次のゴンドラでやって来た御景とロックの二人と合流したベネットたちは再び目的地へ向かうことにしたが……何やら雰囲気が変わったことに気付いた。
それを察してか、誰もそれを指摘しない。
誰もが存ぜぬといった顔をするが、ただ一人ロックだけが気まずそうな表情を浮かべていた。
「どうした、腹でも壊したか?」
殿を務めるベネットに乾いた声で青年は答える。
「ははは、そうじゃないんですが……なんというか空気が」
「なんだ、こんな自然溢れる空気は性に合わないってやつか?」
「そういうわけじゃないんですが……」
返答に窮した様子を見かねてか、前方から助け舟が流れてくる。
「おい、中年。 それ以上やるとパワハラもしくは、こじつけでお前を訴えるぞ」
「はあ!? 俺はただコミュニケーション取ろうとしてるだけだろ!?」
「それが傍から見ればどう見えるのかも考えろ」
ただし、その船には大量の火薬が積んでいるみたいだが。
そのやり取りの間に挟まれたロックの表情は更に困ったものになる。
先頭を歩くタピオカは何も言わず、時折溜息を吐いているようであった。
「着いたぞ」
そう言ってタピオカが示したのは、岩場を削ったような洞穴。
幾分か時間も経っているのか、入口付近には藻や草木が生えていた。
「ここが目的地、ですか?」
そうだ、と彼女が冗談を良いようなタイプでないというのは分かりきっていたのでロックはすぐさま納得。
青年の視線は隣を並ぶ、二人の男に向けられていた。
ベネットは腕を組んで、一人納得した頷きで首を揺らし、御景の方は何かを読み取るような視線を巡らせている。
「それで、どうするのだ? 行くか? 止めるか?」
「おいおい、ここまで来てそりゃあねえだろ! な?」
ロックの肩に腕を回して、ベネットは謎の同調を促す。
「え、ええ。 まぁ……」
ベネットの思惑とは別にロック本人も気になっていた。
「いいねぇ!」
何故か上機嫌のベネットは肩に回していない手で青年の髪をワシワシと掻き乱す。
じゃれる二人からタピオカの視線が忌々しそうに横に動いた。
その視線を受けとるが速いか。
「俺はここで待っておく」
と即答。
「おいおいおい、こんな明らかにお宝が眠ってそうな洞窟前にして行かないってお前それでも男か! ボール付いてんのか!?」
「お前こそ自身の年齢とかもう一度加味した上で、その言葉が言えるかしっかり考えろ」
「言えるだろ。 冒険心に歳は関係ねえよ」
そう胸を張って言う辺り彼は本物なのだろうと、ロックは謎の確信。
頭を抱える御景は、ともかく! と何かをベネットに手渡しながら言葉を続けた。
「俺は少し整備と、見張りをやっておくから、お前ら三人で中を見て来い! なんなら、このカメラで撮れる部分を撮ってこい! 以上」
言い切ったとばかりに御景はそのまま離れていった。
「あのバカが……まあ、しゃあない。 あんな奴気にしないで、入ろうぜ!」
はしゃぐ中年を見て、何とも言えない空気になりつつも、ロックはタピオカを見る。
「そうだな、あのような愚か者は森で不幸な事故で死んでもらうことを祈るとしよう」
早く来いよぉ! と急かすベネットに歩む彼女の背を見て、ロックは何か声を掛けようと思ったが止めた。
その背中を。
どこかで。 そう、どこかで見たことあるような……そんな気がしただけだから。