こんな青春があってもいいんじゃないか?   作:青木 翼/ペンシルバー

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3話『詐欺 ダメ ゼッタイ』

例に倣って昼休憩の教室の窓際の席、例の二人が話をしていた

「昨日、俺のお婆ちゃんの家にオレオレ詐欺の電話が来たらしい。」

「え? それで、金を払ったのか?」

「いや、不審に思ったらしく、俺の家に確認の電話が来てさ……いや~、お婆ちゃんがボケていなくてよかったよ。」

翔太はそう言うと、机の上に突っ伏した。

「悠斗はさぁ、老人になっても詐欺に引っかからない自信はある?」

「引っかからない気はするけど、こればっかりは体験しないと分からないからなぁ。」

「そうだよな、俺も同じ意見だわ。」

 

しばらく無言の時間が続いたが、翔太は何か思いついたように急に立ち上がった。

「そうだ!! おい、悠斗、やろうぜ。」

「ん~? 何を?」

「シミュレーションだよ。オレオレ詐欺シミュレーション!!」

「え~~~。」

悠斗は顔を上げ、嫌だとでも言わんばかりに眉を寄せる。

それもそのはず、前回の話でもシミュレーションを行っており、それはとてもカオスなことになってしまった。

しかも、あの日以来、 【ツッコミの悠斗】 なんて二つ名が付けられてしまい、同級生だけならまだしも、下級生上級生、あげくの果てには先生にすらも知られてしまっている。

余談ではあるが、作者自身も会話文過多の作品はあまり得意ではない。

 

そういうこともあり、作者と悠斗の二人としてはあまり乗り気ではないのである。

 

「まぁ、そんな嫌な顔するなって。今日の帰りにハー○ンダッツを奢ってやるから。」

「よし、それならやろう。 僕が詐欺師するから、お前は被害者やれよ。」

悠斗という男を誘い出すには、美味しい食べ物を提示すればよい。

そのことを理解している翔太は、さすが親友なのであろう。

 

 

 

そんなこんなで、筆箱を受話器に見立ててシミュレーションは始まった。

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?」

「いえ、俺はお婆ちゃんですけど。」

 

「ややこしいわ!!」

ぺちこ~ん!!

 

相変わらず悠斗のツッコミ頭叩きの音は素晴らしく、クラスの皆は目を閉じて叫びと叩き音に興じる。

 

「いいか、これはお前の予行演習だからな!! お前は男だからお爺ちゃん。お前のお爺ちゃんの練習じゃないからな!!」

「ずっと言えなかったことがあるんだ。俺、実は女性でな……。」

まさかの衝撃の告白であったが、悠斗の方はまったく動じず、

「二話の最後で作者が注意書きとして書いてるから、その手のネタはやめとけ。」

タグ変更はしたくない心情です。

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?俺、俺だよ俺。」

「あんた……まさか……オレオレ詐欺だね?」

「いやいや、俺だよ俺!! 忘れたの?」

「俺は引っかからないよ。あんた、詐欺してそうな人相だからねぇ。」

 

「なぜ分かったし!!」

ぺちこ~ん!!

 

「電話してて相手の人相分かるってなんでだよ!! ……確かに僕の人相悪いけど。」

 

今まで登場人物の容姿についてはまったく触れなかったし、ツッコミ役で、さらには一人称を『僕』としているため、読んでいる皆の悠斗の印象は良いイメージであると思う。(実際、作者もこのネタ作るまでは好青年のイメージで書いていた。)

しかしながら、意外や意外――悠斗はコワモテ男子だったのだ。

 

「悠斗……普通は顔分かるんだよなぁ。」

「電話で顔分かるやつは普通じゃないよ。もはや超能力者だよ。」

「だって、テレビ電話だぜ?」

「テレビ電話!? オレオレ詐欺でテレビ電話!? テレビ電話で詐欺するなんて聞いたことないよ!!」

「え~、でも、俺のお婆ちゃんが受けたオレオレ詐欺はテレビ電話って言ってたぜ。」

「それなら確認せずとも、顔見たら息子ではないことぐらい分かるだろ!! ……とにかく、テレビ電話もなし。」

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?俺、俺だよ俺。」

「もしかして……孫の悠斗かい!?」

「そうそう、孫の悠斗だよ。」

「某K大学医学部卒業して、その後世界を歩き回り、最終的にはノーベル平和賞を受賞した……あの悠斗かい!?」

 

「あんたの孫は天才だな!!」

ぺちこ~ん!!

 

「ちなみに、今言ったのは、俺の目標だからな。」

「うん、諦めた方が良いね。」

 

ちなみに、翔太の学力はハッキリ言って酷いです。

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん? 俺、俺だよ俺。」

「あんたもしかして、孫の悠斗かい?」

「そうそう、孫の悠斗だよ。ちょっとドジしてしまって、金が必要になったんだよ。10万ぽっちだからさ。俺の口座に振り込んでくれない?」

「そうかい? でもねぇ、払えないんだよ。」

「え…?」

「俺もこの歳でねぇ、深刻な病気にかかってしまったんだよ。」

「お爺ちゃん…?」

「だけど、治療費として50万円ぐらいかかってしまって………死ぬしかないのかねぇ。」

「(俺はこんな男性からお金を奪おうとしてたのか……)分かったよ……50万だね? お爺ちゃんの口座に振り込んでおくよ。」

「悠斗、すまないねぇ。ありがとよ……ガチャ……ふっふっふっふ~、50万円ゲットだぜ。」

 

「なんであんたが詐欺してるんだよ!!」

ぺちこ~ん!!

 

「しかも、50万円って……お前、詐欺師よりも金額高いじゃねぇか!!」

「そりゃそうだろ、やられたらやり返す。倍返しだ。」

「倍返しどころか、5倍返し……そもそもまだ騙されてない段階だから、10倍だろうが1000倍だろうが、全部0じゃねぇか!!」

「甘いな。こういうのは仕掛けて来た時点で戦争だ。」

「だとしても詐欺はいけないよ。」

「バレなければ犯罪ではないし、人生楽しんだら勝ち組だ!!」

クズの理論に達してしまった翔太、正直言って同じ空間にいたくないなぁ。

「悠斗!! 俺は詐欺師になるぞ!! はーはっはっはっは!!」

明らかに最初の目的と変わってしまった親友を……僕は無視することに決めた。

 

 

この後、彼は生活指導の中村先生にこっぴどく怒られました。

 

――― END ―――

 

 

 




【※呼びかけ※】

『シミュレーション』――『シュミレーション』

ネットで調べたら両方の意見があって困ってます。
まぁ、英語を無理やり日本語読みにしてるだけだから、どっちでも正解なのかもしれないのですが……。

そうなると、『どっちが正解』よりも『どっちが読みやすいのか』って方が気になりますね。
感想欄に書いてくださればうれしいです。

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