男性保護特務警護官~あべこべ世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!   作:takker

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本日、二話目です。


第四十三話 朝日を救え!看病大作戦!(後編)

 作戦行動開始!

 まずは明かりを常夜灯に切り替えて、限界まで光量を落とす。

 深夜子と五月はその上でサングラスを装着し、ギリギリの状態で視界を確保する。

 そして二人に、梅が指示を出すという段取りである。

 

 朝日を起こさないように、小声で確認を取りあいながら作業を開始だ。

 

(よし、じゃあ上着から行くぜ。最初は深夜子からだな、俺が朝日をささえっからよ。うまく脱がせてくれ)

(らじゃ。それでは)

 

 一番手は深夜子。

 五月を後ろに待機させて、震える手で朝日の上着を脱がしはじめる。

 暗がりでプチプチと上着のボタンをはすず行為、手に伝わってくる胸の感触。

 こいつはやべえ! それはもう情欲が煽られないはずがない。

 だが、それすらも折り込み済みなのがこの作戦なのだ!!

 

(よしっ、ぬっ、ぬげたぁ! さっ、五月(さっきー)タッチ!)

(りょ、了解ですわっ!)

 

 上着を脱がし終わった瞬間に、すばやく五月と交代する。

 そのまま音を立てずに転がって部屋から廊下へと離脱!

 猛ダッシュで一気にある場所(・・・・)へと駆けだす。

 

 それこそが本作戦の要『煩悩冷却用氷風呂』だ。

 

「ぬおおおおっ! そいやっ!」

 

 氷風呂、深夜子飛び込む、水の音。

 

「あぴゃああああ! ちっ、ちべたいいいっ! でも回復! 回復ゥ!」

 

 煩悩退散(かいふく)と同時に、氷風呂から飛び出て朝日の部屋へとリターン。

 当然、廊下では鼻血を滴らせつつ、おなじく猛ダッシュの五月とすれ違う。

 

「ひいいいいっ! つつつめたいですわぁ! でも朝日様ぁああのためにいいっ!」

 

 深夜子の耳に、背後から聞こえる五月の悲鳴。

 ちょっと氷が多すぎた気がする。誰がいれたの? ――などと考えている間に、上着とシャツは交換完了。

 ズボンを脱がして、最後にして最大の砦『トランクス』まで到達した。

 担当は自分だ。深夜子はしっかりと目を閉じて深呼吸、梅の誘導にしたがって朝日のトランクスに手をかける。

 

 あっ、これ、まずい。やばすぎる。

 手に伝わる腰の感触、少し高めな朝日の体温。深夜子の理性にひび割れが入る。

 これを下ろせば……下ろしちゃうと? 朝日君の(検閲削除)? 

 尋常ではない緊張、無駄な妄想が頭を駆けめぐってしまう。

 いや、待て! もしも、もしも、朝日がこの事実を知ったら? どうなる――。

 

『深夜子さん……深夜子さんは、僕のことを辱しめたんだね』

『んなっ!? 何を言ってるの朝日君。あたし、病気だから仕方なく』

『でも、見たんだよね……僕の産まれたままの姿を、薬で寝てる間に容赦なく服をはぎ取って……それはもう、ねぶるように、たっぷりねっとりと見たんだよね……』

『ちっ、ちが――ッ!? 朝日君!! その先は崖。だ、ダメだよ? なんで?』

『サヨナラ、深夜子さん。こんな辱しめを受けてしまったら僕は……もう……』

『いやあぁあああーーーっ!!』

 

(無理。五月(さっきー)代わって)

(いったい何事ですのおおおーーっ!?)

 深夜子、突然のギブアップ宣言にワケがわからない五月がキレる。

(と言うか、貴女がご希望されましたわよねっ! 朝日様のさ、ささ最後の一枚をっ!)

(おいっ! 静かにしろっつってんだろうがっ!!)

(じゃあ梅ちゃんして)

(アホかぁ、だから静かにしろっつーの!)

