綾小路Tレックス   作:チームメイト

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タイトルとあらすじ元に戻りました。


船上試験編その7 全部櫛田が悪いってことにしよう

 前回のあらすじ

 

 オッス、オラ悟空

 トリケラトプスごっこしてたら取りけえしつかねえことになった。

 

 

 うん、ぜんぜんうまいことが言えてないな。

 つーか、頭が回り切れていない。もうどうしようもないんじゃないか。

 

 昨日の堀北暴走のときは、佐倉も長谷部も同じ立場に立つことが出来る仲間だったからどうにかなったが、今回は松下だ。どうしようもないじゃん。

 

 これもそれも全部櫛田が悪い。

 櫛田が無理難題を押し付けてきたから、変なテンションになってやらかしてしまったじゃないか。

 

 全部櫛田のせいだ。それでいこう。

 

 っていけるか。これで櫛田のせいだって主張しても、何も変わらないどころか悪化するだけだ。

 

 どうすればいいんだ。

 

 いや、まだだ。まだ何とかできるはずだ。

 諦めるな。

 

「鈴音」

「分かったわ」

 

 とりあえず、松下に逃げられる前に堀北を動かして、部屋の中へと引き込んだ。

 

 かなり強引にだが、ソファーに座らせているうちに、Tレックスを解く。

 

「あんっ」

 

 佐藤、過去一番のエロ可愛い声だが、今このタイミングで、それはいらないからな。

 エロ可愛さの無駄遣いどころかマイナス査定だ。

 

 堀北が松下を捕まえる際に、ササッと投げ渡してくれたタオルでとりあえずの身を隠す。

 

 タオル1枚では、途中で終わりやる気に満ち溢れたTレックスが隠し切れずにモッコリしているが、こればっかりはどうしようもない。佐藤もタオルで身体を隠した。

 

「服着てもいいか?」

「先に説明してくれる?」

 

 この場の優先権は、裁判官である松下にある。

 服を着る許可が下りなかったので、仕方なくバスタオル1枚巻いただけの姿で向き合う形でソファーに座った。

 佐藤も恥ずかしそうに隣に続く。

 

 何事もなかったかのように松下の隣に座る堀北の強心臓っぷりが羨ましい。

 こいつのメンタルどうなってるんだ? 神か?

 

「とりあえず、佐倉も座ろうか」

「い、いいの?」

「この状況で立ったままだと落ち着かないだろ」

 

 一人だけ立ったまま、どうしていいのかオロオロと落ち着きがなかった佐倉に声をかける。

 とりあえずワンクッション置いて落ち着こう。

 

「そ、それじゃあ、失礼して」

 

 何を考えたのか佐倉は、オレの上に跨るようにして座ってきた。

 そのまま首に腕を回してくる。

 

「……佐倉。何をしている」

「え、だって座れって?」

「誰も対面座位しろとは言ってねえよ」

「で、でも、()()()ままだと落ち着かないって」

「確かに勃ったままだが、そういう意味で言ってねえよ。普通に座れ普通に」

 

 佐倉の手を首から外し、抱きかかえるようにして隣のソファーへと下ろした。

 神認定した堀北以上のメンタルを見せつけるんじゃねえ。

 人見知りの気弱な少女はどこいった。性にだけ積極性を見せるな。

 

「もういいかな?」

「はい、申し訳ございません」

 

 佐倉の件についてはオレは悪くないのに、謝るしか無かった。

 Tレックスを見られてどういうことか説明する前に、別の女子生徒とTレックスしようとするとか、どんな人生を送ったらそんな化け物が生まれるんだ。ホワイトルームのホワイトとは、やっぱりそういう意味だったのか!?

 

「それで何をしようとしていたの?」

 

 何をしていたのかと聞かれたら、綾小路トリケラトプスだ! というのが答えだが、恐らく怒られるだろう。

 ここは正直に答えるしかない。

 

「玄関開けたら佐藤とレックスだ」

「ふざけないで」

 

 ドン、と松下がテーブルを叩く。

 

 おかしい。正直に答えたのに怒られた。

 冗談だと思われてしまったんだろうか。よし、再現してやろう。

 

「玄関開けたら」

「佐藤と」

「「レックス」」

「ハモらないで」

 

 イ〇ス、フォーリンラブ的に佐藤と向き合い、顔を後ろに向けた後でレックスにあわせ、同時に松下の方を向いたら余計に怒らせてしまった。

 愛は地球を救っても、オレの現況を救ってはくれない。

 

