綾小路Tレックス   作:チームメイト

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ストーリーはアニメ版をメインに採用しています。

注意書き (22/12/30 追加)
この作品は、入手方法が限定される0巻設定を踏まえずに作成されています。
0巻との矛盾点が生じるかも知れませんがご理解とご了承お願いします。
また感想欄で0巻に触れることはお控えお願いします。


綾小路Tレックス 原作1,2巻 アニメ1話~6話
充実した学園生活とは何か 上


 突然だが、少し考えてみて欲しい。

 人は平等であるか否か。

 そのことを考えるうえで重要な言葉がある。

 ある人は言った「ただし、イケメンに限る」

 なんて残酷な言葉だろう。

 

 例えば『今日の服装、なんか可愛いね』等と口にしながら頭をぽん、と叩いたらどうなるか。

 

 同じ言葉を投げかけ、同じ行為を行ったとしてもイケメンであるかどうかにより、片やワーキャーと評価されて片やセクハラ&ストーカー扱いを受ける。世の中に平等などありえない。

 平等などと言った言葉は嘘偽りだらけ。

 だったら、平等ではないこの世界で、オレはいったい何をするべきだろうか。

 

 

 さて、目の前の問題である。

 

 自分が座席に座るバスの中で、老婆が席を確保できずにいるのに気づいた場合、どう行動するのが正解だろうか。

 

 1、席を譲る。 2、席を譲らない。

 

 簡単なようで、意外と悩ましい二択だ。

 

 仮にイケメンだったら、1を選ぶのが正解だろう。

 さっと席を立って譲れば「さすがイケメン」と評価されるシーンだ。少しやっかまれても、照れ笑いを浮かべておけば、それで絵になり評価はあがるはずだ。

 

 問題なのは、イケメンではない場合の選択肢だ。

 イケメンでなかった場合「け、なんだ、このかっこつけ野郎は」とけなされる可能性がある。挙句の果てには、席を譲ろうとした相手から「お前の席はいらねーから」と汚物扱いされて、結局誰も座らない空白地帯を生み出す恐れすらあるのだ。

 人間というものは、まったくもって残酷な生き物だ。

 

 優先席に座っていたら『優先席だから』と言い訳も立つが、残念なことにオレが座っている座席は一般座席で、悪目立ちは避けたい。

 というわけで、2の選択肢を選ぼうと決めたが──

 

「ここの席、どうぞ」

 

 立ち上がりながらオレは老婆に声をかけて座席を譲った。老婆と座席が少し離れた位置だったため、転んだりしないようにいつでも支えられるポジションをキープしながら座席への誘導までやってのけた。礼を言う老婆に、緩く首を振るだけで応え、それ以上口を挟まれる前に背中を向けて離れていく。

 

「…………」

 

 自分へと集まる周囲の視線から逃げるように、そのまま最前列の運転席の後ろを立ち位置とした。

 

 そのまま少しだけ我慢すれば、数分も経たないうちにオレを気にする人物などほとんどいなくなる。日常の中の些細なイベントなんて過ぎてしまえば、たぶんこんなもんなんだろう。

 

 それ以降は、特に何も起こることなくバスは目的地についた。

 

 

 

「陸の孤島だな……」

 

 東京都高度育成高等学校。日本政府が作り上げた未来を支えていく若者の育成を目的とした学校だ。

 埋立地がそのまま学園の敷地であり、学園の外へと出るためには、先程バスで通った橋を通らなければならないようだ。

 入口からは全容が分からない程度には広い。

 ここで過ごす3年間は、どうなることか。

 

 どうでもいいが、陸の孤島って言葉の響きだけでもっともらしく使ってみたが、こういう埋立地で橋1つだけってパターンは、ただの孤島か陸の孤島かどっちが正解なんだ。世の中には分からないことだらけだ。

 

「あの……」

「ん?」

 

 バスから降りる人の流れから外れ、学園を眺めていると背後から声を掛けられた。

 振り返ると、肩口より少し短いショートの茶髪の美少女がいた。

 

