綾小路Tレックス   作:チームメイト

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無人島編その3 無自覚な選択

 一之瀬とは食事だけで別れた。

 

 その後の予定は互いになく、2人で何かをするつもりだったのだが、葛城との遭遇が変えてしまった。別に、Aクラスへの対策を練る必要がとか、そういう話ではない。

 

 ただ何となく話の流れが各クラスの動向になっていたのが問題だ。

 

 BクラスとDクラスが協力関係であれば、何ら問題がない。ただ、現時点ではオレと一之瀬という個人の関係なだけで、特にクラスで親しくしているわけではない。

 

 もちろん、一之瀬に何かを頼まれたらできる限りそれに応えるつもりだ。

 

 しかしながら、それがオレ個人への頼みではなく、BクラスからDクラスへの頼みだったら協力できるかどうかは難しいラインだ。

 

 Aクラスになれるのは1クラスだけである以上、Aクラスを目指すのならば、BクラスとDクラスは、いつか敵対しなければならない相手となる。

 これは避けようがない未来であり、事実だ。

 

「現状は、Dクラスが敵にもなれていないっていうだけだからなぁ」

 

 今は特に敵対してないが、クラスの関係はデリケートな問題なのだ。

 

 恐らくあのまま2人で居たら、何かしらの情報を引き出したり交換したりという方向になっていたはずだ。

 

 葛城についてレストランで聞いたみたいに、それが軽く触れる程度なら問題ないが、深いところまでいってしまうと、今のBクラスとDクラスの関係だと面倒なことになる。

 

 Dクラスというかオレは、他のクラスについて特に情報を持ち合わせていない。

 一之瀬と所持している情報量に差がある以上、一方的に情報の提供を受けるだけになるだろう。

 

 一之瀬は気にしないかもしれないが、恋人相手にはフェアでいきたい。

 

「というか、仮とはいえ恋人相手に腹の探り合いするのはダメ過ぎるだろ」

 

 互いにジャブを打ち合って、牽制しながら相手の失言を引き出すゲームとか、どう考えても恋人相手にやるのはおかしい。

 

 話題を強引に切り替えるというのも手としてあったが、一度気にしてしまったものをスルーして別の話題で盛り上がれるかっていうと、そこまでの対人技能は持ち合わせていない。

 

 となると、解散して日と気分を改めてという選択になってしまうのも仕方ないだろう。

 

「……まあ、慌てる必要はないか。バカンスは2週間のはずだしな」

 

 とか余裕を見せていたら、このままスルーしそうな気がしないでもないので、数日以内にもう1度一之瀬とコンタクトを取ることに決めた。

 

 ここで、明日って言えない時点で残念な気がするが、昨日の今日では無理だな、とか明日は考えていそうだから仕方ないのだ。

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 高円寺を見かけてスルーしたり、平田や軽井沢たちと合流して遊んだりしていたら、1件のメールが入った。

 

「……悪い、今日はこれで抜けるわ」

 

 有無を言わさず一方的に送り付けられたメールだった。

 差出人は堀北だ。

 無視するのもメンドクサイ、無視しないのもメンドクサイ。それが堀北案件だ。

 オレは身に染みてそう理解していた。

 

「飼いならされているとかでは断じてないが……」

 

 まあいいか。

 このまま平田たちと夕食を取る予定だったが、急遽変更して呼び出された先へと向かう。

 

 

「……堀北は冷たいからな」

 

 呼び出された先には、長袖を着込んだ堀北が既にいた。

 

 真夏。それも普段よりも南に位置しており、気温は明らかに学園内にいたときよりも高い中である。長袖姿はかなり違和感があったが、堀北だから気にしないことにした。

 

 カウンター席の隣に座る。

 

「早かったわね……」

 

 堀北は、読みかけの本から顔をあげることなく言った。

 

「……まあな」

 

 面倒なことはさっさとすませたかったからな、という言葉は飲み込んだ。

 足を踏まれかねないからな。

 

