男性保護特務警護官~あべこべ世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です! 作:takker
さて、深夜子と梅が見守る中――。
パソコンに必要な情報入力と接続を完了させた五月。(朝日写真集の効果で)テンション高く、調査開始を宣言する。
「さあ、本気を出した
――そう言えば、そういうお話でしたね。
さっそくバチバチと音を鳴らして、五月はキーボードを軽快に叩きはじめた。
パソコンモニター、タブレット、押収品したスマホ。
それぞれに凄まじい勢いで表示されるデータを、一文字残さず精査していく。
「ふふ、たかが一介の探偵如き。過去の依頼データを余さず解析して、すぐに依頼主を特定して差し上げますわっ!」
まずは下ごしらえ完了。
続けて五月はスマホの操作をしながら、タブレットを確認。
「履歴データは……なるほど、仕事の依頼はスマホでやり取りされていますわね」
順調。独り言にも力が入る。……先程から深夜子たちに、どん引かれてる感じもするが、気にしない。
それから数分。
五月は目的のデータへとたどりついた。思わず声も表情も明るくなる。
「見つけましたわよっ! さて、こちらに転送して……データを解析に……ん? やたら固いですわね、このプロテクト…………やっと一部表示……あら? このIPアドレス……どこかで……」
「どうした五月。何かわかったのかよ?」
「いえ、そうではありませんわ。もう少しお時間はかか……なぁっ!? こっ、この暗号形式……」
目に映った情報に、思わず驚きの声が漏れてしまう。
そんな馬鹿な? 五月はデスクに両手をついて、パソコンモニターを凝視する。
よぎる嫌な予感。ふぅーっと、たまった息を吐き出す。
デスクに肘をつき、両手を口の前で握り締めて精神集中。今一度、データの精査を開始だ。
「おい、深夜子。五月のヤツ大丈夫なのか? 喜んだり驚いたりよ……」
「んーわかんない。けど、ブツブツ独り言とかちょっとキモい」
「いや、そりゃいつものお前だろ!」
「えー」
一方、こちらは後方で五月を見守る深夜子と梅。
先ほどから、何が起きているのかさっぱりわからない。
しかしながら、モニターを凝視する五月の顔色がどんどん悪くなってきているので、なんとなくは察することはできる。
「――――ッ!? こっ、これはっ!!」
バンッ! と五月がデスクを叩くように体を起こした。
「
「なんかあったのかよ? おい、五月?」
「いやっ、そんなはずは……くっ!!」
心配する深夜子たちの声も届いてないらしく、焦る五月は乱暴な手つきでタブレットを確認している。
再びパソコンのモニターに向かうと、ブツブツと難しい専門用語をつぶやきはじめた。
ついには左手でキーボードを打ち、右手でスマホを操作している。
「そんな、まさか……あはっ、あははは」
最終的には乾いた笑い声をあげ、顔を引きつらせながら、五月はパソコンモニターの前にがっくりとうなだれた。
これは大丈夫なのか? 事態がまったく把握できない。
深夜子と梅は、顔を見合わせて首をかしげるだけで精一杯。
ここはなんと声をかけるべきか……二人が口を開こうとしたその時。
――五月
「うぐうっ……や、やっぱり……ですのね……」
連絡相手が表示されているであろうスマホの画面を見ながら、五月はこれ以上無い渋い表情をしている。
だらだらと汗を流して固まっていたが、ついには通話に応じた。
◇◆◇
「はい……五月……ですわ」
『もしもしー、あらーお久しぶりねー。五月ちゃん元気にしてたー? ママですよー』
「やはり……ですか……お母様」
『えー、もしかしたらーってお電話してみたけどー。やっぱりもうわかっちゃってたー? さすが五月ちゃーん。えらいわねー』
電話相手は
データ解析の最中、最初は気のせいだと思った。途中からは気のせいであってくれと願った。
しかし、五月の願いは容赦なく潰える。
朝日の調査依頼主。依頼メールの発信元こそが、解析に使用している
つまりは、五月雨ホールディングスとなっていたのだ。
それでも、せめて関連会社止まりで、などと淡い期待をしながら最終解析開始。
結果はしっかり『発信元:五月雨ホールディング社長秘書室』な上、トドメに暗号形式で『やったね五月ちゃん!』の表示がでるオマケプログラムまで仕込んである始末。
