綾小路Tレックス   作:チームメイト

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生徒会役員共

「生徒会と言っても全員が堀北会長に従うわけじゃない。聞けば葛城も納得するはずだ。一之瀬と荷物を送ってもらうもう1人は──」

 

 この無理難題をぬるっと解決してみせよう。ローションのようにな。

 

 オレが知る生徒会役員は多くない。

 

 鬼畜眼鏡先輩には、断られている。

 鬼畜眼鏡先輩がイエスと言わない限り、橘書記も無理だろう。

 いけ好かない金髪野郎のことは、よく知らない。頼めるような間柄じゃない。

 そして、残りの一之瀬は、既に数にカウント済みだ。

 

 と、ここまでだとお願いするような相手がいないように思えるかも知れない。

 だが、オレの知る生徒会役員は、この他にもう1人いる。

 

 それも、目の前に。

 

「おまえだ。葛城」

 

 犯人はお前だ、と言わんばかりに指で葛城を指し示してやった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 あれー、おかしいな?

 完全に見せ場でバシッと決めてみせたつもりだったのだが、リアクションが何もない。

 聞こえなかったのか。やり直すしかないな。

 

「えー……もう1人の生徒会役員は、おまえだ葛城」

「綾小路くん、聞こえてるよ」

 

 一之瀬が同情するように、小声で教えてくれた。ありがとう一之瀬。

 

 だが、聞こえているのなら、もう少しリアクションして欲しかった。

 オレがドン滑りしたみたいじゃねえか。ローションだけにってやかましい。

 

「どういう意味だ?」

 

 ようやく葛城が口を開いてくれた。指で指し示していたのを引っ込める。

 

「おまえが一之瀬とペアを組んで荷物を外に送る。自分のことは自分でやれ」

「綾小路くん。生徒会役員じゃない人が偽るのは無理だよ。郵便局の利用時に、顔写真付きの身分証で確認されるから」

 

 あれー? いけると思ったんだけど、偽装は無理なのか。

 

 などという話ではない。

 

「偽装する必要はない。葛城が生徒会に入れば解決する」

「……綾小路、俺は既に堀北会長に落とされている」

「一之瀬も1度落とされている、が。今は生徒会の一員だ」

「一之瀬がどうやったのかは知らんが、俺が生徒会に入れるとは思えない」

「なぜそう思う。オレが知る中で1番優秀な生徒は葛城だ。それに勝算がある」

「勝算?」

 

 ここまで話して、葛城ではなく一之瀬と向き直す。

 

「一之瀬。生徒会は忙しいか?」

「今はちょっと忙しいかな。特別試験だから仕方ないけど、15日間も抜けちゃってたし」

「その旅行前も、旅行に備えて忙しいって言っていなかったか?」

「そうなんだけど……ごめんね、あんまり時間作れなくて」

「責めているわけじゃない。一之瀬が生徒会を頑張っているのは応援しているしな」

「ありがとう。なんとかもうちょっと余裕できればいいんだけどね」

「夏休みの終盤に特別プールが開放されるって噂を聞いたんだが、その時に会えないか?」

「あー、なんかあるらしいね。分かった頑張ってみるよ」

 

 よし。これでデートの約束ができたな。夏の終わりは一之瀬とのデートだ。

 夏休みの終盤というのが良い。先の予定を埋めることによって、それまでは別に放置しても許されるはずだ。

 

 一之瀬が生徒会で忙しいように、オレはオレで忙しいところがあるからな。

 彼氏としての務めもほどほどが良いのだ。

 

「帰った方がいいか?」

 

 葛城に気を使われてしまった。

 

「すまん。話が少しずれた。言いたかったのは、一之瀬が忙しいという話だ」

「…………」

「一之瀬が忙しいのは、生徒会役員の1年が一之瀬だけなおかげで、一之瀬1人にシワ寄せがいっている部分が大きい」

「うーん、雑用とかは確かにちょっと多いかも。でもそれは仕方ないんじゃないかな」

「そしてそのことを堀北会長や橘書記は気にしていた。今日の昼に橘書記から、一之瀬さんをずっと拘束しててごめんねって謝られたぐらいだ」

「そんなこと言われたんだ……」

 

