綾小路Tレックス   作:チームメイト

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無人島編その10 男がメインの話

「悪いな、付き合ってもらって」

「トウモロコシなら俺も食いて―し、別に良いぜ」

「だな。でも本当にあるのかよ、トウモロコシなんて」

「いや、マジであるって、なあ、佐倉」

「う、うん。間違いないよ」

 

 須藤、山内、佐倉、オレという何とも言えない4人で移動していた。中身を空にした運搬用のカバンを持って、初日に見つけたトウモロコシの回収に向かっている。

 食料としては、主食として通じるポテンシャルがあるトウモロコシだが、クラスに配布した地図には記載しなかった。生い茂った森の中で、特にわかりにくい場所だったからだ。

 

 大雑把な地図では説明がしにくかったのが1点。

 もう1点として、巧妙に隠されていたトウモロコシは、他クラスに見つかる可能性が低い。優先順位を後回しにしても、回収に問題がないと思ったからだ。

 一応、初日に場所が分かるように、佐倉から借りたハンカチを木に括り付けたが、その木がどこにあるのかを説明することすら難しいレベルだ。自分で回収するしかない。

 

 須藤と山内に声をかけたところ、佐倉も参加して4人になった。

 例によって例のごとく、佐倉は1人ではベースキャンプに居づらかったようだ。頼りの櫛田さんが昨日の佐藤に続いて、今日は長谷部のフォローに回っているため、佐倉が孤立してしまっている。

 2日続けて櫛田のフォローが必要な生徒が出るとは、まったく女子の体調管理はどうしてるんだって話だ。原因を作った奴には、ぜひとも恨み言を──言えた立場じゃないな。

 3人だと持ちきれるか怪しかったから、人が増えた分は良しとするか。

 

 なお、須藤、山内と仲の良い池は、ベースキャンプから動かせなかった。

 まだキャンプに慣れない生徒が多い中で、池がベースキャンプにいる効果は大きいからだ。

 池がサバイバルに詳しいことは既に知れ渡っており、取ってきた食料が食べられるのかどうかの相談や、ちょっとしたサバイバルのコツを聞いたりなど、何かとクラスメイトから頼られる存在になっていた。あれだけやりあっていた不倶戴天の敵だった篠原まで『池君、凄い』とか言っているのは、意味が分からない。海外スポーツ報道の選手評価並に掌がくるっくる過ぎるだろ。

 

 まあ、オレと池がそこまで親しいわけじゃないというのも、声を掛けなかった理由としては大きいけど。

 

 紅一点の佐倉がついてきてくれたことは、嬉しい反面、グループに変な緊張感が漂っていて困る。

 堀北ラブの須藤は問題ない。佐倉の優れた容姿、おっぱいに全く意識が向かないわけではないが、害は無いと言えるだろう。

 問題は山内だ。佐倉を意識しまくって須藤と並んで前を歩きながらも、チラチラと背後を振り返り、佐倉に言葉を投げかけてきている。そのたびに佐倉が戸惑っているのが、いたたまれない。

 

「そこから右にまっすぐだ。これぐらいの高さの枝に、ハンカチを結んであるから探してくれ。その付近にトウモロコシが生えている」

「分かった。こっちだな」

 

 須藤たちへ後ろから指示を飛ばす。ハンカチを括り付けた枝は、目線より少し上、オレが手を伸ばした位置だ。

 ここまで近づけば、口頭で説明できる。

 あることさえ知っていたら、見つけられないようなものではないだろう。

 須藤と山内が正しいルートに入ったのを見届けて、意識してペースを落とした。

 

「大丈夫か?」

「うん、ごめんね、気を遣わせちゃって」

 

 とりあえず、佐倉と山内を引き離すことに成功した。山内は何か言いたそうに振り返っているが、須藤がグイグイと前へと進んでいく。いいぞ、須藤、もっとやれ。

 

「山内や須藤に声を掛けたのはオレだしな。失敗だった」

「ううん、私がついてきただけだし……それに、少しは慣れないと」

「……無理しなくていいからな。慣れるにしても少しずつだ」

「頑張ってみる」

 

