ミカベネ物語 ファンファン編   作:ミ景

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 探偵編もありますが、書きたくなったので書きました。

 ロボとかよくわからない人でも楽しめるように頑張ります。




1、はじまり

 時代や理由は違えど、人の戦いは文明の発展をもたらし、歴史には必ず存在した。

 技術が向上する度に道具──兵器も進化し、今で指一つ動かせば想像付かないほどの生物が殺せる時代が訪れる。

 中でも、巨大人型兵器AWM(アーマード・ウォー・マシナリー)は多くの局面で開発、投入されると戦火を広げていった。

 現代では生身の兵士ではなく、鉄の巨人たちが戦場を駆けている。

 

 

 

 

 

 

 俺の視界には闇夜で広がる山間部の斜面と森。

 両脚に備え付けられてローラーで滑る六つの影。

 後方に続くのは依頼主が今回の任務の為に用意した聖日皇国産AWM『羽嶋』の派生【烏丸】と呼ばれるものだ。

 黒塗りのボディと機動力を重視した5つの影は俺の動きにしっかり追従してくる。

《隊長!  今回の任務は本当にこれだけの戦力が必要なのでしょうか?》

 男の声を回線が拾う。

 番号はすぐ後ろの奴のものだ。

《ははは! ビビりの媚売り野郎が珍しく疑問を持ったか?》

 最後尾の奴が茶化すのを俺が制止すると一言付け加える。

「あー、なんでも、今回選ばれたお前らは『優秀』らしいからな。 期待はしてるぜ」

 俺の言葉に満更でもなさそうに反応したのは3人といったところか……。

 残り二名からは殺気にも近い気配。

 優秀な援軍? とんでもねえ。

 どうせ連中は俺を信用してねえから監視役でも欲しかったんだろうよ。

 それで状況次第なら俺ごと始末しろとか、な……ったく傭兵も楽じゃねえ。

 斜面を登り切り、見下ろせるポイントに到着。

 俺は改めて依頼の内容を確認する。

「俺たちの目標はこの山奥に囲まれたとある施設の破壊だ。 それに関しては詳しい説明はされてねえが傭兵の俺にも下っ端のお前らにも関係ねえとは思う」

 というか、知りたくないというのが本音だ。 何せ相手は現在世界の半分近くを牛耳ってるとされる国家なのだ。

 腕には自信はあるが国一つを相手取る程暇ではない。

「それとこれから先進めば恐らく『奴』の範囲に入ると思う。 全員チャンネル回線は開いておけ」

《……奴?》

 俺は言葉を続ける。

「いいか、合図が聞こえたら全員散開だ。 固まってると的になる」

 理解が追いついていないものは恐らく全員だろう。 それでも、それ以上に説明しようがない。

「ああ、きっと『奴』の好みが変わってないならジャズが聞こえてくると思うぜ?」

 

 

 

 俺たちは慎重に進軍していく中、それは急に鳴り響く。

 一瞬はノイズのように掻き乱されたと思えば、耳が音を拾い上げ、それが音楽と認識。

「全員! 広がれ!!」

 空から近づく落下音を外部スピーカーが拾う。

 俺は咄嗟に機体を前方へ飛ばし、その場を離れると共に後方から爆音。

 後ろを確認すれば僅かに逃げ遅れた一機の右足が消し飛んでいた。

《た、隊長! 動けません!!》

「各機! 説明した通りに進め! 施設破壊が最優先だ!!」

 救援を求める声を無視して、指示を飛ばす。

 悪いが俺はテメエのママじゃねえからよ。

 コックピットに流れるサックスのメロディが嫌に響いた。

 

 

 一人で突き進む俺は今までの行軍が嘘のような速度で走らせる。

 木々を物ともせず駆る機体は今回の任務には打ってつけだ。

 高機動と強襲を主に置いたAWM『パンサー』をベースに組み込んだカスタマイズ機【ジャガーマン】は烏丸同様の黒い塗装で、そのフォルムは両脚の膝とつま先から生える突起が目立つがこれを使うことは滅多にないだろう。

