綾小路Tレックス   作:チームメイト

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体育祭編その2 まずは自分たちを知ろう

「ねえ、綾小路くん。1ついいかな?」

「どうした、櫛田」

「体育祭を楽しもうとしてるってのは、別にいいんだけどね」

「伝わったようで何よりだ」

「一之瀬さんと本物の恋人同士になるために頑張るって、決意表明を聞かされた私はどうしたらいいのかな?」

 

 櫛田さんは、かなりお怒りのようだ。

 具体的に言えば首に手が伸びてきている。首はダメだ。人は首を絞められたら死ぬ。

 

 ここは機嫌を取るしかあるまい。

 オレが如何に櫛田のことを愛しているのかを端的に伝えよう。

 

「そうだな。将来オレと結婚すればいいんじゃないか?」

 

 決まった。完璧だ。これで平和は訪れる。

 あとはいつものパターンよ。

 

「櫛田」

「綾小路くん」

「綾小路「死ねッ」んんぐッ」

 

 なぜだ。将来を誓い合うという、これ以上ないご機嫌取りだったのに、首を絞められるとは。

 

 

 

 ──第六十話 体育祭編その2 史上最低のプロポーズ──

 

 

 

 土日を挟んで、月曜日から早速動き始めた。

 

 今週から時間割が、体育祭仕様へと変わった。具体的には、体育の時間が増えて、その時間は体育祭の競技に関するものへと当てられるようになった。

 

 月曜日の体育は、ハードル走。

 

 ハードルの高さは、男女別で分けられており、そこそこ高い。

 しっかり足を上げないと引っかかる高さだ。

 

 運動が得意な生徒なら気にならないが、苦手な生徒には厳しいレベルだ。

 特にややぽっちゃりしている博士にいたっては、足が上がらずにハードルを越えることすら困難なようだ。

 

 体育祭のルールでは、ハードルに触れたら0.3秒加算。倒したら0.5秒加算なので、博士の最下位はほぼ決定的だろう。

 

 女子では佐倉がきつそうだ。ほとんどハードルを越えられずに倒している。

 だが、女子で一番やばかったのは佐倉ではない、長谷部だ。

 

 長谷部は、佐倉とは違ってハードルを越えることには成功している。

 問題は、ハードルが強い上下運動となって、身体の一部を大きく上下させていた。

 

 ハードルを越えられない佐倉と比べたら、比較にならない揺れだ。震度5くらいはあるんじゃないか。

 

 以前の長谷部なら、男子から邪な目で見られそうな授業は見学に回っていたが、2学期は頑張るつもりという宣言通りに参加している。

 長谷部の頑張りは、素晴らしいと思う。もっと飛んでくれ。そして、もっと揺らしてくれ。

 

 困ったことに、そのように長谷部が頑張った結果、なぜか一部男子生徒のバランスが崩れてハードルを飛びにくくなってしまった。これでは練習にならない。

 うーん、全てが上手く回るというのは、なかなか難しいようだ。

 

 

 火曜日。

 

 この日の昼休みは、佐倉、長谷部、松下、堀北の4人で済ませた。

 

「松下は、推薦競技でもいけそうだな」

「うーん、自信があるかは微妙かも」

「ちあきっちが弱気ってめずらしいね」

「え? 私ってそんな強気キャラ?」

「強気キャラってわけでもないけど、なんでもさらっとこなすイメージ?」

 

 いつの間にか長谷部が、松下のことをちあきっちと呼び出している。長谷部は、あだ名をつけることが好きみたいだ。

 

「万全な状態ならそこそこやれるって思ってるけど、競技が多いからね。運動部みたいに毎日鍛えてるわけじゃないし、体力にはそこまで自信がない、かな」

「女子の推薦競技は、競技別に違う人が出た方が良いってことか?」

「そういうこと。あ、でも小野寺さんは運動部だし大丈夫じゃないかな」

 

 小野寺か。水泳部ってことは知っているが、それ以上のことは知らない女子生徒だ。

 

「小野寺さん凄いよね。ハードルも速かった」

「うん、ハイパワーって感じ」

「そうなのか。気づかなかったな」

 

