綾小路Tレックス   作:チームメイト

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ペーパーシャッフル編その1 ミニテスト対策

「太陽が眩しい」

「頭がおかしくなったのかしら」

「色々あったんだ」

 

 10月14日 月曜日

 

 金曜日の19時から今朝の5時まで。

 58時間に及ぶ激闘を終えての登校は、しんどいものがあった。

 まあ、58時間といっても流石にずっと戦っていたわけではない。

 

 飯を食ったり、風呂入ったり、トイレに行ったり、たまに寝たりといった感じで、励んでいたのは55時間くらいでしかない。

 GOGO(55)ACKMAN(Tレックス)

 

 櫛田が帰った後、3時間ほど泥のように眠って、なんとか起きて学校に行ったわけだが、体調は万全からは程遠い。

 

 堀北の暴言も、思わず流してしまうくらいだ。

 

 そうだ。堀北を見つけたらやらないといけないことがあったな。

 

「ごほん……えー……ボマー捕まえた」

「頭がおかしくなったのかしら」

「これじゃないのか!?」

 

 外した──だと!?

 

 堀北の腕にタッチしつつ、状況を打開する魔法の言葉を唱えてみたが、どうやら解除に失敗したらしい。

 爆弾をどうやったら解除できるのか、課題は山積みだ。

 

 これがダメとなると、堀北、松下、佐倉でボマーを3人集めて、親指を立ててくっつけてもらって『解放(リリース)』してもらうしか。

 いや、ダメじゃん。これ爆弾解除っつーか、爆弾は消えるけど爆発するやつや。

 

 うーん、頭が回っていない。

 まあいい。始業時間まで休ませてもらおう。

 オレは机に伏せて、しばしの休息へと入った。

 

「桔梗ちゃん週末どうしたの?」

「ちょっと体調悪くて、ごめんね連絡できなくて」

「言ってくれればよかったのに。食事とか大丈夫だった?」

「うん、買い置きしておいたものがあったから」

 

 その買い置きは、オレのだ。

 無料配布だったり、安い時に買いだめしておいたものが、数千ポイント分消えてしまった。

 なんて考えていたせいか、櫛田から睨まれている気がするが、きっと気のせいだろう。

 寝よう。

 

 

    ◇◇◇

 

 

 授業中は、流石に寝るわけにはいかない。

 

 もっとも最近は、日常でクラスポイントを減らされることもなくなった。とはいえ、堀北クラスが真面目に授業を受けるようになったからであり、油断するといつまた減らされるのか分かったもんじゃない。

 迂闊に寝ようものなら、堀北からコンパスが飛んでくることになるだろう。

 

 というので、授業を聞いているふりをしながら、状況を整理して気を紛らわせよう。

 

 まずは、体育祭の結果だ。

 

 体育祭前のクラスポイントはこれだ。

 

  Aクラス 1022ポイント

  Bクラス  953ポイント

  Cクラス  469ポイント(堀北クラス)

  Dクラス  372ポイント(龍園クラス)

 

 体育祭の結果は、A・D連合の赤組の勝利。

 クラス別の順位は、堀北(C)クラス、龍園(D)クラス、Bクラス、Aクラスだった。

 

 その結果、体育祭で()()()ポイントはこうだ。

  Aクラス……… -100(4位-100 赤組勝利+-0)

  Bクラス……… -150(3位-50  白組敗北-100)

  Cクラス……… -50 (1位+50  白組敗北-100)

  Dクラス……… +-0 (2位+-0  赤組勝利+-0)

 

 そしてこれが、現在のクラスポイントとなる。

  Aクラス 1022ポイント → 922ポイント (-100)

  Bクラス  953ポイント → 803ポイント (-150)

  Cクラス  469ポイント → 412ポイント (-50)

  Dクラス  372ポイント → 372ポイント (+-0)

 

 堀北(C)クラスから見ると、上との差が縮まったものの、下との差も縮まっている。

 龍園(D)クラスとの差が40ポイントしかないのは、心もとない数字と言えるだろう。

 

 過去のクラスポイント変動の傾向から、特別試験一発でひっくり返る数字だ。

 どうにかもう一度引き離して、安全圏まで持っていきたいところだ。

 もしDクラスに落ちるようなことになれば、茶柱がメンドクサイことになりそうで困る。

 

 次の特別試験らしきものは既に始まっているが、それはいったんおいておこう。

 クラスの現状については、こんな感じだ。

 

