綾小路Tレックス   作:チームメイト

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体育祭編その3 レンタルプレイじゃねえよ

 クラスの方針が決まったので、改めてBクラスとの打ち合わせが行われた。

 

 月曜日の昼休み。

 

 月曜日は、一之瀬と食べることにしているのでそれに便乗する形だった。

 他クラスからの盗み聞きを避けるために、Bクラスの教室奥に主要メンバーが集まる。

 

 堀北クラスからは、堀北、平田、オレの3人。

 Bクラスからは、一之瀬と神崎が参加し計5人が向き合っている。

 

 白波を追い出す形になったせいで、鬼のような形相で睨まれたが、オレが悪いんだろうか。

 なんつーか、幸先が悪い。

 

「それで提案ってなにかな」

 

 全員が食べ終わるのを待って、一之瀬が本題に切り込んできた。

 各自の手元に残っているものは、飲み物だけだ。

 

 さりげなくBクラスの生徒が教室の前と後ろにある扉付近に立っているのは、周囲を警戒しているんだろう。

 特に一之瀬から指示は出ていなかったはずだが、自然と動いているのが凄い。

 こういう細かいところで、まだまだクラスの差があることを見せつけられてしまった。

 

「個人競技含めた協力の提案よ」

「協力の中身は?」

「Cクラスの中で上位を狙える生徒は、優先して上位を狙うことが決まったわ。Bクラスもそれに、協力してもらいたいの」

「誰がどの順番で出るのか、2クラスで調整したいってこと?」

 

 Bクラス側でもどうするのか案を出し合っていたのだろう。

 一之瀬の理解は、早かった。

 

「そういうことよ。具体的に言えば、個人種目は各競技男女別に、クラス毎に3組分の調整を考えているわ」

 

 1クラスの生徒数は、男女20名ずつの40名。

 基本的に各競技1組あたり2名参加するので、男女別に10組レースが行われることになる。

 

 10組のうちの3組で勝利を取りに行く。これが堀北クラスの出した作戦の根幹だ。

 

「僕から補足させてもらうけど、どうなるのが嫌かというのを考えてみたんだ。Bクラスで1番運動神経が良いのは、僕と同じサッカー部の柴田くんだと思う。僕たちのクラスでは、須藤くんが抜けた存在だ。2クラスにとって嫌なのは、柴田くんと須藤くんが同じ組で参加すること。直接対決で、どちらかが負けて2位になることは、絶対に避けないといけないと思う」

「エース同士で勝負して勝つのも、大きいと思うけどな」

「葛城くんが言うことも、クラス間だけの争いだけならもちろん正しいよ。でも、まずは赤組対白組で、勝つことが大事なんじゃないかな。須藤くんが1位を取って、柴田くんには別の組で1位を取ってもらう。それが白組が勝つための近道だよ」

 

 1位が15点で、2位が12点。1組の点差としては3点に過ぎないが、分散させるかどうかで2組分の結果が変わるので、影響は2倍の6点になる。

 

 同じ組に配置して、1組で白組の須藤・柴田で1位2位を取ったら27点が入る。

 が、2人の居ない2組で赤組が1位2位を取ったら、互いに27点で差がつかない。

 

 これに対して2人を分けて配置し、1組を須藤が1位で赤組が2位。2組を柴田が1位で赤組が2位になれば、白組30点に対して赤組には24点しか入らないというわけだ。

 

「調整するのは、3組だけでいいの?」

「それ以上調整しても、調整した組で赤組に勝てるかどうか分からないわ」

「なるほど。うん、それはそうかもね」

「それに、BクラスとCクラスで6組抑えることが出来れば半数を超える。勝つ可能性を高めるには十分な成果だと思うのだけれど」

「どちらのクラスを優先させるか、全組分調整することは出来ると思うけど、それは僕が反対するよ。運動が苦手な生徒でも、苦手な生徒同士で当たれば勝てるかもしれないってチャンスを全部つぶすわけには、いかないからね」

 

 平田らしい優しい理由だった。

 運動神経が悪い生徒をBクラスの上位層にぶつけるのは簡単だ。

 結果だけを求めるならそれが最善だろう。

 

