吸い込まれた。スリーポイントシュート。これで叢雲は3ゴール9得点。お見事。

 

「叢雲、3本目。スコアは32-29っと」

「ナイス叢雲!」

「川内さん、動いてっ!」

「えー、体力切れー。衛宮さん、代わりにどう?」

「いや……」

 

 誘われるも、今の士郎じゃ川内以上に戦力にならないだろう。シュートは愚か、パスもきっと回せない。

 

「じゃあ、衛宮さんの時だけシュート防がないとか」

「それでも止めとくよ。今は問題無くても、戻った後の梢子さんが怖い」

 

 幾ら士郎が回復が早い方とは言え、まだ無理をできる程に回復したわけじゃない。ここで試合に興じ、明日のリハビリに影響が出る様であれば、佐世保鎮守府からの外出が遠くなるのは明白だ。それは本意では無い。

 

「ちぇー」

「川内」

「分かってるって……」

 

 はぁ。盛大に溜息を吐くと、川内はコート外から出た。出て、士郎の隣に座る。

 

「ちょっと、きゅーけー」

「……休憩に賛成。私も疲れた」

「2:2だとあんまり面白くないし、ボクたちも休もっか」

 

 川内の休息を皮切りに、皆も運動の手を止めた。談笑したり、水分補給したり、寝そべったり……ぞろぞろと皆コート外に出て、思い思いに休息をとり始める。

 ゴロリと。横で寝そべっていた川内が口を開いた。

 

「衛宮さん、まだ動けないの?」

「俺? うん、まだだな」

「あとどれくらいかかりそう?」

「元通りに動くには、1年以上必要って言われている」

 

 1年。そう、1年だ。寝ている間に骨折の治療は済んでいるが、運動機能の衰えは著しい。元通りに動けるようになるには、最低でも半年、余裕を見るなら1年が必要と言われている。

 常人ならば、だ。

 実際のところ、士郎は担当医の梢子が驚くレベルで回復している。若さとか、意志の力とか、佐世保鎮守府の医療技術が発達しているとか。そんな話では済まない。梢子からは、冗談交じりとは言え、研究したいと言われるくらいだ。

 

「1年かぁ、長いねぇ」

「……ああ、長い」

「普段は病室なんでしょ、暇じゃない?」

「いや、そうでもない。やることは見つけられるからな。暇ではないよ」

 

 リハビリの時間を抜いたとしても、記憶の整理や現状の把握で残りの時間は消える。そうでなくとも、叢雲だったり磯波だったりが、士郎の話し相手として結構な頻度で訪れる。以外にも、暇を感じる時間は無い。

 

「そういえば三日月がよく衛宮さんのトコ行ってるよね。アイツ、何か失礼なことしていない?」

「三日月? いや、大丈夫だけど……あ、皐月って、望月や三日月の姉妹艦か」

「お、その通りだよ! へへっ、よく知ってるね!」

 

 そこは日頃の勉強の賜物である。あの海域で一緒だった皆については、特に。

 皐月は自分を知られているのが嬉しいのか、満面の笑みを見せた。

 

「……アンタ、良く知っていたわね」

「図書館で本借りて勉強したからな」

「! へ、へぇ……まぁ、知識を付けるのは良い事ね、うん」

「勉強って……あ、もしかして……鎮守府で将来働こうと思っているとか、ですか?」

「おぉ、それはええのぉ。どこも人手が足らんけん、歓迎されると思うで」

「本当! うわぁ、三日月たち喜ぶと思うよ!」

 

 何も言っていないのだが勝手に話は進む。士郎としては働くために勉強をしていたわけでは無いのだが、今更それを否定するのも気が引けた。……実際、叢雲はどことなく嬉しそうである。

 

「衛宮さんって、まだ学生ですよね?」

「あ、ああ。まだそうだけど」

「ほほぅ、学生とな。ならええ機会じゃけぇ、提督を目指して見るのはどうじゃ?」

「馬鹿言うんじゃないわよ、提督になれるのは適正持ちか、大佐以上よ。そう簡単には成れないわ」

「叢雲は頭固いなぁ。イイじゃん、別に。そんなの」

「皐月に賛成じゃ。話すだけならええと思うがの」

「頭固いどうこうの話じゃ無いでしょ……」

 

 わいわいと話し合う少女たち。人の事で議論できる辺りに、彼女たちのお節介焼きな性分が見て取れる。

 

