最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第17話

 

 身を沈めて数秒でドアが開く音が響いた。

 

「シンクさん! 何処ですか!」

 

「はあ……ふぅ、ようやく協会の仕事終わったからきたわよ!」

 

 マジで来る奴が居るか!

 

「服あるから居ないってことはないわね」

 

「でも居ないし、この中……?」

 

「突っ込むのは嫌よ?」

 

「それは同じです」

 

 俺はふと照明を塞ぐ何かを感じた。光が当たらなくなったような。

 

 誰かが近くに立っている。アンジュでは無い、ヒーラーが。

 

「手ぇ入れるわ……」

 

「はい! がんば――――」

 

 俺はすぐさま浮上し、金髪の白ローブを確認すると腹の辺りを掴んで湯船に引きずり込む!

 

「ああああ!? ライトさん!? ちょっと!」

 

「うぉ!? し! ししぬう! たすけ……」

 

 びしょびしょになったローブ野郎を蹴り捨てて体を起こした。

 

『風呂に侵入するのはダメだろ? こうなるんだぜ』

 

「いったぁい……いいでしょう?」

 

 反論する白いローブは完全にびっしょびしょで干さないとキツそうだ。

 

「お前は俺に風呂覗かれたくないだろ」

 

「……まあ」

 

「分かったら出てけ」

 

 とぼとぼ俺の前から出ていく2人。アンジュは固まったように動かない。

 

「お前もだわ!」

 

「ご、ごめん……」

 

「その前に体洗う奴は何処にある?」

 

 洗顔はあるけどそれ以外無かったのだ。

 

「それ」

 

 スラリと伸びた人差し指は大量のポーションを指差す。

 

「いや、どれだよ」

 

「洗顔」

 

 マジで? これで体洗うの? でもアレだな。

 

「タオルは?」

 

「タオルで体洗うの?」

 

「普通そうだろ?」

 

「聞いたことないんだけど」

 

 僅かな沈黙が続いた。文化の違いを始めて体感した気がする。

 

「そうか。でも俺、体硬いんだよな」

 

「じゃあ……私が……」

 

「タオル持ってきてくれ」

 

「えっ」

 

 背中に嫌がらせされたら叶わん。あとヒーラーに笑われる。

 

「やっぱ背中に手が届きやすい方がいいんだよな〜」

 

「私……タオルより、出来る子、だし……い?」

 

 投げ渡してくれた白いタオルと張り合うなよ。

 

「通りでこの洗顔が俺に馴染むわけだ」

 

「聞いてる!?」

 

 怒号を飛ばすアンジュは無視だ。喋らなければ可愛いし。

 

「え? どうでもいいからタオルで背中流してくれ」

 

 泡を含むタオルを伸ばす。

 

「う、うん……」

 

「なんてな。疲れてるんだろ? 明日頼む」

 

 それを引いて己の首を撫でていく。

 

「弄ばないでよ!」

 

 ピシャリと閉められる扉。

 

 好意を踏みにじるって楽しいな。でも本当は分かってるんだ。

 

 背中を流す程度の好意はあるって。でも、これが1日目とか訳が分からなくてここの文化はそうだし、恋愛も気になる。

 

 俺がこの日々を日記にするなら17ページ目くらいだろうしな。

 

 洗顔で体を洗ったら無駄にさらさらしていてた。服は長い布1枚を上手く服にするらしいが俺には出来なかった。

 

 バスタオルくらいか。

 

 仕方なくトランクス1枚で出て来ていた。

 

「ちょっシンクさん!?」

 

「お、おおー?」

 

「…………」

 

 中でも特に興味を示さない人物。

 

『おいアンジュ。一つ聞いていいか』

 

 俺の悩ましい疑問が一つに繋がった。

 

「何? 機嫌悪いんだよね」

 

「俺のパンツをこれに変えたのはお前だろ?」

 

 ボクシングブリーフに変わった事件の謎が今、解けられる。

 

「「えーー!?」」

 

 ローブの2人は仲良くローブを脱ぎ捨てて口を塞いでいた。

 

「ん、んなわけ……」

 

 視線を絶対に合わせないアンジュは図星だった。答えが分かるのは俺だけでいいからこれ以上は責めなくてもいいだろう。

 