 長谷部のおっぱいに、気を取られ過ぎたか。

 クラス内の戦力の把握も進めないといけない。当日だけ、結果を出せばいいってものでもないらしい。

 

「堀北さんは、推薦競技どうなの?」

「問題ないわって言いたいところだけれど、どれだけ消耗するのかは分からないわね」

「実際に本番通りに動いてみれればいいんだが、こればっかりは難しそうだからな」

 

 授業時間で生徒に与えられるのは、体育の授業と週に1度の2時間のホームルームだ。

 土日を使えばその限りではないが、本番通りの進行で同じ状況を再現するのは、ほぼ不可能といえる。

 

 特に、多人数が同時に参加する騎馬戦とかは、無理がある。

 

 堀北も松下と同じだ。運動能力は高いが、現役の運動部と比べたら体力面の不利は否めないか。

 

 男子は須藤を軸にして、女子は小野寺を軸にして、他のメンバーで何とかやりくりするしかないみたいだ。

 オレも本気を出せば、体力面でも問題ない。が、ある程度活躍するつもりとはいえ、目立ちまくる気もない。

 

 体育祭が最後の勝負なら本気を出すが、まだまだ学園生活は長く続く。

 手の内を隠せる範囲で、隠した方が良いだろう。

 

 なお、昼休み終了前に、教室に戻ってきた佐藤に、いつものメンバーが集まっていることを気づかれてしまった。

 来週からは佐藤も参加するに違いない。騒がしくなりそうだ。

 

 

 水曜日。

 

 この日は、櫛田のお弁当だった。

 初の櫛田グループへの参加だ。

 

「あれ? 同じお弁当?」

 

 急に呼ばれた男子生徒が、同じおかずのお弁当を広げていたらそりゃ気づくか。

 

「1人分作るのも2人分作るのも同じらしいから、たまに櫛田に甘えさせてもらってる」

「他の人の意見聞きたくて、綾小路くんに味見してもらってるんだ」

「仲いいんですね」

「どうだろうな。櫛田に忌憚なく意見を言えるから頼まれたんじゃないか」

「結構辛口だよね、綾小路くんって。私も何度泣かされたかな」

 

 別に辛口の評価とかした覚えは無いが、櫛田がそういうならそういうことでいいか。

 手を目元にあてて泣く振りをする仕草が可愛い。冗談めいているのも上手い。

 これでオチがついたので、手作り弁当の話は終わりだ。

 

「で、話ってなんだ?」

 

 お弁当を半分ほど食べ進めたところで、自分から聞いてみた。

 

 今日、櫛田グループにお邪魔したのには理由がある。

 櫛田から話したいことがあるから一緒に食べようって頼まれたからだ。

 

 タイミングが悪かったらしく、井の頭は口に含んだ食べ物を急いで咀嚼している。

 小動物みたいだ。

 慌てて飲み込んで、口の中を空っぽにしてから話し出した。

 食べ物を口に入れたまま話すような育ちの悪さは無いらしい。

 

「あの、えと……誕生日プレゼントありがとうございました」

「あ、私も、ありがとうございました」

「佐倉と折半だから、別に気にしなくてよかったんだが。どういたしまして」

 

 誕生日プレゼントは櫛田に預けていたが、着服することなくしっかり渡したらしい、

 心を読まれたのか、一瞬だけ睨まれた。ちょっと、後が怖い。

 

「そ、それと……軽井沢さんからポイント返してもらえました。ありがとうございます」

「……その礼はオレで合ってるのか?」

「綾小路くん。私も返してもらえたよ、ありがとう」

 

 みーちゃんは、特に軽井沢に貸していなかったらしい。井の頭と櫛田からだけ礼を言われた。

 船上試験のポイントが入る軽井沢に、借りた分のポイントは、返しておくようにと言った記憶はあるが実行したようだ。

 

「返してもらえるとは思ってなくて、怖くなって、その……」

「私が軽井沢さんに確認したら、綾小路くんに怒られたからって、遅くなってごめんって謝られちゃった」

 

 借りたポイントを返すだけで恐れられるとか、軽井沢はクラスの女子からどんな目で見られているんだ。

 

「別に怒ってはないんだが。たまたまそういう話題になっただけで、礼を言われるようなことじゃない」

 