「松下はクルーズ中に自分の部屋に入る時、ノックとかするか?」

「別にしない。必要ないでしょ、自分の部屋なんだから」

「だが、佐倉はする。佐倉にはまだ同室の子に対する遠慮がある」

「それが何か関係あるの?」

「気を使うのは立派だと思うが、気を使い過ぎるのはよくない。別に部屋に入る時ぐらい気を使わなくていい、同室の子に見られて困るものはないってのを佐倉に伝えようとはっちゃけたら」

「私が来たってこと」

「そういうことだ。頼んでおいてあれだが、まさか松下がわざわざ部屋まで送って来るとは思わなかった」

「別に、暇だったから。それであんなものを見せられるとは思わなかったけどね」

 

 そう、松下がこの部屋に来た元凶はオレだったりする。

 

 話は昨日までさかのぼる。

 特別試験中に見知らぬ人と一緒なのがキツイとこぼした佐倉に対し、出来るだけフォローしようと決めた。

 

 佐倉のグループは、牛グループでDクラスのメンバーは、佐倉、池、須藤、松下の4人だった。

 何を隠そうこの松下も同じグループのメンバーだったのだ。

 

 池は論外として親友の須藤に頼んだが、須藤だけではどうにも不安だ。

 ここは同性も居た方がいいだろうと、保険をかけて同じグループだった松下にも連絡を取って、佐倉のことを気に掛けてやって欲しいと頼んだのだ。

 

 須藤は問題を起こさなかった。問題になるのは、オレのかけた保険の方になろうとは。

 嫌な予感に対策した結果、残念なことが起こるってオレにどうしろと。

 

「それで、佐藤さんと綾小路くんはどういう関係なの?」

 

 どう言う関係なんだって聞かれたら説明に困る。

 ここは佐藤に任せるか。佐藤が思うとおりの関係で間違いないだろう。

 

「その、私が綾小路にフラれちゃったんだけど、でも好きだから」

 

 そうだ、佐藤。その調子だ頑張れ。お前の健気さを松下に伝えるんだ。

 

「都合よく使われてるの」

「さ、佐藤!?」

 

 健気だけど。

 確かに健気だけど、それだとオレが佐藤の健気さを利用している鬼畜じゃねえか。

 ……冷静に考えたら否定する要素が無いから困る。

 

 玄関開けたらサトウとレックスまでの流れがアレだけにな。

 

 突然呼び出されたら、

『綾小路くん、なんで呼んだの?』

 脱ぎ出すオレ。

『あそこ!? 巨大レックス!?』

『さっさと乗れ乗らないなら帰れ』

『見たことも聞いたことも無いのに乗れるわけないよ』

『あなたが乗らないなら私が乗るわ』

『私が乗ります』

 

 みたいなもんだ。別に堀北は包帯グルグル巻きじゃなかったし、佐藤は見たことも聞いたこともあったはずだが、同じメニューを注文して一口頂戴って言い出した佐藤ならあるいは。

 

「最低」

「それは第三者に判断されたくない。当事者がどう思うかだ。佐藤は今の関係が嫌か?」

「……い、嫌じゃない、かも」

「かもなのか?」

「い、嫌じゃないよ」

 

 よし、これで佐藤は望んで今の都合よくつかわれる女になったことが証明されたな。

 他人にとやかく言われる筋合いはないと開き直れる。

 松下からの評価は、更に落ちたような気がするけど。

 

「佐倉さんとはどういう関係なの? 佐藤さんと綾小路くんのを見て動揺していないってことは、佐倉さんもそういう関係なの?」

「特別な友達だ」

「特別な友達? それってセ──」

「──特別な友達だ」

 

 言わせねえよ。それだけは許さん。誰が何と言おうと佐倉とオレは特別な友達だ。断じてセックスなんたらではない。

 特別な友達とセックスなんたらのどこが違うのかと言えば、言葉が違う。

 

 苦しいが、そういうことだ。

 

「堀北さんともそういう関係なの?」

 

 よし、堀北に追及が逸れた。あとはそれを肯定してしまえば一応の形にはなるだろう。

 って、ちょっと待て。昨日はこの流れで堀北に説明を任せて失敗したような。堀北、余計なことを言う──

 

「違うわ。一緒にしないでもらえる。私はご主人様のペットよ」

「堀北……ちょっと黙れよ」

「黙るわ」

 

 いや、その反応も違うから。そこはちょっと反発してしぶしぶ引き下がるところだろうが、これだと本当にオレがご主人様になってしまう。間違ってないけど、間違ってないんだけど、今は違うだろう。

