造られた英雄   作:シーボーギウム

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アルケイデス読み多すぎて震える。

身長2mのヒントだけだとそうなるよね。

若干ネタバレになりますが、現状オリ鯖は三体出すつもりなのですが、アーチャーはそのオリ鯖の1人です。

今回ヒントが出るからそれから予想して見てね!!

今回若干ダイジェストっぽくなってるかもしれない。

要するに短めです。

ではどうぞ





エルキドゥ?:オリジン

走りながら、放たれる矢を弾き続ける。

背後を気にする必要が無くなった為に、回避も織り交ぜるエルの動きには、かなりの余裕が生まれていた。男まで約数メートル、となった所で右手に集中する。

バチバチと、電気が手の中で走り始めた。

放たれた矢をほんの少し横にズレるだけで回避し、すぐさま右手を男に向かって突き出す。

瞬間、光の柱が立った。

 

「ク、ソ………!!」

「気絶する程度の威力は込めた筈だけど、すごいな……!」

 

ズタボロになった男が、10m程先にいた。

エルの攻撃で、手にしている和弓の弦も焼き切れている。

 

「やはり、凡百の英霊では、正面戦闘で敵う道理は、無いか………」

「それはそうさ、見た所、君はあくまで普通の人間だ。壊れ掛けとはいえ神の兵器に勝てる人間はいないよ。半神ならともかく、純粋な人間ではね」

「だろうな、この世界でお前に勝てるとしたら、あの男(・・・)くらいのものだろう」

「あの男?」

「誰かは言わん。俺も詳しくは知らんしな」

 

男は弓を手放すと、それは光の粒子になって消えた。

しかし、再び弓を構える様な動作と共に弓が現れる。

 

「弓矢作成かな?」

「筒抜けだな。少しくらい驚いてくれても良いだろう」

「知ってるスキルで驚けといわれてもね」

「ふん、まあいい。ところでエルキドゥ」

「何?」

「今の戦闘で分かったが、俺では、お前には勝てない」

「そうだね、できれば投降してくれると有難いな」

「はっ、早計だな。そうだ、俺は正面戦闘では(・・・・・・)絶対に敵わん」

「………?」

「真っ当な戦い方で勝てないなら、外道の戦法取るしかあるまい」

 

皮肉気に笑う男だが、眉間には深い皺が寄っている。

そんな男がした事は、

 

「お前に勝てない以上。俺でも勝てる人間を人質にさせて貰おう」

「!?まさか!!!」

 

止めようと駆けた時には、既に遅かった。

男は、人の密集する(・・・・・・)繁華街に向かって(・・・・・・・・)矢を放った。

鎖も利用し、全力でそれを追いかける。

繁華街から約40m地点でそれをどうにか掴む。

初めと同じく、手の平に火傷を負った。

つまり本気の一撃だ。

着地してから、眉を顰め、男の方を睨む。

不愉快、それが感想だった。

怒りには及びないのもエルキドゥ故だろう。

 

「君、一応属性『悪』ではないよね?」

「まぁ、な」

 

ビルから降りた男は、エルを繁華街と挟んだ。

構えられた弓は、既にエルを狙ったものでは無い。

 

「酷いね、君」

「………そう、だな。だが、生憎と俺にも成したい事がある。悪いが容赦は出来ん」

 

その目には覚悟が灯っていた。

何をしようと目的を達成する、という暗い覚悟だ。

 

「貴様が死ななければ、無辜の人々が死ぬぞ」

「僕は死なないし、殺させない」

 

奪う者と、守る者。

相反する2人の戦闘の余波が、夜の空に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅっ!!?」

 

遂に、男の矢がエルに突き刺さった。

エルの後ろを狙った矢を防ぐ為、自身を盾にしたのだ。

肩の肉を抉ったそれは、今まで感じた事のない激痛をエルに送った。

痛みで動きを止めたエルの身体に、更に矢が突き刺さる。

足を、腹をと肉が抉られた。

 

「が、ああぁアぁああアァあああ!!?!?」

 

エルはこの時人生で初めて叫び声を上げた。

倒れる事は無かったが、それでも膝を着いた。

 

「………終わりだ」

「…………」

 

男が弓を構える。

狙いは、エルの脳天だ。

 

「許せとは言わん。だが、俺の目的の為だけに殺す事を謝罪する」

 

矢が放たれる。

矢は吸い込まれるように、エルの眉間に向かっていく。

後数mにまで近付いた所で、エルは目を瞑った。

諦めに近い感情が心を支配していた。

 

