最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第20話

 

『嘘だろ?』

 

 カラッカラのメイドギルドには、建物から溢れる人の列が出来ている。

 

 並ぶのはだるい、俺だけが建物の中に強引に入った。

 

「ちょっとどけ……!」

 

 力任せにカウンターに向かっていると、ギルド本部もメイドギルドの異様な人気の無さを受けて、一番可愛いメイドを新聞に載せたという策略を風の噂で流れてきた。

 

 暑苦しく、整理券は当然の様に手に入れる事が叶わない。男だらけなのはどう考えてもクエスト関係無しに来てるからだろうか。

 

「アンジュってどんな人なんだろうな!」

 

「可愛いって新聞では見たな、どうだろう? 今は控えらしいぞ」

 

「僕はサイドテールの私服姿見かけたぜ!」

 

 なんとかカウンターに着いた俺は、身を乗り上げてカウンターの内側に転がり込む。

 

「はあ、はあ……!」

 

「お客様!?」

 

 驚いた別のメイドは、俺に歩み寄り、見下ろしながら気にかける。

 

「俺はアンジュの友達だ、緊急の用がある。シンクと言えば伝わるから」

 

 メイドはすぐさま奥に消えていき、数分で別のメイドを引き連れて現れた。見覚えのある髪色のサイドテール。

 

「なになに? 私のギルド職員としてのコネを?」

 

「ウザイ聴き方腹立つな」

 

 だが、気づいた男達が声を荒らげる。

 

「おい! アンジュ・ローグだぞ!」

 

「マジか! 魔道カメラ魔道カメラ……!」

 

「アンジュ様ー!」

 

「それでだな、俺が言いたいことはギルドクエスト『アンジュ様!』

 

「うるせえ!」

 

 人が居なかったらアレだが、居てもあれだな。

 

「アンジュ、カウンターに乗って言ってやれ」

 

「分かった」

 

 アンジュがカウンターに乗った瞬間、パシャパシャとシャッターが切られる。テレビでこんな記者会見を見たことがあるが、遭遇出来るとは。

 

 しかも僅かにメイド服のスカートの中が……くそっ、もう少しなのに布切れ一枚を拝めねぇ!

 

 しかし突然人が湧いたのは疑問だな。アンジュがそんなに可愛いのか? その程度で来るとは思えない。

 

『静かにして下さい!』

 

「あの男誰だよ! アンジュと映るんじゃねー!」

 

「「そうだそうだ!」」

 

 異常な狂信性を感じて身震いしてしまう。この街の男達が何かに囚われてしまったように。

 

「じゃーま!」

 

「え? なんて言ったんですか?」

 

「変な男だ! アンジュ様と馴れ馴れしくしやがって! ただの友達風情が!」

 

「私の彼氏なんですけど」

 

 何嘘ついてんだこいつ。

 

 アンジュの電撃的な一言で辺りがザワつく。メイドすらも『あのアンジュさんに彼氏!?』と驚いていた。

 

「う、嘘だ! 騙されるな! キスすらも出来ないだろ!」

「じゃあシンク、見せてあげよ? まだ誰ともしたことないんだよね」

 

 イタズラに微笑むと俺をカウンターの上に誘う。こっそりと「したフリでもいいから黙らせよう」と言っていた。

 

 上がりたくねー、童貞にキスはキツい。仕方なく上がった俺は、アンジュに向き合わさせられる。

 

「唇だけの付き合いでもいいよ」

 

 目を閉じ、ゆっくり迫ってくる美しい顔。童貞に刺激が強すぎる。

 

「どうでもいい」

 

 俺はその美しい顔に優しくビンタを食らわせる。アンジュは微かによろけた。

 

「いたっ」

 

「「あぁ!?」」

 

 見ている人も驚いていた。

 

「いやーすまない事をした。俺という彼氏に性的暴行をしようとした彼女への正当防衛だったんだが、わからなかったのか?」

 

「お前の方が暴行してるだろ!」

 

 それは正論だな。

 

「ここはアンジュ・ローグ様を愛する者として勝負をするべきじゃないか?」

 

 でも俺は、誘導するしかない。

 