「この旅行が、ただのバカンスで終わると思う?」

「終わって欲しいが、どうだろうな」

 

 茶柱が言うには、この豪華バカンスは、1学期を乗り越えた1年へと向けた学校側が用意したご褒美らしい。

 だが、ご褒美にしてもここまで豪勢にやる必要はない。

 

「ただ、気にしてどうにかなるのなら気にするが、今は楽しんでおいた方がよくないか?」

 

 この先では何かが待っているのは間違いないと思うが、それが何かが分からなければどうしようもない。だったら、気にするだけ損だっていうスタンスだ。

 

「油断は禁物よ」

「休めるときに休むのも、大事じゃないか?」

 

 隙を作るのを好まない堀北らしい言葉だが、バカンス中に部屋での読書はどうかと思う。特に、佐倉が部屋に居づらくなっているのは問題だ。

 

 こうして話しているときでも、こちらを見ることなく本を見ているのも問題だと思うが、指摘したら足を(以下略)

 

 

「こんなところにいたか」

 

 イケメンがやたらガタイの良い外人を引き連れて現れた。

 オレの記憶が確かなら、1月ぐらい前に須藤と揉めていた龍園という生徒のはずだ。

 

「坂上を利用するとはな。面白いことやってくれるじゃねえか」

 

 どうやら記憶に間違いは無かったようだ。

 坂上を利用で思い当たるのは、Cクラスの生徒と須藤が揉めたあの件だけだ。

 龍園はCクラスのはずなので、間違いないだろう。

 

「あなたは?」

 

 堀北は本から顔をあげることなく尋ねかける。

 よし、堀北。そのまま本を見続けろ。今回は対象がオレじゃないから許す。

 ざまぁ、だな龍園。

 

「お前みたいな女は嫌いじゃないぜ」

「…………」

 

 く、こいつはなんて恥ずかしいセリフを吐きやがる。

 龍園はあれな奴だ。だが、ちょっと様になっている気がする。

 

 オレが言ったら笑われて終わりだな、たぶん。

 

「鈴音」

 

 そして、情報収集能力は須藤よりも上らしい。

 クラスメイトの須藤が中々たどり着けなかった堀北の下の名前に辿りついている。

 

「気安く呼ばないでくれるかしら」

「鈴音──痛いッ」

 

 このタイミングでオレが呼んだら面白いかと思ったが、足を踏まれて終わった。

 

「怒らせたいの?」

「いや、もう怒ってるだろ、足、足」

 

 足を踏んだままグイグイとひねってくるのを何とかやめさせる。

 靴ならまだ良いが、ビーチサンダル履きのときにやられると辛いものがある。

 

「お前が綾小路か。ふざけた野郎だな」

「オレの名前は清隆だ」

「聞いてねえよ」

 

 堀北は鈴音呼ばわりしたくせに、これが男女格差という奴か。

 まあ、初対面の野郎に清隆って呼ばれても困るだけだが。

 

「まあいい」

 

 龍園は外人から携帯を受け取ると流れるように、そのままオレと堀北を写真に収めた。

 一連の動作があまりにスムーズで、抵抗する間もなくシャッター音が耳へと残る。

 

「ちょっと……」

 

 案の定、堀北が抗議の声を上げるが素知らぬ顔だ。

 勝手に写真を撮るのはノーマナーもいいとこだが、訴えたところで消させることは難しいだろう。

 

 それにしても龍園は、携帯を受け取ってボタンを押すだけで写真を撮っていた。何かのアプリを起動したりするような間は無かったはずだ。

 つまり、あとはボタンを押すだけで済むように事前に用意されていたとわけだ。

 

 あのやたらガタイの良い外人は意外とこういう細かい作業が得意なのか。立派なガタイはフェイクで人は見かけによらないという奴なんだろうか。見た目から想像されるのは、携帯を握りしめて割りそうなタイプなのに。