 次に、オレを取り巻く個人的に陥っている状況について整理しよう。

 ついこの間まで実施されていた中間テストが、ややこしい問題を引き起こしていた。

 

 中間テスト期間中に、体育祭で英雄になった山内のフォローばかりしていた結果、女性陣のフォローを怠ってしまっていたらしい。

 

 櫛田から状況を聞かされて、とりあえず一番大事な櫛田のフォローのために頑張ったのが、寝不足になっている原因だ。

 

 櫛田調べによる現在の女の子からの評価はこうだ。

 ・櫛田桔梗   …ときめき

 ・堀北鈴音   …ときめき 爆弾

 ・佐倉愛里   …ときめき 爆弾

 ・長谷部波瑠加 …好意

 ・佐藤麻耶   …好意 爆弾

 ・松下千秋   …好意 爆弾

 ・小野寺かや乃 …好意

 ・一之瀬帆波  …好意

 ・橘茜     …好意

 ・白波千尋   …嫌い 爆弾

 

 隣ですました顔をして授業を受けている堀北を筆頭に、5人が爆弾を抱えている。

 爆弾の時限は、今週いっぱいらしい。

 期限までに解除されなかった場合は、爆弾が爆発してしまう。それがどういった影響を与えるのかは、考えることすら恐ろしい。

 

 簡単にまとめると、次の日曜日が終わるまでに、爆弾の解除方法を調べて解除していく必要があるわけだ。

 解除方法の有力情報だった『ボマー捕まえた』が失敗してしまった以上、作戦を一から立て直さなければならなくなってしまった。

 

 ときめきの導火線を消化するには、優しさで攻めるしかないんだろうか。

 やらしさなら得意だが、優しさは苦手だ。

 

 まあ、クラスの女子はなんだかんだ付き合いが長いから、少しは楽観的に考えていいか。

 

 問題は、最後の一人だ。

 

 白波千尋。オレの彼女である一之瀬のことを好きなBクラスの女子生徒だ。

 彼女にいたっては、ほとんど接点がないのもあって、どうやって解除すればいいのかさっぱり分からない。

 ラスボス的な彼女の爆弾をどうやって処理するのかが、今週の課題となるだろう。

 

 ほんと、どうすればいいんだか。

 なんとも悩ましい話だった。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 6時間目のホームルーム。

 事前に決めていた通り、平田と堀北が並んで教壇に立つ。

 Cクラスが誇る男女のツートップだ。

 

 温和な性格でクラスをまとめあげる平田と、ときに犬の振りをしてまで勝利に対する執念を見せた堀北だ。

 そう、堀北が借り物競争でペットになったのは勝利のためであり、本人の趣味ではない……と思われているため、かろうじてリーダーの地位に留まっている。

 

「今日のホームルームは、木曜の小テストに向けた作戦会議に使いたいと思うんだ。茶柱先生の許可は貰えたから」

 

 実際に、茶柱はホームルームが始まると、さっさと教室を出ていった。

 オレが睡眠欲と戦っているうちに、根回しは終わっていたようだ。

 

「それって期末試験に影響するってやつでしょ。勉強する以外に何かあるの?」

「ミニテストでペアを決めるんだよね」

 

 二学期の期末試験は、一蓮托生で実施されることが発表されている。

 今度の小テストの結果を元にペアを組む。

 そのペアで8科目の各科目100点満点の期末試験に挑むという内容だ。

 

 これが次の特別試験、ペーパーシャッフルだ。

 

 ペアでの合計点数が各科目60点を下回った場合。

 もしくは、ペアでの合計点数の総合点がボーダーを下回った場合は、例外なく退学だ。

 

 総合点のボーダーは、8科目で700点が目安らしい。

 仮に、ペアの相手が0点だった場合、800点中700点を取らなければならない。

 

「ペアの法則は、既に予想済みよ。理想のペアを組むことも可能だと思う。平田くんお願い」

 

 テストの概要が発表された段階で、中間テストの祝勝会を行う前に、作戦会議済みだ。

 

 名前は伏せるが「SとМで組むのが、理想だと思う。違うかしら」という誰かの意見を冷めた目で見つつ、平田や松下を中心に話し合いは進んだ。

 一応詳しく話を聞けば、片方()がリードできれば、ペアの学力も上がるという目論見だったらしいが、堀北(ドМ)の方が学力が高い時点で、リードするのは難しいだろう。

 Sだからといって学力面でリードできるとは限らない。

 