 ただ、そうなった場合にその生徒のやる気が維持できるのかは厳しくなってしまう。

 Bクラスが勝つ3組。Cクラスが勝つ3組。残りの4組はどちらが上に立つのか分からない状態にしておいた方が、全員が体育祭に参加する上で大事になってくる。

 赤組対白組だけではなく、クラス対抗戦でもあるというのもデカい。

 

「神崎くんはどう思う?」

「確認だが、上位層はぶつけあわない。互いのクラスの4番目の生徒はどういう扱いになる」

 

 冷静な確認だ。

 3位と4位の差があまりない場合、互いのクラスで3位と4位がぶつかりあったら、4位側が勝つ可能性がある。

 それは好ましくない展開だろう。

 ここはオレが答えておくか。

 

「相手のクラスを優先させる組では勝ちを狙わない。上位陣は避けるつもりだが、1つだけ厄介な問題がある」

「厄介な問題?」

「高円寺だ。あいつが真面目に走るのかどうか次第で事故が起こる可能性がある」

「だったら高円寺も避けてもらう。それが条件だ」

 

 出来れば避けたかったが、条件としては妥当だろう。

 

 高円寺は、どうせ真面目に走らないだろうから、Bクラスが勝ちを目指す組にぶつけて消化しておくのがベストだが、それで事故る可能性が残るのなら、無理強いすることは出来ないか。

 

 高円寺のことを黙っておけば良かったかもしれない。

 いや、それで高円寺が全勝したら、Bクラスとの信頼関係は崩壊一直線だな。

 

 平田に対して頷いて、後は任せた。

 

「もちろん約束するよ。高円寺くんは僕が責任をもって外す。これでいいかな?」

「問題ない」

「これで成立だね」

 

 平田が請け負い、神崎が認め、一之瀬が乗った。

 Bクラスとの同盟内容に、新しい事項が決まった。

 

 具体的にどの組をどうするのかは、来週に持ち越しだ。

 いくら一之瀬がBクラスを掌握しているからといって、提案してすぐクラスを動かすのは無理があるだろう。

 

 こちらとしても上位陣の何組を優先させるかが決まっていなかったため、具体的にはまだ動けていない。

 

 とはいえ、どの組を優先するのかは決まっていないが、決まった後で組ごと入れ替えればいい。

 3組ずつ担当するというのが決まっただけで、クラスで動き出すには十分な決定だろう。

 

 あとは、来週までにクラスの優先メンバーを決定できるかだ。

 一之瀬クラスはバッチリ決めて来るだろうし、足を引っ張ることだけは避けないといけない。

 

 今週が勝負になりそうだ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「清隆も速えな」

「足には割と自信があるんだ」

 

 今日はグラウンドを使っての練習だ。まず始めに、徒競走のタイムを計っている。

 

 男女二人三脚を譲りたくないオレは、須藤に次ぐ二番手のタイムを出していた。

 

 池や山内たちに檄を飛ばし始めた須藤から離れて汗を拭っていると、自分のタイムを計り終えた佐藤が近づいてきた。

 

「綾小路くん凄い」

「惚れなおしたか?」

「うん、格好良かった」

 

 冗談だったんだが、佐藤に頷かれてしまった。

 そう素直に出られると少し照れそうになる。

 

 だが、佐藤に負けるわけにはいかない。

 

「佐藤は惜しいな」

「え!?」

「下がジャージってのが残念だ。マイナス10点」

「みんな同じでしょ」

「エロ可愛さが足りない」

「ええー別にいいじゃない」

 

 とか言いながらも、しっかり体操服の裾を掴んで気持ち引き上げてみたりと、アピールに余念がない。

 個人的好みで言うなら、下はハーフパンツでジャージの上着を腰に巻く。これがベストだ。

 ハーフパンツよりも下まで腰に巻いたジャージが垂れていないと意味が無いから、長さには注意しろ。後ろから見たらジャージがスカートっぽく見えるのがポイントだ。

 腰に巻く際に制服のスカートは却下だ。あざとすぎるのも良くない。

 