 

「今度はオレが相手をしてやろう。楽しみにしてな」

 

 イケメンボイスで宣戦布告か。

 言いたいことだけ言って、龍園はその場を離れようとして、

 

「龍園」

 

 それを遮るように女子生徒が呼び止めた。

 ショートカットの見知らぬ生徒で、何やら鬼気迫る表情だ。

 

「あんたに話したいことがある」

「告白なら他所でやってくれ」

 

 とりあえず茶々を入れる。

 

「誰がっ」

 

 すごい目をして睨まれた。どうやら冗談は通じないタイプらしい。

 

「伊吹、告白してくれたところを悪いが、お前とだけ付き合う気は無い」

「ふざけるな」

 

 龍園は、冗談が通じるタイプのようだ。

 さりげなく手を肩に回すあたり相当の手練れだ。お前と()()っていうのもポイントが高い。

 

 見た目通りに女性経験が相当高そうだ。

 

「あんたのやり方にはもう我慢できない」

「そうか。まあいい。あとはオレの部屋で聞いてやるよ。2人きりでな」

 

 ナチュラルに部屋に誘いやがった。

 そのスキルをぜひオレに分けてもらいたいものだ。

 

「くっ、アルベルト!?」

 

 逆上した伊吹が殴り掛かろうとするも、外人が拳を掴んで止めた。

 この外人の名前はアルベルトというらしい。姉の名前はオレの推測ではディアナだな。

 

 龍園はそのまま去ろうとし、それを伊吹が捕まれた手を振り払って再び迫ろうとするが、今度もまたアルベルトが止める。

 さっきは、手を掴んだだけだが、今度は締めに掛かっている。

 服の襟を背後から引っ張られており、服が伊吹の首に食い込んでいた。

 

「……っ」

 

 声が出せていない。

 これは止めないとまずいか、堀北と同時に立ち上がり迫ろうとしたところで──

 

「危ねえ」

 

 アルベルトが伊吹を手すりに向けて放り投げた。

 慌てて伊吹と手すりの間に飛び込むようにして伊吹を受け止めたが、勢いに押されてそのまま手すりに衝突した。背中を手すりにぶつけて、思わず息が止まる。

 

「…………」

 

 アルベルトは何かを呟いていたが、聞き取る余裕は無かった。

 そのまま立ち去ったところを見るに、とりあえずはこれで終わりのようだ。

 

 

「……大丈夫か」

 

 何とか呼吸を取り戻した。

 どう考えてもダメージが大きいのはオレの方だが、手すりに背中を預けたまま尋ねる。

 

「あんたには関係ない」

「…………」

 

 伊吹は睨みつけるように一瞥だけして、立ち上がるとそのままこの場を後にした。

 

 いや、どう考えても関係あるだろ。身体を張って結構頑張って助けたつもりだったんだが。

 

「まあ、オレが勝手に助けただけって納得するしかないのか。堀北はどう思う?」

「私には関係ないわ」

 

 堀北もオレをその場に残して去っていた。

 

「…………」

 

 Cクラスの崩壊は近そうだが、Dクラスの崩壊も近いのかもしれない。

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 日も暮れた後。

 

 佐倉に呼び出されて2人で話していたはずが、気づいたら櫛田と2人きりになっていた。

 佐倉に櫛田への苦手意識は無いはずだが、どうやら櫛田の現れたタイミングが悪かったようで、佐倉は櫛田の登場と入れ替わりで逃げるように去っていったのだ。

 

 

「わぁ、綺麗な星空。ね? 綾小路くん」

 

 1度星空を見上げた後に、振りかえって微笑みかけてくる。

 思わず抱きしめたくなるぐらいに可愛いが、いつ誰が来るかも分からない場所でそういうわけにもいかない。

 

「……櫛田の方が綺麗だ」

 