 

 ダメだ。オレの過去の行動が全部ブーメランになって返ってきている気がする。

 

「最低」

 

 アウト。松下からの好感度がダダ下がりを通り越した何かへと突入している。

 

 確かにオレのやっていることは最低……本当にそうなのか。

 

 少なくとも相手が望まないことはしていない。非難される筋合いはない。

 ──佐倉とはちょっと強引だったし、堀北も嫌がってたような気がするし、櫛田にいたっては弱みに付け込んだ契約だった。うわ、最低じゃん、オレ。

 

 その点佐藤は、互いに望んだ結果だと胸を張って言えるな。

 なぜよりによって佐藤が残る。なんか嫌だ。

 

 そもそもなんでこうなったんだっけ。

 そうだ、充実した学園生活のためだ。

 

 セックス、ハーレム、Tレックス。この3つを満たすために頑張った成果なんだから、胸を張っていいんじゃねえの。友情と恋愛、どこにいった。

 

「なあ、松下はAクラスを目指しているか?」

「今、関係あるの?」

 

 あるといえばあるし、ないといえばない。だからその返答はスルーする。

 

「少なくともオレと堀北は目指している」

「堀北さんは何となくそんな感じだけど、綾小路くんもなの?」

「割と本気でな」

 

 茶柱との契約が理由だけど、Aクラスを目指しているというのには偽りがない。

 どうでもいいって思っていたのに、目指してみたらみたで悪くないなって思っているから驚きだ。クラス間の競争を楽しんでいる自分がいる。

 

 オレにもまだそういう感情が残っていたらしい。

 だったらこの感情を大事にしないといけない。だからこそ、割と本気でAクラスを目指してみるかっていう気持ちになっている。 

 

「現実問題としてAクラスとの差は絶望的だ。Aクラスを目指すなんて夢のまた夢に近い。そりゃAクラスに上がれたら嬉しいけど、無理だろってのが今のDクラスだと思う」

 

 903ポイントの差は伊達ではない。

 Dクラスが0ポイントになった時点でのAクラスは940ポイントだった。

 1学期かけて埋まったのが37ポイント。このペースでは、絶対に追いつけない絶望的な差が開いていることになる。

 

「その無理だろってのは、Dクラスそのものだ。オレや堀北や平田とかが多少引っ張りあげようと頑張ったところで、無理だろって思っている生徒の方が多けりゃ、Aクラスなんか遠い夢だ。1人や2人で出来ることなんて限界があるからな」

 

 無人島試験なんかその典型例だ。全員で挑まなければ結果を伸ばしようがなかった。

 リーダー当てとか少数の生徒が頑張ればどうにかなる部分もあるが、大量のポイントを残すにはみんなの協力が必要不可欠な試験だった。

 

「だからこそだ」

「……繋がってこないけど」

 

 松下が呆れたようにジト目で睨む。

 だが、ここでやめるわけにはいかない。

 

「いいか、Aクラスを目指すってのは、無理難題なむちゃくちゃなことだ。そのむちゃくちゃなことをやり通すには、常識にとらわれていたら無理ってことだ。別に体の関係である必要はないし、全員がやれとかいうつもりは欠片もないし、好きだからやってる部分も大きい」

 

 楽しいし、気持ちいいからやる。Tレックスなんてそんなもんだ。

 これが義務になるようならおしまいよ。

 

「だが、聞いて欲しい。原始的で究極のコミュニケーション。建前とか理屈とかそういうの全部取っ払って、身体と身体で本気でぶつかった時に、見えてくるもの、得られるものってバカにできない。つーか、こればっかりは実際にやってみないとどう言葉にしても伝わらないと思うけど、Aクラスを目指す上で大事だと思っている」

「意味分からない」

「オレたちが、本気でAクラスを目指しているってことだけ伝わってくれればいい。別に受け止める必要はない。ただ、見逃してくれたら助かる。普通じゃないことをやっている、普通の関係じゃないことは分かってる。それでも今の関係を崩してしまったら、Aクラスを目指すことすら無理だと思う」

 

 言っていることはメチャクチャなのに、言葉にしていて腑に落ちている部分が有ったりする。

 

 究極のコミュニケーションだ。

 

