ミカベネ物語 ファンファン編   作:ミ景

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4、シロキヌシ

 意識ないまま移動していたことが多くて気付けなかったが意外にこの付近の技術は進んでいるようで、普通に電気も自動車と思わしきものも存在した。

 ヨネさんなどを見ていたせいかてっきり一昔の文明と思い込んでいたが、そんなことは無かったみたいだ。

 そんな僕の肩を叩いたのはベネットさんでその表情はどこか同情めいたものを感じる。

「わかるぜ……俺もファンタジー世界と思い込んでたら実は現代風の文化取り入れてます……だもんな」

 僕の表情がどんなものかはわからないが少なくとも彼が勘違いするようなものだったのだろうか?

「相手をしなくていいぞ、妙な妄想するのが趣味な中年だからな」

 御景さんはそういうと僕たちの後ろを通りすぎて行く。

 既にタピオカさんはその先を行っており、僕とベネットさんは慌てて追いかけるという感じになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩くと、山と山の間を繋ぐように鉄線で結び、それを行き来する鉄の箱が見えた。

「はあぁあ、ゴンドラリフトまであるのかよ!!」

 ベネットさんの叫び声はともかく、これには僕も度肝を抜かれた。

「お前たち、もしかしなくても我々を馬鹿にしてるだろ」

 明らかに不機嫌な声音。

「なに、少なくとも半日は歩くと覚悟していたんでな」

 御景さんのフォローに必死に僕とベネットさんが頷くのを見てそっぽ向く彼女。

 何とも言えない空気の中、歩き続けると乗り場があった。

「……定員は二人、か」

 重量制限を考慮してるのか、ゴンドラの大きさなのか、そう記された注意書きを読み上げる御景さん。

「それじゃあ、組み分けはどうする? 恨みっこなしであみだ籤でも───」

「俺とロック……ベネットとタピオカ氏でいいだろ?」

 遮られた声に棒切れで地面に線を描いていたベネットさんは静止。

 タピオカさんはピクリと反応した。

「……何故、そうなる?」

 彼女の問いに、御景さんはイヤホンを弄りながら答えた。

「まず、俺とベネットは君から信用されていない。 乗るのが後にしても先にしても逃走の恐れがあるそんな二人を一緒に乗せるなんて論外だと思わないか?」

「……貴様ら程度なら例え逃げようと、追って仕留められるぞ?」

 安い挑発。 だが、その視線の先には御景さんの靡く左袖。

 緊迫した空気。

 御景さんとタピオカさんの間に火花がぶつかり合うように見えた。

「やめろ。 くだらねえことで喧嘩することねえだろ……オメエも左腕だからよかったもんをよ、次は首でも飛ばすか?」

 意外にもベネットさんがそれを制すように肩を掴む。

 掴まれた御景さんがその手を振るい払うと、べネットさんは肩を竦めて停止していたゴンドラへ乗り込んだ。

 何を言うでもなく、タピオカさんもそれに続く。

 二人が乗り込むとドアは閉じられ、そのまま鉄の箱は向こう岸へ進みだした。

 それを見送りながら、僕たちは次のゴンドラが来るまで待機していたのだが。

「……えっと、左腕って怪我を、されたんですか?」

 ベネットさんの言葉と、僕の記憶を繋げるとやはり気絶している間に何かあったらしい。

「……大したことじゃあない。 俺の油断が招いた結果だ」

「……はあ」

 それ以上は追及するな、そう目で言ってきた彼に僕は従うしかない。

「あ、そういう言えば聞きたかったんですが、僕と貴方って以前からの知り合い──友人だったりするんですかね?」

 そう、自身が今名乗ることになった『ロック』という名前はこの人が教えてくれたのだ。

 イヤホンを弄る彼の横顔には思考の面影。

 ん? 何だろう……この間は。

「いや、俺はお前を知らないぞ?」

 脳天を何かで叩かれたような錯覚。

「えっと、それは、どういう」

 僕の疑問への回答あくまで冷静。

「俺は記憶喪失前のお前さんを知らないってことだ……正確には森で出会ったところから知らないが」

「つまり、僕のロック=セカンドってのは?」

「それは”ラナイ”が考えた名前で、まあ偽名って奴だな。 俺のセンスは酷いが、あの子のはまあまあいいだろ?」

 

 

 なんということだ。 また振り出しに戻ってしまった。

 僕の記憶はこの人たちに出会う前の森で目覚めた場所から残っている。

 だが、それはつまり御景さんは本当に僕のことは知らないということに他ならない。

 知れば知る程、現状の深刻さが身に染みてきた。

 

 

 

「……どうやら、記憶喪失ってのはデマじゃないようだな。 というか、お前も俺たちと同じように飛ばれてきた人間なのかもな」

「……はい?」

 そういえば、ヨネさんたちと話している時も似たような話を……勇者がどうとか……

「って、なんで僕が勇者なんですか?」

「知らん、俺たちも変な賊を追い払ってる時に通信が入って来たんだよ。 それで俺とベネットはそれに乗ってここら辺までやった来たってわけで……」

 一旦言葉を切り、ジトーッとした目でこちらを見てきた。

「俺らが道を聞いてただけで暴漢と間違うやつもいたしな。 本当に嫌になるよ」

「いや、あれはどう見たって」

「……不審者だろうな。 というかそういう知識はあるみたいだな」

 

 言われてみればそうだ。

 自分のことはさっぱりでも、ある程度の常識や知識は必要な時に湧いてくる。

 それが当たり前かのように。

 偉人風にいうなら『吾輩の辞書に自分はいない』とでもいうようなものだ。

 

 

 

 ……うん。 本当になんでこんなことばかり覚えているんだろう。

 

 

「……良ければ俺たちと行動を共にするか?」

「え、本当ですか?」

 その誘いは有り難いし、心強い。

 二つ返事をしそうなところで僕は、ふと思う。

「それって、貴方たちにメリットってあるんですか?」

 ニヤリと御景さんの口元が三日月で歪む。

「ここで二つ返事でしてきたらどうしようかと思ったが、それも杞憂だな」

 彼は僕を試したようで、右手でイヤホンの位置を調整。

「それでメリットは?」

 少し強気に攻めた僕の言葉を御景さんはこちらへ視線を真っ直ぐ向けて答えた。

「特にないな、むしろお荷物……と考えるのが普通だろう」

 だが、と言葉を切る。

「俺とベネットは変わり者だし、旅は道連れとも言う。 それで納得はしてくれないか?」

 差し出された右手。

 僕はまたしてもそれに応えて握手した。

 それは、この人がどこか頼りになるというのはわかるし、悪い人ではないのも感じた。

 

 

 

 

 それに───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  この人が何を隠し、背負っているのかが非常に興味を注がれたからだ。 

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