「さっき、バスの中で席を譲ってた人……だよね?」

 

 美少女にこう言われては、頷くしかない。

 

「見られていたのか」

「私もどうにかしようかなって思ってたところだったから」

「別に大したことじゃない、優先座席に座っていた奴が譲りそうに無かったからな。ただそれだけだ」

「でも、そういうことできるのって立派だと思う」

「ありがとう」

 

 美少女にこうして正面から褒められるとは、バスの座席の1つや2つ譲ってみる効果はあるかもしれない。なんだったらバスごと譲ってもいいぐらいの気持ちになりそうだ。

 

「私、櫛田桔梗。よろしくね……えっと」

「綾小路だ。よろしく」

 

 自然な形で自己紹介と手を差し伸べられて、それに応じる。

 入学早々こんなラッキーイベントが起きるとは、オレの学園生活はバラ色なのかもしれない。

 

「じゃあ、綾小路くん。せっかくだし体育館まで一緒していいかな?」

「オレでよければ喜んで」

「なにそれ。じゃあ私でよければよろしくお願いします」

 

 ボケたつもりはなかったんだが、くすっと笑われて、最後に改めて、ぎゅっと強く握りしめられた後に手が離れた。

 名残惜しいがしかたない。とりあえず今日はしばらく手を洗わないようにしておこう。

 

 それから、周囲の流れに合わせて体育館の入り口までの道のりを他愛のない会話をしながら2人で歩くという思いがけずも楽しい時間を過ごして、入学式を迎えた。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 入学式。

 壇上から聞こえるお偉いさんの話を聞き流しながらこれからの学校生活を考える。

 

 男子がおよそ15パーセント、女子がおよそ25パーセント。

 

 これは高校を卒業するまでに童貞もしくは処女を失う日本人の割合らしい。

 むろん正確なデータなど存在するはずが無いし、地域や高校のレベルに応じても差があるようだが、このデータが正しいと仮定しよう。

 

 そしてもう1つのデータがある。

 

 男子がおよそ3.3人。女子がおよそ3.8人である。

 

 これは最初に挙げた15パーセント、25パーセントの高校を卒業するまでの間に性行為を体験した人の平均的な体験人数である。

 

 なんて恐ろしいデータだろうか。

 

 8割以上の男子が1人とも経験することなく高校生活を終えるのに対して、ごく一部の男子は平均で3人以上の女を経験しているのだ。

 これぞ格差社会と呼ばずして何と言おうか。

 

 社会人で差が出るのはまだ分かる。男性はどれだけ金を持っているのかも魅力の一部であり、収入の多い男性に異性が惹かれることは、子孫を残すための種の生存本能からも当然のことだ。

 

 しかしながら高校生の時点でも既に差ができてしまうのである。

 基本的に親の扶養で生活している高校生の生活レベルで、極端な差がつくはずもない。

 それでもモテる男とモテない男には明確な差があるのだ。但しイケメンに限るここに極まれりだ。

 あんまりである。

 

 なぜ、こんなことを考えているのか?

 

 オレは今まで特殊過ぎる環境で育ったせいで、自分というものが希薄だ。

 自分が何をどうしたいというのが皆無だった。

 特に何かを考えることもなく与えられる日々をこなしてこなして、こなし抜いた。

 決してぬるま湯とは呼べない環境だったはずだが、その環境にどっぷりつかりこみ過ぎたオレには、もはやなんの代わり映えもしない日常へとなっていたのだ。

 

 例えてみようか。

 

 1+1の答えは何か?

 

 田んぼの田とかいう答えもあるらしいが、ここで求めているものは2だ。

 1+1は2。小学生の誰でも解けるような問題だ。

 

 では、仮に毎日1+1は? と問題が出てそれに答える日々があったらどう思うだろうか?