 レーダーを見れば、味方の反応は先程より既に二つ減った。

「ったく、案山子かよ」

 悪態を吐いて、俺は速度を上げる。

 データではそろそろという頃に前方上空に暗闇を彩る花火が見えた。

 それが枝分かれする弾道ミサイルと分かる前に身体が動く。

 操縦桿と動かし回避運動と同時にサブマシンガンから火を噴かせた。

 弾丸が見事に撃ち抜くと内心ガッツポーズ。

 日頃から整備を怠らない機体の感度は百点満点の出来だ。

「もちろんです、プロですから!」

 俺は更に機体の速度を上げた。

 

 

 

 しばらくすると、森から少し開けた場所へ出た。

 レーダーを確認するも俺以外の光点は一つだった。

 その反応は前方を指し示している。

 

《よぉ、久々だな【黒豹】》

 

 軽快なジャズの音色に合わせ、通信を呼びかけてきたのは紛れもない『奴』だ。

 白を基調にしたボディ。

 AWMでも巨大な図体をし、背中には規格外な武装を装備。

 放熱のためか蒸気の音を外部スピーカーが拾う。

「よぉ、鯨野郎! 相変わらずな選曲だな!」

 互いに視認できる距離にも関わらず武器は構えていない。

 殺意がないわけでもない。

 ただ、話がしたいだけなのだ。

 これから殺す相手と、お互い最期になるかもしれない会話を。

「テメエとはかれこれ三度目か?」

《……そうだな、敵対『だけ』を数えるなら》

 俺は傭兵だし、奴さんも似たようなもんだ。

 共闘の一つや二つはあったな。

「三度目の正直だ」

《二度あることは三度ある、とも言うが?》

「っるせぇな!」

 俺はフットペダルに載せる足の重心を調整する。

《なぁ、お前ほどの腕のある奴がなんで皇国なんかに力を貸すよ?》

 その声には理解不能の声音。

「……さあな、長いものには巻かれろってやつか」

 適当な返しをしながら、両手のグリップ位置を確認。

《せっかくだから大人らしく話合おうぜ?》

 このくそったれな世界で今更何を話し合うよ?

《──ほら、ランチ2回奢ってやったろ?」

「俺は13回奢らせられたぞ!!!」

 足と腕が反射的に動いた。

 無意識に口走った怒号を乗せた俺の発進に野郎は驚いた様子はないが、構わずサブマシンガンを撃ち放つ。

 瞬間加速においては明らかに優位な俺の攻撃は『白鯨』の装甲の前にビクともしていないかもしれないが、そんなのは百も承知である。

 フェイントを掛けながら接近しつつ、左上腕に装備された鉤爪を振り下ろす。

 だが、その巨体からは想像も出来ない反応で突撃銃が迎え撃ち刃を拒む。

 がら空きの左ボディにサブマシンガンを向けるも背中に搭載された主砲の存在。

 ブーストを噴かし、緊急離脱。

 離れると奴は同時に背中から六連式ロケットランチャーを生やし立て続けに発射。

 六つの帯を躱しながら、思考を巡らせる。

 距離を置いたところでそれでは余計に不利になることは変わらない、それも長期戦はますます死をイメージさせた。

 この煩わしい音楽が鎮魂歌になる想像を振り払い、俺は覚悟を決める。

「うぉおおおおおおお!!」

 雄たけびと共に再び接近。

 それを待っていたとばかりに背中の主砲が応えた。

 身体が許す超反射で操縦桿を動かす。

 反動でその巨体を揺れるのが見えたかと思えば、こちらにも衝撃。

 機体の状態を示すモニターには右腕から警告アラームが鳴り響いているのを俺は生きているし、俺に応えてくれた機体に感謝するだけであとは目の前の敵に集中。

 幸い残った左腕の鉤爪では、既に武器を構える奴には遅いと判断した俺は奥の手を使うことを決意。

 最早特攻に近い加速で接近する。

 おおよそ体感で二秒以内では激突し、雌雄は決するだろう。

 僅かに心残りなんかが過るが、それは無駄と悟った。

 何せ、俺が勝てば解決するのだから。

 

互いの影が交錯しようとした次の瞬間だ。

 

 眩い閃光。

 加えて、機体だけでなく大地を揺らすような衝撃が俺を襲った。

 

 

 

 そこから先は俺は覚えていない。

 だが、きっとこれは言える。

 

 

 

 例え死んでも生きてても、俺の戦いは終わらねえだろうということだ。

 

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