(何故、守ろうとしたのだろう)

 

エルキドゥの属性は『中立』だ。

故に、守りたいと思うのは、余程の事がない限り友人や、家族などの自身に関係する者だけのはずだ。

善でも、悪でも無いが故に、善にも、悪にも染まりうる存在故に、守ろうとする物は単純なはずだ。

義務的に守る事はあっても自主性は無いはずだ。

それなのに、エルは全く関係の無い人々を守った。

それを放棄すれば、エルの勝ちは揺るがなかっただろうというのに。

 

(あぁ、そうか。姉さんと過ごしたからなのか)

 

善性の強い人間と過ごした日々が、自分を善に傾けたのか、と、死の間際に加速した思考の中で、エルは結論を見つける。

ふと、(唯一の家族)の笑顔が頭に浮かんだ。

それに思わず笑みを浮かべる。

それと同時に、漠然と、

 

(嫌だなぁ)

 

ただ、漠然と。

 

(嫌、だなぁ)

 

そう思ったと同時に涙が溢れた。

 

「――助けて」

 

意図せず、そんな言葉が零れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が来た!!」

 

 

 

その言葉は、最高のヒーローを呼び寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は、現れただけでその空間を支配した。

それ程の圧倒的な存在感。

エルは、彼が英霊でない事に疑問を抱く程だった。

 

「オールマイトか………」

 

苦々しい顔で男が呟く。

男はエルに向けた物と同じ警戒をオールマイトに持った。

 

「退け、ヒーロー。貴様とでは決着が着かん」

「貴様の狙いはこの少女だろう!?なら退く訳にはいかないさ!!」

「まぁ、そうなるか」

 

男が弓を構える。

オールマイトはそれに合わせて前傾姿勢になる。

が、エルがそれを遮った。

 

「ダメだオールマイト。彼に近付いたら貴方でも危ない」

「少女?何を………?」

「彼の弓は、恐らく貴方の全力の一撃を超える威力を持っている。」

「なっ!?」

「でも、防ぐ事は出来ると思う。だから少しの間だけ耐えて欲しい。僕が打開する」

「しかしヒーローとして一般人に協力を仰ぐ訳には………」

「なら勝手にやらせてもらう、よっ!」

 

言葉と同時に肩に刺さった矢を引き抜いた。

再び、激痛に呻き声を上げる。

 

「少女!?何を!?」

「ちぃっ!!」

 

オールマイトが驚愕に目を見開く。

男が慌てて弓を放つ。

しかしそれはオールマイトに防がれた。

凄まじい速度で放たれる矢を防ぎながら、オールマイトがエルに声をかけた。

 

「少女っ!矢を抜くと傷口が開いてしまうぞ!!やめるんだ!!」

「大、丈夫、僕は、自己再生能力が、あるから………!!」

「しかし………くっ!」

 

次に、足に刺さった矢を引き抜く。

そろそろエルに構う余裕の無くなったオールマイトは矢を防ぐのに集中し始めた。

 

(再生速度がさっきより遅い………)

 

1秒。

普通の場合と比べれば、その速度は異常な程早い。

それでも、エルにとって1秒はあまりにも長かった。

傷の大きさに違いはあるものの、先程と同じ速度であれば、矢を抜いた瞬間完全に治癒していてもおかしくない。

痛みが引かないまま、最後に残った腹部の矢を抜いた。

腹をかき混ぜられる様な激痛に意識を失いかけるが、何とか耐え抜く。

 

「もう、大丈夫。退いてくれて構わないよ」

「何をっ!?」

 

目にも止まらぬ速さで、エルは迫り来る矢を切り刻んだ。

男は舌打ちをし、オールマイトは驚愕した。

 

「終わりだ。オールマイトがいる以上、君に後ろの人達を狙う余裕は無いはずだ」

「………はぁ、確かに終わりだな………黒霧」

 

男が誰かの名を呟いた瞬間、黒い霧がエルとオールマイトの周囲に現れた。

男がそれに向かって矢を放つと、周囲のそれらから矢が飛び出した。

 

「まずい!!」

 

どちらかが叫んだのと同時に、2人は高速で矢を撃ち落とす。

どうにか対処しきった所で男が居た方を見ると、そこにはもう誰もいなかった。

 

「逃げられたか………」

「ワープか……な………?」

 

その言葉を最後に、エルが倒れる。

単純な疲労によるものだった。

 

「少女!?大丈夫か!?少女!!」

 