 一之瀬が少し申し訳なさそうにしている。

 まあ、今話したのはデタラメで、本当は言われてないけどな。

 

「堀北会長は10月には引退だろ。本人から直接聞いたわけではないが、引退後のことも気にして、1年の採用を厳しくし過ぎたことを後悔しているようだ。堀北会長は、できれば1年の生徒会役員を増やしたいんじゃないかって話も耳にした」

「……それで俺か」

「そういうことだ。葛城が明日もう1度生徒会入りを申し出れば、採用される可能性は高いはずだ」

 

 実際は、葛城が生徒会入りすることは既に確定済みだけどな。

 覚えているだろうか。オレには一之瀬の誕生日に、堀北の脇腹を攻撃して堀北兄から与えられた権利があることを。

 

 堀北兄から生徒会入りを誘われて断った際に押しつけられた、代わりに1年を推挙すれば無条件で生徒会入りさせるという権利だ。

 

 何を隠そう昼間に生徒会に顔を出した時に、葛城を推挙して既に了承されている。

 

 一応本人の意思を尊重するため、本人が申し出ればという条件付きだが、夏休み中に葛城が生徒会入りを希望した時点で葛城は生徒会の一員となるわけだ。

 

 夏休みが終わる前に、残っていた夏休みの宿題が無事に消化できてほっとしている。

 

「綾小路、提案は分かった。が、俺はもう生徒会入りは諦めている」

「生徒会入りを諦めるのはいいが、妹へのプレゼントを諦めることはできるのか?」

「それは……」

「妹へのプレゼント?」

 

 しまった。一之瀬には、プレゼントを贈る相手が誰かは言っていなかったっけ。

 一之瀬の説得のために、葛城から話させるつもりだったが、まあ隠すことでもないか。

 

「葛城が外部にプレゼントを贈りたい相手は妹らしい」

「妹。そっか。葛城君も妹がいるんだね」

「一之瀬にもいるのか?」

「うん……私もいるよ」

 

 可愛い妹がね、と笑う一之瀬がどこか影が差しているのは何故なんだろうか。

 一之瀬にとって妹の話はタブーなのか。

 

 気になるが、今は葛城の説得が先だな。

 

「葛城が生徒会入りすれば、一之瀬と2人で荷物を送る役目を担い、妹へのプレゼントを紛れ込ませて送ることができる。葛城が生徒会入りしないのなら無理だ。生徒会に依頼できる相手が居ないためプレゼントを送ることはできない。シンプルな2択だと思うが、どうするんだ?」

「…………」

「最初にできることは全てするつもりだ、と聞いたのは嘘だったのか」

「わかった。明日、堀北会長に直訴してみよう」

「それでいいと思う。荷物を送りたいのは葛城だ。自分のことは、他人任せにせずに自分でやるのがベストだろ」

 

 外部への私物送りを拒否されて、すぐに生徒会入りをして、生徒会の外部への荷物送りを担当するとかどうぞ怪しんでくださいって話だが、堀北会長から葛城の最初の依頼も聞かなかったことにするし、関与しないというのは確認済みだ。怪しくてもスルーされることになる。

 

 荷物の発送は、違うクラスでのペアに限定されている。Aクラスの葛城とBクラスの一之瀬なら問題ない。

 一之瀬が言うには、荷物送りみたいな雑用は一之瀬が担当することが多いらしい。葛城が入れば新入りの葛城が担当するだろうし、そのペアに一之瀬が選ばれることも自然な流れだろう。

 

 条件はほぼクリアされた。

 

「あとは、一之瀬をどう説得するかだな」

「うーん……断りにくい空気で困っちゃうな」

 

 若干、苦笑い気味の一之瀬だ。

 

 そりゃそうか。葛城が前言を撤回してまで生徒会入りをするという覚悟を示している。

 一之瀬の返答次第では、その覚悟が何の意味もないものになってしまうわけだ。

 

 これから同僚となる相手に、そんなことはしにくいはずだ。

 

