造られた英雄   作:シーボーギウム

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長い事待たせてしまって申し訳ない。

言い訳は、某4対1のスマホの鬼ごっこゲーにハマっていた事と、FGOでおの夏休みに福袋含め新星5を計4体も引いたせいで育成に走ってました。

ええ、自慢ですよ。

ぶっちゃけキモイほどの運なので、あれ?夏休み終わったら俺死ぬ?とか思ったりしました。

素材が足りない苦しみを初めて味わいました。


ではどうぞ。




始まり、暗躍

試験の十数分前、エルは雄英のとあるホールで実技試験の説明の開始を待っていた。

実技試験の概要を読むエルは周りの視線を独り占めにしていた。

もちろん、それに気付かないエルではないが、わざわざ気にする事は無かった。

しばらくして、ホールの中央に奇抜な格好をした男が現れた。

 

「凄い私服だ」

「「「!?」」」

「?」

 

嘘だろ!?と言わんばかりの視線を向けられ、エルは首を傾げた。

すると隣に座っていた、耳たぶがイヤホンジャックになっている少女にチョンチョンと肩をつつかれた。

 

「あの人ヒーローだから」

「そうなんだ、教えてくれてありがとう」

「マジで知らないの!?」

 

驚愕する少女に、エルはまたもや不思議そうに首を傾げた。

信じられない、といった感じの表情をする少女は小声で説明を始めた。

 

「プレゼントマイクってヒーローだよ、割と有名な筈なんだけどなぁ………」

「あはは……ごめんね………」

 

エルは、ヒーローに詳しくない。

いや、ほぼ知らないまである。

知っているヒーローはオールマイトに、姉であるミッドナイト、あの事件後の診察で立ち会ったリカバリーガールの三人なのだ。

何せ本物の記憶ではないとはいえ、あの英雄王を知っているのだ。

大概のヒーローは霞んで見えてしまうのである。

 

『最後にリスナーへ我が校訓をプレゼントしよう!!』

 

プレゼントマイクがそう言ったのを聞き、受験生の目がホール中央の彼に向いた。

 

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者」と!!』

 

 

 

『”Plus ultra!!”』

 

 

 

『それでは皆、良い受難を!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルは試験会場の入り口前にいた。

服装はエルキドゥの普段着(メタくなるが第二再臨)だった。

傍から見るとゆったりとした格好でしかも裸足という、動きやすいとはかけ離れた格好だったが、エルにとってはこれが最も動きやすい格好だ。

周りの人間は、皆緊張をほぐす様に準備運動を行っていたりする。

そんな中エルは棒立ちで巨大な入り口を見ていた。

 

(ボーダーってどれ位なんだろう?)

 

ぼんやりとそんな事を考えるエル。

ただしそれは試験に対する不安からくるものではない。

むしろ逆、どの程度に収める(・・・)べきかを考えていたのだ。

自身がポイントを取りすぎてしまえば、本来この世界のこの年に合格していた筈の人間が不合格になる可能性もある。

一応、転生者であるエルはそれを気にしていた。

取り敢えず80Pは取っておこう、とエルが考えていると、

 

『ハイスタートー』

 

エルを含め、受験生達はプレゼントマイクの方を見て固まる。

しかし『賽は投げられている』という言葉に反応して全員走り出した。

エルを除いて。

とはいえ、エルも即座に反応してはいたのだ。

ただ周りと違ってのんびりと歩いているだけだ。

 

『標的発見!ブッコロ』

 

ビルの壁を突き破って現れた仮想(ヴィラン)をエルは片手で叩き壊した。

予想以上の脆さに一瞬硬直する。

しかしすぐにエルは走り始めた。

 

(あの脆さだと、のんびりしてたらまずそうだ)

 

そんな事を思いながら、エルは凄まじい速度で会場を駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験開始から7分。

