ミュルトン大陸中央に領土を布き、今なお勢力拡大を目指す【ザガリア帝国】
首都コンティノプルから南西に下り、ガハラ運河付近の町、【レティア】
河の近くということもあり、漁で獲ったものを市場に卸す者、舟を利用する者、そこを経由する旅人。
決して裕福という訳でもないが、そこには人々の生活が構築され、生きていた。
だが、その日──町は戦場へと名を変わった。
石材で造り上げられた建造物が爆風で粉砕され、硝煙と鉄の匂いが充満し、辺りは炎と黒煙で包まれた。
炎と黒煙、当然のように転がる屍の山は血だまりの海を形成。
開戦わずか30分で生まれたとは思えない地獄絵図を作り上げたのは”巨人”であった。
体長はおおよそ10メートル未満。
金属の無骨なボディは灰色の装甲版に覆われ、ギラリと頭部中央に輝く一つ眼のメインカメラは神話に登場する一つ目の巨人を彷彿とさせた。
無抵抗に逃げ惑う人々を次々と両手に持った機銃が撃ち抜き、足元の人影を踏み潰し、建物をその拳で叩き壊した。
その集団はどこからともなく現れ、この殺戮を開始したのだ。
まるで破壊の限りを尽くす、蛮族の所業で合計五体の巨人によってレティアを壊滅にまで追い込むと、その後は何事もなかった姿を消したのだという。
もちろん、その凶行に走った犯人たちの正体を追ったが、当時の帝国は諸国や反抗組織とも争っていたこともあり、候補も多数挙がり捜査は難航。
しかし、それも有力な情報によって事態は大きく動く。
情報元は当事者……辛うじて生き残った生存者たちによってもたらされたもので、襲撃者たちの特徴や状況を説明され、中でも巨人たちについての情報が注目された。
レティアを襲った灰色の巨人たちの肩には派手な模様が描かれ、曲線と直線を複雑に結び絡ませ構築されたそれらは実は文字であり、両肩に一文字ずつで『聖』と『日』や『万』と『皇』など形も組み合わせも様々であったというもの。
五体の襲撃者たちの後方に控えた一体は巨大な旗を掲げ、白地で中央に向かう無数の赤い斜線が描かれた柄と、大きく書かれた『聖日皇国』という四文字。
これらの情報を得て、帝国上層部は頭を抱えたそうだ。
なにせ、このミュルトン大陸にそのような国どころか、組織さえも”存在が確認出来なかった”のだ。
それは大陸の歴史を遡ってすらも同様な結果だった。
そこで帝国の長である皇帝はこう結論付け、声明を発表。
異世界からやって来たであろう【聖日皇国】は平和を脅かす明らかな敵であり、ザガリア帝国はこれに対して徹底的な抗戦で迎える、と。
そうして、現在は『世界』同士での戦争へ発展し、後に【第一次異次元大戦】と呼ばれるものとなった。