奇行種恐竜キング。情報によると、常に両目は閉じられていて開くことはないという。しかし、目に穴が空いていて覗くように闇のオーラがとめどなく溢れてしまう。
盲目故、視力を除く全ての感覚が研ぎ澄まされ魔道スコープで観察をする部隊を睨んでいたという。目がないのに。
奇行種としての見分けはかなりつけやすく、体が灰色と黒の迷彩で口から黒い闇を常に吐き、威嚇として撒き散らす。
戦闘能力はまだ分かってないが、恐竜キングを上回っている可能性が高い。死んだ肉体に魂が入った可能性があるとしてファントムキングという名前が付けられた。
――というのが、今さっきギルドに流れ込んだ情報だ。
メイドギルドをしているだけあって的確に教えてくれるアンジュは頼りになる。
「死んだ肉体に魂が入るってあるのか? 普通は消えるだろ」
盲目の恐竜キングには覚えがある。
それを片隅に置いた上でクロスに質問を投げかけた。
「死に方が水死や焼死、何らかの方法で元の魂と別の魂が入れ替われる時間がある死に方をするとタイミング良く入れ替わる事によって憑依がモンスターにも起きます」
「……そうか」
めっちゃ見に覚えがある。
「逆に物理的に殺すと確実に憑依は無理なので、強引に殺した方がいいです」
カウンターでカタカタなにかしているアンジュ、もぬけの殻となったカウンターに椅子を構えて時間を潰す俺と2人。
「つまり、だ。ファントムキングを倒すまで草原はかなり危険だし、ソウルも集まんねぇってことだな」
「最悪だわ……」
「そうですね」
2人は項垂れていた。
よく考えたら、集団で行ったあの即席部隊たちは可哀想だ。仮にドラゴンを倒してゴブリンを掃討しても、帰りのファントムキングに殺されてしまうかもしれない。
「ま、ギルドクエストが終わったら俺達は仲良くお別れってことだろ」
「ソウルが! 失敗しますように」
「最低だな」
ちなみにギルドクエストの報酬は分配ではなく1つのパーティーで5万セック。ヒーラーに返す金が1万セックとして、かなりの大金なのが分かる。
「あの人数で失敗はないだろうしまあ良い、職業ってなんだ? ギルドで受けるのか?」
「回復の才能ならヒーラーとかソーサラーが職業、普通なら戦士とか騎士が職業。チートならもっと沢山」
「どうせ称号みたいなもんなんだろ?」
「うぅん、プレート自体がその人の適正された物に変わるから、ソウルを集めやすくなったりするよ」
「俺はお前のことが嫌いだ」
アンジュはギルド職員だろ! ちゃんと教えるべきじゃないか。
嫌味を込めてカウンターを手のひらで叩いた。
「じゃあ適正測る?」
「メイドなのに敬語じゃなくていいのか? あぁ、丁寧語だったな」
「測りますか?」
「頼む、だから右手を潰すな」
カウンターに置かれる踏み絵のような板。メイドのような女性が掘られてる金属らしい。
「これに手を」
手のひらの板に手を乗せてみる。板が光って、俺の指と指の隙間から淡い光が漏れ出す。
「……」
光が消えるまで誰も喋らない。アンジュがただキーボードを叩く音が響いた。
「終わり、見てみる?」
「あぁ」
カウンターに現れる電子的な文字が俺に情報を伝えていく。SFの世界に居るような合理的な見せ方だった。
『幻想騎士《ファントムロード》』
『血剣を使い手』
『自由勇者《リバティ・ブレイブ》-自由のディテクティブ-』
痛い名前しかない。
俺の本能が疼いた中、アンジュがおもむろに喋り出す。
「私はこれがいいと思うな……あっ思います!」
「『炎角龍《ドラグーン》焔火《アグニネス》』だと? それはお前の好みだろうが!! 俺は『白豪龍《ワイバーン》稲蒼黒《トレノブリッツ》』が良い!」
名前まで決められてるんだ、職は決めさせねぇ!
「白豪ってどんな意味? しかもトレノブリッツ……白豪から雷に繋がらないと思うんだけど?」
アンジュの的確な正論には返しようがない……そりゃそうだ、アンジュは的確に炎という意味を備わっている!
――即ち、語感で選んだ俺の圧倒的敗北。
「「どれも一緒だと思う」」
言い合っている間に入ったのは、クロスとライトだった。
『んなわけないだろ!』
『どこが一緒なの!』
「ご、ごめんなさい……」
言い合った結果、当然俺の敗北。こういう時だけ本当に意地でも勝ってくるなら敵もスパッと倒してほしいなと思ったくらいだ。
「それじゃ、炎角龍焔火《ドラグーン》にしますねー」
「くっそ……」
「落ち込まないでよ、ドラグーンは炎をプレートで吸収できてマグマ鉱石武器が共鳴するんだよ?」
「ワイバーンは?」
「雷を吸収できてプラズマ鉱石武器が共鳴」
「つまり、こう言いたいんだな?」
俺は計算され尽くした机の上で敗北だったらしい。どいつもこいつも、俺を手玉に取りやがる。
『『これでドラゴン倒せますね!』』
「だと思った」
ハモった後、プレートを交換して赤いカラーになった。名前帰れるんじゃないのか?って聞いたら。
「プレート変える時だけ帰れるんですよー」
「……」
俺は怒りで押し黙ることを決めた。
その後解散したんだが、人はごっそり居なくなっていた。この街は大半がハンターなのかもしれない。
でも。
魔王の配下達は今日もプレートを見せようキャンペーンをしていた。
『今日は人が居ないぜな』
「うむ、まあ意図してたから仕方ないだよ」
俺が聞き取れる距離にいてもベラベラと喋る魔王の配下3人組。
「あれで倒せたら色々楽ぜなし、新聞で何か奇行種とか聞いたけど大丈夫ぜな」
「うむ、しかし隊長、あの女を利用して大丈夫?」
「気にすることはない。元々見た目がいいからこうなってくれたのだ。強い男もついている」
『配下さんじゃん!』
俺は話を聞き越えたあとに全速力で声をかけたのだった。