エルは4分の時点で82Pを獲得し、そこからの3分間は他人を助ける事に従事していた。

結果、助ける過程で更にポイントを稼ぎ、現在まさかの103Pである。

 

(やり過ぎたかもなぁ………)

 

試験を始めてから分かった事だが、明らかにエルが破壊した仮想(ヴィラン)の量は異常だった。

何せ周りの仮想(ヴィラン)の絶対数は明らかに試験開始から激減していた。

エルは最早意味の無い、誰に向ける訳でもない微妙な罪悪感に苛まれる。

エルは軽く走りながら、怪我人や怪我をしそうな人を探しては、それを助ける。

そうして残り時間2分になった所で、会場に轟音が響いた。

 

「………デカイな」

 

現れたのは0P(ヴィラン)

プレゼントマイクがおじゃま虫と称した物だった筈だが、そのサイズはエルの想像を超えていた。

 

「グガランナの半分にも及ばないけど、普通に危ないね」

 

そう呟いてから、エルは0Pに向かって走り出す。

すると0Pの足元付近に、案の定少女が倒れていた。

足が瓦礫に挟まれてしまっているらしい。

意識は失っていないようだが、0Pが迫って来ているせいかその表情には絶望が浮かんでいた。

 

「大丈夫?」

「え!?アンタはさっきの!?」

「少しじっとしてて、瓦礫を退かすから」

「待って待って!危ないって!!」

「大丈夫、一瞬だし」

 

そう言ってエルは少女の足に乗っている瓦礫を片手で持ち上げた。

少女はその光景に驚愕する。

瓦礫を退かしたエルは少女を抱えて、その場からすぐに離れた。

もう被害を被る事はないであろう場所に来てから、エルは少女を地面に下ろす。

よくよく見ると、その少女は先程のホールで隣にいた少女だった。

 

「あ、ありがとう」

「どういたしまして。足を見せてくれる?」

「あ、うん」

 

少女の足を触診する。

少し押すと、少女が痛みに顔を歪めたが、感覚的に骨に異常はなさそうだった。

エルは立ち上がると、0Pの方を見た。

 

「どうしたの?」

「あれをどう壊そうかなって」

「あれ………って0Pの事?!」

「そうだけど?」

「何言ってんの!?危ないし、壊してもポイント入んないんだよ!?」

「確かにそうだけど、これ以上怪我人出さない為には最善だから」

 

そう言ってから、エルは地面から槍を創り出した。

エルは慣れた動作で槍を軽く振り回す。

槍術など習った事の無いエルだが、兵器としての部分が直感的に槍を扱う事を可能にしているのだ。

エルは槍を逆手に持ち、その切っ先を0Pに向けた。

そして、

 

「ええい!!」

 

弾丸と見まごう程の速度で槍を投擲する。

凄まじい速度の槍は、0Pの頭部を粉々に破壊し、貫いた。

 

「な………!!??」

「うーん………やっぱりこんなものか」

 

エルの呟きは、破壊音に呑まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと言うか、予想通りに想定以上のポイント叩き出しましたね………」

「最終(ヴィラン)P112、救助活動(レスキュー)P57の計169ポイントか………前代未聞にも程があるな………」

 

どこか諦めた様な口調で、ヴラドが言う。

そんな中、ガリガリの姿のオールマイトは驚愕に目を見開いていた。

 

「ちゃんと見るのは初めてかい?」

「え、ええ、以前共闘した時は、かの、彼の事を見る余裕もありませんでしたから………」

 

オールマイトの言葉に、リカバリーガールは、そうかい、と短く返す。

すると、オールマイトが画面を見たまま神妙な顔付きになる。

リカバリーガールがどうかしたのか、と聞くと、

 

「彼の個性は、一つなのでしょうか………?」

「個性届では一応一つ扱いなはずだよ。ミッドナイトにもそうするように指示しといたからね。まぁ、あんたの言いたい事も良くわかるよ。あの子の個性はあまりにも多様すぎるからね」

 