「お前が語るんじゃねえ!」

 

「「じゃねぇ!」」

 

「「ねぇ!」」

 

「じゃあ愛してないのか、そうか。俺から彼氏を剥奪したいものは居ないんだな」

 

「俺だったらもっと優しくするぞー!」

 

「もう我慢ならねぇ……殺してやるぜ!」

 

 男達から飛び出た一人の男。抜き身のナイフを逆手に持って俺に突き立てようとしてきた。

 

 アンジュを抱き寄せてカウンターからバックステップで降りる。着地と同時に男から離すように突き飛ばす。

 

「あぶねえだろ!」

 

「殺して彼氏になってやるんだ……」

 

「やれー! やっちまえ!」

 

 振り回されたナイフはゴブリンよりも遅い斬撃。容易く避けれてしまう。

 

「なに!?」

 

「口を出す前に手をだすべきだったぞ」

 

 渾身の力を込めて、男の頭からカウンターの角に押し飛ばす。軽く飛んだ男は頭をぶつけて動かなくなり、ナイフを手放した。

 

 このナイフは俺の武器になるな。そんなことより、掃討クエストを煽らねえとクリア出来ない。

 

「「おお……」」

 

 ハンターがザワザワと不審がっていた。

 

『アンジュ様への愛を競おうぜ? ギルドクエストを攻略して来い、クリア出来たら彼氏である俺に決闘権を得れる。生き残れるくらい強くないと面白くないからな』

 

「それだけならやらねえよ!」

 

「そーだぜー! 今回は飛びっきりキツいんだしよォ!」

 

 そんなにきついのか? 聞いてみるか。

 

『キツい? 俺は疎い、教えてくれたらアンジュが握手してくれるぞ』

 

「勝手に進めないで!?」

 

 握手くらいいいだろうが!

 

「俺が行く! 俺に答えさせてくれ!」

 

『お前どうぞ』

 

「報告によると、ドラゴンがヤクザの集落付近にいるらしい……」

 

『後でしてもらえよ』

 

 ドラゴンか……唐突にアンジュの視線を感じた。

 

「シンク〜、ドラゴンだってー私さ、会った時からねー実は〜」

 

 知ってる。

 

『どうでもいい』

 

 まあクリア出来たら受注出来てる時点で報酬が手に入るから、それでヒーラーとおさらばだ。

 

『俺との決闘権を得た奴、俺に勝ったらアンジュと一日デートしてくれるって言ってるぞ』

「「行くぞオメーら! ドラゴンなんて殺してやろうぜ!」」

 

「「即席パーティを!」」

 

 ちょろいな。

 

「本当に勝手に進めないで! ちょ、ねぇ!」

 

「「「ギルドクエスト発注で!」」」

 

「嘘でしょ……」

 

 アンジュはガクっと項垂れていた。人居たし仕方ないだろ。

 

 男達はアリのように消えていき、町中の戦士を集めてギルドクエストに向かうらしい。

 

「あの……握手……」

 

 確か質問を答えた男がポツリと残っていた。

 

「はいはい、しますします、えぇもちろん」

 

 アンジュのメイドとしてのプロ意識が芽生え、卒なく握手をこなす。

 

「ありがとうございます!」

 

 小さなアイドルを応援している人みたいだな〜。結構まともな男か。

 

「ドラゴンがいるのは本当か?」

 

「まるでヤクザ達を護るようにドラゴンが彷徨いてる」

 

「そうか、気をつけろよ。完了したら決闘出来るな」

 

 取り残されていたヒーラー達が戻ってくる。

 

「シンクさんって大胆なんですね」

 

「凄かったわ……」

 

「俺達もギルドクエスト受けるぞ、行かないけど」

 

 アンジュはキーボードを鳴らしてギルドクエストを登録してくれた。

 

「なんで行かないんですか?」

 

「そんなん決まってるだろ」

 

 新聞でさえおかしい内容を掲載していた。流石に草原自体が危険過ぎる。

 

『草原には奇行種恐竜キング、ヤクザゴブリンの所にはドラゴン。俺達に勝ち目はあると思うか?』

 

「「「無い」」」

 

 3人は即答した。

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