 例えば櫛田との関係。櫛田とは堀北の件を除いて良好な関係を築いているが、櫛田とTレックスに至らなかったら、ここまで本音を引き出せただろうか。

 佐倉との関係。何かと後ろ向きな佐倉が性に関しては前を向き始めている。1つ前向きになれれば、他のことでも前を向くことが出来るかもしれない。長谷部と友達になれたしな。

 堀北との関係。堀北の欠点が改善しつつあるのはペットになったからだ。

 佐藤や長谷部も、まだまだこれから変わっていくだろう。

 

 別に、Tレックスをしなくても同じ状況になっていたかもしれないが、短期間で成し遂げることができたのは、嘘偽りのない本気でぶつかり合ったからだと思う。

 

 Aクラスとの差が絶望的に空いている中で、優雅に時間をかけている余裕はなく、今の状況こそが正解のはずだ。

 

 ということにしよう。

 

「やっていることは後ろめたいことかもしれないが、それで前に進めているのならそれでいいんじゃないか?」

「そんなんで納得できると思ってるの?」

 

 ですよねー。ぶっちゃけこじつけ理論でしかないし。

 

 勢いで押せるかと思ったが、松下は思ったよりも冷静みたいだ。

 軽井沢グループの軽いギャルかと思いきや、侮れない。

 松下の意外な一面を知れたのは、Dクラスにとって悪いことではないが、Tレックスにとっては困ったことだ。

 

「松下さん。あなたが納得するかどうかは関係ないわ。あなたが流すのかどうかよ」

「納得もせずに流せってこと? それはちょっと無理があるんじゃない?」

「違うわ。騒動にしたいのなら好きにすればいいってことよ。これで騒動になったとしても何も変わらないもの」

「何言ってるのか分かってるの?」

「私は私の判断で今の立場にいるわ。彼の言った通りにAクラスを目指す。彼のペットでいる。どちらも揺るがないもの」

 

 いや、あの、堀北さん。

『言ってやったわ』みたいなドヤ顔してるところ悪いんだが、オレにそこまでの覚悟はねえよ。

 なんだったら櫛田の提案をどうしようか絶賛悩み中だってのに、穏便路線から外さないでくれ。

 下手に口を挟むとご主人様度がアップしそうで言えねえのが怖い。

 というか、茶柱とのフォローの約束を取り付けているとはいえ直接騒がれたら無理ゲーじゃね。

 男女交際の規定があったかどうかまで覚えてないけど、退学大好きな学校なんだから最悪退学だろ。

 

「わ、私も、Aクラス目指して頑張る……」

 

 佐倉の頑張る発言は嬉しい。が、手放さないと言わんばかりに抱きつくのはどうなの。

 おっぱいが当たって嬉しいけど、松下の説得と言う意味では遠ざかってる気がする。

 

「正直、私はそこまで考えてなかったかも……」

 

 よし、佐藤。さすがは佐藤だ。都合の良い女。割り切り過ぎてぶっとんだ2人と比べたら何て常識的なんだ。

 

「でも、みんなで目指したいのなら私も頑張ってみたいかも……私なんかが頑張ったところで貢献できるか分からないけど」

「違うわ佐藤さん。その気持ちが大事よ。一緒に頑張りましょう」

「ありがとう、堀北さん」

 

 何この友情物語。

 堀北の最初の友達は櫛田っていう流れだっただろうが。佐藤と友情を育んでるんじゃねえよ。

 良い事なのに、素直に褒められねえよ。

 

 そして佐藤。どさくさに紛れて抱きつくな。

 松下と向き合いながら、佐倉と佐藤に左右から抱きしめられるってどんな王様だ。

 落ち着けオレ、反応するな。これ以上反応したらタオルが外れてこんにちはしてしまう。

 

「……綺麗ごと言ってるだけだよね。どうせ本音は性欲なんじゃないの?」

「まあ、9割ぐらいは性欲だろうな」

「……認めるんだ?」

「この状況で今更嘘ついても仕方ないからな」

 

 佐藤と佐倉をはべらかせて、グイグイとTレックスに押されて今にもタオルが落ちかけてるし。

 松下からはテーブルに阻まれて見えてないよな。見えてたら困る。だから耐えてくれオレのタオル。

 TレックスのTは、耐えてくれタオルのTだ。

 

 性欲だらけなのは本音。ただ残り1割のこじつけの理屈としては悪くないんじゃないか。

 頭の悪いことをしているんだから、頭の悪い理屈がきっと正しい。

 

「うん、そっか……とりあえずAクラスを目指してるってのは分かった」

 

 どうやら質疑応答は終わったらしい。

 あとは松下が、どういう結論を出すのか次第だ。

 