 センスのないセリフだと思うが、勝手に口から出た。普段なら絶対に言わない言葉だが、バカンスと言う状況がオレの口を動かしていた。見慣れない星空の下での櫛田はそれぐらい輝いていたとも言える。それに龍園への対抗心も少しはあった。

 まあ、たまにはこういう言葉を使ってみるのも悪くないのかもしれない。

 

「一之瀬さんとどっちが綺麗?」

 

 前言撤回。

 慣れない言葉なんか使うものじゃない。

 

「今、この場に一之瀬が居ないからな」

「連絡しようか?」

「やめてくれ」

 

 櫛田が携帯を取り出そうとするのを慌てて止める。冗談だと思うが、本気だったら怖すぎる。

 この場で一之瀬を呼び出してどっちが綺麗かとか聞かれたら、どう答えてもマイナスにしかならない。

 

「質問変えた方が良いかな?」

「そうしてくれると助かる」

 

 どうやら命拾いをしたようだ。迂闊な発言は命を削りかねない。バカンスに浮かれるのはダメだな。反省をしなければ。

 

「佐倉さんと私とのセックスどっちが気持ちよかった?」

「質問は変わってるけど、本質は変わってねえよ、それ。むしろ悪化してるし」

 

 つっこみを入れながら思わず周囲を見回した。

 幸いオレ達2人以外は誰も居なかったが、さっき櫛田が現れたように、いつだれが足を踏み入れてくるのか分からない場所でする話ではない。

 

「やっぱり、佐倉さんともしてるんだね」

「確認しなくても分かっていたんじゃないのか?」

「まー、分かってたけどね」

 

 最初の段階では知られていなかったと思うが、少なくとも佐倉の変身時には櫛田には気づかれていたと思う。それこそ櫛田に確認したわけではないが、何となくそういうもんだと思っていた。

 櫛田の周囲の状況を見極める能力は、すごいものがある。これもコミュニケーション能力の一環なのかもしれない。同じように洞察力に優れた人物として堀北がいるが、こっちは致命的なまでに人間関係の状況を察する能力は低い。根本として他人への興味が薄いからだろう。

 

「お前と佐倉のどちらとか、悪いがその質問には答えられない。比較するものでは無いと思う」

 

 実際問題、気持ちの良さは同じではないが、どっちも気持ちいいものだ。

 ラーメンとカレーがどっちが好きかって言われても答えるのは難しいだろう。

 

「…………」

「……話が終わりなら、オレはもう部屋に戻るぞ?」

 

 あえて突き放すように言葉を掛けた。

 

 せっかくの櫛田との2人きりの時間を切り上げるのは残念だが、どうにもこうにも今日の櫛田はおかしい。ただそのおかしさの原因がオレにもあるのなら、オレには何も言う資格がない。

 

 話を聞いた方が良いのか、聞かない方が良いのか。

 同じ時間を共有するべきなのか、距離を取るべきなのか。

 

 分からないのであれば、櫛田に決めてもらう他はない。

 

「もう帰っちゃうの?」

「眠くなってきたしな」

「そっか。それじゃあ、また明日。おやすみ」

「おやすみ」

 

 残念だが、距離を置くのが正解のようだ。

 若干、後ろ髪を引かれる思いを残しながら、踵を返して櫛田から離れようとすると、 

 

「待って」

 

 櫛田がオレの背中を掴んで額をくっつけてきた。

 

「……どうした?」

「ごめん、急に1人きりになるのが寂しくなって」

「…………」

 

 これに対する回答は、どう答えるのが正解だろう。

 

「ねえ、綾小路くん……私が、一之瀬さんと別れて欲しい。他の人としないでって言ったらどうする?」

「そんなもん答えは決まっている」

「そっか……そうだよね」

 

 櫛田の声のトーンが落ちる。

 

「なあ、櫛田。取引のときにした話を覚えているか?」

「え?」

「──櫛田とのセックスは手放さない。これは何があろうが絶対に、だ」

 

