男性保護特務警護官~あべこべ世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!   作:takker

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第二十七話 五月の決意

 ――時間は少し巻き戻り、こちらは春日湊のMaps駐在所。

 深夜子と五月が相談中である。

 

「それにしても……大和さんには困ったものですわ。まさか、通信を切ってしまわれるとは……本当に大丈夫ですの?」

 

 どの道、音信不通のまま、梅を放置することはできない。

 深夜子が単独で現場に急行。梅と合流し、その時の状況で対応は考える。

 五月は朝日の安全最優先で駐在所(こちら)に待機。

 この方針で相談は進んでいた。

 

「んー。怒った梅ちゃんはけっこーヤバいかも。むしろ月美(つきみん)たちの命の危険が危ない」

「はぁ……、それはともかく時間もありませんし、お願いしますわ。深夜子さん」

 

 大和さんを焚き付けたのは何処の誰でしたでしょうか? とツッコミたい気分の五月ではあるが、時間が惜しい。

 

「らじゃ、あたしが梅ちゃん迎えに行くから。五月(さっきー)は朝日君とお留守番を……ん? 朝日君と……あれ? ……お留守番?」

 深夜子の語尾がだんだんと濁る。何やら考え込んで、動きが止まってしまう。

 時間を気にする五月。不思議に思った朝日。停止した深夜子へと声をかける。

「どしたの? 深夜子さん」

「深夜子さん、どうなされまして? 時間がありませんのに――え? な、なんですの?」

 

 深夜子は五月をじろじろと見回しつつ、考える。 

 この駐在所は事前の使用申請をしており、本日は貸し切りになっている。

 つまりは、今から深夜子(じぶん)がここを出ると言うことは……。

 

「二人きり? ……朝日君と五月(さっきー)が二人きり!? …………やめた! やっぱ五月(さっきー)行って!」

「「なにそのわがまま!?」」

「と、とんでもない理由でごねないでくださいませっ! ……深夜子さん?」

「ねえ、五月(さっきー)?」

「こ、今度はどうされましたの? あの……よろしくない目つきが、さらによろしくなくなってますわよ」

 詰めよる五月にもおかまい無し、それだけで人を殺せるような視線を向けると――。

「あたしが出ていった後で……」

 

 ――深夜子は一人芝居を始めた。

 

『朝日様。やっと(わたくし)と二人きりになれましたわね。ですので、正直に申し上げますわ。本当は、大和さんも深夜子さんも、やつらには勝てませんの』

『ええっ!?』

 そう言って動揺させてから、五月(さっきー)が朝日君の肩に手を添える。

 しかも、手つきがいやらしい。

『朝日様、よく聞いてくださいませ。実は……深夜子さんは戦い行ったのではありませんの。損害賠償金の交渉に行ったのですわ』

『そ、損害賠償? え? お、お金……の話?』

『そうですの……それと、残念ながら最終的には、朝日様が十億円以上をお支払いする必要が出るかと思いますわ』

『十億!? そっ、そんな! 僕、そんな大金持ってないよ……』

 ああ、なんて可哀想に!

 突然の血も涙もない話に、驚き、怯えてしまう朝日君。

 その背後で五月(さっきー)は、計画通り! とばかりにニヤリと笑みを浮かべる。

 もちろん、いやらしい笑みで。

『ふふ、うふふふふ、そうですわね。それでは(わたくし)が、そのお金を肩代わり(・・・・)して差し上げますわ。朝日様』

 しらじらいセリフ!

 さらには、肩に置かれてた五月(さっきー)のいやらしい手が、いやらしい動きで朝日君の胸元へ。

 あーいやらしい。

『でも……でもっ、僕、そんな大金を……借りたって……返せないよ』

 ひどい。絶対にひどい。

 ついには絶望のあまり、泣きそうになる哀れで不憫な朝日君。

 その耳元では、五月(あくま)がいやらしく(ささや)き、いやらしく手をシャツの中へ。まさに外道!!

