最強の勇者はポーション中毒者   作:ec

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第4話

 

 ポーションは回復するんじゃなくて栄養を補給する飲み物らしい。回復するという概念は魔法にしか存在していない。

 

 ってこのメイドアンジュが言った。

 

「後輩の巧みな嘘でしたか……!」

 

「ざまぁ、俺はもう帰るよ」

 

「ダメです。シンク様にはお仕事がありますので」

 

「シンクでいいから」

 

 一応逃げれないようにプレートはアンジュが持っているが、心配なのかチラチラ見ながら紙束の何かを出していた。

 

「これ、討伐クエストなんですよ」

 

「なんとなく言いたいことはわかった」

 

 ゴブリン的な討伐クエストをしたいんだろう。

 

「討伐クエストに行ってこいだろ、分かってる」

 

「ドラゴンの討伐クエストに連れてってください」

 

「ごめん無理」

 

 意外にメイドは欲張りなのかもしれない。

 

「ですよね……」

 

 露骨にへこんだアンジュを見るほど俺の心臓に毛が生えているわけがなかった。人差し指を胸元でクルクルしながら揺れてるあたり相当行きたいんだろうなぁ。

 

「はぁ、ドラゴンブレス当たった時、カッチョイー王子様が……」

 

 まさかの出会い目的だった。

 

「んなわけないだろ?」

 

「この街、ペンデュラムに伝わる伝説なので多分ありえると思います」

 

「多分ねぇ」

 

 俺の身を守る為にも、ドラゴン討伐を後回しにするしかない。

 

「最終的にそれでもいい。その前に簡単な所から行ってみようぜ」

 

「ドラゴンがいいです!」

 

「俺が言ったこと分かる?」

 

「時既に受注してるので」

 

「ベイビー、キャンセルしろ。今すぐにな」

 

「おー、そーりー。キャンセル料に対してマイマネーがベイビー……」

 

 無理に合わせ無くてもいいのに。キャンセル出来ないって事は、このまま野宿コースかもな。

 

 そう思うと少しだけ体が重くなった気がした。

 

「ギルドから支給されるアイテムはあるのか? ドラゴンだろ、流石にあるよな?」

 

 強い武器とか罠系のアイテムがあると嬉しいが、期待は出来ない。

 

「すみません……ポーションしかないんです……」

 

 俺はポーションで回復できる事を自身で理解してるけど、アンジュは知らないだろ。なんでポーションなんだ?

 

「付き合ってられんわ」

 

「うぅ、ドラゴン見てみたい……! ダメですか?」

 祈るようにして掴まれた俺の左手、必殺の上目遣い。

 

 俺はドラゴンどころか、少女にも勝てないらしい。

 

「分かった、何処に居るんだ?」

 

「近くの草原に昼寝してますよ」

 

「ポーションは買い占めていこう」

 

 美しい華にも刺がある。そんな感じの言葉があるが、こいつには毒も塗られてるだろうなって心の底から思った。

 

 

 

 

 倒すって決めた俺は、プレートを返してもらってメイドギルドの前に立っていた。アンジュも着替えて来るらしい。

 

 一応魔物の生態調査という大義名分を背負ったみたいだ、モノは言い様だな。

 

「シンクって思ったより背中が大きいんだね」

 

 嫌という程ギルドで聞き慣れた声が背中に掛けられる。

 

「逆にアンジュは小さいな」

 

「い、一応シークレットブーツ履いていたんで」

 

「口調もおかしい」

 

「メイド服着るとあんな感じになるの」

 

 最初のフリフリしたメイド姿に比べたら、ショートパンツはかなりカジュアルに見える。動きやすさに配慮しているのだろうか。

 

「敬語の方が可愛いのに。まだ」

 

「なんか言った?」

 

「……」

 

 俺が清楚、可愛い、好み、タイプだと思ったアンジュはもう居ない。

 

 歩きながら作戦を組むことにした。

 

「ポーションって何個だ?」

 

「30はあるかな」

 

 偏り過ぎだろ。

 

「そんなに必要か? そのポーションは支給だよな」

 

「うん……なんでだろうね」

 

 嫌がらせかな……。そう思った時、近くから聞きなれない声と黒い男が客引きをしていた。

 

「へーーい!! プレートを見せてくれたら、1000セック! 大特価サービス中!」

 

 看板を持った男と大声を出す男、そして斧を背負った護衛のような男。3人でしているらしい。

 

「なあ、どう考えても怪しくないか?」

 

「プレートを見るのにお金の価値は見いだせないし……」

 

 だが、儲け話となったら別。関係無しに突っ込む事にした。

 

「ちょ、シンク!?」

 

 アンジュのせいなんだ、2000もあればキャンセルくらいはできるだろ!

 

 頼む様にして声を掛けた。

 

「見せますよ」

 

「おーお客さん、プレートを見せてくれるんか!?」

 

「どうぞ」

 

 俺は黒いプレートを指と指で挟み、チートだけ見えないように見せた。

 

「ふむ……これじゃねえだろな」

 

「そうだぜな」

 

 しかし、工夫虚しくプレートは奪われ男達が勝手に吟味していた。

 

「大丈夫なんだよね?」

 

 アンジュの心配に「多分」と適当に返した。

 

 暫くした後、俺のプレートは返され。アンジュのプレートも渡してみたが、俺とは比べものにならない早さだった。

 

「どうしてこんなお金を投げるようなことをしてるんですか?」

 

「あ? 仕方ねぇ、痛いお前の名前に免じて教えてやる」

 

 スキルより名前に注目されたみたいだな。

 

「俺達は魔王の配下なんだが、近くで生まれた? か分からねえが英雄を探しているんだぜな」

 

 看板を持った男がだるそうに看板を下げ、英雄を探している事を教えてくれた。

 

「その英雄の名前は……春風龍樹だぜなぁ?」

 

 俺は驚きの余り、口を手で塞いだ。アンジュも俺と配下という男を交互に見ていた。彼女の双眸が微かに震えていた気がする。

 

「見かけたら教えてくれ、多額の報酬を用意している」

 

「あ、あぁ」

 

 初めてクソみたいな名前のプレートに感謝した。同時にその作成者メイドにも。

 

 動揺が抑えきれず、配下を後にしながらアンジュの手首を握っていた。

 

「……狙われてたんだね」

 

「そ、そうみたいだな」

 

 俺は空から落下してここに来ただけだ、それが英雄扱いか。多分偶然のデマだろうな。

 

 デマであって欲しい。

 

 無意識に足早に草原へと向かっていた。

 

「その道じゃないよ! こっち!」

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