 それにしてもあの軽井沢が、謝罪か。

 すっかり謝れる子になったんだろうか。

 

 そんなことがあったとは思わせないくらいに、クラスでの立場は盤石のままだ。

 立場を失うことを恐れていたが、これで成長してくれたらいい。

 

 こんな感じでみーちゃんや井の頭からお礼を言われ、ついでにおかずも一品ずつもらったりして、楽しい昼休みを過ごしたのだった。

 

 櫛田のより美味しいって素直な感想を言ったら、後で頬をつねられた。おかしい、けっこう辛口っていうから、思ったままを口にしたのに。

 

 

 木曜日。

 

「綾小路くん」

「どうした」

 

 昼休みに入り、平田たちと合流しようと席を立ったところで、堀北に呼び止められた。

 

「作ってきたわ」

「ちょっと待て」

 

 何事かと思いきや、堀北が弁当箱を取り出して渡そうとしてきたので、とりあえず制止する。

 

 月曜日は一之瀬と食事。

 火曜日は佐倉、水曜日は櫛田にお弁当を作ってもらう日だ。

 そして、金曜日は無料の山菜定食の日と決めているので、木曜日は貴重なフリーとなる。

 

 最近すっかり綾小路グループで忙しく、平田グループでの交流も大事にしたいと考えていたのに、なかなかうまくいかないようだ。

 

「作るなら事前に言ってくれ」

「……」

 

 そこでキョトンとされても困る。

 なぜ作ってきて当然だという反応をする。

 

 予定が無ければくらいのゆるい約束をしていた平田たちが、こちらを見ていたので片手を立てて、軽く頭を下げて謝った。

 平田は気にしないでと顔を横へ振ってくれたが、軽井沢からは睨まれた。

 

 待たせた挙句にやっぱ無理とか、怒るのも仕方ない。スタートダッシュに出遅れさせてしまった。平田が上手くフォローしてくれることを願おう。

 

 教室から出ていくまで頭を下げたまま見送ったのは、せめてもの謝罪だ。

 

「で、どういう風の吹き回しだ?」

 

 改めて堀北と向き合う。

 

「失礼ね。あなたが言い出したことでしょう」

「は?」

「火曜日は佐倉さん。水曜日は櫛田さん。木曜日は私」

「惜しい。2つまでしかあってない」

 

 最後の堀北は余計だ。そんな約束はない。

 

「そう。櫛田さんには、振られてしまったのね」

「おかしいのはお前だ」

 

 つーか、昨日は櫛田たちと教室で食べてたんだから、同じ教室に居た堀北も見てただろうが。

 

「綾小路くん。夏休み前のことを忘れてしまったようね」

「いや、忘れたのはどっちだよ」

 

 確かに木曜日は堀北に作ってもらうという案が、無かったわけではない。が、言い終わる前に『作らないわよ』と却下されたはずだ。

 

「私は覚えているわ。特別に再現してあげるけど?」

 

 その自信がどっから出てくるのか、ちょっと面白そうだから見てみるか。

 

「頼む」

「分かったわ。と言っても大げさなものでもないのだけれど。佐倉さんが綾小路くんのお弁当を作ってきた日に、佐倉さんが火曜日、水曜日を櫛田さんが担当することが決まったわ」

 

 ここまでは、オレの知る歴史と同じだ。

 

「その後で私に対してこう言ったのよ。

『堀北、木曜日を忠実かつ有能なしもべであるお前に任せる』

 と、もちろん私の返事は決まっていたわ。『分かったわ』」

「オレはそんな尊大な言い方しねえよ」

 

 色々ひどい。

 

 この女自らペットからしもべへとランクアップさせやがった。

 

 ん? この場合はランクダウンなのか。誰か階級に詳しい奴説明を頼む。

 いや、やっぱいらん。鬼畜眼鏡先輩とかに解説されても困る。

 

 あと、オレの記憶では木曜日まで言った時点で、作らないと断られたはずだ。

 何が分かったわ、だ。捏造がひどい。

 

「忘れるなんてひどいわ」

「ひどいのはお前の記憶だ」

「ひどいこと言うのね」

 

 なぜ事実を握っているオレが非難されないといけないんだ。

 