『あらあら? ご心配なさらずにぃ、そんなことはごさいませんわぁ~。あるではありませんか? 朝日様には、(わたくし)にお金を返す代わりの……そ、の、お、か、ら、だ、が』

 

「……とかしちゃダメ」

「しますかああああああああああああああっ!!」

 

 あまりの馬鹿馬鹿しさに、途中でツッコミを入れることすら出来なかった五月であった。

 

「深夜子さん。声真似うまい……」

 声帯模写、のみに焦点を絞ると中々のクオリティ。実に無駄なスキルですね。

「むっ、むっ、無駄な妄想をしている暇があったら、早く大和さんの元に向かって下さいませーーっ!!」

 もちろん、おかんむりの五月。

 最早ここまで(ダメだこのアホ)、力づくで出発を促すしかない。

 はよいけ。とばかりに背中を押すも、深夜子はぐちぐちとしつこい。

五月(さっきー)、朝日君といちゃいちゃしない留守番をよろ」

「するわけありませんでしょっ!」

 ほんとにこのアホは……。

 五月が呆れていると、そこへひょいと朝日が、割り込んできた。

「あのさ、深夜子さん。五月さんにそうは言うけど、僕と二人でゲームしてる時って、よく――」

「ふおわああああ! ストップ朝日君。じゃ、行ってくる。すぐ行ってくるから!」

 朝日の言葉に、電気でも走ったかのような反応を深夜子が示した。

 見本のようなあたふたぶりだ。

「深夜子さん? 貴女……」

「ナンデモナイヨー。スグニイッテクルヨー。ミヤコダヨー」

 

 ひきつった笑みに、大量の顔面脂汗。

 つい今しがたまでのごねっぷりは何処へやら。深夜子は逃げるように、梅の元へと出発していった。

 

 

 ――深夜子を見送ったところで、昼食にしようと五月が提案する。

 気がつけば、すでに時間は午後一時を回っていた。

 

「はああぁ……これだけのことに、どうしてこの疲労感……」

 ため息まじりながら、五月は手際よく弁当をテーブルに準備する。

「あはは。五月さんお疲れ様です」

 朝日が慰めの言葉をかけると、五月は真面目な表情へと変わる。

「あ、朝日様……(わたくし)は、少し野暮用(やぼよう)がありますの。ですので、こちらで先にお昼を食べて、お待ちいただきたいのですわ」

 

 いっしょに食事かと思えば、五月にしては珍しい申し出。

 しかも、なんとなく深夜子による精神疲労とは別の、思い詰めたようなものを朝日は感じた。

 

「えっ? それなら待ちますよ。あと、何か僕に手伝えることが――」

「いえいえ。たいっ、へんっ、嬉しいお言葉ですが、それには及びませんわ。何より朝日様の為でしたら、この五月。たとえ火の中、水の中ですの! どうぞお気になさらずに、おほほほほほ」 

「は、はぁ……」

 やたら古典的な例えを口に出し、ごまかし気味に五月はそそくさと別の部屋へ行ってしまった。

「五月さん。どうしたんだろ……」

 気にはなるが、実際に自分が手助けできることなどあまりに少ない。朝日はそれを自覚している。

 とりあえずは、弁当に手をつけることにした。

 

◇◆◇

 

 一方、こちらは別室の五月。

 デスクの上で、祈るように両手でスマホを掲げ、突っ伏していた。

 

「はああぁ……。ほんっ、とうっ、に気が進みませんわっ!」

 

 つい、口から本音が漏れる。

 どうにも、相当、できれば、やりたくない。とは言え……そうもいかないのが現実だ。

 目を閉じる。

 気持ちを整理するため、五月は深夜子と梅にすら話していない矢地との会話を思い出す――。

 

『えっ? 男権が……ですの!?』

『ああ、そうだ。知っての通り、海土路造船は毎年男権にかなりの額を寄付している。そちら側からの圧力は必然とも言える』

『そうなりますと……』

『うむ。仮に、深夜子か梅がタクティクスを潰したとしても、揉め続ける(・・・・・)可能性は否めん。海土路の社長もさすがの手練れだよ。息子のやんちゃに慣れてると言うべきか……いや、もちろん男性保護省(われわれ)も対抗措置を――』

『いいえ、矢地課長。(わたくし)がなんとか致しますわ!』

『なんだと? 五月雨、お前何をするつもりだ?』

『ですから、その件は(・・・・)(わたくし)に一任くださいませ。必ずや朝日様をお守りしますわ』

『おっ、おいっ、まさか? 待て! 別に私はお前にそんな――』

 

 すでに啖呵(たんか)は切った。

 何よりも愛する朝日のため!

 五月はこれ以上ないくらい肺に空気を吸い込み、意を決してスマホを操作した。

 その連絡先は……。

 

『はい、こちら五月雨ホールディングス社長秘書室。播古田(ばんこだ)がお受け致します』

「お久しぶりですわね、蘭子(らんこ)さん。五月ですわ」

『――っ!? お、お嬢様!? こ、これは、お久しゅうございます。突然このようなお電話に何を――』

「お母様はいらっしゃいますの? ……五月の、五月の一生に一度のお願いがある――と伝えて下さいませ」

 

 五月の実家が経営する。国内でも有数の大企業『五月雨ホールディングス』であった。

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