 まあ、ここまで計算した上で一之瀬の前で、葛城の生徒会入りを勧めたわけだけどな。

 ここでさらに畳みかけよう。

 

「とりあえず葛城の話を聞いてみてくれ」

「……聞いちゃうのが怖いけど……分かったよ」

 

 情に甘いことは自覚しているらしい。一之瀬は戸惑いながらも了承してくれた。

 病弱の双子の妹が居て、祝える肉親は自分だけという話を葛城が口にする。

 

 うん、改めて聞いても割とヘビーな話だ。

 

「以上だ。一之瀬、どうにか協力してくれないか。何としても誕生日を祝いたいと思っている」

「うーん、話を聞いちゃうと協力したいなって気持ちはあるよ」

 

 話を聞けば一之瀬なら協力してくれると思っていたが、一之瀬は、気持ち止まりで協力するとは言わなかった。

 

「何か引っかかってるのか?」

「葛城くんの妹さんを祝いたいっていう気持ちは立派だと思うよ。でも、葛城くんが規則違反してまで祝ってもらっても妹さんは嬉しいのかなって」

「それを妹が知る術はないはずだ」

「そうかもしれないけど……私は賛成はしにくいかな。葛城くんが妹さんをそれだけ祝いたいってことなら、妹さんはきっといい子だろうし、葛城くんには悪いことをして欲しくないって思うんじゃないかな」

「それは……」

「悪いことをしちゃったら……それは消えてくれないよ。私は葛城くんにそうなって欲しくはない。だから、ごめんなさい。私は……協力できないや」

 

 これは想定外だ。

 一之瀬が出した結論はノーだった。

 

 妹のことを想うのなら、悪いことはしない方が良い、か。正論だな。

 これを持ち出されると葛城にとってはキツイな。元々リスクを避ける男だ。はっきりと規則違反は止めろ、と言われてしまっては、反論できないだろう。

 

 一之瀬の説得は葛城に任せるつもりだったが、でしゃばるしかないか。

 

「なあ、一之瀬。葛城がやろうとしているのは本当に悪い事なのか?」

「え?」

「確かに、荷物を敷地の外へと送るという行為は、学校の規約で禁止されている。これを破ることは一之瀬の言うように、規約違反なのかもしれない。ただ、これは元からあったルールじゃないんだ」

「そうなの?」

「学校が設立当初から禁止していたのは外部と連絡を取ることだ。元々は、希望する荷物を送ることは出来たらしい。が、荷物の中に手紙を同封したりして外部と連絡を取り合う生徒が出てきたため、外部と連絡を取ることの禁止を徹底させるために、荷物を送ること自体も禁止したという流れだ」

 

 昼に生徒会で聞いた話なので、間違いないだろう。

 

「特殊な学校だけに、外部との連絡を禁止するのは分かる。外部と連絡を取ることは、悪いことと言えるだろう。ただ、それを守らせるために荷物の発送を禁止して、真面目な生徒まで不便を強いられているというのが今のルールだ。外部と連絡を取らない範囲での荷物の発送が悪いことなのかどうか。オレには悪いことだとは思えない」

「でも、規約違反は規約違反だよ」

「おそらくだが、全員分の荷物をチェックする余裕がないから禁止されているだけだ。個別で確認できる範囲で問題になるのかどうか。どうしても気になるのなら、一之瀬が葛城の送る荷物を確認すればいい。手紙などは入れないはずだ。葛城は、それでいいか?」

「もちろんだ。必要な配慮だろう。荷物を自由に調べてもらっても構わん」

「…………」

「それに、入学前に生徒が知らされていたルールは、許可なく敷地外に出れないことと外部と連絡を取り合えないことだ。荷物を送ることすらできないとまでは知らされていなかった。知っていたら葛城はこの学校を選んだか?」

「……どうだろうな。結局は選んでいたかもしれないが、もっと悩んだだろう」

 

 葛城のヘビーな話を聞く限りでは、恵まれた家庭環境では無さそうだ。

 結局はこの学校を選ぶのなら、学費や寮費が無料というのを捨てるのもまた、難しいのかもしれない。

 