完全にやられた。顔色も悪くなると言うものだ。
で、挙句の果てには接続をあっさり逆探知され、電話までいただけた。
ともなれば、完全に
「お母様っ! 一体、な、なななななんのつもりですの!? こっ、このような犯罪者のマネごとなどを!?」
当然、五月の返事はこうなる。
『んもー! 犯罪者さんなんて、五月ちゃんひどーい。だってー、五月ちゃんたらママがいくら言ってもー、朝日ちゃんをおウチにつれて来てくれないんだからー。もう、ママったらさみしくってー、毎日毎日シクシク泣いてたのよー。だからーつい――――プッ』
通話終了。むしろ切断。
五月はとてもさわやかな笑顔で、深夜子と梅の方へとふり返った。
「まちがい電話でしたわ!」
「「絶対嘘ッ!!」」
実に正確な指摘をされてしまうと同時に、五月のスマホから再び呼び出し音が鳴り響く。
「もう……しつこいですわねっ! もしもし、お母様。いいかげ――」
『くぉらああああっ、五月ぃ!! おっどれ、誰の電話を途中で切っとんなゴラァ!? ええか、ワシの堪忍袋の緒にも限度があるっちゅうとんじゃあボケぇ! おどれ、いつになったらワシんとこにボン(※朝日のこと)をつれて来るんかい? あ゛あ゛ぁ!?』
「ひっ、ひいいいいいっ!? す、すすすみません! お母様っ! お、落ち着いてっ、落ち着いてくださいませーーーっ!」
一瞬にして顔から血の気が失せ、己の母の気性を五月は思いだす。
すぐさま謝罪モードへと移行。
なんとか電話口で新月をなだめるが、そこから朝日に関しての話題に切り替わる。
一進一退。
連れてこい。それは無理。の押し問答が続いた。
『んもー、五月ちゃんてばいじわるー。しょーがないわねー、じゃあママはー、最後の切り札をつかっちゃいまーす!』
「はぁ!? き、切り札?」
しびれを切らしたのか、新月が怪しげな宣言をしてきた。
『そーでーす。五月ちゃんがー、朝日ちゃんをおウチにーつれて来てくれないならー。このデータを朝日ちゃんやー、五月ちゃんのお友達にー送っちゃうんですー!』
そして電話口の向こう側から聞こえる機械の操作音。
なんのつもりかと思えば、録音音声らしきものが聞こえてきた。
【えぐっ……ママ、あのね。五月にね、すごい意地悪する人たちがいるの……海土路造船って言ってね……それでね、それでね……ひぐっ……五月のね、大好きな人――】
「ひええええええええっ!? スッ、ストーーーップ! ストップですわーーーお母様っ、わかりました! なんとか、なんとかしますからっ!!」
これは投了もやむ無し!!
『あらー、やっとわかってくれたのねー。五月ちゃんはーやっぱりいい子ねー、大好きよー。じゃあ、来週ママはお休みをとりまーす。そうねー、二泊三日で朝日ちゃんとーおウチへお泊りしに来てくださーい。あっ、詳しくは後で蘭子ちゃんに聞いてねー。じゃあ、楽しみにしてるわねーうふふ。ばいばーい』
「あ……ああ……」
全身から力が抜け落ちる。
五月は震える手でスマホを握り締めながら、がっくりと床に崩れ落ちた。
「おい五月。まあ、とりあえず説明しろよ。一体何がどーなってやがんだ?」
「そう
もちろん梅と深夜子から質問が入る。
まあ、そばで会話を聞いていたとは言え、二人に内容が理解できるはずもない。
しかし、あれをどう伝えるべきか……いや、そもそも――困り果てる五月。が、全容を説明する以外に道はない。
「うっ……うううう。そ、それが……その……実は――」
ポツポツと死にそうな声で、語りはじめる五月であった。
――すべての原因はタクティクスとの闘い。男事不介入案件において、海土路造船の押さえ込み交渉を新月に依頼したことにある。
五月はその時に、新月へ軽い口約束をした。
いずれ朝日をつれて挨拶に行く。と言う内容だ。
母である新月は、国内でも指折りの有力者。それが、いち
その時はすぐに忘れてしまうだろう、程度のつもりだったのだ。
確かに以来何度か、秘書室長の
ところがこの子供にして親あり。
話の流れから、朝日の身の上に興味を持った新月は、独自ルートを駆使して機密であるはずの朝日の詳細データを入手。
それを見て、すっかりご執心になっていたのである。
「はああっ!? お前の実家に朝日をつれて行くだあ?」
「マジで? ……
「ど、どうしましょう? ……あ、あさひさまぁ」
どうする五月!!