「もしも衛宮さんが提督になったら……なんか、すごく運命的ですね」

「あー、確かに! しかもこれで叢雲なんかを指揮したらすごい!」

「な、何を言っているのよ!」

「戦地で助けられた一般人が、助けてくれた艦娘を忘れられず、猛勉強の末に提督となる……」

「その上で、かつて自身を助けてくれた艦娘を指揮する……なんてなったら、凄い事だね!」

「そ、そんなの……」

「悪い気はせん、って顔じゃなぁ?」

「~っ、う・ら・か・ぜ?」

 

 ……士郎は聞いていない事にした。経験上、こう言ったことに不用意に口を出すと、とんでもないことになる。具体的には衛宮家の虎とか。だから士郎は、さり気なく物理的に距離を一歩だけ取る。後は流れ弾が来ない事を祈るばかりである。

 

「いやぁ、人気者ですねぇ」

「迷惑をおかけします」

 

 事の発端である川内、それと不知火は冷静そのものだ。4人の会話には入っていない。川内に至っては、ニヤニヤと楽しそうに士郎を見ていた。

 

「実際のところ、どう? 提督とか」

「どうって言われても……なんとも言い難いかな。提督って言う職業がよく分かって無いから」

「艦娘が活躍できるように、鎮守府を運用する。その最高責任者、と言ったところですね」

「一つの鎮守府には基本1人で、ウチとか横須賀みたいに大きなところは複数人いるって感じだね。で、さっき叢雲が言っていたみたいに、大佐以上か、もしくは適正持ちなら提督になる資格アリって感じだね」

「適正持ちは今のところ100%が提督になっていますね」

「適正持ち?」

「うん。えーとね……あ、そうだ。コレ、見える?」

 

 そう言って、川内は掌を上にして士郎に出す。だが士郎には意図が見えない。掌には何もない。何も見えない。……いや、空気が揺らいだ。何かいる?

 士郎は違和感に従って、スイッチを切り替えた。撃鉄を弾く。魔術回路に魔力が奔り、体内を循環する。

 見えたのは、人型を模した……空気の塊?

 

「……ふぅん。まだ見えないけど、感知はできるんだ」

 

 何かを言う前に、川内が口を開く。感知。彼女はまさに士郎の状態を言い当てていた。

 

「ね、何が見える?」

「何がって……空気の塊しか見えない」

 

 何をどう言うのが正解かは分からないが、川内は士郎の状況を把握している。取り繕うのは好ましくないだろうと士郎は判断して、見たままを口にした。

 空気の塊。

 もう少し正確に言えば、動いている様にも見えなくはない。

 

「……驚きました。提督以外の適正持ちがいたとは」

「いや、これだと見えてないのと同じだと思うが……」

「適性が無ければ、何も見えないよ。何より、この子が見られていると感じている」

「?」

「今は分かんなくてもいいよ。けど、すぐに分かる日が来るよ」

 

 意味深な言い方だ。士郎の疑問は解決せずに増えるばかり。だが彼女たちの中では何かが解決したらしい。

 じゃあね。そう言って川内と不知火はコートを後にする。後ろではまだ何かを話している4人。

 

 

 

 昼下がりの時間は。

 こうして緩やかに過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日中に抱いた疑問。

 川内はすぐに分かる日が来ると言っていたが。

 全く以って彼女の言う通り、その機会はすぐに訪れた。

 

「聞きました。適性があるかもしれないんですね」

 

 その日の夕方。

 部屋を訪れたのはいつもの皆ではなく、別の艦娘が3人。

 不知火。

 川内。

 そして――――

 

 

 

「どうでしょう。急で申し訳ございませんが……少し、お話をできませんか?」

 

 

 

 茶色のセミロングにクリーム色の制服。

 重雷装巡洋艦。球磨型の4番艦。

 そして、木曾の姉。

 

 

 

 ――――大井

 

 

 




おまけ(と言う名のNG)

「もしも衛宮さんが提督になったら……なんか、すごく運命的ですね」
「あー、確かに! しかもこれで叢雲なんかを指揮したらすごい!」
「な、何を言っているのよ!」
「戦地で助けられた一般人が、助けてくれた艦娘を忘れられず、猛勉強の末に提督となる……」
「その上で、かつて自身を助けてくれた艦娘を指揮する……なんてなったら、凄い事だね!」

 中略

「で、最期は助けてくれた艦娘と一緒に深海棲艦を倒してハッピーエンド……と思いきや軍の規律から2人が結ばれるのは違反、しかも重罪。表面上は分かったふりをしつつも、それでも燻る思いは無視できず、2人は互いの想いを確かめて、愛の大脱走を決行する……なんてなったら、完璧ですね」
「あ、あれ、潮ってこんなんだっけ?」
「……あー、何かこの前秋雲に漫画を借りてからあんな感じじゃ」
「……」
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