 こいつがクラスのリーダーなんだぜ。信じられるか? 誰とは言わない。

 

 

 常識的に、学力が高い生徒と低い生徒でペアを組むことで落ち着いた。

 

 ミニテストでどうやってペアを組むのかは、ミニテスト後に発表されることになっている。

 今までの傾向から、学校側は試験を突破できる手段を用意しているはずで、ペアの法則性を考えることが、最初の試験みたいなもんだ。

 

 ヒントは、2つ。

 1、ミニテストの結果は、成績に一切影響しない。

 2、過去の退学者は1組か2組。

 

 1から、ミニテストは0点でも問題ないことが分かる。

 2から、仮に法則性が見抜けなくても、ペアは勝手にバランスが取れたものになることが予想される。

 

 ここから導き出された答えが「ミニテストで高得点を得た者と低得点を得た者がペアを組む」という法則だ。

 ある生徒がドヤ顔気味に披露していたが、SとМが組むべきだと主張した後では……。

 

 念のために平田が先輩に確認するという話だったが、こうして皆に説明しているということは、正解だったようだ。

 オレが最重要案件(くしだ)にかかりっきりの間にも、しっかり仕事をしてくれていたらしい。

 ありがとう、平田。だからそのドM(堀北さん)の手綱をしっかり握っててすごい、みたいな笑顔はやめてくれ。オレは鈴主じゃないんだ。

 

「これまでのテストの結果を踏まえて、成績順で勝手に振り分けさせてもらったわ。

 今からプリントを回すから、カテゴリー1からカテゴリー4まで、自分がどのカテゴリーに名前があるのかを確認してもらえるかしら」

 

 平田が、各列の先頭の生徒に紙の束を渡す。あらかじめて用意していたプリントだ。

 オレも一枚とって後ろに回した。

 

 オレの名前はカテゴリー1に、堀北や平田や櫛田とかと並んで入っていた。

 カテゴリー4に三バカの名前があるあたり、成績順に振り分けられていることが分かる。

 

「カテゴリー1の生徒は真面目にミニテストを受けてもらうわ。しっかり点を取って成績上位層として、下位層のカテゴリー4の生徒を引っ張って行って欲しい。逆にカテゴリー4の生徒は、ミニテストは名前を書くだけでいいの。これでカテゴリー1の生徒と4の生徒のペアを組むことができる」

「名前書くだけでいいのかよ、楽勝じゃん」

「下手に点を取ると計画が狂うから、池くん頼んだわよ」

「俺だけ名指しかよ」

 

 やらかしそうなのは、池と山内だ。『解けそうじゃん』とか勝手に判断して動かれたら困る。

 しっかり釘を刺しておいて正解だろう。

 

 他では高円寺がどう出るかだが、カテゴリー2に分類されていた。

 高円寺はプリントを一瞥しただけで、表情からは何も読めない。

 退学になる気はないみたいなので、最低限はやってくれると信じたいところだ。

 

「次に、カテゴリー2の生徒について説明するわ。カテゴリー2の生徒は、カテゴリー1の生徒を下回るように一手間必要よ。一学期の中間テストで須藤くんのために、大問5を放棄したけれど、あの時と同じように半分だけ解いて半分は白紙で提出して欲しいの」

「100点満点のテストを50点満点のテストにするってことだね」

「そういうことね。これでほぼ確実にカテゴリー1の生徒を下回ることができるはずよ」

 

 堀北の説明は、カテゴリー3も同じように続いた。

 まとめるとこうなる。

 

 カテゴリー1 普通に受けて50点以上取る。

 カテゴリー2 50点満点で受けて50点に近い点数を取る。

 カテゴリー3 確実に解ける問題を5問解き10点を目指す。

 カテゴリー4 0点で提出する。

 

 これでカテゴリー1の上位層とカテゴリー4の下位層が組み、中間層はカテゴリー2と3で組むことになる。

 クラスの作戦自体は、これで問題ないはずだ。

 問題なのは、カテゴリー1のオレが組むことになるカテゴリー4の中にも外れがいることだ。

 

 具体的に言えば、山内だ。

 山内にかかりっきりだったせいで、ボマーをどうにかしなければならなくなった。

 できれば山内は避けたいところだ。

 

 狙って避けられるのなら避けたい。

 残念なことに、カテゴリー4の生徒は、全員が0点で横並びになる。

 成績上位層と0点の生徒を組むことは調整できても、0点の生徒の指名はできない。

 