 無理についてきたのは、ベースキャンプに居づらかっただけではないらしい。

 佐倉は成長しようとしている。佐倉が前向きに動いているのなら応援するべきだろう。とはいえ、焦る必要はないし、ゆっくりでも十分だ。

 

 須藤と山内がほとんど見えなくなった。

 急いで追いかけないと、あとで何か言われそうだが、まあ靴紐が解けたことにでもしておこう。

 今は、佐倉のペースに合わせておけばいい。

 のんびり歩いていると佐倉も多少は落ち着いたようで、風景を楽しむ余裕が出来ていた。

 

「残念だな。デジカメがあれば最高の1枚が取れそうだったのに」

「……デジカメか。カタログには入っていたからポイントを使えば手に入るみたいだが」

「だ、駄目だよ。クラスの大事なポイントを私の我が儘で使うわけにはいかないもん」

 

 そりゃそうだ。生活に必要ではないデジカメに、ポイントを使う理由は薄い。

 だが、デジカメを手に入れた生徒がいることを知っている。Cクラスの伊吹だ。

 思うところがあって夜更けに、長谷部をTレック──シャワーを浴びる前に、伊吹の荷物を漁ったらデジカメが出てきた。

 テントを人数オーバーで使う都合上、荷物はテントの外でまとめられており、荷物を漁ること自体は難しくなかった。あとは誰かに見られないかどうかだ。デジカメの中身が気になったが、長時間漁るのはリスクが高いため、そのまま放置している。

 

「佐倉の写真なら池とか山内あたりが欲しがりそうだけどな」

「見せるとか無理だよ」

「どんな写真を撮るつもりなんだ」

「そ、そんなんじゃないから」

 

 佐倉をからかうのは、この辺にしよう。

 

 わざわざポイントを使ってデジカメを手に入れたい理由は何か。証拠として残したいからだ。

 どうして証拠を残さないといけないのか──わざわざスパイとして送り込まれた伊吹の言葉を龍園が疑うとは考えにくい。Cクラスには必要ないとすると、証拠が必要となるのは──

 

「ああん、なんだと!!」

 

 そろそろ目的の場所が近い、といった辺りで前方から須藤の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「綾小路くん」

「ちょっと急ぐか」

 

 心配そうな佐倉の声に、頷いて言葉を返す。

 何やらトラブルが起きていることを確信し、落としていたペースを上げて現場へと急行した。

 

「どうしたんだ?」

 

 そこでは、須藤と山内だけではなく、Aクラスの葛城とその手下が居て、手下と須藤が今にも掴みかからんと言った間合いで怒鳴り合っていた。

 介入する前に、山内に小声で状況を確認する。

 

「あいつらの方が遅れてここにきたけど、先にトウモロコシを見つけて、見つけた側のものだから帰れって」

「Dクラスで見つけきれなかったのか?」

「お前らに聞けばいいのに、いちいち真剣に探すかよ、つーか遅えよ綾小路。お前らが遅れてきたせいだぞ、どうにかしろよ」

「靴紐がちょっとな」

 

 とりあえず、状況は把握した。

 トウモロコシが他クラスに見つかるわけが無いと思っていたが、判断が甘かった。Aクラスは伊達じゃないか。

 

「健、落ち着け」

「ああん?」

「落ち着け」

「……ち、分かったよ」

 

 昔の須藤なら止まらなかっただろうが、多少は大人になってくれたようだ。

 間に割って入るようにして止めると、それまで状況を見守るだけだった葛城も手下を止めに入った。

 

「弥彦も引きたまえ」

「葛城さん。Dクラスの連中なんかに」

「相手よりも下に回るつもりか?」

「……すみません」

 

 須藤と弥彦はまだ睨み合っているが、これ以上の騒ぎは防げたようだ。

 

「Aクラスの葛城。こっちは弥彦だ」

「Dクラスの綾小路。あばれていたのが須藤、紅一点が佐倉、残りが山内だ」

「おい、誰が残りだよ」

「今のが山内だ」

 

