最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第22話

 

「なっ!?」

 

「へ?」

 

 俺はとぼけた面しながら駆け寄ることに成功した。

 

「話を……まさか!」

 

「違う、お礼言いたいなって」

 

「そうか。礼には及ばない」

 

 アンジュが人気者になった理由はわかった。でもそれだけじゃクエストにはならなかっただろう。

 

 俺がクエスト騒ぎにするまで見据えていたというのか?

 

 もしそうなら強過ぎる。

 

「それだけだ、頑張って勇者を見つけてくれ」

 

「当然。見つけて使命を果たす」

 

 俺が宿に戻って1日が経った。宿代は続けてクロスが持ってくれてる。ライトには秘密だって言われたから事情があるのだろう。

 

 配下に突っ込んでから、日が昇り幸せな朝風呂タイム。ゆっくり出来るのは幸せだなって感じる。

 

 夜はアンジュが黒煙の剽悍者が出たとか言うから構えて行ったらゴキブリだったし。しかも無駄に早くてデカかった、思い出したくもねえ。

 

 ゴキブリの倒し方をシミュレーションしていると、カチャリと風呂のドアが開いた。

 

「誰だ、俺の幸せを……」

 

 振り返るとアンジュだった。ポニーテールに戻ってる。

 

「背中流してあげにきたよ」

 

「もう終わってるから不要だな、帰っていいぞ」

 

「剽悍者倒してくれたから……」

 

 ゴキブリにもソウルなるものはあるらしく、何故かクオリティブレイバーが5になっていた。

 

「気にするなよ、当然だろ」

 

 単純に俺は女と風呂に入る事に慣れていない。

 

「じゃあ流すのも当然だよ!」

 

「ならお前が更に強くなるのも当然だよな? 気になってるならそれくらい出来るだろ」

 

「もういいもん! 強くならないもんね!」

 

 アンジュは、舌を出して俺を煽ると風呂のドアを勢いよく閉めて出て行った。

 

「ちょっと、ほんのちょっとだけ可愛かったな……」

 

 湯船の水を掴んでも掴めない。ため息を吐いて風呂から出た。

 

 いつもの冒険者っぽい服を着て、アンジュが生物調査という大義名分でサボっていることを確認する。

 

 ライトとクロスは新聞を取ってきたらしい。テーブルに置かれた紙を掴んで情報を確認をしておこう。

 

「助かる」

 

「クロスー? 1000セック札知らない?」

 

「知りませんよ、スられたのかも知れませんねー」

 

 俺はスった犯人を知っている。

 

『グラウンドゼロを火山付近で目撃! どうやら住んでいるようです』

 

『人々が失踪した!? その原因は……』

 

 その中で驚愕の記事が見つかる。

 

『ギルドクエスト大失敗! 生存者は少ない模様、至急討伐者求む!

 

 ドラゴン族とファントムキングの目撃情報あり、支給品指定可、支給武具解放。推薦クオリティブレイバー80』

 

 嘘だろ? あの人数で失敗したのか? かなり居たじゃないか。

 

「80だと……」

 

「本当に失敗したんでしょうか 」

 

 クロスは疑心暗鬼だが、どう見ても本当だと思う。

 

「まあかなりキツいとは思っていたが……集落の破壊だけじゃなくドラゴンとファントムキングまで倒せって事か」

 

「集落、ここからかなり近いらしいですから」

 

 クロスだけだな、まともなのは。

 

 アンジュはベッドでゴロゴロしてるし、ライトはスられたお金探してるし。

 

 こいつらでクリアするのやだな〜。

 

「はあ……」

 

 下手したら死ぬ。出来るなら人は減らしたいが、俺単体じゃ無理というジレンマが悲しい。

 

 ため息を吐いても仕方ないので、準備をしてギルドに向かった。当然人は居ない。

 

 昨日が夢のようにすっからかん。

 

 席についても簡単な作戦が浮かぶことは無かった。

 

 代わりに昨日のアンジュに一途なファンが現れた。

 

「……アンジュさん居ますか」

 

「ここに居るよ! あっ居ます!」

 

 服は焦げてチリチリ、髪は泥に塗れ、肌も薄汚れてデコに包帯を巻いた前に情報を教えてくれたファンだ。

 

「また会えた……」

 

「どうしたの」

 

「知ってると思いますが、クエストに失敗しまして……生き残ったのは俺だけです」

 

「大丈夫? ギルドのベッド行く?」

 

 ドラゴンは倒せない、ゴブリンには近づけない、帰りはファントムキングに襲われる。散々な目に遭っていたらしい。

 

 ギルドの奥に消えていく彼を見送りながら、現実を見る。

 

「やっぱ俺には無理」

 

「実はね、ギルドの討伐部隊は来ない」

 

「……え?」

 

 アンジュの衝撃的な一言が空気を蝕む。俺がしなくてもいい可能性が絶たれたのだ。

 

「全ギルドもお断り、この街に人を寄越さないんだよ」

 

「マジか」

 

 でもそんな強大な力が近くにあるんなら人も来なくなるだろう。集落は近い、草原の方だ。モンスターの気分次第では今から襲える。

 

「じゃあ引っ越そうぜ? 金ならもう借金でいい。それじゃダメか?」

 

「ダメ……」

 

「なんでダメなんだ。まあ住んでる街に名残りはあるだろうけどな、残された選択肢は死ぬか引っ越すかの二択だ」

 

 こんな街に執着する理由が俺には分からない。

 

「ダメなもんはダメなの!」

 

 アンジュの机を叩く乾いた音が響いた。

 

「はぁ? 死ぬくらいなら徒歩でもいいから旅に決まってるだろ」

 

「想い入れがあるから……それに自分たちだけ逃げるとかしたくないよ」

 

「そうね、私達もヒーラー協会なんだし」

 

「逃げたらペナルティー来そうですから」

 

 ライトもクロスも賛成するのか。アンジュ自体手強いのにこれじゃどうしようもない。

 

『死んだら全力でお前ら恨むから』

 

 俺達は4人で危険なギルドクエストを受注したのだった。

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