最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第19話

 

 受付をしてくれた人が新聞を渡して帰っていく。食堂の日替わり定食はカレーライスだと言い残して行った。

 

「こんな所に新聞があるんだな」

「普通じゃないかしら」

 

「名称も……いや、何でもいいか」

 

 ライトの違和感が尋常じゃないが、俺は新聞を詠み込む事に集中した。

 

『マグマ鉱石高騰、火焔武具値上がりか』

 

『本日の高収入ギルドクエスト。ヤクザゴブリン集落掃討戦

(クオリティブレイバー4以上推薦)』

 

『変わった恐竜キング警報発令中、かなり行動がおかしい奇行種なので近付かないように』

 

『人生の教科書〜まずはギルドで職業を身につけよう〜』

 

『本日の美少女ギルドヒロイン「アンジュ・ローグ」メイドギルドにてお待ちしております』

 

 見出しから汲み取れる内容で適当に読んでいく。ギルドヒロインは予想通りメイド姿のアンジュが載っていた。

 

 おい、コイツが美少女ギルドヒロインだと?

 

「ライト、クロス。わかってるとは思うが」

 

「アンジュちゃん起こしたらいいのね?」

 

「あぁ」

 

 女子の手によって起こされたアンジュはふてくされた様に機嫌が悪かった。眠いとか文句言ってるレベル。

 

「寝ていい? もう起こし方さいてーなんですけど」

「今日のギルドヒロインはお前だ。ギルドへ行くべきだろ?」

 

「……」

 

 アンジュが小さく頷いた。ため息で全てを語っているような気がする。

 

「可愛いし、ヒロインなのも仕方ないわ」

 

「そうですよ、新聞に載ってるなんて羨ましい限りです」

 

 顔だけだと思うけどな!

 

「……今日はメイドしてくるね」

 

「今からメイドするのにそんな顔すんなよ」

 

「他の人背負っちゃダメだよ?」

 

「安心しろ、背負えるほど親しいやつは居ない」

 

 部屋を出ようとするアンジュを、クロスが引き止める。

 

「待って下さい! アンジュさん、サイドテールをしてくれませんか?」

 

「まあいいけど」

 

 ゴムを解いて一気にバラけて広がる銀色の髪を、両手で掬うように掻き集める。テールにされた髪をゴムで縛ると横に垂れる長い髪が現れる。

 

「可愛いですねー、今日はそれで行きましょう」

 

「良いわね……懐かしいわ」

 

 ライトとクロスが感傷に浸っていた。

 

「恥ずかしいけど行ってくるね」

 

 流石に寝起きなのか、ハキハキとは喋っていない。気だるそうに部屋を出て行った。

 

「俺はお前らの子守か……マジ無理」

 

「どういう事? 童貞くん?」

 

「俺にはシンクって名前があるんだぞ」

 

 プレートを見せる事は出来ないが。

 

「気分で呼び変えるのよ……悪かったわ」

 

 俺はもう目星が付いている。

 

「悪いが武器屋に寄ってから、クエストに行くぞ」

 

「私達はソウルが手に入るだけで感謝してるのよ……当然でしょう?」

 

「その後、本日のギルドクエストでお前らとお別れだな」

 

「「えぇ!?」」

 

 俺達も部屋を後にしながら、宿屋の食堂で席につく。

 

「悪いが宿代と飯代は二人で払ってくれないか? もちろん、俺の分も」

 

「なんで?」

 

「俺は1000セックしかないんだ」

 

 アンジュと配下から貰った金を半分にしたから仕方ないと言える。

 

「もちろん後で払うのね? 払わなかったら絞めるわ」

 

「当然だろ」

 

 2人はラーメンのような麺類を注文し、俺は日替わり定食の名前が唯一そのままのカレーライスを頼んだ。

 

「ギルドクエストは必ずキツいわ、行けるの?」

 

「……さあ? これでも俺は強くないからな」

 

「知ってる」

 

「カレーライスとガルガンチュアの人〜……取りに来てくださーい」

 

 あのラーメン、ガルガンチュアって言うのか。

 

 カレーライスは普通に美味しかったが、カレーというよりハヤシライスという感じだった。

 

 食事を済ませた俺達はゆっくり、武器屋に向かう。

 

「なあ、ギルドクエストって単体で行くのか?」

 

「パーティ一つ一つ、独自に行きます。合流した人達で大きなパーティを組んだりもするらしいですが、クエストがクエストなので」

 

 ヤクザゴブリンの集落は臭いやら捕まったら性奴隷にされてしまうらしい。好まれない掃討クエストだが、報酬も中々だと伺える。

 

 野草を採取するゴブリンとは違い、好戦的らしい。

 

「1000セックで買えるといいんだが」

 

「武器なんて無くていいのが回復の強みですね」

 

 武器屋に着いた俺は、迷惑をかけた事で気まずかったが本当に気にしてないのか特になんも無かった。

 

「おっさん、剣槍斧使いこなせたぜ」

 

「それは本当か!」

 

「あぁ、色んな局面で助かってる」

 

「神器もお前に渡って幸せになれたか……」

 

 実際、槍をそのまま剣にしてリーチが伸びたおかげでライフブレイカーと一番相性がいいのは確かだ。アンジュを助けたのもこの武器ありき。

 

「ところで500セックの武器とかないのか?」

 

「あるぞ」

 

 おっさんが指差した方向には、炎を纏ったような輝きを放つ盾が1枚立て掛けられている。

 

「おいまさか、マグマ鉱石か?」

 

「もちろん。剣に使われる予定だったんだが盾に回してみた結果、炎を吸い取る盾になっちまったよ」

 

「じゃあなんで安い?」

 

 新聞で量を危惧されていたマグマ鉱石が素材の盾か。

 

「表面がマグマ鉱石で出来ているおかげで、炎の吸収力が実現している。でもな、マグマ鉱石は重い物質だ。鉄とは比べ物にならねえほどにな」

「そして、アレだろなんか分かるぞ」

 

「それが判明した結果、この1枚がマグマ鉱石を使った最初で最後の盾。タダでさえ重い鉱石で作った武器を担いでるのに、それより重い盾まで持てないのは当然だった」

 

「……」

 

 ハズレな気がするが、ドラゴン退治で役に立つのは確定的に明らかと言える。

 

「誰もが扱いきれない創器、神器剣槍斧を扱えるなら信頼しよう。98%オフで500セックだ」

 

「結局大安売りのバーゲンじゃねーか」

 

「買うってことだろう? 創器火焔領域(マグマフィールド)を譲ろう」

 

「当然だろ」

 

 俺はマグマフィールドに手を出し、持ち上げてみる。剣槍斧とは比べ物にならない重さだが、持てなくもない。

 

 瞬時に光に包まれて消え、胸が締め付けられた。

 

「500セックなりの価値はあるな……」

 

「まいどあり、運がいい」

 

 俺達は武器屋を後にしてクエストを受けるためにギルドに向かった。もちろんメイドギルドで。

 

「そのシールドって強いんですか?」

 

「分からないけどな、強いと思う」

 

 メイドギルドの前は思ったより人が居た気がした。

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