 どちらにしても、徒競走のタイムを計る上では、マイナスにしかならないだろうけど。

 

 などと佐藤の相手をしているうちに、高円寺を除く全員のタイムを計り終えて、集合が掛かった。

 なお、オレのタイムは2位をキープしたまま終わったので、無事に推薦競技の出場が決まる。

 男女二人三脚と最終リレー。

 

 既に決まっていた、四方綱引きと借り物競争も併せて推薦競技コンプリートだ。──借り物競争だけは想定外だったが。

 

「次は、二人三脚の練習をしよう。まずは、タイムの近い人同士で組んでみて、走りやすいペアを決めたいんだけどいいかな?」

「平田くんが言うなら、さんせー」

 

 平田の提案を彼女の軽井沢が賛成することにより、方針が決まった。

 仲が良い人同士で組みたいとか言い出しかねないのは、軽井沢グループだけだ。そこが反対しなければ、話が早い。

 

 オレの場合は、タイムが近いのは須藤、三宅、平田あたりだな。

 結局握力と同じ4人が上位を占めている。堀北クラスの運動能力が高い生徒少なすぎ問題。

 

 オレ以外は運動部所属で、体力的に問題にならないのが幸いか。

 

「健、組むか?」

「いや、秘策を考えてある。試してみてからでいいか?」

「秘策?」

 

 須藤の秘策とか嫌な予感しかないんだが。

 訝し気に見ていると、須藤は池を捕まえていた。

 

「まあ見てなって。寛治、組むぞ」

「マジであれをやるのかよ……」

「文句あるのか!?」

「ね、ねえよ。組もう」

 

 平田の方針を速攻で無視する須藤の暴君っぷりよ。

 池がビビっているのが気になる。

 

 池は最下位争いをしていたはずで、須藤との差は大きい。

 仲が良いので相性は良いと思うが、どうなることか。

 

「清隆、どうせなら勝負しようぜ。お前は三宅と組めよ」

「自信ありそうだな」

「まあな」

 

 秘策が上手くいくのかどうか、判断するためにも勝負の方がいいか。

 

「三宅、いいか?」

「いいぜ。須藤はともかく池には負けられない」

 

 運動部でこういうことには慣れているのか、三宅が率先して紐を結んで固定した。

 肩を組むように腕を回してきたのでそれに倣う。

 

「結んだ足からな」

「分かった」

 

 何度かスタートの数歩の練習を繰り返して、須藤たちの隣に並ぶ。

 須藤はオレ達とは違って、肩ではなく脇に差し込むように手を回していた。

 

「せーのでいくぞ」

「待て。よーい、どんでスタートしよう」

「なんだよ。まあいいけどな」

 

 悪いな、須藤。

 せーのでいくぞは、トラウマがあるんだ。

 文句は堀北に言ってくれ。男4人でせーのでいくのはまずい。

 

 ペアが平田じゃないからといって油断する訳にはいかないのだ。

 せーのでいくぞが許されるのは、龍園と葛城ペアだけだな。

 

「始めるぞ。位置について、よーい、どん」

 

 こういう時はフェイントを入れるのがお約束だが、慣れない二人三脚でそんな余裕はない。

 さっき練習した通りに、結ばれた側の足から前に出して、

 

「「1、2、1、2」」

 

 三宅と声を合わせながら、交互に足を動かしていく。

 基本が大事だ。徐々にペースを上げて行けばいいだろう。

 

 三宅は洞察力が優れているらしく、こちらのペースを察して合わせてくれている。

 ペアとしてやりやすい。 

 

「うわぁあああああああああ」

「オラオラオラオラァ」

 

 二人三脚では聞くことがないであろう声が前方から聞こえてくる。

 

 須藤の秘策は単純だった。

 須藤のパワーでほとんど池を引きずる形で、全速力で駆け抜ける。

 なるほど、肩ではなく脇に手を回したのは持ち上げやすくするためか。

 

「へへ、どうよ?」

 

 結局、須藤池ペアに、大差負けとなった。

 オレたちのペアも後半はそこそこペースを上げることが出来たので、練習を重ねれば伸びそうだが、須藤ペアには勝てそうにない。

 