 

 お約束の光景。

 梅も加わって、朝日のトランクスを脱がす役割の押しつけあいが始まったところで……。

 

「ん……んん? ……あ、あれ……僕……なんで……みんな……ど、どしたの?」

「「「ぴぎゃあああああっ!?」」」

 

 結局、目が覚めてしまった朝日。

 この世の終わりとばかりにオタオタする三人に「このくらいの体調なら着替えはできるから……」と、見事な回復力をみせつけたのであった。

 

◇◆◇

 

 深夜子たちが氷風呂コントを披露してから二日が経過。

 

 朝日の体調は予想よりも早く回復に向かっていた。

 微熱が残る程度で、嘔吐もほぼおさまっており、本人は食欲を訴えている。

 なので、消化の良い食事を昼から摂らせることになったのだが……。

 

「朝日君のご飯。あたしが作るから」

「あらあら、深夜子さん……貴女お料理はできまして? それにこんなこともあろうかと、(わたくし)はすでに食材を準備済みですわ。貴女方の出番はありませんことよ」

「おいおい、おまえらじゃロクなことになんねーだろ? 俺が作ってやっから引っ込んでな」

 

 三人が三人とも、自分が朝日の食事を作ると主張して激突した。

 

 さらに、何故かはわからないが、それぞれが朝日の食事を作って、柊と鳴四場が審査する料理バトル漫画のごとき流れとなってしまったのだ。

 朝日がある程度回復したとたんにコレである。

 仕方なしに審査員を引き受けた柊たち。

 彼女らの待つ客間に、先陣を切ってきたのは深夜子であった。

 料理を乗せた広めの丸皿をテーブルに置く。

 丸皿(・・)の時点で、すでにいい予感はしない。それに乗ってるモノを見た柊が、こめかみを押さえながら口を開く。

 

「……君たちMapsは確かに優秀だ。そして医療に関しては、我々医師に患者を受け渡す(・・・・)までに特化している。それはわかっている。……だが、だがね。これは一体なんなのかね?」

「ふ、生地はご飯をやわらくして作った!」

 

 ふふん! と鼻息あらく、自信満々に右手をサムズアップの深夜子。

 確かに米が原材料であろう白い円形の生地が、こんがりと香ばしい匂いを漂よわせ、皿に乗っている。

 

「ほう……で、その生地とやらに乗っている具材は何かな?」

「有機栽培のトマトソースと三種のチーズ。身体にいい!」

「……ピザだな」

「……ピザですね」

「「胃腸炎から回復中の患者がピザを食べれるかーーっ!!」」

 

 深夜子落選。

 

「えー? ピザは総合栄養食……」

「そう思う君は自身の食生活を見直し(たま)え」

 

 まあ、予定通りに深夜子が撃沈。

 すると、次は何やら厚手の手袋をはめ、アツアツの土鍋を持った五月が登場した。

 それを見た鳴四場の眉間にシワがよる。

 

「土鍋……ですか? これは……」

「もちろん。朝日様に食べていただく『雑炊』ですわ!」

 

 雑炊と聞いて、少し安心する鳴四場だが「さあ、ご覧あれ!」と、こちらも自信満々の五月が蓋を開けた瞬間。

 柊たちの表情が凍りついた。

 

「ほう……で、この具材は一体なんのつもりかな?」

「それはもう、朝日様に栄養をつけていただく為に取り寄せましたフグとアワビ。それと今が旬のイワガキ。さらに北海区から直送のウニとイクラをお好みで……あっ、もちろん、出汁は精のつくスッポン! 五月特製『愛の海の幸まる雑炊』ですわ!!」

「正気かね?」

 

 五月落選。

 がっくりと落ち込む五月を横目に、最後は梅が少し小さめの鍋をもって現れた。

 すでに疑いの眼差しの柊が、気だるそうに確認をする。

 

「はぁ……それで次はなんだね? プロテイン入り煮込みうどんでも持ってき――」

「あん? 何言ってんだ? 普通、病人にゃお粥だろ。朝日もまだ本調子じゃねぇしよ……つっても二日も食べてねぇからな。少しは塩っ気のあるもんがいいと思ってよ。雑炊風に出汁が取ってあんぜ」

 

「「「「えええええっ!?」」」」

 

 意外ッ!