「佐倉、ちょっと来てくれ」

「どうしたの?」

 

 長谷部と2人で食事を取ろうとしていた佐倉を呼びよせる。

 佐倉は手作り弁当で、長谷部はどこかで買ってきたらしいパンだった。

 長谷部はあまり料理をしないのかもしれない。火曜日もそんな感じだった。

 

「あの場に居た佐倉だけが頼りだ。弁当作りを佐倉に頼んだ時、堀北には断られたよな?」

「えっと……」

「佐倉さんよく思い出して。私が断るわけないでしょ」

 

 確かに、今の堀北なら断ることは無いだろう。

 が、それは無人島で色々あって視野が広がって生まれ変わった後の変態した堀北だ。

 昔の堀北なら断って当たり前である。

 

「断らないんじゃないかな」

「佐倉……」

「綾小路くん。これで結果が出たわね」

 

 ドヤ顔堀北がうぜえ。

 

 よくよく思い出してみれば、佐倉は火曜日担当に決まって浮かれていた気がする。

 他のことはよく覚えていのかもしれない。

 それに当時の堀北を知るほど、堀北と親しかったわけではないだろう。

 

 ということは、佐倉にとって今の堀北が堀北の通常運転であり、堀北なら断らないという答えになるのは、おかしいことではない。失敗した、人選ミスだ。

 

 今の堀北はどうかしていると思うが、今の堀北からしたら当時の堀北はどうかしているとか言い出しそうで怖い。

 

 こうなってくると櫛田か。

 

 ただ、櫛田は面白そうだからと敵に回る可能性もあるから困る。

 下手に巻き込むと3対1で色々と終わるな。記憶があいまいな佐倉含めて2対1でとどめておいた方がマシだろうか。

 

 過去の歴史が勝者によって塗り替えられるのは非常に癪だが、ここは折れてやろう。

 

「分かった。じゃあ、木曜日は堀北が作ってくれるってことでいいんだな?」

「任せて」

 

 ということで、木曜日担当は堀北に決まった。

 結局、長谷部もこちらに合流し、4人での昼食だ。

 

 なんだかんだとそこは高スペックの堀北鈴音だ。おかずのバリエーションといい味といい、佐倉や櫛田よりは頭1つ抜けている。食事が充実することは良いことだと思いたい。

 

 でも、なんか引っかかるのは相手が堀北だからか。

 

 

 金曜日。

 この日は2時間のロングホームルームがあった。

 

 前半は教室での話し合い。後半は体育館が確保できたので、色々と器具を持ち出しての堀北クラス生徒の能力テストが行われた。

 

 前半の教室の話し合いは、スムーズに終わった。

 

 堀北クラスの結論は、一言で言えば実力制だ。

 

 推薦競技は、能力が高い生徒が出る。

 全員参加競技の順番も、能力が高い人が勝つことを優先して組む。

 

 とはいえ、順番についてはそこまでガッチリというわけではなく、勝つ見込みの高い上位層を優先的に配置するだけで、上位層以外はそこまで強い取り決めはしない。

 

 全員参加の個人競技は、

 1位15点 2位12点 3位10点

 以下、4位8点 5位7点 6位 6点 7位5点 8位4点だ。

 

 4位と5位の差は1点にしかならないが、3位と4位なら2点差がつく。

 つまり、上位3位にどれだけ送り込むかというのが大事になってくる。

 

 逆に言えば、4位以下はそこまで気にする必要が無いということだ。

 3位以上を狙えそうな生徒だけ配慮すれば、狙いとしては十分だろう。

 

 上位層を優先させる代わりに、上位に入れば手に入る個人ボーナスは、下位に入った生徒の支払うペナルティーと相殺することでバランスを取ることも決まった。

 

 全て堀北の案だ。

 特に口を挟むことはなかった。

 

 久しぶりに堀北の賢そうなところが見れて、少しだけホッとしたくらいだ。

 日ごろからこれくらいやってくれればいいんだが。

 

 

 2時間目は運動着に着替えて、体育館に集合した。

 

「1時間しかないから、テキパキ測っていこう。順番に測り終えた人から僕のところに報告しに来て」

 