 自分で言っておきながら酷いと思わなくもないが、山内の扱いなんてこんなもんだろう。

 むしろ、どうやって紹介すればいいのかが悩ましい。役に立たないのが山内と紹介したらもっと怒りそうだ。

 

「トウモロコシを見つけたのは、俺達が先だ。優先権はこちらにあると思うが?」

「本当に先に見つけたのがそっちだったらな。先に到着していたのはDクラスだ。見つけていなかったのかどうか証拠があるのか?」

「……回収などしていなかったが?」

「2人で持てる量には限りがあるからな。オレと佐倉が合流するのを待っていただけだ」

 

 あくまでも先着していたという優位性を使ってアピールするだけで、昨日以前から見つけていたことは、主張しない。目印につけておいた佐倉のハンカチがあるにはあるが、他のクラスに見られた時のために少し離れた位置につけていたため、証拠としては弱いだろう。

 

「葛城さん。こいつらの言うことなんて聞く必要ありませんよ。こんなやつらが見つけられるわけありませ──」

「だから落ち着けって」

 

 葛城の鋭い眼光が弥彦を黙らせた。再びあばれそうになる須藤を抑える。山内、少しは須藤を抑えるのに協力しろよ。佐倉がビビってるだろうが。

 弥彦の言うことは、きっと正しい。ガサツな須藤に褒めるところが無い山内だと見つけきれなかっただろう。実際、先に到着しておきながら見つけてなかったし。

 まあ、正解なんてどうでもいい。ここは昨日Aクラスの連中に言われた理論を持ち出すべきだろう。

 

「無人島の食料は有限だからな、ここは分け合うべきだろう」

「……有限だからこそ確保できるものが確保するべきだ」

 

 あれ? 葛城さん。これはAクラスの生徒に言われたことの主張だったんだが。く、坂柳派と葛城派での派閥争いがこんなところまで。

 

「どちらが先だったか証明できない以上、どちらが確保できるものだったかは分かりようがない」

「…………」

「それに、相当な量がある。半分でも十分じゃないか」

 

 トウモロコシは、立派なものが50本近くある。半分だと25本か。このサイズだと25本あればクラスの1食分程度にはなるだろう。

 

「分かった。半分で良いんだな?」

「ほ、本気ですか、葛城さん。Dクラスに半分譲るなんて」

「弥彦、お前は手伝いを呼びに行ってくれ。この量を2人では持ちきれないだろう」

 

 その理屈で言うなら、確保できるものが確保するべきならDクラスのものなんじゃないだろうか。今、2人だと半分も持てないって言ったよね?って絡みたいが我慢だな。話が振り出しに戻るだけで、良いことは無いだろう。

 

「森の中を単独行動で大丈夫か?」

「バカにするなよ。葛城さん、すぐに戻ります」

 

 単独行動させずに葛城も追い出して、その隙にトウモロコシを独占しよう作戦は失敗した。仕方ない、大人しく自分たちの分だけ回収しよう。

 

 

「残りの1本は、君たちが取るといい」

「だったら遠慮なく」

 

 葛城と手分けしてトウモロコシを回収すると奇数だったらしく1本余った。くれるというなら貰うだけで、鞄の中へと詰め込む。皮付きだから大丈夫だと思うが、須藤とか山内の鞄に詰め込まれたトウモロコシはなんか嫌だ。オレが食べるのは、ぜひとも佐倉の鞄に詰めたものにしたいものだ。甘さが増していそうな気がする。

 

「しまった。ハンカチの回収を忘れていた」

 

 分かれ道まで戻ったところで、立ち止まる。

 目印として残しておいた佐倉のハンカチがそのままだ。

 

「悪い、取ってくる。健、オレの分も持てるか?」

「余裕だぜ。寄こしやがれ」

「何やってんだよ、綾小路」

「べ、別にいいよ、綾小路くん、ハンカチぐらい」

「オレがよくないから行ってくる。先に戻っててくれ」

 

 走るのに邪魔な荷物を須藤に預けて、来た道を戻っていった。須藤と山内と一緒に残される佐倉がすがるような目で見てくるが、そこは頑張って欲しい。すまん、ゆっくり成長すればいいとか言っときながら、これだとスパルタ教育だな。