 

 実際には、毎日与えられる課題は変わり、日々こなすレベルは上がっていったが、オレからすれば1+1を聞かれていることとほとんど変わらなかった。

 

 2、2、2、2、2、2、2、2、2、2

 

 こんな日々に嫌気がさした──もっと的確に表現すれば飽きたのだ。

 もっと別の刺激が欲しい。

 

 一般的な生活への憧れも少しあったのかもしれない。

 そしてオレは今ここにいる。

 

 で、だ。

 

 どうせなら楽しい学園生活というものを送ってみたい。

 ただ、一般とはかけ離れた生活を送っていたオレには、何が楽しいのかがよく分からない。

 

 分からなければ調べればいい、となるのも必然なこと。

 そして、調べてみた結果、楽しい高校生活というのは、友情、恋愛、セックスが三巨頭らしい。

 

 ここまではいい。

 

 だが、話を戻してみて欲しい。

 高校を卒業するまでにセックスを経験するのは、男子は15パーセントしかいない。

 わずか15パーセントしか楽しい高校生活を送っていないとも考えにくい。

 

 ならば、なにか?

 

 セックスはやりたい。でもやれない。

 一種の憧れのようなものが、オレ調べの調査結果を生んだに違いない。

 

 ならば、楽しい学園生活を目論むオレが目指すべきものは何か?

 

 憧れても中々辿りつくのが難しいセックス。これこそオレが目指すべきものではないだろうか?

 

 そのためにはどうするか?

 

 レイプするというのが一番手っ取り早い気がするが、それでこの学園生活に終止符を打ったら何も意味がない。

 ここは正攻法だ。モテるしかない。

 

 モテるための必殺技と言っていい『但しイケメンに限る』

 これがオレに使えるかどうかを試したのが、バスの中のできごとだったというわけだ。

 

 結果は、感触としては悪くないのではないか。

 老婆には引かれることなく、周囲から冷やかされることもなく、そして櫛田桔梗という美少女と出会うという、いや、悪くはないどころか上々の結果かもしれない。

 

 自分のことがイケメンと思ったことはないが、少なくともルックスで相手へ不快感を与えないのなら、最初の課題は突破だ。順調な滑り出しに成功した。

 

 据え膳食わぬは男の恥。これをモットーにこれからの3年間を充実させたいものだ。

 

 セックスせずして楽しい学園生活が送れるだろうか? いや、送れない。

 これぐらいの勢いで頑張りたい。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 1-D

 開けっ放しのドアから教室内に足を踏み入れると既に半分程度の席は埋まっていた。

 自分の座席に座っている生徒が多い中で、一部は既に前からの知り合いなのか固まって話などしており、

 

「櫛田もここか?」

「あ、綾小路くん。偶然だね」

 

 入口近くで3人グループを構成しているうちの1人が見知った顔だったことに気づき、声を掛ける。

 バスの座席を譲った成果を考えれば、こういう積極性こそが大事だという判断。

 

「いや、運命だな」

「それは大げさ過ぎ」

 

 呆れたようにつっこまれるが、いちいち可愛い。

 若干外したっぽいが、そこまで悪い影響はあるまい。

 

「知り合い?」

「1時間前からな」

「さっきバスが一緒だったんだー」

「そうなんだー、偶然だね」

「いや、運命だ」

「だから運命じゃないって」

 

 3回は使えないが2回までならたぶんセーフだろう。

 

「座席ってどうなってるんだ? 早い者勝ちか?」

「それだったらここなんか選ばないって」

 

 最前列の廊下から2番目。いやでも授業に集中できそうな席に座る女子が不満そうに口にする。

 授業が嫌いな生徒からしたら嫌なのだろう。ご愁傷様。

 

「まぁまぁ。あのね、机にネームプレートがあるから自分の席を探す感じ?」

「なるほど……分かった。ありがとな」

「いえいえ」

 

 軽いコミュニケーションさえ取れれば十分。女子の会話に長居はせずに、その場を離れ、まだ生徒が座っていない机をチェックしていく。

 綾小路、綾小路っと……窓際一番後ろか。

 どうやら当たりを引いたようだ。この席からなら簡単にクラス中を見回すことができる。

 クラスメイトに関して得られる情報が自然と増えるはずで、有効活用できるかどうかは分からないが、損はしないだろう。

 櫛田の他に見知った顔は──

 

