男性保護特務警護官~あべこべ世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です! 作:takker
――主から命令を受けた月美は、情報収集のため、男性用待合室があるフロアへとやってきた。
「はあ……主様はかっこよくて素敵だけど、人使いが荒いのですよー。ぶーなのですよー」
ぶちぶちと愚痴りながら、移動中に買ったパック牛乳のストローを口にくわえる。
まずは待合室にいるであろうタクティクスメンバーたちの聞き取りから――と思いきや、まさかの即ビンゴ。
メンバーのうち数人がしっかりと
しかも、鼻息荒く、
体力測定会場は検診と違って、付き添いの警護官以外も出入り可能なので話題沸騰だったとのこと。
そのメンバーも話を聞きつけ、見学に行ったクチであった。
「ええ、それはもう神崎朝日
「ちょっと何言ってるかわからないですよ」
その神崎朝日様とやらは、あちこちで
メンバーたちは、まるで神話に出てくる美の男神でも見てきたかの口調。目はハートマーク。頬を紅潮させ、恋する乙女がごとき興奮状態だ。
こいつら……本当に屈指の武闘派で知られる
力説を続ける彼女らに、冷たい視線をジトッと送る月美だった。
「あー、はいはい。もうわかったですよ。充分ですよ。それで、その神崎さんはどこの待合室にいるですよ?」
「はい。十番ルームで、たくさん男性方に囲まれていましたよ。やたら目つきの悪いMapsが一人、やたらベタベタ神崎様にまとわりついてるんで、ひと目でわかりますよ。あのクソ女、ちょっと神崎様の担当だと思ってやたら調子コキやがって……」
「その情報やたら私怨が混ざってるですよ」
その後もしつこく話が終わらないメンバーを雑にあしらって、月美はさっさと待合室をでる。
目的は話題の本人が滞在する待合室だ。月美は足取りを早めた。
――目的地へ到着。
待合室に入ってから中を見渡す……確かに、数人の男性が部屋の左隅に集まって歓談している。
きっとあの集団だ。
月美は抜き足でこっそり近づいき、聞き耳をたてる。
グループの中心にいる男性が、やたら賞賛され話題にされているようだ。なるほど、彼が噂の『神崎様』なのだろう。
するすると警護官たちの間を抜け、”彼”が見える位置まで移動した。そして――。
「はああああああっ!?」
ビシィッ! 分厚いメガネのレンズにヒビでも入ったかの衝撃。
飲みかけのパック牛乳は左手からするりと抜け落ち、床に転がる。
「……なっ、なっ……なん、なのですよ……アレ? お、おとぎ話に出てくる王子様? ……なの……ですよ」
創作でしか見たことのない美形。これは自分の目がおかしくなったのか?
メガネをはずして瞳をこする。身体はかなしばりにでもあったかのようだ。
――ちなみに髪型などはアレだが、メガネをはずせば姉とは違って可愛い系美少女だったりする月美である。
それはさておき。なんとか気を取り直して、月美は待合室を後にする。
その足であちらこちらに聞き取り調査をした結果、恐ろしいことに記録は全て事実。
さらには十一番ルート壊滅事件も浮上。
独自の情報網も駆使して、彼が特殊保護対象男性であること。それから外国人であることはわかった。
だが、それ以上の情報は恐ろしいほどにガードが堅く、調べ切れない。
どちらにしても、素直に報告したところで、信じてもらえる気がまったくしない調査結果……。
朝日のあまりもにあまりなハイスペックさに、月美はロビーで一人頭を抱えてしまう。
「こ、こここ、これは困ったですよ。記録もほんとにほんとだったですし……いったい何者ですよ、あの超絶素敵王子様は? めちゃかわいかったですよ……ふへへ……うふふ……っ!? ――おっと、いかんいかんですよ。月美は主様一筋なのですよ。でも……コレ……どうやって報告するですよおおおおお」
とにかく、できるだけオブラートに包んで主へ報告しよう。
でも、あのとんでも情報をどうやってオブラートに?