 山内1人なら任せられないが、堀北ラブの須藤と一緒なら変なことは起きないだろう。

 

 

「どうした?」

「1本分の礼をしておこうと思ってな」

 

 ハンカチを回収してからトウモロコシのあった場所を見ると、まだ葛城が1人で待っていた。

 好都合だ。

 弥彦が戻ってくる前に声を掛ける。

 

「変に他クラスに貸しを作ると、クラスのリーダーに怒られるからな」

 

 Aクラスに譲られたことを堀北が知ったら、たぶん蹴られる。じゃあ、自分で回収しろよって話だが、それをしないのが堀北の理不尽なところだ。

 黙っておけば知られる心配はないが、山内あたりが口を滑らしそうだから困る。

 

「別に貸したつもりはない。不要だ」

「まあ、待て。こっちが返すものも大したことじゃない」

 

 予想していたリアクションを右手を出して制する。

 トウモロコシを分け合えたあたりから思っていたが、葛城は話が通じる側の人間のようだ。

 話が通じるのであれば、交渉しておく意味がある。交渉というよりほとんど押し付けに近いが。

 

「Dクラスが掴んでいる情報を提供したい。それで貸し借りはゼロだ」

「……別に要らないと言っている」

「Dクラスの高円寺が、足を痛めてリタイアしたことは知っているか?」

 

 葛城の拒否を無視して言葉を紡ぐ。それに対してリアクションは返ってこなかったが、高円寺のことは知ってても知らなくても、どちらでもいいので問題ない。

 

「その高円寺が無人島でのクラスリーダーだったが、リタイアして今は別の奴がリーダーになっている。正当な理由があれば、リーダーの変更が認められるらしい。リーダーがリタイアして、拠点とかどうやって維持するのか焦ったから、正直助かった」

「…………」

 

 与えられた情報を吟味しているのか、葛城は腕組みしたまま黙っている。

 葛城が結論を出す前に、言葉を畳みかける。

 

「リーダーがリタイアなんてやらかすのはDクラスぐらいで、Aクラスには無用な情報だろうが、一応たぶんDクラスだけが知ってる情報ってことで、これで貸し借りは終わり。1本ありがとな。待たせてるから行くわ」

 

 情報を与えるだけ与えて、めんどくさいAクラスの他の生徒が現れる前に、葛城の前から去っていった。

 できるだけ早く佐倉と合流したいというのもあるが、でっちあげた嘘だ。ぼろが出る前に撤退するに限る。

 

 貸し借りを解消するためとかもっともらしく伝えた情報だが、当然ながら、高円寺がリーダーだったなどという事実はない。

 本当にリーダーを変更できるのかどうかは不明だ。が、それなりに事実である可能性は高いと踏んでいる。事実かどうかを確認したりする気はないが、ルール上は『正当な理由なくリーダーを変更することは出来ない』とされている。

 わざわざ()()()()()()()と前置きを入れているのは、()()()()()()()()()リーダーを変更することができることの裏返しだろう。

 

 高円寺のように自分勝手なリタイアでまで変更が認められるとは思わないが、自分勝手ではないリタイアなら正当な理由として認められる可能性が高い。

 体調不良なんか幾らでもやりようがあるので、不可能ではないはずだ。

 

 この場合で問題になるのは、リーダー当てだ。変更前のリーダーを指名したときに、正解になるのかならないのか。オレが試験官なら変更されようがリーダーだった存在を当てていることに変わりがないので正解にするが、学園側がどう判断するのかは未知数だ。

 ルールで公開されていない以上、おそらく茶柱に聞いても教えてもらえないだろう。

 

 リーダー当てに関する情報を整理してみよう。

 

 一、正当な理由があれば、リーダーを変更できる。

 二、変更前のリーダーを指名した場合、正解になるのかは分からない。

 三、リーダーを指名して不正解の場合は、50ポイント失う。

 