「ある意味、葛城が今こうして悩んでいるのは、学校側の不誠実さの被害者と言える。まあ、どう取り繕ったところで規約違反は規約違反と言われればそれまでだ。ただ、本当に守らなければならないルールを守った上で、誰の迷惑にもならないものまで違反したらダメなんだろうか。荷物を送ることによって誰かが不幸になることは、ないはずだ」

 

 あとは、規約違反をしたというのをどう受け止めるのかだけだ。

 葛城は、そこまで承知の上で動いている以上、葛城の中で問題とはならないだろう。

 

 巻き込まれる形になる一之瀬は、ちょっと可哀想だけどな。

 あくまでも主犯は葛城だ。共犯者の背負うものは、そこまで重くはならない。

 

「本当に、誰も不幸にならないと思う?」

「オレはそう思う」

「……荷物を確かめさせてもらうけどいい?」

「当然の権利だ。好きにしていい」

「分かった。葛城くんが生徒会に入れたら協力する」

「いいのか……?」

「私の気持ちとしては、今でも反対だけど、葛城くんの気持ちを尊重するよ」

 

 どう折り合いをつけたのか、一之瀬の中で答えは決まったようだ。

 

 一之瀬の説得に思ったよりも時間が掛かってしまったが、これで当事者の葛城と協力者の一之瀬で生徒会役員が2人。荷物を外へと送る条件はクリアされた。

 

 8時が近づいてきていたので、細かい打ち合わせは明日葛城が生徒会入りをしてからとなった。

 そそくさと一之瀬の部屋を後にする。

 葛城とはエレベーター内で解散となった。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 葛城のプレゼントは、どうにか目途がついたな。

 オレの出番はここまでで、あとは本人が上手くやれるかどうかだ。

 

 まあ、一之瀬という共犯者が生徒会内部にいる限り、失敗することは無いだろう。

 現在考えられる1年の最強タッグだ。この2人で無理なら誰にも無理だろうな。

 

 一之瀬本人はそこまで大きく貸したつもりはないだろうが、葛城は義理堅い男だ。

 ここで一之瀬が葛城に恩を売れたのは大きいと思う。

 

 というのも、生徒会の仕事は色々と大変そうだからな。

 今までは1年が一之瀬だけだったのもあり、負担が大きくなっていたようだが、葛城という有能な男が入ることによって一之瀬の負担が減ってくれるだろう。

 一之瀬の負担が減る=一之瀬の自由になる時間が増える=彼氏のオレに恩恵が出てくるのだ。

 

 ほとんど放置できるというのはメリットだが、デートすらもなかなかままならないというのは、ちょっとな。

 

 こうなってくると怖いのが生徒会内部での一之瀬と葛城の対立、競い合いだが、今回の件で葛城が一之瀬に対して負い目が出来た以上、それなりのところで落ち着くだろう。

 

 来年、再来年と双子の妹の誕生日は回ってくるわけで、生徒会内部で大きな対立をすることはできないはずだ。

 

 何よりも葛城は、有能というだけではない。

 昨日の買い物中に、佐倉は大人しくていたが、葛城に怯えるようなこともなかった。

 

 学年、いや、学校で1位2位を争う美少女である佐倉に対して、葛城は性的な視線を向けていない。

 何かとそういう目で見られがちで、男を苦手とする佐倉も葛城に対しては不快感を抱かなかったわけだ。

 

 これはなかなか出来ることではない。葛城は平田と並ぶ紳士的な男子生徒と言えるだろう。

 やたら一之瀬との距離が近い金髪野郎とかがいる生徒会に、葛城のような安心できる男を送り込めたのは大きい。

 

「我ながら完璧だな」

 

 葛城の生徒会入りは、思わず自画自賛したくなるくらいの人選だったと思う。

 

「何が完璧なんですか?」

「……橘先輩がなぜ1年の寮へ」

「生徒会の用事です。部屋まで案内してください」

「オレの部屋にですか。もう遅い時間ですよ」

「生徒会の用事なら問題ありません」

 