身体増強、武器、鎖の作成と操作。

本来、一つの個性では不可能な芸当だ。

 

「とはいえ、一つ扱い(・・・・)なのはあの子が記憶を失った後の個性届での話だからね」

「それはつまり………」

あの男(・・・)が関与している可能性は高いだろうね」

「………」

 

皆は一人のために(オール・フォー・ワン)

超常黎明期、混乱した世を裏から支配した悪党の名だ。

オールマイトが打ち倒した筈なのだが、死体の確認がされていない。

故に可能性としてはありえる話だ。

 

「守らねばなりませんね………」

「そうさね………」

 

その日、二人の顔が優れる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験から数週間、エルは公園のベンチで猫達と戯れていた。

因みに飼っている訳ではなく、そこらにいた野良猫である。

動物との会話が可能なエルは野良猫や野良犬等と仲良くなるのが早い。

その為エルのいる公園は異様な数の猫、犬、小鳥がいる事がままあるのだ。

 

「おや?君は妊娠しているのか、気を付けないとね」

 

一匹、お腹がぽっこりとした猫がいる事に気付き、エルはその猫をゆっくりと膝に乗せる。

十数分、その猫を撫でていると、心地よさそうに眠り始めた。

そしてそれにつられる様に、周りの他の猫と、エルまでもがうつらうつらとし始めた。

 

「………ダメ……だな……少し……眠るか………」

 

エルは猫を撫でながら、ベンチの背もたれに身を預け、目を瞑る。

冬の寒さは猫達のおかげで気にならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何これ」

 

雄英でのテストの採点が終了した睡は、家の前の公園にいた。

身内が受験する、という事で実技試験の採点から外された為に他の者より早くに帰路に付いた睡だが、ふと公園を通りかかった時にエルがいる事に気付いたのだ。

遠目でよく分からなかったのだが、エルの状況は意味のわからないものになっていた。

 

まず、エル自身は眠っている。

これは問題ない。

次に、エルの周りの猫達が眠っている。

まぁ、これも問題はない。

問題はそのエルと猫がデッサンしている者に囲まれている事だった。

率直に言って意味がわからない。

 

「あの、すいません、何してるんですか?」

「近くの大学の美術サークルなんですが、この公園にデッサンの授業で来たんですけどね、あの子見つけちゃって思わず皆がね……」

 

近くにいた人に聞くと、そういう事らしい。

睡は、何が思わずよ、等と思いながらそのカオスな光景を見ていると、エルが目を覚ました。

 

「うん?何これ?」

 

エルが目を覚ましたと同時に、猫達も目を覚ました。

すると猫達は思うままに四方へ散っていってしまった。

それを見て、流石にデッサンも中止になり、大学生達も猫と同じく散っていった。

 

「何だったの?あれ?」

「貴方の事デッサンしてたらしいわよ?」

「………?」

 

意味がわからない、と言わんばかりの表情をするエルへの説明を諦め、睡はエルと自宅のマンションに向かう。

たわいない話を続けていると、マンションの前に到着した。

エルは「郵便受けを見ていくから先に上がっておいて」と言われ、一足先に部屋へ向かう。

懐から鍵を取り出し、いつも通りの家に入ると、そのまま夕飯の下ごしらえの為キッチンへ向かった。

しばらくの間、米を研いでいると、

 

「エル!エル!!」

「どうしたの姉さん?」

 

慌てた様子で玄関から現れた姉の手元には、見覚えのある校章のシールで止められた手紙があった。

 

「合格通知、届いてたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻ったエルは、椅子に座り、手紙の封を開けた。

 

「……?」

 

中に入っていたのは、小さな円盤状の機械だった。

ふと、それにスイッチが付いている事に気が付き、机に置いてからそのスイッチを押した。

すると、

 

『私が投影された!!』

「オールマイト?」

 