 恐らく、カテゴリー1の上位層10人がランダムでカテゴリー4の生徒と組むことになるわけで、つまり10分の1で山内だ。

 そうさ10パーセント春樹。

 

 世界中の春樹なんか抱きしめたくなければ、やりきれない。

 

 須藤とか佐藤に頼んで2点だけ取ってもらい、オレは50点を少し上回る点数を取る手がある。

 これなら確実に避けることができるが……悪目立ちは、やめておこう。

 佐藤を見ていたせいか、こっちを振り返ってきて目が合った。

 が、プイっと逸らされてしまった。

 

 これが爆弾の影響か。

 佐藤のくせに、なんたる事態だ。

 

 前言撤回だ。フォローも兼ねて佐藤と組むことにしよう。

 山内を回避できるし、一石二鳥作戦だ。

 

 こうして、ミニテストに対するオレの方針が決まった。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「え? 2点取るっていいの? カテゴリー4の生徒は0点を取らないと駄目なんじゃ」

 

 放課後、どうにか佐藤を捕まえて部屋に呼び出すことに成功した。

 

「カテゴリー3の生徒は、10点が目標だ。佐藤が2点取ってもカテゴリー4であることに変わりはない」

「それだと意味ないんじゃない?」

「いや、カテゴリー4の中でトップに立つ。後ろから10番目の生徒になることに意味があるんだ」

 

 最下位は同列で0点の生徒が9人。

 佐藤が2点取れば、後ろから10番目の生徒となる。

 

「オレは狙って52点を取る。そうすれば、カテゴリー1の中で最下位になる。上から数えて10番目の生徒だ。するとどうなる?」

「えっと、下から10番目の私と上から10番目の綾小路くんがペアになる」

 

 ルールを把握できているか心配だったが、問題なかったか。

 

「そういうことだ」

「綾小路くんが私と組みたいってわけ?」

 

 少し嬉しそうに佐藤の口元が緩む。

 

「そうだ。オレは佐藤とペアになりたい」

 

 嘘ではない。

 山内以外なら誰とでも組みたい。

 佐藤と組めるのなら都合がよかった。

 

「どうして?」

「それは、やま──」

 

 危ない。山内と組みたくないからって言いかけた。

 そんな暴露をしてしまったら全部台無しだ。

 

「オホン。山勘だが、次の試験は厳しいものになるんじゃないかって思う」

「……厳しいってどれくらい?」

「退学者が出てもおかしくないと思っている」

「そんな……」

 

 勉強を頑張らせるためにも、多少脅しておこう。

 佐藤の表情が青ざめたものへと変わる。

 

 ここだ。ここで畳みかけろ。

 佐藤の両肩を抱く。

 

「佐藤には退学になって欲しくない。守る可能性を高めるためには、オレがペアの相手になった方がいいと判断した」

「綾小路くん……」

「オレがペアの相手だと不安か?」

「ううん……綾小路くんだと嬉しい」

 

 青ざめていた顔が、朱色に変わった。

 

 自分で不安を煽っておいて、安心させる。

 完全にマッチポンプだが、退学を阻止するという言葉は嘘じゃないので、問題はない。

 

「でもよかった。最近、ずっと何もないから、私心配で」

「すまん。池や山内の面倒で忙しかったからな。山内の退学のピンチだったんだ。悪い、もっとしっかり説明しておくべきだった」

「ううん。綾小路くんが、私のことを大事に思ってるって分かったからいい」

 

 なるほど、佐藤が何に対して爆弾を抱えていたのかと思っていたが、放置された不安からか。

 だとしたら、これで解消されたはずだ。

 

 最後に、いつもので締めよう。

 

「佐藤」

「綾小路くん」

 

「「綾小路ティーーレーーーーーックス」」

 

 

 こうして、爆弾の一つ目の解除に成功したんだった。

 あ、終わったら、さっさと帰ってくれ、オレは眠いんだ。




女の子情報(最新版)
 ・櫛田桔梗   …ときめき
 ・堀北鈴音   …ときめき 爆弾
 ・佐倉愛里   …ときめき 爆弾
 ・長谷部波瑠加 …好意
 ・佐藤麻耶   …好意 解除成功
 ・松下千秋   …好意 爆弾
 ・小野寺かや乃 …好意
 ・一之瀬帆波  …好意
 ・橘茜     …好意
 ・白波千尋   …嫌い 爆弾
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