「そうだよな、俺の手違いだよな……そんな事よりこれってどうやって着る?」

 

 掲げたデカいタオルは俺の半身を隠すほどの長さだ。

 

「こうしてこう……うーん、ライトさんが教えて上げたらどうです?」

 

「仕方ないねえ」

 

『私がする』

 

「「どうぞどうぞ」」

 

 結局お前がするのか。

 

「いやーカレカノ水入らずってやつだわ」

 

「うんうん」

 

 腕を上げてろって言われたから上げてるけど、結構タオルが宙を舞っている。

 

「……はい、終わり」

 

「ありがとな」

 

「…………」

 

 無視されてしまった。結構、機嫌を損ねている。

 

「ねえ、これがケンタッキーって?」

 

「そうだったらシンクさん貰いましょうよ……」

 

「聞こえてるぞ」

 

「聞こえるように行ったんだわ」

 

 そんな事より鏡だ鏡。

 

「鏡はどこだっけなー」

 

「鏡は高いからないねー、個人であるなら王女クラスでしょう?」

 

「私も憧れます、良いパーティに入って買えるくらい……」

 

「そうだったんだな、価値観に疎くて」

 

 鏡はリライトオリヴィエっていう鉱石を磨いて作るらしい。かなりレアだから作るとしたら高いし、持てる人は貴族なんだってライトが言っていた。

 

「そう、疎いってレベルじゃないわね」

 

「そ、そんなことよりな? 寝る時は帰るんだろ?」

 

 流石に素性がバレる話はしたくない。

 

「泊まります」

 

 そう言ってチラつかせるこの部屋専用の鍵。1本しか貰ってないのに2本に増えてやがる。

 

「……あのなぁ」

 

 ベッドは2つしかない。

 

「もちろん床でも寝ないので」

 

「マジで出てけよ」

 

「大丈夫です、シンクさんの欲は浄化してあげますから。私達で挟んで寝ましょう」

 

「どんだけベッドが好きなんだお前ら」

 

 ここの人がみんなこんな感じなら嫌だな。

 

「では、アンジェリーさんを挟んで寝ますか」

 

「アンジェリーって誰だ」

 

「ぁあ、すみません。アンジュさんでしたね、眠くて眠くて……」

 

 青いローブの子が喋ってるけど名前をまだ聞けてない。

 

「私も知らない人と寝たくないもん」

 

 名乗りを上げたのはアンジュだった。

 

 お前らがくっついて寝た方が幸せなのは目に見えてるだろ。

 

「じゃ、アンジェリーっちとシンクちゃんがくっつけば?」

 

 俺は突っ込むことを辞めた。

 

「シンクさんは絶対イエスだと思うんですが、アンジュさんが問題ですね」

 

「おい、俺はそこまで性に」

 

「それでいいけど……」

 

 良いのかアンジュ。男と背中合わせのダブルベッドいいの?

 

「…………」

 

「向こうのベッド使いますねー」

 

 部屋から消えていく2人は俺達の気まずさを理解していない。

 

「光は消しとくか」

「うん」

 

「消し方が分からない」

 

「じゃあそのままにしよ?」

 

 お尻をペタンと着け、M字を綺麗に描く魅惑の足。ひよこ座りの魅力は同時に上半身を栄えさせる所が人間の生み出した最高の体位。

 

 手を前に置いて、背筋を水の滴るエビのように逸らして伸びをすると綺麗な湾曲を描く……。魅惑の湾曲はこれしか存在しないだろう。

 

 見た目の代わりに諸刃の剣で、骨盤が変になってしまうらしい。可愛くてもそんなにして欲しくないな。

 

「……めっちゃ感謝」

 

「視線がエロいんだけど、座り方を教えてくれたライトさんみたいな見方するんだね」

 

 ライトさんは連れてっても仕方ないな……。

 

 しかし、ベッドの上でされると興奮はする。無駄に意識してしまいそうだ。

 

「悪い、好みだから」

 

「早く寝よ?」

 

「あぁ」

 

 結局寝れなくてアンジュが光を消したあと、俺を肘で小突いた。僅かな動きなのに熱がモアモア動く。

 

『これ、貸してあげる』

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