 どうやら引くつもりはないらしい。

 

 もしかして葛城の件で何をしようとしたのがバレたんだろうか。

 正直、断りたい。が、権力は相手の方が上なら案内するしかないだろう。

 

 可愛らしい上級生と一緒に行動しているところとか、池とか山内に見られたら大騒ぎになりそうなので、可及的速やかに部屋へと案内する。

 

 部屋までの間に、何人か見られてしまったが、幸いDクラスの生徒はいなかったので大丈夫だろう。

 

「片付いてますね」

「最近物が増えつつあるけどな」

 

 夏休み前までは、何も無いに等しいような部屋だったが最近は少しづつ、物が増えつつある。

 目立つものとしてはクッションが増えた。

 

 Aクラス入りを目指すための勉強会がこの部屋で行われているため、女子が長居しやすい部屋に変わりつつあるのだ。クッションはポイントを出し合って買ったらしい。

 来月には絨毯を買うつもりのようだ。

 

 他にも、各自が愛用するタンブラーなど小物も増えつつある。

 

 男性向けの実用性重視とは異なるデザイン性があるものだ。見る人が見れば女性用と分かるだろう。

 

 葛城を部屋に入れたくなかったのは、この辺も理由だったりする。

 鈍い須藤なら問題ないが、鋭い葛城のことだ色々と察せられそうで怖い。

 

「飲み物出した方がいいか?」

「別に構いません。すぐに本題に入りましょう」

 

 必然的に、飲み物類も以前とは比較にならないほど充実した。

 紅茶のティーバッグやインスタントコーヒー、スティックの砂糖やミルクが完備されている。

 

 こちらも来月には電気ケトルが置かれる予定だ。

 

 勉強を頑張ってくれるのならどうぞ好きにしてくれって感じだな。

 そのうちお泊りセットとかが増えそうなのが怖いが、その辺はどうか節度があって欲しいものだ。

 

「で、本題とは?」

「服を脱いでもらえますか?」

「はい?」

「これの正しい使い方をレクチャーします」

 

 橘先輩が指し示した先には、鬼畜眼鏡先輩から譲り受けたローションがあった。

 

「それは生徒会の仕事なのか」

「当たり前です。間違った使い方をされて、排水を詰まらされたら大事です。そうならないように指導する必要があります」

 

 そんな必要はないと思うが、指導してくれるというのならそれで良いんだろう。

 ただ、問題が1つある。

 

「あんたは堀北会長の彼女じゃないのか?」

「私と堀北くんですか? そんな関係じゃありませんよ」

 

 2人は出来ているものだと思っていたが、杞憂だったようだ。

 

 もしかしたら、オレと堀北の関係のように、ご主人様とペットの関係の可能性もあるが、それを聞く勇気はない。

 

「ん?」

 

 違う。オレと堀北はそもそもご主人様とペットではない。断じてない。

 くっそ、オレが堀北に着々と調教されていってやがるな。どうしてこうなった。

 ご主人様が調教される主従関係とはいったい!?

 

「何を気にしているのか分かりませんけど、私は脱ぎませんからね」

「はい?」

「私はローションのレクチャーで来ただけですから、脱ぐ理由はありませんよ。何を期待してるんですか、調子に乗らないでください」

「ローションのレクチャーってそういうことじゃないのか?」

「どういうことですか。あなたが使うのを指導するだけです」

「それでオレが脱ぐ意味があるのか?」

「ローションを何に使うつもりなんですか。さっさと脱いでください。私も暇じゃありませんから」

 

 暇じゃないのなら、わざわざ来なくてもよかったんじゃないだろうか。

 

 脱げってことは使い道はそういうことだよな。

 綾小路ソロレックス。

 

 今更右手には帰れないがローションを使えばまた別なんだろうか。

 

 いや、指導に来たと言っているな。つまり、橘先輩が見ているわけだ。

 綾小路見らレックスなら興奮度倍増でイケるんじゃないか。

 

 仕方ない。脱ぐか。

 

 オレは、ズボンと一緒にパンツを下ろした。

 