オールマイトがそう叫んだのを聞いて、エルの視界はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グチャグチャになったコンクリートの地面を、幾人かのヒーローや警察官が見ていた。

今は、現場検証で立ち入り禁止だが、それが終わり次第この場の人間で後処理を始めるのだ。

地面を治すために、この場にはセメントスもいた。

 

「これは、嵐でも通ったみたいな………」

「いや、嵐どころじゃないぞこれ………」

 

ここにいる者は、オールマイトと、何かと噂になっていたミッドナイトの弟が(ヴィラン)と戦った、という事を伝えられていた。

大体の者は、「オールマイトが戦ったのなら大丈夫だろう」という楽観的な考えだった。

しかし実際には、コンクリートの地面は平な場所がない程に抉られ、あるい砕かれ、近くにあった電柱は全て半ばからへし折られている。

周囲のビルの壁には幾つもの穴が空いていた。

 

「てことは(ヴィラン)はオールマイトとやり合えるって事になるのか………」

「それ、普通にヤバくないか?」

 

皆がザワつく中で、エルの実力を知る者達は神妙な顔付きだった。

 

「対策を講じないといけないね………」

「もう、オールマイトに頼り切りではいられませんしね………」

 

リカバリーガールの言葉にセメントスが返す。

2人は何やら、嫌な予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間、理解出来ない状況に陥ると、逆に思考が冷静になったりする。

エルは正にそんな状態だった。

 

(僕は何故ベッドの上で姉さんに抱きしめられてるんだろう………)

 

睡からは、何やら睡魔を誘う甘い香りがした。

微妙に個性が漏れ出ているのかもしれない。

普通の男子中学生ならば即理性崩壊しそうな状況だが、エルの場合は性別が曖昧な事が功を奏した。

どうにか現状を把握しようとするエルだが、睡の香りが眠気によって思考を途切れさせる。

 

(どうしよう………心地よくなってきた………)

 

こくり、こくりと、エルが舟を漕ぎ始める。

しかし、まぁいいか、と目を瞑ったところで、睡が目を覚ました。

 

「あれ?エル?……まだ寝てるか……」

「うぅ、姉さんタイミング悪いよ………」

「え?」

 

エルが個性で眠くなった事を伝えると、睡は謝りながらエルを洗面台に連れていった。

顔を洗い、どうにか眠気を吹き飛ばした。

 

「そういえば僕今日学校は「行かせる訳ないでしょ?」あ、はい、すいません」

 

目をそらす。

理由は単純、睡はかなり怒っていた。

当然と言えば当然だ。

知らぬ間に家を飛び出し、勝手に戦い、死にかけ、治ったとはいえ気絶する程の大怪我を負ったのだ。

それで怒るのは当たり前だろう。

 

「エル」

「うん?どうしたの姉さん」

「私ね、怖くなったのよ」

「怖くなった………?」

「ええ」

 

睡の表情には、不安が色濃く現れていた。

 

「私がヒーローをやっている以上、こう思うのは少し傲慢な気もするけど、正直エルにヒーローにはなって欲しくないと思ったわ」

「………」

「夢は応援してあげたい。でも、今回エルを襲った(ヴィラン)はエルを狙ってた。だから………」

「姉さん、ごめんね。それでも僕はヒーローになるよ」

 

睡は辛そうに顔を歪める。

そんな睡にエルは言葉を続ける。

 

「今、考えてみて分かった事なんだけどね、僕は、正直他人を守りたいとは思ってないんだ」

「………」

「一個人で守りたいと思えるのは、今の所は姉さん以外いない」

「なら……」

「でも、人の営みは、とても好ましく思っているんだ」

「人の、営み?」

 

そう、エルキドゥ故に、一個人に興味が湧くことは少ない。

だが、何でもないことで笑い、泣き、怒る。

今のエルでは出来ない、そんな光景を見ると、暖かい気持ちに満たされる、という経験がこの世界で生まれてから幾度となくあったのだ。

それが、エルキドゥ(本物)故か、エル(贋物)故かは分からない。

 

「だからこそ、人の為に歩みたいんだ、僕は」

「―――――」

 

()と共に歩む事は、既に達成した。

ならば、次は人の為に、人を守る為に歩もう。

 

「それが、僕の原点(オリジン)だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは神に、あるいは世界によって生み出された一人の英雄が、

 

 

死に絶える(・・・・・)までの物語だ(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 




分かる人にはアーチャー誰か分かるんちゃう?

弓矢作成は何となく付けただけだけども。

身長2mある和弓持ったアーチャーってだけでかなり限定されると思う。

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