男性保護特務警護官~あべこべ世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です! 作:takker
苦手な方はご注意ください。
――あわただしい初日も終わり、全員が寝静まった深夜〇時を過ぎた頃。
大広間で寝ていた深夜子が、布団からもそりと出てきて「むう……暑い……」とこぼしながら
季節は冬だが、室内は暖房がよく効いており少し暑い。
日頃あまり酒は飲まない深夜子であったが、今回朝日のお酌に加えて、プレミアム大吟醸の恐ろしく良い飲み口が災いした。
果実酒を思わすほのかな
思わず
就寝時の部屋割りは、五月と梅が入り口近くの和室、朝日が奥側の和室。
深夜子は入り口の警戒役も込みで大広間――だったのだが、真っ先に撃沈して気がつけば布団の中であった。これは不覚。
ちなみに五月は一升瓶をおかわり、梅はビールの大瓶を十本以上空けていた。どうかしている。
そんな状況を思い出しつつ、深夜子は自分の体調を確認をする。人より肝臓の働きが良いのか、酔いは抜け始めていた。
すんすんと身体を嗅ぐと、アルコールを分解した分だけ汗の臭いも気になる。
あっ、そうだ。――深夜子の目に、ふと風呂場への扉が映った。
大広間は風呂場へと直結。そう言えば食後に撃沈したので風呂に入っていない。
せっかくの温泉、ひと風呂浴びてから寝直そうと考えた。
電気はつけずに部屋のカーテンを静かにあける。
どうせみんな寝ていると、その場でバサリと浴衣、続いてTシャツを脱ぎ捨てる。
深夜子の控えめながら形の良いふたつの膨らみ、ツンとした優しい尖端を、淡い月の光がうす紅色に照らす。
うなじから引き締まった腰まで、筋肉質だがしなやかできめ細かな肌の曲線が、
ショーツ一枚の姿で軽く伸びをすると、深夜子はご機嫌で風呂場へと向かった。
――さすがは男性宿泊施設。風呂場も実に豪華なつくりだった。
せっかくの風景なので、窓のブラインドも全開にして、広々とした
ライトはあえてつけず、月明かりのみで幻想的な景色を楽しむ。
嫌な汗もさっぱりと流れ、酔いが抜け頭も冴えてくる。
身体が温まったところで湯船から上がり、その上段にある温泉が流れ込む石畳へと腰をかける。
天窓から月を見上げ、物思いに
『あれ? ねえ、深夜子さん。なんか鼻にゴミついてるよ?』
『うえ? ゴミ? むう! こんな時に! んー、とっ、取れたかな?』
『取れてないかも? うん。じゃあ僕が取ってあげるよ。こっち向いて』
『そ、そう? はい』
――――そして重なった愛しい朝日の柔らかい唇。
「むへっ、ふへっ、うへへへ」
何度思い返しても色
(むふふ、もしかしたら風呂場のドアが開いて――)
『深夜子さん来ちゃった』
『なっ!? あ、朝日君。どうしてここに? そ、それにバスタオル一枚とかやったね――いや、ダメ、はしたない』
『えへへ、いいの! 今日は深夜子さんの背中を流してあげようと思ってさ』
『せ、背中? ほんと? う、うん、ありがと。お願い……するね』
(最初は普通に背中を洗ってくれる朝日君。だけど……だんだん手が前の方に――)
『ちょっ、ちょっと朝日君!? 前はっ、前は自分でするから!』
『だーめ。僕がちゃんと洗ってあげるから』
『いや、で、でも――うひゃっ!』
『ん? どしたの深夜子さん?』
『や……その、そこは……それに……洗うじゃなくて、朝日く――あっ……』
(そう……言って、あ、さひ君の手が優しく……あたしの、んっ……はっ、……それから人差し指で……あっ、ふぁ――)
『ダメ……朝日君』
『えーと。あっ、そうだ! 下も洗わないとね!』
『し、下? 下ぁっ!? そ、そそそそれはダメ。危険が、危険がデーンジャラス!』
『あはは、何言ってるのもう! 深夜子さんったら。脚だよ、脚を洗うの。すぐに変な想像しちゃうんだから。深夜子さんのエッチ』
『ふえ? 脚? あ、あー、そっか、脚だよね。そうだよね。脚なら仕方ない、うん。あは、あははははは……』
(そう言い……ながらも……朝日君の手は、あたしの……あ、しでな……くて……ふあっ! んっ……して……は……あぁ……んふっ……あ、さ……指が……あんっ……あたしの――)
「ダメ……んっ……あさ、ひ、くん……あさひ、くん……すき、朝日君すきっ! ああっ」
いつの間にか深夜子の肩に置かれていた左手、太腿に置かれていた右手は場所を変え、妄想している朝日の代役を務めていた。
しばしの間、温泉の流れる音に混じり深夜子の切なく
◇◆◇
「や、やってしまった……朝日君を
風呂から上がり軽く浴衣を羽織りつつ、深夜子はそんなことをぼやいている。
どうやらその後の妄想で、攻守逆転展開があったようである。
言葉の割にはやたらスッキリ、成し遂げたぜ! と言わんばかりの清々しい表情の深夜子。鼻歌交じりで帯を乱雑に浴衣に巻いて結び、軽い足取りで布団へと向かった。
「ふんふんふーん。あっ、そだ……あたしの布団の中に朝日君がいて『深夜子さん待ってた』とかもいい……むひゅふふ」
風呂場でしっかり発散したはずなのだが、まだまだ妄想の勢いは止まらない。
引き続き、布団の中で続きを楽しむ気満々。そのテンションと同様に、深夜子はバサリと勢いよく掛け布団をめくった。
「ふえっ!?」
瞬間! 目を見開いて、完全に固まる深夜子。
その目に飛び込んで来たのは、自分の布団ですやすやと寝息を立てている朝日の姿であった。
――果たしてこれは妄想か現実か!?