「私だってAクラスで卒業したいって思ってる。だから、本気でAクラスを目指すって約束してくれる?」

「愚問だわ。約束するまでもなく私たちはAクラスを目指すもの」

「が、頑張る」

「がんばってみる」

 

 堀北を筆頭に3人は、あっさりと約束に乗った。

 ここで約束するのは簡単だ。だが、約束すればどうなるかを松下は口にしていない。

 交渉としては上手いやり方だ。言質を取るだけ取って利用されかねない。

 

「約束すれば、見逃してくれるのか?」

「先に答えてもらおうかな。綾小路くんも約束してくれる?」

 

 どうやら対価を示さないのは、たまたまではないらしい。

 今まで松下に受けていたイメージとは異なる強かな交渉人だ。

 

 元々こちらが弱みを握られている以上、お手上げだな。

 悪いようにはならないと信じるしかない。

 

「分かった。約束する」

「ありがとう。私もこれで覚悟がついた」

「覚悟?」

「私も真面目にAクラスを目指すってこと」

 

 松下もAクラスを目指すってことは、Dクラスにマイナスになることはしないってことか。

 ふー、とりあえず命拾いしたか。

 

「それって見逃してくれるのか?」

「ううん、それとこれとは話は別だから」

 

 あっれー? 松下さん。Aクラスを目指すなら、オレとか堀北とか切り捨てたらダメだろ。

 佐藤はどうでもいいけど。

 

「見逃さないって言うか、私も本気だってことを伝えないとじゃない?」

 

 松下は真っ直ぐにオレを見てきた。

 強い意思を感じさせる覚悟を決めた目だ。

 

「だから、究極のコミュニケーションの効果、教えてよ」

 

 その言葉だけで、ぱらりとTレックスを覆っていたタオルが流れ落ちたのだった。

 さよならタオル。

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「本気でいいのか?」

「そうやって改められるとくじけそうになるんだけどな」

 

 勢いのままに襲い掛かりたかったが、さすがに堀北たちの目の前でと言うのは止めた。

 今後どうなるのか分からないが、最初ぐらいは2人きりの方がいいだろう。

 佐藤に制服を着せて3人を追い出す間に、松下がシャワーを済ませる。

 堀北や佐倉は、潔く部屋を貸してくれた。

 

「別に、しなくても松下の本気を今更疑ったりはしないが」

 

 時間を置くと冷静になるのはお互い様で、展開が展開だけに最後の逃げ道は与えておく。

 

「佐倉さんも佐藤さんも、おまけで堀北さんも変わったのは綾小路くんのせいだよね」

「堀北の変化はオレのせいにされたくないけどな」

 

 あいつは潜在的なドМだっただけで、オレはきっかけを与えただけだ。

 オレのせいといえばオレのせいだろうが、認めたくはない案件だ。

 

「それを知りたいの。綾小路くんの本当の凄さを」

「それは──」

「私にここまでの覚悟を示させておいて、してくれないつもり?」

 

 松下にそこまで言わせてしまった。

 

 オーケー、分かった。

 何を弱気になっていたんだ。調子に乗り過ぎて痛い目にあいかけたからって、据え膳に飛びつかなくてどうする。

 

「そうじゃない」

 

 Tレックスこそ野生の王ぞ。

 与えられたものは、食らいつく。ただそれだけじゃないか。

 

「悪い。色々考えすぎた。するぞ」

「……うん」

「松下」

「綾小路くん」

 

「「綾小路ティーーレーーーーーックス」」

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー。試験疲れたー。あやのん、まだいたりする? もしかしてやっちゃってたりする? 堀北さんだけ? それとも愛里も参加してたり? やだもうってカーテン開けちゃうよ──って松下さん!?」

「……おかえり、早かったな長谷部」

「長谷部さん!? 綾小路くん……長谷部さんもなんだ」

 

 部屋の扉が開いたと思いきや、身を隠す間もなく寝室側を区切るカーテンが開かれてしまった。

 ちょうど二回戦が終わって、裸のまま重なり合っているところを思いっきり長谷部に見られてしまう。 

 

 松下は状況を一瞬で把握し、長谷部とオレの関係を察したらしい。

 

 やっぱり松下って頭の回転が早いんだな。

 さて、どうやってこの場を切り抜けようかと考えつつ、オレの中で松下の評価を上方修正するのであった。

 

 

 

 

 

 なお、色々あってこのあと長谷部も混ざって滅茶苦茶Tレックスした。

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