 一之瀬とは最初から仮の関係だ。こちらから申し込んでおきながら、別れることになるのは申し訳ないが、話せば分かってくれるだろう。

 問題なのは佐倉だ。佐倉の身体は惜しいし、まだ成長途上の佐倉をここで手放して大丈夫なのかどうかが分からない。佐倉を信じるしかないというのはもどかしいが、それこそ櫛田のフォローに期待するしかないか。

 く、こんなことなら今日の昼間に1発と言わず、2発、いや3発ぐらいやっとくんだった。

 

「後悔しないの?」

「そりゃ後悔はするさ」

「だったら──」

「──ただ、櫛田を手放す方がもっと後悔するからな」

 

 そこまで櫛田のことを大事な存在として意識していたかと言えば、嘘になる。

 取引を持ち掛けた当時であれば、あっさりと櫛田のことを手放したかもしれない。

 

 思考よりも先に自然と口からこぼれた言葉は、不思議とそれが事実であるように納得することができた。

 

「なんで?」

「櫛田との出会いは運命だからな」

「……馬鹿」

 

 いつもの運命という言葉の否定は、返ってこなかった。

 

「…………」

「…………」

 

 オレは今どういう顔をしているだろうか。

 そして、櫛田はどういう顔をしているのだろう。

 頬の熱さだけは紛れもない事実で。

 

「ごめん、今日の私、変だよね」

「まあ、変だな」

「……馬鹿」

「たまには、いいんじゃないか」

「嫌だよ、恥ずかしいし」

 

 背中により強く顔を押し付けられた。

 傍から見たらどういう風に思われるだろう。

 

 振り返りたい気持ちをこらえて、櫛田のやりたいようにさせておく。

 

「落ち着いたか?」

 

 そのまま数十秒ほど待って、櫛田に問いかけた。

 

「うん」

「で、どうするか決まったか?」

「……私のことは手放さないんだよね?」

「それは約束する」

「ならいいよ。今のままで」

「…………」

 

 ありがとうと言いかけて止めた。ここで礼を言うのは、櫛田に対して失礼だろう。

 大丈夫かどうか問いかけるのも違う。どう返すべきか、少しの間だけ思案して、

 

「分かった」

 

 結局、受け入れる言葉だけしか返せなかった。

 

 これがオレと櫛田の関係をある意味線引きするものかもしれないが、これから先のことはたぶんどちらにも分からないはずだ。なんにせよ、ある程度の決着をしたと考えていいんだろう。

 

「そろそろ戻るか」

「そうだね。あんまり遅くなると変に思われちゃう」

 

 豪華旅行と言えども1人1室与えられているわけではない。3~4人で1部屋を使うため、あまり遅くなると同室のクラスメイトに迷惑が掛かってしまう。

 

「佐倉さんとは近くの部屋だし、戻る途中で会っちゃうかもしれない」

「それは気まずいな」

「今日会わなくても既に結構気まずいかも」

 

 それもそうか。

 

「綾小路くん。そのまましばらく動かないでね」

「なんでだ?」

「顔見られたら困るから。それじゃあ、おやすみ」

 

 櫛田はオレの背中から顔を離すと、最後にその背中を両手で押してオレを前へと突き飛ばして、脇を抜けるようにして去っていった。

 

「……オレも戻るか」

 

 結局最後まで互いの顔を見ることが無かったのは、良かったのか悪かったのか。

 途中で1度トイレに寄って念入りに顔を洗ってから自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

「…………」

 

 静かな部屋の中で1人、目が冴えていた。どうやら同室の3人は既に寝ているようだ。

 

「櫛田が悪いな……」

 

 寝付けない理由は1つだ。Tレックスが目覚めているせいだ。

 櫛田と別れたあとも櫛田のことを妙に考えているせいに違いない。

 

 こればっかりはどうしようもない。

 

 

 結局、眠りにつけたのは日付が変わってしばらく経った頃で。

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