「参った。須藤と池で決まりでいいんじゃないか」

「任せろ」

「そんなぁ……」

 

 引きずっている須藤の方が大変そうだが、ダメージが大きいのは池の方らしい。

 この秘策なら、ペア同士の練習も要らないので、あとは本番我慢すればいいだけだ。

 

 頑張れ池。君の犠牲は無駄にしないよ。

 

「綾小路くん、次は僕とどうかな?」

「いいんじゃないか」

「……分かった」

 

 三宅ともう一本練習しようか話していると、平田から待ったが掛かった。

 タイムの近い人と組んでみるって話だったので、不自然ではない。──不自然ではないんだが、平田か。

 三宅が先に頷いたので、オレも乗るしかなかった。

 

 三宅とのペアを1度解消して、今度は平田と組む。

 気持ち三宅との時より紐がきつく縛られた気がするが、気のせいだろうか。

 

 ゆるい方が走りやすいのでは?

 

 いや、意識し過ぎか。

 平田はそんなことしない。うん、きっと気のせい。

 

 タイムの近い人同士でっていう平田の提案のせいで組んでみることになったが、合理性を求めただけでオレと組みたかったとかないよな。

 やたら笑顔なのは、オレが緊張しないようにって配慮なだけだ。

 

「それじゃあ、一緒にいってみようか」

「……スタートするか。よーい、どん」

 

 笑顔が怖いんだよ。一緒にはいけない。

 

 特に打ち合わせしていなかったが、自然と結んだ足から一歩を踏み出した。そのまま、右足、左足とスムーズに進む。

 三宅の時は必要だった、いち、にの掛け声すらなくスピードが上がっていく。

 

 ダメだ。調子がいいけど、何かが危険だと訴えかけてくるものがある。

 

 仕方ない。これはやりたくなかったが勝負に出よう。

 

「おっと」

「大丈夫、慌てないで」

 

 ペースが上がったところで、わざと足をもつれさせるようにして急にペースを落としてみたが、平田はしっかりとそれに動きを合わせてきて、むしろがっしりと力強く支えられてしまった。

 

 平田から離れたいがための行動が、オレと平田との密着度を上げる。

 

 結局そのまま全力疾走というより、長距離走を走るようなペースだが、崩れることなくしっかりと走り抜けることができた。

 

「さすが平田くんと綾小路くん、速い!」

 

 女子からの黄色い声援が飛ぶ。それは悪くない。悪くないんだが。

 

「うん、綾小路くん相手だとすごくやりやすいよ」

「そ、そうか」

「一緒に本番、頑張ろうね」

 

 平田がやりやすいとか()()って言うと、変な意味にしか聞こえないから困る。

 というか、なぜペアが決まったっぽくなってんだ。

 

「いや、オレは三宅と組もうかと」

「綾小路くんは、僕より三宅くんが良かったのかな?」

 

 平田の方がやりやすいからやりにくいんだ。この気持ちを伝えられたらどれだけ楽か。

 

「違う。オレも三宅も相手に合わせるのが得意じゃないから、ペースが合う相手の方が良いってだけだ。平田なら誰と組んでも上手くやれるんじゃないか?」

「クラスの総合力では、その方がいいってことだね」

「そういうことだ」

「分かったよ。ちょっと残念だけど、綾小路くんは三宅くんとペアで勝ちを狙う組で」

「任せておけ」

 

 何がちょっと残念なのかは、聞かないでおこう。

 

 こうして無事に平田の魔の手から、逃れることが出来た。

 三宅よ、どうかよろしく頼む。お前しかいないんだ。オレを見捨てないで欲しい。

 

「いい加減にしてよ」

 

 男子は順調にペアが決まっていったが、女子の方でトラブルが起きていた。

 タイム的には女子の上位に食い込む堀北だ。

 

 女子の上位陣といえば、小野寺、堀北、松下、前園、櫛田あたりで、櫛田は早くも松下とペアを組んでいた。

 

 恐らく堀北と組むのを嫌がったせいだろう。

 