「…………」

「なに?」

「偶然か?」

「同じ学校に向かう生徒が同じバスに乗っていた。それがクラスメイトだったからといって、どこもおかしくないあり得る話よ」

「まぁ、そうだな、でも、う──」

「ましてや運命なんかじゃない」

「聞こえてたのかよ」

「…………」

 

 見覚えのある横顔は、勘違いではなかったらしい。

 さっきのバスで隣に座っていた女子生徒は、ここでも隣の席だった。

 本が佳境なのか元々こういう性格なのか、本から顔を上げることなく言いたいことだけ言われて終わった。

 まあ、そういうこともあるのだろう。

 こういうときは、しつこく食い下がらないのが吉。興味の対象を他へと移し、教室を見回す。

 

 優先座席の尊大な男もどうやら同じクラスらしい。

 これは偶然でも運命でもなんでもない、たまたまだな。たまたまと偶然の違いは、どうでもいいかよくないか。我、関せずで自分のことに没頭する男子生徒とバスが一緒だったからといっても、どうでもいいのだ。

 我、関せずで本に没頭する女子生徒。似ているようだが、それが可愛ければそれはどうでもよくはないのだ。

 

 他には見知った顔はいないらしい。

 オレの育った特殊な環境からしたら、いるわけがないと予想していた。

 それでも、実際にこのクラス内にオレの過去を知る奴は1人もいない、というのが分かれば、ほっと胸を撫でおろすことができた。

 

 

 そうこうしているうちに、平田とかいう暫定ライバルになりそうなイケメンの発案で自己紹介タイムが始まった。

 

 新生活初日。

 この生活のスタートダッシュを決めるうえでは、重要なイベントだ。

 どうこなすかでオレの目指す楽しい学園生活の難易度が決まる、と言っても過言ではあるまい。

 

 参考になりそうな平田の自己紹介は、さわやかスポーツ少年系。女子の反応を見れば、それが正解だろう。

 しかし、単純にそれを真似ればいいというものではないようだ。

 

 続く山内とかいうお調子者っぽい男子生徒の自己紹介が、それを如実に語っていた。

 スポーツやってますアピールに必要なのは、説得力だ。『お、こいつは運動できそうだな』と思わせられなければ、都合をいいことを言いやがってと逆にマイナス査定されてしまう。

 平田はイケメンという見た目だけではなく、サッカー部に入る予定というアピールが大きく働いている。

 

 つまりポイントは、すぐばれる嘘を避ける事。

 

 この場合に厄介なのは、趣味とか特技とか無いオレがどう自己紹介するのか。

 

 時間はあるようでなく、あっさりとオレの番が回ってくる。

 小声にならないようにだけ注意して

 

「綾小路清隆です。田舎のほとんど自然しかない場所で育ったんで、とりあえず早くこの学校の環境に慣れるのが目標です。人が多い場所での生活は右も左も分からないことばっかなんで、色々教えてくれたら助かります。よろしくお願いします」

 

 実際には田舎ではない。だが、育った環境が特殊で、右も左も分からないというのは本当だ。

 まったくの嘘なら信ぴょう性はなくても、嘘に事実を混ぜることでそこに説得力の余地が生まれる。

 隠せるものなら隠したいが、自分に欠けている知識が何なのかすらも分かっていない状態では、それも難しい。だったら、最初からちょっと変わった子程度に思われた方が、後が楽だろうという判断だ。

 

 はきはきと口にした成果か、ドン引きこそされなかったものの、やはり空気を少し止めてしまった。

 ただそれも、不良っぽい生徒が暴れた結果すぐにそちらへ全員の意識が移り、致命傷には至らなかったようだ。

 誰かは知らんが、ありがとう赤毛君。

 

 心の中で不良生徒に感謝したところで、担任が入ってきて自己紹介は打ち切りとなった。




8巻のTレックスを見て、原作の提供するネタに乗っからない手は無いと思いましたので投稿してみます。

基本殴り書きで勢い重視でお送りします。
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