 Aクラスには無用な情報と冗談めいて伝えたが、葛城ならばその情報から考えてくれるはずだ。

 その上で、葛城がどういう選択肢を選ぶのか、最終日の結果発表を楽しみにしておこうか。

 Aクラスと争うことはまだ先になりそうだが、Aクラスのリーダー格がどういう人物なのかを知っておくことは、今後を考えると大事になってくる。

 リーダーだった事実などない高円寺を指名してくれたら1番楽だが、それは高望みし過ぎだろうな。

 

「おい、清隆、大丈夫か?」

 

 考えながら歩いていると、両手にトウモロコシ袋を抱えた須藤が慌てた様子で走ってきた。

 

「どうしたんだ? 健」

「遅いから心配で戻ってきたぜ」

 

 葛城と話していたから少し時間が掛かっただけだが、心配してきてくれるとは、須藤は友達がいがある奴だな。

 ん? 須藤が今ここにいるってことは。

 

「ちょっと待て、佐倉は?」

「春樹と一緒だから大丈夫だろ」

 

 いや、それが1番危ないだろ。ふざけんなと言いそうになってなんとか踏みとどまる。

 それは佐倉のおっぱいが、山内に襲われかねない。

 山内の魔の手から佐倉を守るには、須藤が居れば大丈夫だと信頼して任せたのに、なんて友達がいがない奴なんだ須藤は。こうなったら自分で守るしかないな。

 佐倉の元に急ごう。

 

「よし、急いで戻るぞ」

「ちょっと待てよ、今、走ってきたところだぜ」

「体力には自信があるんだろ」

「せめてトウモロコシを半分持ってくれよ」

「体力には自信があるんだろ」

 

 半分はオレが預けた荷物だが、須藤が戻ってきたのが悪いし、元の体力差を考えたらこれぐらいでちょうどいいだろう。

 須藤を振り切る勢いでダッシュして、ベースキャンプまでの道を戻る。

 木々の遮りが消えて、開けた場所に出たところで、ようやく佐倉たちに追いつくことができた。

 って佐倉と山内だけではなく4人に増えている。

 

「あれ? 綾小路くん」

 

 佐倉たちに、Bクラスの一之瀬と神崎が合流していた。

 

「はぁはぁ……一之瀬、どうしたんだ?」

「Dクラスのキャンプ地の様子を見に行こうとしてたら、佐倉さん達が居たから一緒に行こうって話していたとこってすごい息切れてるね」

「……急いだからな」

「待てよ、清隆……はぁ、ようやく追いついたぜ」

 

 そこに須藤も合流してきた。体力バカの須藤も森の悪路を両手に荷物を抱えての全力疾走は、流石にこたえたらしい。かなり息切れしていた。

 太いトウモロコシが見え隠れしている袋をオレに対して突き出してくる。

 

「はぁ……はぁ、先に行くなよな。ほらコレ」

「わ……悪かったな。身体の危機だったんだ」

 

 佐倉を山内から守るためだ。仕方ないじゃないか。

 合流できればもう安心で、大人しく袋を受け取った。ずしりとした重さが疲れた身体には少しこたえる。

 

「んん? 先にイクなって綾小路くんと須藤くんは2人で汗だくで何をしていたのかな?」

「ま、マテ、一之瀬は盛大な誤解をしていないか?」

「ヘッ、熱い友情って奴だぜ」

「健、ちょっと黙ろうか」

 

 息切れする男子生徒2人。

 差し出す太いトウモロコシ。受け取るオレ。

 先にイクだの身体の危機だの熱い友情だのという危険な会話。

 

 おかしい。一之瀬(かのじょ)に、佐倉と2人きりのところを見られたときより、ダメージが大きいような。

 

 微妙に一之瀬との距離が開いた気がする。

 何故だ。

 

 そして微妙どころではない勢いで神崎と距離が開いた気がする。

 誤解すぎるんだが。

 

 結局、Dクラスのベースキャンプへ辿りつくまでの間、一之瀬たちへの弁明でどっと疲れて、その日はそれ以上活動することなくキャンプ地にこもって、大人しく過ごすのであった。

 

 

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