「普通下から行きますか?」

「どうせ見られるならどちらからでも変わらんだろ」

「それはそうですが──って綾小路くん何てものを」

 

 先輩に見られているという状況が、Tレックスを半覚醒状態まで起こしていた。

 橘先輩の目が一点に集中しているが、隠す必要は無いな。

 どうせ後で見られるものだし、恥ずかしいものではないと自負している。

 

 オレは上半身の衣服も脱ぎ捨てて全裸になった。

 

「で、風呂場でいいのか?」

「ローションを持って先に行っていてください」

「……分かった」

 

 先に行くも何もオレが脱いだ時点で準備は終わったと思うが、何か用意があるんだろうか。

 

 そういえば、ローションはお湯で希釈するって言っていたっけ。

 蛇口からお湯は出せるが、上限は60度ぐらいのはずだ。それではダメなのかもしれない。

 なるほど、わざわざ橘先輩が指導に来るわけだ。

 

 オレはローションのことなど全然知らない。餅は餅屋。ローションについてはローションにハマった人に聞くのが1番か。

 

 だったら服を脱ぐ前にお湯を用意しろよって話だが、まあいい。

 ローションの後処理で入ることになるだろうし、風呂の湯でも溜めながら待てばいいか。

 

 

「お待たせしました」

 

 時間にして1分経つか経たないかで橘先輩から声が掛かった。

 ガスでお湯を沸かすには、もう少し時間が掛かるはずだがって、

 

「なぜ、裸に!?」

「ローションの良さを伝えるにはこれが最適だと判断しました。これ以上の質問は許可しません」

 

 脱ぐ理由が無いと宣言していた橘先輩だが、全裸で浴室に入ってきた。

 櫛田を少しスレンダーにした感じだな。

 

 色々と聞きたいことがあるが質問を封じられた以上、従うしかあるまい。

 せっかく脱いでくれたんだ、不機嫌にさせることはできない。

 

 橘先輩のローション教室が始まった。

 

 簡単に言うとこのローションはお湯で希釈して使うらしい。

 お湯は40度ぐらいあれば十分のようだ。

 

 だいたい5倍ぐらいのお湯で溶くのをベースにしてあとは好みの問題らしい。

 

 ローションの効果がどれほどかは、実践して教えてもらった。

 

「橘先輩」

「綾小路くん」

 

「「綾小路ティーーレーーーーーックス」」

 

 

 年上の先輩に手ほどきされるってのも、有りだな。

 オレはまた新しい世界を知ってしまった。

 

 まさかローションを求めた結果が、素敵な先輩とのTレックスに繋がることになろうとは夢にも思わなかったぜ。

 どういうことだろうな、堀北ァアーーー(会長)

 あんた最高過ぎるだろ。

 橘先輩への素晴らしい教育、本当にありがとうございます。

 

 

「こんな感じですが。ローションの使い方は分かりましたか?」

「任せてくれ」

 

 何はともあれ、これでオレもローションマスターだな。使い方はバッチリ学ぶことができた。

 

「本当ですか? 必要ならまた指導に来ようと思ったんですが」

 

 前言撤回。オレ、ローションのことを全然学べてなかった。

 これからももっとご指導をいただかなければ。

 

「全然理解できませんでした」

「そうですか、仕方ありませんね。どうしてもっていうのであればまた指導に来ます」

「どうしてもです、お願いします」

 

 ローションの指導をするという建前で、お互いの欲求が通じ合えた瞬間だった。

 

 

「ところで綾小路くん。提案があります」

「なんだ」

「生徒会の会長になりませんか?」

「会長!? どんな基準での提案だっ!!」

「綾小路くんは、王者です。堀北くんが退いた後の会長に相応しいと思います」

「だからどんな基準だ!!」

 

 Tレックスは確かに王者だが、そんな基準で会長にしようとするなよ。

 

 本当に一之瀬がこんな生徒会に居て大丈夫なんだろうか。

 葛城の加入でまともな生徒会になるといいな。

 

 生徒会ならぬ性徒会とか勘弁して欲しい。

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