頭痛を覚えながらトボトボと歩く月美であった。
◇◆◇
――それから少々時間は経過する。
一方で朝日たちは、待合室からロビーへと退避していた。
「んんんんんんっ……つ、疲れたぁ」
「うん。朝日君お疲れ様」
朝日はぐっと伸びをする。待合室で顔をあわせた男性たちは、思いのほか好意的だった。
しかし、とにかく質問攻め。
どこから来たのかに始まって、家族構成、好きな食べ物、趣味、と定番どころはことごとくである。
「こんなにしゃべったのいつ以来かな……はは」
「でも、朝日君。うまくおはなしできてたよ」
とにかく朝日は愛想よく、そして無難な身の上話に終始した。
その甲斐あってか、数人とはメールアドレスの交換をする程度に仲良くなれた。
「それにしても途中の
というのは、ある男性が朝日の
まあ、どこの世界でもたまにある話だが、この世界ではワケが違った。主に女性たちの反応が。
――
それまできっちりと仕事をこなし、静かだった周りの
ぶっちゃけドン引きだった。
「こほん……で、朝日君。実際のところは?」
「えーと、それは――って、ちょっと!? うっ、しかも深夜子さんなんでメモ出してるの?」
「ふっ、もちろん妄想の――」
ジトッ、と朝日は少し冷たい視線を向けてみる。
「ナンデモアリマセヌ」
うーん、この世界では百合的なアレになるのか? 苦笑するしかない朝日。
そんな不健全なテーマは別にして、最大の話題になったのは、やはり自分の体力測定結果についてだ。
これの言い訳には苦労した。
「特別身体を鍛えてるわけじゃ無いんだけどね」
「あれは誤算。朝日君の体力とか筋力とか初めて知った。これは今度家でじっくりゆっくりねっとりべったり身体を隅々まで調べるべき。あたしと二人きりで」
「いや、今日もう全部調べたでしょ」
「くっ!」
堂々とセクハラ宣言する深夜子をさらりとかわしたところで、朝日はふと気づく。
軽いトラブルはあったものの、健康診断はもう終了している。
事前の打ち合わせでは、すでに五月と梅が合流しているはずなのだが……。
「あれ? まだ、五月さんと梅ちゃん戻って来ないね」
「ん、そう言えば。うーん、これはちょっと時間かかりすぎ。メールしてみ――」
では連絡を取ろうと、深夜子がスマホを取り出したその時。
「やあ、キミが神崎朝日クンだね。ちょっとボクと話をさせて貰えないかな?」
背後から男性の声。
朝日たちが振り返った先には、花美、月美を先頭に、タクティクスメンバーを十名ほど連れている海土路主たちが立っていた。
「やあ、はじめまして」
花美と月美の間を通り抜け、髪をかきあげながら余裕ぶった態度と口調で、主が朝日の前へと出てくる。
「!? へ、へぇ……なるほど。あながち噂も……大げさって訳じゃなかったようだね」
――がくっ。
「外国人、とは聞いていたけど……これはボクも驚いたよ」
少しオーバーアクション気味な手ぶりをみせつつ腕を組む。
――ずるっ。
「ふん、その身体つきなら……なるほどあの記録も――」
――ずるりっ。
「……のう、主殿。足腰が立っておらぬでござるぞ?」
ふんぞり返った体勢での強気なしゃべりとは対象的に、驚きと動揺からか……体はうしろへ倒れ込む寸前で花美に支えられていた。
「う、うるさいぞ花美! こ、これはアレだ。体力測定の疲れがでたんだ」
なんとなく面倒そうな人たちだな……が朝日の感想。そうは言っても、無視をするのもまずいだろうと考える。
「え、えーと……あの――」
とりあえずは笑顔をつくって、恐る恐る声をかけてみる。
――が、その途中で体勢を戻した主に話をさえぎられた。
「おっと、すまないね。ボクはこんな所で立ち話をするつもりは無いんだ。さあ、神崎クン。待合室にでも入ろうじゃないか。――おいっ、誰か飲み物を買ってこい!」
こちらの意向確認など無し。主が強引に待合室への移動をすすめてきた。
押しの強さに一瞬迷ってしまったが、ここは深夜子に確認するべき場面だろう。
朝日は視線でうかがいをたてる。すると、深夜子は無言で
様子見との判断に、あとを追って待合室へ入る。
すると、先ほどまで話をしていた男性たちが、主たちの登場に気づき、それとなく距離を取りはじめる。
いっしょにいる自分を意識はしてくれているようだが、『触らぬ神に祟り無し』なのだろうと朝日は理解した。
そんな周りを歯牙にもかけず、主は王様的態度で警護官たちを引き連れ奥へと進む。
広めのテーブルを見つけると、備え付けのソファーにドカッと腰をおろした。
その両横に花美と月美が、後ろ側には残りのメンバーがずらりと整列する。
朝日が向かい側のソファーに座ると、深夜子がかばうように左前側に立った。
お互いが座って一呼吸。
ソファーにドンと背もたれて、両手を