 

 日頃は怠けてそんなそぶりは全く見せていないが、実は梅はいわゆる下町育ち。

 三人いる妹の面倒をよく見ていたので、この手のスキルは深夜子たちの中で群を抜いていたのだった。

 

「むうっ、薄味ながらしっかりと旨味が感じられる。ご飯のやわらかさも適度……完璧と言わざるを得ない」

「すごいですねコレ。病人食とは思えない」

「へへっ、だろ?」

 さも、当然とばかりに梅が控えめな胸をはる。

「あわわわわ、これ、そんな、梅ちゃん……ふぐぐ、梅ちゃんのクセに……そうだ! これはきっと悪い夢」

「くっ、こんな……大和さんにできる訳が――――ハッ! 雇った……雇いましたわね? プロをッ!?」

「てめえら俺をなんだと思ってんだ!?」

 

 味見をして、全員がその完成度に驚愕する。

 

 もちろん結果は梅の圧勝。

 副賞として『朝日にご飯を食べさせてあげる権』も贈呈された。パチパチ。

 じゃあ、茶番も終了したことで、とみんなして朝日の部屋に向かおうとした時、鳴四場が柊の肩に手を添えて軽く声をかけた。

 

「ところで隊長」

「なんだね?」

「ついつい言い忘れて(・・・・・)ましたが、早朝に立花(たちばな)総隊長からお怒りのメールが入ってましたよ」

「なん……だと……!?」

 

 しれっと梅たちの後ろついて、朝日の部屋に向かおうとしていた柊が、ぎこちなく振り向く。

 

「まあ、隊長が三日も空ければそうなりますね」

 とてもいい笑顔の鳴四場である。

「ぬっ、くっ……わかった…………寝待君、五月雨君、大和君。済まないが我々はこれで失礼させてもらおう。朝日君にもよろ――」

 

「「「「朝日君!?」」」」

 

「おっと、い、いや失礼! か、神崎君にもよろしく。ほら鳴四場、出るぞ、帰るぞ! ハハハハハ――」

 

 全員からの冷たい視線が柊に集中する。

 そう、実は経過観察中に朝日と仲良くなり、ちゃっかりメアド交換までしていた彼女。

 無論この事実は後日、看護十三隊内にて発覚。

 しっかりと吊るし上げを食らうことになるので、ご安心いただきたい。

 

 ――それはさて置き。

 いそいそと帰還していった柊たちを見送ってから、梅が朝日の昼食を準備する。

 病人の世話も妹たちで経験済みか、さすがに手馴れたもの。

 

「ほら朝日、食べさせてやっから」

「あ、うん。ありがと梅ちゃん、へへへ」

 

 ベッドに腰掛け、スプーンのお粥をふーふーと適度に冷ます。

 照れ臭そうな朝日に、これまた照れ臭そうに梅が食べさせては世話を焼く。

 

「あっ、そういえば……僕がトイレで倒れてた時に梅ちゃん泣いてなかった?」

「んなぁ!? な、泣いてねぇし! お、俺が泣くわけねえだろ。俺を泣かせたらたいしたもんだぜ」

「あはは。だよね。梅ちゃん強いもんね」

「あ、当たり前だっつーの」

 

 朝日の部屋で、心温まる二人のやりとり。

 それを扉の隙間から、深夜子と五月が土偶と埴輪のごとき能面で見つめている。

 

「ああ、朝日様……あの二人の世界……ぐぬぬ」

「勝負の世界は厳しい。無念……ところで五月(さっきー)の雑炊うまし」

「ふううぅ、今さらですがドッと疲れが……はぐっ、あら? このピザ意外とおいしいですわね……でも、残念、もぐっ……でしたわ」

 

 お互いの料理を交換して、やけ食いながらも満足する二人。

 とりあえずは一段落。平常運転に戻る朝日家であった。




第四章 やはり美少年との日常は甘くて危険らしい ―完―
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