 堀北は前園と組んでみて上手くいかず、続いて小野寺と組んでも上手く行かなかったようだ。

 平田と1度顔を見合わせてから、まだペアが決まっていない平田を残してオレが向かう。

 

「どうした?」

「堀北さんが全然合わせる気がなくて」

「確かにリズムは合っていないわ。でもそれは、あなたが遅いからよ」

「な……」

 

 堀北の物言いに小野寺が絶句している。

 

 最近の堀北は改善されつつあったが、危惧していた出来事が起こったようだ。

 二人三脚はペアでどれだけ合わせられるかだが、堀北は自分のペースで最速で走ろうとしているらしい。

 

 いかに相手に合わせること大事か、実施で教えた方がいいだろう。

 

「堀北、オレと組んでもらっていいか?」

「……どういうつもり?」

「男女の二人三脚。おまえも代表だろ」

 

 紐を持っていた小野寺から受け取り、しゃがみ込んで足を結んだ。

 

「縛るなら足以外も」

 

 ぼそっと聞こえた堀北の一言はスルーだ。

 結ぶのは足だけだ。足以外のどこを結べというのだ。というか縛るって何だ。

 

 さっさとスタートしないとひどい事になりそうなので、タイミングを合わせて一歩目を踏み出した。

 

 二歩、三歩、と進めるごとにペースを上げていく。

 

「…………」

「…………」

 

 よし、まずは堀北に全速力を出させてその上を行って振り回すか。

 平田の時と同じく、わざわざ口に出したりせずに無言で走る。

 

「…………」

「…………」

 

 さあ来い堀北。こっちの心構えは万全だぞ。

 もっとペースを上げていいぞ、と更に速度を上げれば堀北はそれについてくる。

 

「…………」

「…………」

 

 そのまま、オレの作ったいい感じのペースでゴールまで辿り着いた。

 流石は堀北。三宅と走った時並にスピードが出ていたが、難なくついてきた。

 無駄にスペックが高い。

 

「っておい、何をやっている」

「どうかしたのかしら」

「いや、最速で走れよ」

 

 なんでオレのペースに合わせてついて来てるんだ。

 

「ご主人様を振り回せというのかしら」

「今必要なのはそれだっただろ」

 

 堀北が振り回すことを前提で動いたら、振り回さないとかメンドクサイ。

 堀北の従順さに、逆に振り回されてばっかりだ。

 さっきまでの最速で走らないと意味が無いと、小野寺を絶句させたお前はどこに行った。

 

「良いタイムね。これで私と綾小路くんのペアは決定だわ」

「ねーよ、お前は須藤とだ。指名が入っている」

「今組んで走った意味は?」

「意味はなかった」

 

 振り回されることがどれだけ大変か伝える予定だったが、オレが振り回されて疲れただけで終わりだ。

 

「綾小路くんと組みたいって言ったら?」

「却下だ」

「それは命令?」

「……命令だ」

 

 あまり命令したくないが、堀北にはこれが手っ取り早いから困る。

 さっさと紐をほどいで堀北をリリースだ。

 

「そう、貸出プレイね」

「今なんつった」

「違うの?」

「違えよ。クラスの勝利を考えたら、須藤とお前が組むのが有効ってだけだ」

 

 堀北が組むことによって、須藤のモチベーションが高くなるなら言うことない。

 二人三脚のペア決めだけで、貸出プレイとか言い出すなよ。

 

 こいつもしかして占いの時も、須藤への貸出プレイだと認識してたんじゃないだろうな。

 櫛田家の未来のために動いているのに、オレがご主人様ってのを前提に捉えるなよ。

 

 堀北をリリースしようとしてリースするとはいったい!?

 誰が上手いことを言えと。

 

「小野寺、ペアいいか?」

「う、うん」

 

 小野寺とのペアは、可もなく不可もなくな感じで無難に終わった。

 堀北とオレとのペアと比べたら、残念ながらあからさまに劣る感じだ。

 

 これから練習すればよくなるはずだが、微妙な空気が漂っていて気まずい。

 

 堀北とペアを組んだのが失敗だったな。

 どうしてこうなったんだか。

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