 バインダーを手にした平田が皆に指示を出す。

 テスト項目は握力と垂直飛びだ。

 

 とりあえず握力を元に推薦競技である四方綱引きの選手を決めるらしい。

 垂直飛びは室内でできるテストということで、主に須藤の提案でおまけで実施されることになった。

 

「オラァアアア」

 

 須藤が叫び声をあげながら握力を測る。

 82.4。周囲の反応から見るに、凄い数字が叩き出されたようだ。

 

「へっ。見たか。次は清隆な」

 

 握力測定器を手渡される。

 

「…………」

 

 しまった。須藤がどんなもんかが気になって、近くに居たのが失敗だったか。

 クラスの平均を上回る程度で調整するつもりだったが、これでは無理だ。

 

 テキパキ測ろうっていう平田の手前、後回しにして貰うのも難しい。

 仕方ない、須藤よりは上に行かなければ目立ちすぎないだろう。

 

 適度に力を抜いてっと。須藤の75パーくらいなら平均より上くらいで落ち着くだろう。

 

「……ここまでだな。61.8だ」

「すごいね、綾小路くん」

「そうか?」

「僕はそこまで出せないよ」

 

 平田よ、目をキラキラさせながら出せないとか言うのは止めて欲しい。

 何を出すんだ。いや、数字以外の何があるっていうんだ。

 

 平田の宣言通り、平田は57.9でオレより下のクラス3位。

 オレがクラス2位となり、推薦競技の四方綱引きへの参加が決まった。

 4番手に、無人島試験でリーダーを務めた三宅が滑り込んだ。

 三宅は堀北クラスでは貴重な運動部の生徒で、弓道部に入っていて、運動能力は高めらしい。

 

 これで男子の四方綱引きは、須藤、オレ、三宅、平田の4人が推薦された。

 

 四方綱引きがどんな競技か気になっていた。

 参加すること自体は、嫌ではない。

 

 だが、優先して参加したかった推薦競技は、男女混合の二人三脚だ。

 二人三脚は譲れないので、足の速さは示す必要がある。

 となると最終のリレーにも自然に選ばれるだろう。

 

 体育祭、忙しくなりそうだな。

 

「で、高円寺は測らないのか?」

「私のことは気にしないでくれたまえ」

 

 この場には顔を出しているものの、握力を測ろうとしない高円寺に声をかけてみたが、やる気はないらしい。

 体育祭を楽に終わらせる方法は、多少のペナルティーと引き換えに競技に参加しないことなので、この分では本番も棄権する気なのかもしれない。

 

 棄権すると最下位分の点数も入らないので出来れば参加して欲しいが、無理強いはできないか。

 

 せめて個人ボーナスが船上試験のように大きければ、引っ張り出せた可能性もあるが、大した額でもなくクラスで共有することも決まったため、無理か。

 

 須藤が高円寺の態度に怒っている。頭が痛い。

 高円寺はそういう存在なんだから、本人の言う通り気にしないのが1番だぞ。不本意だが。

 

 

 おまけで測った垂直飛びは、バスケ部の須藤の独壇場だった。

 パン食い競争でもあれば良かったんだが、実施種目的には必要か微妙なデータだ。

 

 シャトルランとかをした方が、有意義だったと思う。

 疲れるテストなので反対の声が大きいか。

 

 体育祭には関係ないが、女子の垂直飛びは見所が多かったのでよしとしよう。

 

「……これは使えるな」

 

 今度、オレだけベッドの上に立ち、両手を真上へ高く上げた状態で、佐倉や長谷部にハイタッチしてもらうか。

 そうすれば自然と身体にパイタッチよ。

 

 ハイタッチからのパイタッチ。これはいける。

 

 

 などと考えていたせいか、運が左右される借り物競争の参加者を決めるジャンケンを勝ち抜いてしまい、借り物競争にも参加することが決まった。

 

 推薦競技をコンプリートしそうだ。

 

 借り物競争か。お題がどうなるのかが気になる。

 

 体育祭は個人として参加するって言っていたが、まさか、鬼畜眼鏡先輩が変なお題を仕込んだりしていないよな。

 お題決めに鬼畜眼鏡先輩が絡んでいませんように。

 

 オレは強くそう願うのだった。

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