僅かに驚きを孕んだ語調でエルはNO.1ヒーローの名を呟いた。

投影された、あらかじめ録画された映像だけでも圧倒的な存在感を醸し出すオールマイトは、話を続ける。

 

『HAHAHA!!驚いたかな!!?実は今年から雄英に就任する事になったのさ!!』

「オールマイトが教師………」

 

他の者ならば歓喜する内容だが、エルは極めて冷静に投影のオールマイトを見る。

 

『それでは早速合否の発表をしよう!!』

 

思わず息を呑む。

合格を確信はしていたが、こういう物はそれでも緊張するものなのだろう。

ドラムロールが鳴り終わり、

 

『合格だ!!しかもぶっちぎりの1位でな!!』

「ぶっちぎり?」

『君は(ヴィラン)Pだけでも(・・・・)112P!!この時点で1位だ!!しかし今試験には1つ隠されたポイントが存在する!!』

「隠された?」

『その名も救助活動(レスキュー)P!!審査制のポイントだ!!君はこの救助活動(レスキュー)Pを57P獲得している!!よって合計169P!!2位と2倍近く差がついてるってよ!!』

「2倍………やっぱりやり過ぎたかな………」

『来いよ、雄英(ここ)が君の、ヒーローアカデミアだ!!』

 

その言葉と共に、映像が終わる。

ひとまずは睡に報告しようと、エルは立ち上がる。

エルの顔は、睡の喜ぶ姿を想像して笑みが零れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台はとある路地裏に移る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むせ返るような、鉄のような異臭が路地裏に充満していた。

その中心に、包丁を持った猫背の男が佇んでいる。

男はよれたスーツの上から血塗れのトレンチコートを羽織っていた。

何も持っていない左手で、頭の帽子を抑えている。

 

「相変わらず不快だな、貴様は」

「お・や・お・やぁ?キャァスターさぁん!?そんな不快な私になぁんの用でございましょぉかぁ?」

「………殺されたいのか?」

「うっははは!!構いませんよぉ、死ぬのもまた一興ですしねぇ!!」

 

男のやり辛さに、キャスターと呼ばれた女は顔を歪める。

常にふざけた様子の男の顔には、狂気が孕んでいた。

その狂気故か、女が生み出す殺気を気にも留めていない。

不機嫌な様子を隠す事も無く女は話を続ける。

 

あの方(・・・)からの命令だ。現在(ヴィラン)連合にいるアーチャーと合流しろ」

「はぁ、かしこまりましたぁ、が(ヴィラン)連合とは何ですかぁ?」

「頭の弱い小僧が率いる矮小な組織だ。だが、我々の存在を隠す"蓑"としては丁度いい」

「私とアーチャー君隠れてないんですがぁ?」

「駒など隠す必要は無い」

 

女は男の言葉を一蹴する。

そのまま身を翻し、暗闇に向かって歩いて行った。

男は思案顔で女を見る。

その時の顔は恐らく、この世で誰も見た事のない、人生において1度だけかもしれない、男の狂気が抜け落ちた顔だった。

 

「…………………、おおっと!?いけないいけない。私が考え始めたら終わりですねぇ」

 

思案する事を止めた男は、女が去ったのと逆の方向へ歩いて行く。

その歩みには、お前達とは相容れない、というメッセージが見え隠れしていた。

男は再び狂気に染まったその顔のまま、口の端に付いた血を舌で舐めとった。

 

「頭を空っぽに、ただ気持ちの良い方へ」

 

血塗れの男は、のらりと歩く。

 

「さて、次はどうしましょうか」

 

男の口は、三日月の様に鋭く引き裂かれていた。

 

 

 

 

 




シリアスじゃないと締められない症候群にかかった花弁です。

さぁ、まだクラスすら明かされてないのが出てきました。
なのでここでヒント、アーチャーのスーツは変装ですが、彼のスーツは素の格好です。

それと、活動報告欄でエル君を男装か女装のどちらで通わせるかのアンケート取ります。
よろしければ投票お願いします。

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