眼前の光景に、深夜子の思考は完全に停止した。
それから――三分が経過。
(――――ふおわあああああああ)ガツン! (ん゛お゛お゛っ―――――――)ヅゴン! (ふんぐぐぐぐぐぐぐぐ――――――)
本能か、直感か、深夜子は声を殺して耐え忍んだ。
例え動揺して足の小指を机の脚にぶつけ、悶絶して転がった先にあった柱の角で後頭部を打ち付けようともだ。
五月と梅を起こす行為をしてはいけない。
草影から獲物を狙う猛獣がそうするように、今は
――ここから回復までわずか三十秒。気合いが違いますよ。
猛禽類のような目を
(んななななななな!? あ、朝日君!?)
布団の上をまじまじと見つめる。
そこにはすやすやと眠る朝日の圧倒的存在感。酔っているだとか、妄想の続きだとか、そんなチャチなものには断じて見えない!
深夜子は考える。
どうして朝日が自分の布団で眠っているのか? 実は夢を見ているのか?
それとも、朝日を愛するあまりに具現化系の能力に目覚めてしまったのか?
思案しつつ何気に部屋の右手側を見ると、朝日の寝ていた和室の
左手側を見ると、風呂場横にあるトイレの扉から光が漏れている。
………………。
そんな些細なことはどうでも良い。
(うん。よし!)
深夜子の中で、これからどうするかが決定した。
まずは腰の帯をするりと外し、流れるように浴衣を脱ぎ捨てる。ついでにショーツも宙に舞う。
(これは朝日君が本物か調べざるを得ない)
――色々あるが、特に全裸になる必要性を深く問いたい。
もちろん、ここでの正解は決まっている。
トイレ帰りに寝ぼけて深夜子の布団にもぐり込んだ朝日を、王子様だっこ(※お姫様だっこ)して『やれやれだぜ』とボヤキながら布団まで運んでクールに去る。
まさに淑女の
しかし、深夜子はつい先ほどまで朝日と愛を育んでいた。妄想の中で。
あるのは朝日に対する狂おしくも
月明かりに照らされる可愛い寝顔。
考えれば深夜子は、間近でじっくりと朝日の顔をながめるのは初めてだと思った。
髪の毛の生え際、眉毛、まつ毛、鼻の形、唇の形、耳の形、しっかりと記憶に刻む。
首筋から鎖骨、寝崩れて
(触れる……かな)
言い訳を
ゆっくりと、下へ、下へとたどって右肩の浴衣に手がかかった。一呼吸置いて、それをずらす。いつの間にか深夜子の左手も左側で同じ動きを取っていた。
深夜子の眼前に、朝日の上半身がさらけ出された。
月明かりとは言え、いや、月明かり
深夜子の猛禽類のような瞳に映るのは、引き締まった胸板、自分の物とは比較にならない慎ましやかで可愛らしい桜色の突起。
あまりにも情欲的な視覚情報に網膜が、視神経が、そしてわずかに残った理性が焼き切れそうになる。
同時に、まるでもう一人の自分がいるかのように脳内に警告が響き渡った。
――Mapsの職務規定に抵触どころではない。明らかな性犯罪行為。今、
止まらなければ、止まるんじゃねぇぞ、いや止めなければ。
頭の中に不協和音がこだまする。
このまま突き進めば、間違いなく取り返しがつかない事になる。
朝日の浴衣をもとに戻すのだ。脳から必死にその指令を身体へと送った。
つもりだった――。
気がつけば、深夜子の唇は朝日の唇に重なっていた。