最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第13話

 

 匍匐前進しながら相手を避ける様に迂回していく。敵の数は更に増えて3体は確認した。

 

「走って逃げた方がいいんじゃない?」

 

「俺達より早かったらどうする?」

 

「背負ってくれたら妨害出来るけど」

 

「歩きたくないだけだろ? なぁ?」

 

 影がこちらを向いた時、顔を伏せて見つからないようにする。アンジュは銀罰だから僅かに目立つな。

 

「お前、髪のせいで顔を伏せる意味ねえな」

 

「シンクもそうじゃん?」

 

「……マジで?」

 

 嘘だろ? どうなってやがる。まさか見た目変わってるのか!

 

「マジ」

 

「見たことねえから詳しく」

 

「髪は白、目は赤、顔はほんのちょっとだけイケメンなんじゃない? ほんのちょっとだけど」

 

 全然隠す意味ねえし、目はアンジュと一緒なんだな。喜ぶべきか哀れむべきか。

 

「イケメンだと? 嘘じゃねえだろな?」

 

「僅かだし……顔近い」

 

 街についたら顔を確認しよう。

 

「鉄針で俺が言った時に撃ってくれ」

 

「当たるかな」

 

「当てなくてもいいぞ、お前囮にして逃げるから」

 

「絶対当てるとも」

 

 もう少しでやり過ごして影と戦わずに済む。そう思った時だった。

 

 ――バキッ。

 

 違和感のある自然的じゃない音。俺の隣から発せられた音は。

 

「ごめん、肘置いたらそこに枝が落ちてて。多分バレてないよ」

 

 まさにやってしまったと頭を搔くアンジュだが、バレてなかったのでセーフ。

 

 かと思った矢先に影が近づいてきたのだ!

 

「ヤバい、バレた説がある」

 

 ただの音だろ? 確認行く程でもないじゃないか。

 

 髪色的に凝視されたら不味いのに、近づかれるなんて言語道断。確実にバレる、その前に殺すべきだ。

 

「いやぁ……あはは」

 

「笑ってる暇があるなら鉄針だろうが!」

 

「りょかい!」

 

 手を合わせ、槍を発射口に落とし、手を影に掲げると。

 

『パルスライフル』

 

 僅かに響いた電気音は針を飛ばし標的だけを狙っていく。

 

「殺った……わけねえよな」

 

 針は命中したはずだった、でも影は強すぎたのだ。倒れる事もなく、敵の存在を確信すると。

 

『ゴゴゴゴゴォォォ!!』

 

「敵を発見したゴブ! って言ってるよ」

 

 ゴブリンとは違う何か、言うならばトロール。そいつの大きな咆哮が自然を大きく揺らした。

 

『『ゴゴー!』』

 

「今向かうゴブ! だって、不味いね」

 

「はは……ジャンケンしとくか? 全滅しそうになったら負けた方が囮になるんだぜ」

 

「絶対しない」

 

「悪かった、文句を言うなら発見された方に言ってくれ。今日は胃袋で寝る事になりそうだからな」

 

 俺は手で指示を出す。手のひらを上にして、四本の指を上にあげる。

 

『立て』

 

 頷くアンジュを見た後、一気に走り出す。足音からきっと付いてきてるんだろう。

 

「ちゃんと付いてきてるよな?」

 

 俺の言葉に遅れて返事が来る。

 

「も、もちきゃぁっ!」

 

「おいィ!?」

 

 小さな悲鳴の後、聴き慣れない下手な着地音。足を止めて振り返ると、アンジュが何かにつまづいてズッコケていた。

 

 しかし、アンジュの背後にはもう棍棒を頭上に掲げる3体の化け物。即ち、叩き潰されることを暗示していた。

 

「させるかぁ!」

 

「シンク……」

 

 即座に具現化する燃え盛る槍を全力で投げつける。冷静に欠けた槍は空気抵抗にブレながらも見事1体に突き刺さる。

 

「ゴ!?」

 

 振り下ろされる棍棒が躊躇われた一瞬の隙。

 

『ライフブレイカー』

 

 それだけでいい。

 

 光り輝く稚拙な神器を握りしめて奴らの前に立ち塞がる。

 

「お前らには月が光る理由なんて分からねえだろうな……!

 

 その場で全てを振り裂く光の一閃、力任せの一撃に迷いは無い。ただ、目の前の敵を確実に殺す一振り。

 

「ゴァ……ァ!」

 

 斬撃をまともに食らった3体はなす術もなく、腹から広がるようにして光に変わる。ソウルを集めようとした瞬間――

 

「ぶぉっは……」

 

 口から吐き出される赤い液体。力が出なくなっていき、剣槍斧ごと力なく倒れてしまう。

 

 胸を締め付ける強烈な痛み、呼吸が出来なくなりそうな吐血。段々と視界がぼやけてくるのが分かる。アンジュの顔が見える……俺は仰向けにされたんだ……。

 

 痛みに疼くことも出来ないダメージを背負った肉体でポーションを探す。

 

 答えは。

 

 ――無い。即ち、死を意味していた。

 

「……! ……」

 

 アンジュが何を言ってるのかもわからないぜ。我ながら不思議と死を受け入れそうな俺を気持ち悪く感じる。

 

 目を閉じた時、頬を濡らす感覚と同時に体内に語りかけているような気持ち悪い声が響く。

 

『中二病全開の小僧じゃないか』

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