最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第2話

 

 ポーションって小せぇな……。

 

 手のひらで包めるポーションを見ながら、俺は歩いていた。

 

 おっさんとは次会ったら礼をしますと言ってお別れしてる。ついて行っても良かった気がするけど、役立たずだろうしな。

 

 見回るだけで楽しい。でも寝る場所はどう考えても無さそうなんだが。

 

 野宿とか嫌だ、宿を借りるという考えが普通。となると、ファンタジーに考えて魔物を倒す……という事。

 

 俺は何気なしに落ちている銀色の針を拾い上げた。

 

「いっそこれで……」

 

 これでなにか生計を立てる事を考えていると、針が白い残像を放って消えた。その瞬間、俺の胸がチクリと痛む。

 

 あれ? 針は?

 

 俺が持った瞬間盗まれたのかな。

 

 適当に解釈してまた歩き出す。途中で武器屋を発見して中に入った。

 

 武器すべては鏡のように磨かれていて、柄が赤い。それ相応の値段がしそうな武器ばかりだ。

 

 剣、槍、斧、盾。1本だけ槍と斧と盾が合わさったような武器が。

 

 見つめていると、店員らしいおっさんが語りかけてきた。

 

『その武器は伝説の武器でな……剣、槍、斧、盾が合わさった神器なのだよ』

 

「へぇー」

 

 全部合わせてんのか。良く見たら剣の様な持ち手以外は刃らしい。槍の要素は長さ以外無い。

 

 どう見ても端で持つしかできないから、体感的に重いだろう。

 

『とある鍛冶屋が試験的に1本作ったのが、まだここに残っているというわけだ』

 

「売れ残りじゃねーか」

 

「だが、たった1本……どうだ?90%オフにしておる」

 

「完全に売れ残りかよ」

 

 俺は初めて見た武器に興味が湧き、持ち手を握ってみた。

 

「おお…………めっちゃ重い」

 

 途端に武器は白い粒子となって消える。

 

「え?」

 

 その瞬間、腹を貫くような痛みが走り口から血が吹きこぼれる!

 

「ごふぁ……」

 

「おめぇ!? どうしたんだ!?」

 

 俺は何が起きたのか一瞬理解出来なかった。

 

 荒々しく息を吐きながら、余った理性を掻き集める。震える手でポーションを開封し、即座に液体を飲み干した。

 

「はぁ……ぁあ助かった」

 

 さっきのは生命の危機を感じたが、助かってよかった。おっさんも俺の背中撫でてくれるし。

 

「……武器紛失させたんですけどどうすればいいですか」

 

「90%オフの代物だったんだ、もういい」

 

「元の値段とか聞いてもいいですか?」

 

「108セック」

 分からない、安くないかもしれない。

 

「宿屋っていくらくらいですかここ」

 

「80セック」

 

 安すぎだろ……売れてもよかった値段じゃねえか!

 

「申し訳ない……」

 

「いいんだいいんだ、本当に気にすんじゃねえ」

 

 俺はいたたまれなくなり、血濡れたカーペットを見ないようにして武器屋を後にする。

 

「神器ってなんて名前ですか」

 

『剣槍斧《ツルギソウフ》』

 

 盾ないじゃんか! やっぱり持ち手と斧の部分の真ん中に盾置いたのはおまけか!

 

 何か負けた様な気がして武器屋を出ようとしてまた戻ってくる。

 

「なんだい」

 

「冒険者が働ける所って何処ですか?」

 

 ギルドだねって即答され、道を案内までしてくれた。俺の事を気遣ってくれるのか「ここに二度と来るな」という無言の圧力か。

 

 そのギルドが目の前にあるんだが、デカい建物だ。武器屋の比じゃない。

 

 両開きのドアを押し開いて足を踏み入れる。仕事があるかどうかで何処で一夜を過ごすか決まるだろう。

 

『いらっしゃいませー!』

 

『ご主人様のハートにきゅんきゅんすうぃーと! 何の用事に来ましたかー?』

 

「……」

 

 俺は己の目と頭を全力で疑った。頭を振っても視界は変わらない。

 

 メイド服の人が4人くらい仕切られたカウンターで、変な事を言ってるんだ。これが夢じゃないなんてありえていいのか!?

 

 めっちゃメイド喫茶じゃん! あのおっさん逆恨みしてたんだな!

 

「ここはギルド……?」

 

「はい!」

 

 嘘じゃないのか? どうなってるんだ!

 

 全力で接客するメイドさんは可愛らしい。だが、他に人は見かけない。

 

「冒険者したいんですけどなれますか?」

 

 こんな可愛い人に案内されてカウンターで要件言ってるんだけど、敬語になってしまう己が悔しい。

 

「プレートはお持ちですかー?」

 

 そう言うメイドさんは己のプレートらしい板を出した。クレジットカードみたいに金色だ。

 

「こーゆーの何ですがー」

 

「無いで……」

 

 言いかけた所で口を塞ぐ。そもそも無いなんて怪しまれるんじゃないか? メイドさんが持ってるくらいだ、普通は全人類にあるのだろう。

 

 となると……失くした、だな。

 

「すみません、失くしました」

 

「紛失ですか……1000セックになります」

 

 嘘だろ? そんなにかかるの!?

 

 金が無いのに来てる、金が必要な常識が無いと見られてしまいそうだ。いや、本当に無いんだけど。

 

「お金ないんで失礼します」

 

「別にいいですよ」

 

 後ろを向いた時、カウンター越しからメイドさんに腕を掴まれる。そのまま引き戻されてしまった。

 

「体で払ってくれたらいいんです」

 

「キャンセルで!」

 

 俺の抵抗虚しく、勝手にメイドさんは繋がってないキーボードをカタカタさせながら、別の画面を見つめている。

 

「名前は?」

 

「春風、龍樹」

 

「……無いですね、紛失は嘘ですね?」

 

「はい、作ったことすらないです」

 

 嘘はバレたしもう帰りたい。抵抗してもメイドさんの力強過ぎて無理なのは俺が弱いからだな。

 

「良いでしょう、本来なら作成に掛かる3000セックを立て替えてあげます」

 

 メイドさんは口角を上げ、キーボードを叩いていた人差し指を顎に添える。美味しそうに笑ったのが印象的。

 

「おいまさか……」

 

『体で払ってくださいね?』

 

 メイドギルドに人が居ない理由が分かった気がする。

 

 

 

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